【ネタバレ】映画『ミッキー17』赤いボタン・最後の夢の意味は?ラストシーンを考察!

ポン・ジュノ監督の最新作『ミッキー17』の日本での公開が2025年3月28日に決定!この記事では、本作のあらすじやキャスト・スタッフ、原作小説のあらすじを紹介します。
映画『ミッキー17』のあらすじ【ネタバレなし】
公開日 | 2025年3月28日 |
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上映時間 | - |
監督 | ポン・ジュノ |
キャスト | ロバート・パティンソン , ナオミ・アッキー , スティーブン・ユァン |
非英語作品として初めてアカデミー賞作品賞を受賞した「パラサイト」の快挙以来、ポン・ジュノ監督の5年ぶりとなる新作映画。しかも近未来SFとくれば期待せずにはいられません! 2013年のハリウッドメジャー作『スノーピアサー』も近未来SFで、階級社会がテーマのブラックコメディでしたが、『ミッキー17』も予告を観る限りその系統のよう。社会風刺が効いているブラックコメディ、さらに近未来SFといえばポン・ジュノ監督の十八番ともいえます。 キャストもロバート・パティンソンをはじめ、ナオミ・アッキーやスティーブン・ユァン、マーク・ラファロやトニ・コレットなど豪華な布陣!サスペンス・スリラーかつホラーテイストにも注目です。
映画『ミッキー17』のあらすじ
主人公ミッキー(ロバート・パティンソン)は失敗ばかりの人生からの一発大逆転を狙い、「使い捨て労働者」に応募。人類の繁栄のため未開の惑星を開拓する巨大企業のもとで働くことになります。 しかし、契約書を読まなかったために何も知らないミッキーが任されたのは、“何度も”命を落とし続ける任務でした。 人類の先鋒として氷の惑星で何度も死んでは生き返る羽目になったミッキーですが、ある日、ミッキー17号が死んでいないにも関わらず、18号の複製を造られてしまいます。 「使い捨て労働者」が複数存在する場合、そのコピー元も含めて殺されてしまうことを知ったミッキー17号は18号と共に、悪の根幹たる巨大企業へ立ち向かうことに......。
【ネタバレ】映画『ミッキー17』の結末までのあらすじ
【起】一発逆転を狙い「使い捨て人間」に

2054年、友人ティモ(スティーブン・ユアン)とともに立ち上げたビジネスに失敗したミッキー(ロバート・パティンソン)は、借金取りから逃れるため、惑星ニフルハイムを植民地化する計画の「エクスペンダブル」という仕事に応募します。 「エクスペンダブル」の仕事は、肉体と記憶のバックアップを取り、危険な任務で死ぬとコピーが作成され、再び危険な任務に就くというもの。惑星に向かう航行の間に、ミッキーは警備員のナーシャ(ナオミ・アッシャー)と恋人同士になりました。 4年後、ニフルハイムで過酷な生活を送っていたミッキーは、惑星に生息するクリーパーという生物を捕獲する任務を与えられます。しかしその途中で崖の下に落ちてしまい、見回りに来たティモは「どうせ死んでも生き返るから」と彼を放置しました。 しかし集まってきたクリーパーたちが彼を崖の上まで押し上げ、ミッキーはなんとか基地に戻ります。
【承】ミッキーがふたり?異常事態発覚
自室に戻ったミッキーは、すでに新たなコピー、ミッキー18が作成されたことを知ります。同時に2人以上存在するエクスペンダブルは「マルチプル」と呼ばれ、全員殺す規則でした。そのためミッキー18はミッキー17を殺そうとしますが、17による交渉で、彼らは食事を分け合い、任務そして死は交代制にすることで合意。 ミッキー17は、警備員のカイ(アナマリア・ヴァルトロメイ)とともに植民地計画のリーダーであるマーシャル(マーク・ラファロ)とその妻イルファ(トニ・コレット)の食事に招かれます。しかしそこで出された実験用の肉によって激しい苦痛に襲われるミッキー17。カイはマーシャルが彼を処分するのを阻止し、ミッキー17は逃亡しました。 ミッキー17が部屋に戻ると、ナーシャに彼がマルチプルであることを知られてしまいます。しかし彼女は2人を受け入れました。一方のカイはミッキーたちについて報告しようとしますが、ナーシャが彼女を説得。食事の席での出来事を聞いたミッキー18は、マーシャルを殺すことを決意します。
【転】マーシャル暗殺未遂で窮地に

