2024年12月10日更新

【ネタバレあらすじ】映画『葛城事件』は実話だった?怖すぎる衝撃のラストを解説

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2016年に公開され、「怖すぎる」と話題になった映画『葛城事件』。実際の事件をモチーフに、加害者家族の崩壊を描いた衝撃作です。 非常にリアルでダーク、心理的に大きなインパクトを与える『葛城事件』のネタバレあらすじや考察を紹介します。

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映画『葛城事件』のあらすじ【ネタバレなし】

公開日 2016年6月18日
上映時間 120分
監督 赤堀雅秋
キャスト 三浦友和 , 南果歩 , 若葉竜也 , 田中麗奈

無差別殺人事件を起こし、死刑判決を受けた葛城稔(若葉竜也)。死刑制度に反対する人権活動家の星野順子(田中麗奈)は、稔と獄中結婚します。 稔のことを知りたいと願う順子は、彼の家族に会うことに。父の清(三浦友和)は非常に威圧的で、稔が罪を犯したことで自分が非難されることに腹を立てています。一方、母の信子(南果歩)は施設に入院しており、兄の保(新井浩文)は数年前に命を絶っていました。 獄中の稔は全く反省の色を見せず、順子に対しても全く心を開こうとしません。それでも稔と「家族になりたい」と強く願う順子。時系列を行ったり来たりしながら、事件までの家族の様子が徐々に明らかになっていきます。

映画『葛城事件』の相関図

『葛城事件』相関図
© ciatr

映画『葛城事件』の結末までのネタバレあらすじ

【起】死刑判決を受けた稔

無差別殺人事件を起こした葛城稔(若葉竜也)は、裁判で死刑を宣告されます。判決を聞いた彼は、傍聴席の父・清(三浦友和)に向かってニヤリと笑いを浮かべました。 稔と獄中結婚した星野順子(田中麗奈)は清のもとを訪れ、稔のことを聞き出そうとしますが、受け入れられません。一方、稔は「家族になったのだから」と順子に対して横柄な態度をとります。 あるとき順子は近所のスナックまでついてきて、清を質問責めにします。清が語ったのは、「稔は兄に比べてできが悪い」ということと、「自分はやるべきことをやった」ということだけでした。

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【承】稔を甘やかす母・信子

稔の兄・保(新井浩文)は、あるとき会社でクビを宣告されてしまいます。 保たち夫婦の結婚記念日を祝うため、清と保夫婦、そして妻の両親は中華料理店に出かけました。以前と料理の味が違うと店員に因縁をつけ、保の妻が妊娠しているにも関わらずタバコを吸う清。家に帰ると保の息子が稔に殴られ、大怪我をしていました。母の信子(南果歩)は稔をかばって嘘をついたため、清に殴られます。 ある夜、清はゴミ捨て場から火が出ているのを見て外に出ようとしました。そこへ稔が帰宅し、清は火事は稔の仕業だと確信。つらい気持ちを抑えるため信子に抱きつきますが、彼女は清を拒絶し、「あなたのこと大嫌い」と言います。 一方、保は仕事をクビになったことを家族に言えずにいました。会社に行くふりをして転職活動をしますが、緊張でうまく自己紹介もできない有り様です。

【転】兄・保の飛び降り自殺

保は家出していた信子と稔が暮らすアパートを見つけます。3人が他愛のない会話で盛り上がっていると清が現れました。清は稔に暴力をふるい、ついに包丁を持ち出します。すると信子は、家に戻るからやめてくれと懇願。稔は死んでもよかったのに、とつぶやきます。 ある朝、妻が赤ん坊の育児でせわしなくしているなか、いつものように家を出ようとする保。長男は彼を見送りに出てきて「バイバイ」と言います。保はその日、自殺で亡くなってしまうのでした。 保の葬式で、彼は以前勤めていた会社近くのマンションから飛び降りたという噂が流れますが、清は事故だったと否定。しかし彼は、保の妻の父から、レシートの裏に「申し訳ない」とだけ書かれた保の遺書を見せられます。一方、保の妻に、家族なのに何も知らなかったあなたが保を殺したと言う信子。稔は兄の棺に向かって「俺は一発逆転するから」と言い放つのでした。 そしてある日、稔は通販でサバイバルナイフを購入します。

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【結末】家族の行き先

スナックでほかの客から稔のことで責められた清は、「国が息子を殺す。国の制度を容認している国民が殺すのと同じことだ。それで勘弁してくれないか」と土下座してみせます。 子どもたちがまだ幼かったころ、葛城家は家を建てたお祝いに友人たちを招いてパーティをしていました。息子たちの健やかな成長を願って、庭にみかんの苗木を植えたとうれしそうに話す清。 スナックからの帰り道、清は順子に稔を殺してほしくないと言います。死にたがっている稔の思い通りにさせず、生きるつらさを味わわせるべきだと言うのです。 一方、稔は死刑の早期執行を申し出ると順子に話します。自分は狂っている、救われない現実に絶望していると絶叫する稔。 稔の死刑は通例よりも早く執行されました。執行が早すぎることや、自分がなにも変えられなかったことを嘆く順子。清は彼女に、自分が人を殺したら家族になってくれと迫りますが、順子は恐怖のあまり逃げ出してしまいます。 清は、もう誰も返ってくることのない“自分の城”をめちゃくちゃにし、みかんの木で首を吊ります。しかし枝が折れ、自殺に失敗。荒れ果てた部屋で、食べかけのそばをすするのでした。

映画『葛城事件』衝撃のラストまでを考察

稔と順子が獄中結婚をしたのはなぜ?

順子が稔と結婚したのは、基本的には彼と面会するためです。刑務所では、家族以外との面会は許されていません。人権活動家である順子は死刑制度に疑問を持っており、稔と面会し、彼の更生を促すことで死刑制度に疑問を投げかけられると考えていました。 しかしそれだけではなく、個人的に稔に共感する部分もあったのでしょう。順子は稔が家族や社会から見捨てられ、孤独に苦しんでいる姿に心を痛めています。詳しくは描かれていませんが、彼女もまた家族や社会から疎外感を感じていたのかも知れません。 順子は稔に対する深い同情と、彼を孤独にしない決意を持って、この結婚を決意したのではないでしょうか。

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稔はなぜ棺桶に語りかけた?

兄の保が亡くなったとき、稔はその棺に向かって「俺は一発逆転するから」と語りかけました。これは、彼の孤独や、自分はすでに死んだ存在であるという考えから出た行動ではないでしょうか。 死の象徴である棺桶に向かって語りかけることで、稔が自分の死を考えていることがわかります。「一発逆転」してから死ぬのだ、という孤独な彼の決意のあらわれではないでしょうか。家族や社会から断絶され、無力感や絶望感に苛まれている彼は、もはや死にしか希望を見出せなかったのかもしれません。

『葛城事件』は実話?元ネタとなった事件を解説

『葛城事件』は特定の事件を元ネタにしているわけではありませんが、葛城稔のモデルは、2001年に「附属池田小事件」を起こした宅間守と思われます。過酷な家庭での生育歴や死刑制度に反対する女性との獄中結婚、通例よりも早い死刑執行などが共通しています。 「附属池田小事件」で宅間は小学校に侵入し、1年生と2年生の児童8人を刺殺。15人を負傷させ、現行犯逮捕されました。エリート志向を持ちながら社会から落ちぶれてしまった彼は、エリートの象徴である同小学校