その後、惑星を開拓した者たちの石碑を立てると発表したマーシャル。しかしその式典で、石碑にする岩の中から2匹のクリーパーが現れ、大混乱に陥ります。混乱に乗じてマーシャルを殺そうとするミッキー18。ミッキー17はクリーパーのゾコを捕獲しますが、クリーパーのロコはマーシャルに襲いかかったため、殺されてしまいました。 マルチプルの存在が明らかになり、ミッキーたちとナーシャは逮捕されてしまいます。外から響くクリーパーたちの鳴き声を聞いたミッキー17は、あのとき自分はクリーパーに助けられたのだと気づき、ナーシャは彼らが知性を持っていると確信します。 ミッキーたちとナーシャはマーシャルのもとへ連行され、マーシャルの助手プレストン(ダニエル・ヘンシャル)は、食料になるクリーパーの尾を集める競争にミッキーたちを参加させ、勝者だけが生き残るゲームを提案します。ミッキーたちは遠隔操作で起動する爆弾ベストを着せられて外に出されました。
【結末】ふたりのミッキーの生死は?
ミッキーたちはクリーパーを殺すことなく、彼らのリーダーを探し出します。それを見たマーシャルは、自らクリーパーを全滅させようと、警備チームとともに外に出ます。一方、ミッキー17が翻訳機を使ってクリーパーのリーダーと話すと、ゾコを生きて返し、ロコを殺した償いに人間を1人殺せば許す、と言われます。 カメラを通じてナーシャにゾコ解放を訴えるミッキー17。ナーシャはイルファを人質にとってゾコを解放しようとしますが、イルファはゾコを殺そうとします。しかし警備員たちはイルファを逮捕しました。ナーシャはゾコをクリーパーのリーダーに返すことができました。 今度は人間を1人殺す番です。マーシャルのスノーモービルに乗り込んだミッキー18は、自ら爆破装置のボタンを押し、マーシャルとともに自爆しました。 その後、イルファは精神病院で自殺し、プレストンらマーシャルの共犯者たちは投獄されました。ナーシャは植民地のリーダーに選ばれ、ニフルハイムの着工式を行います。そこで彼女は「エクスペンダブル」プログラムの廃止を発表。ミッキー・バーンズがボタンを押し、プリンターを爆破しました。
最後の赤いボタンの意味は?映画のメッセージを体現していた
ラストシーンでは、ミッキーが赤いボタンを押し、エクスペンダブル製造装置を爆破しました。 「赤いボタン」は映画冒頭でも登場しています。ミッキーは幼いころ母親と車に乗っていたときに、自分が赤いボタンを押したせいで事故にあい、母親が死んだと思っていました。それが原因でミッキーは自己肯定感が低く、エクスペンダブルの仕事を引き受けるなど、自分を大切にできていなかったのです。しかしミッキー18は、そのボタンと母の死は関係ない、ミッキーのせいではないと言います。 一方で、ラストシーンに登場した赤いボタンは、ミッキーを自己肯定感の低さから解放し、世界にただ1人の自分として生きていくスタートになるものでした。装置の爆破によって、複製されることのない唯一のミッキーとなった、このシーンでは、「幸せになってもいいんだ」というミッキーのモノローグが挟まれています。 自己肯定感の低さを克服し、幸せを追求すること。それこそが人が目指すべき、理想の人生だというのが本作のメッセージなのではないでしょうか。
ミッキー18はなぜ自爆した?夢のシーンと共に考察
ミッキー18はミッキー17以上にエクスペンダブルに対する扱いに怒りを感じ、「生きたい」という本能に忠実に行動していました。しかしそんな彼が、最後に自爆することを選んだのはなぜだったのでしょうか。 ミッキー18はもとのミッキーとは違う攻撃的な性格をしていました。しかしそれもミッキーの一面に過ぎず、もともと持っていた資質だったと考えられます。生きることに強い意志を持っている彼は、ミッキー17が自分をないがしろにすることに我慢できず、衝突していたのです。 物語終盤、ミッキー18はマーシャルのスノーモービルに乗り込み彼を殺そうとします。マーシャルを巻き込んで自爆する前に、彼はミッキー17とナーシャを一瞥しています。 彼は自分が生き残った場合、ミッキー17はどうなるのか頭をよぎったのではないでしょうか。一連の出来事によってようやく自己肯定感を取り戻し、前向きに生きていけそうなミッキー17を見た彼は、ミッキー17に残りの人生を託す決意をしたのでしょう。
イルファ再登場の夢はなぜ描かれた?
ナーシャがリーダーとして演説する直前、ミッキーはある夢を見ます。それはイルファが謎の赤いソースを彼に味見させようとする、というものでした。ミッキーが躊躇していると、彼女は味見係としてマーシャルのコピーを作ります。 しかしそこで彼はイルファが自殺したことを思い出し、悪夢を断ち切ります。そのときミッキーは「ミッキー18ならどうしてた?」と自問しますが、その考えも振り切りました。自分のコピーでありながら違う性格だったミッキー18がどうということではなく、”自分はどうか”という点にフォーカスできるようになったのです。 前述したとおり、ミッキー18もミッキーの一部でした。彼は唯一無二のミッキー・バーンズとして生きていくために、ミッキー18の「生きたい」という本能や、自分を大切にする意志を取り込む必要がありました。ミッキー18が自爆したことは、メタ的に彼のアンデンティティが統合されたことを象徴しています。
「死ぬのってどんな気分?」とミッキーのアイデンティティ
①クルーにからかわれる | ナーシャが割って入り、ミッキーは答えない |
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②ミッキーを見捨てるティモから | 慣れていると決めつけられる |
③ディナーで死にかけた後にカイから聞かれる | 「続きがあるとわかっていても怖い」 |
④マーシャルがミッキー18に | 「怖い」と認めるが自爆 |
ミッキーは作中で何度か「死ぬのってどんな気分?」と聞かれます。最初はほかのクルーにからかわれる場面で、2度目は彼を見捨てたティモから問いかけられる場面です。 これらのシーンでは、ミッキーはなにも答えなかったり、答える前に「慣れている」と決めつけられてしまったりしています。これらを見ると、ミッキーは「死ぬこと」についてなにも思っていないとも、彼がなにかを思っていても他人には関係ないと思っているとも考えられます。 その後マルチプルとなった彼は、カイに同じことを問いかけられたとき「続きがあるとわかっていても怖い」と答えています。自分のコピーでありながら、生きることに貪欲なミッキー18を見た彼は、自分も同じように「生きたい」と思っていることを痛感するのです。 そして終盤、マーシャルからのこの質問に答えるのはミッキー18です。彼は「怖い」とだけ答えています。彼はこのときすでに自爆することを決めており、“続きがない”ことがわかっていました。しかしミッキー17が唯一無二のミッキー・バーンズとして生きるために、自ら犠牲になったのです。
【感想】唯一無二の自分を取り戻す物語
『ミッキー17』は、ポン・ジュノ監督の前作『パラサイト 半地下の家族』(2019年)から、さらにどん底の生活を送るミッキーを主人公としています。危険な「お死事」をこなし、まさに死ぬために生きているようなミッキーは、現代の格差社会で搾取される労働者を象徴しています。本作は、ポン・ジュノ監督が得意とする社会風刺に満ちた作品なのです。 何度もコピーされるうち、自分の運命を受け入れかけていたミッキー17でしたが、ミッキー18が現れたことで、「本当の自分とはなにか」「自分が生きる意味とはなにか」と考えるようになりました。そうして「生きたい」と強く願ったとき、彼は唯一無二の自分を取り戻すのです。 また本作では、権力者であるマーシャルとその妻イルファは、非常に自己中心的で愚鈍な人物として描かれています。マーシャルは権力にしか興味がなく、イルファは「食」に異常なほどの執着を見せます。「食」は生きるために欠かせないものですが、自分が生きるために他者を犠牲にすることも厭わないイルファの恐ろしさが強調されています。
原作『ミッキー7』との違いをネタバレ解説
『ミッキー17』の原作となっているのは、アメリカの作家エドワード・アシュトンによるSF小説『ミッキー7』。 エクスペンダブルとして宇宙開発の任務に携わるミッキーが、ある日自分が死んでいないにも関わらず新たな複製体が作られてしまうという流れは原作と映画で同じです。 一方で、原作ではミッキー7ですが、映画ではミッキー17と数が増えています。それだけ使い捨ての回数が増えたという点で、いかに彼の命が軽く扱われているのかを表現しているのではないでしょうか。 また原作のミッキー7は、比較的冷静に事態に対処していきますが、映画ではミッキー17の感情がかなり揺れ動いている様子が描写されています。キャラクターとしては、マーシャルの印象がかなり違っており、原作の方は堅物な印象。さらにラストの展開も違っており、原作ではミッキー7とミッキー8は共存する道を選んでいます。
映画『ミッキー17』キャスト・登場人物解説

ミッキー | ロバート・パティンソン(吹き替え声優:成河) |
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ナーシャ | ナオミ・アッキー(吹き替え声優:田村睦心) |
ティモ | スティーブン・ユァン(吹き替え声優:中村悠一) |
カイ | アナマリア・バルトロメイ(吹き替え声優:内田真礼) |
マーシャル | マーク・ラファロ(吹き替え声優:山路和弘) |
イルファ | トニ・コレット(吹き替え声優:朴璐美) |
ドロシー | パッツィ・フェラン(吹き替え声優:花澤香菜) |
ミッキー役/ロバート・パティンソン
未開の氷の惑星で死と隣り合わせの危険な任務に就くミッキー・バーンズ。「使い捨て人間(エクスペンダブル)」として契約したため、死んでもすぐにオリジナルのデータを保存した複製として再生されます。 演じるのは『TENET テネット』(2020年)や『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(2022年)で知られるロバート・パティンソンです。『THE BATMAN-ザ・バットマン-』は2026年に続編が公開される予定。
ナーシャ役/ナオミ・アッキー
有能な警備隊員で、ミッキーの恋人となるナーシャを演じるのは、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019年)のジャナ役で知られるナオミ・アッキー。 2022年には『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』で、ホイットニー・ヒューストンを演じて絶賛されました。
ティモ役/スティーヴン・ユァン
ミッキーの同僚で友人のティモ役は、「ウォーキング・デッド」シリーズのグレン役で知られるスティーヴン・ユァンが務めます。2020年の『ミナリ』ではアカデミー賞主演男優賞にノミネートされました。
カイ・キャッツ役/アナマリア・バルトロメイ
宇宙船のセキュリティ・エージェントであり、ミッキーやナーシャの友人でありながら、ミッキーに想いを寄せているカイ。 演じるのはルーマニア出身でフランス国籍のアナマリア・バルトロメイです。『ヴィオレッタ』(2011年)では主役を務めました。
マーシャル役/マーク・ラファロ
ミッキーが働く巨大企業で、惑星開拓のリーダーを務めるマーシャル。「使い捨て人間」を道具としか見ないような高圧的な人物です。 そんなマーシャルを演じるのは、MCU作品のブルース・バナー(ハルク)役で知られるマーク・ラファロ。2024年には、『哀れなるものたち』でダンカン役を演じ、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされました。
マーシャルの妻・イルファ役/トニ・コレット
強欲なリーダー、マーシャルの妻を演じるのは、『ヘレディタリー/継承』で知られるトニ・コレット。オーストラリア出身で、『リトル・ミス・サンシャイン』から『シックス・センス』まで幅広い作品に出演しています。
映画『ミッキー17』の監督はポン・ジュノ

『ミッキー17』の監督・脚本・製作を務めるのは、「パラサイト」で世界的なヒットを生み出し、クリエイターとしての評価を高めたポン・ジュノ。『ミッキー17』のようなハリウッドメジャー作は、2013年の『スノーピアサー』と2017年の『オクジャ/okja』から3作目となります。 これまでも『殺人の追憶』(2003年)、『グエムル-漢江の怪物-』(2006年)、『母なる証明』(2009年)と多くの賞を受賞した名作を数々創り出しており、今作への期待も高まっています。
映画『ミッキー17』をネタバレ解説しました

ポン・ジュノ監督×ロバート・パティンソン主演『ミッキー17』は、日本では2025年3月28日に公開されます。SFサスペンス・スリラー×社会風刺ブラックコメディの要素に期待大!話題の最新作、ぜひ劇場でご覧ください。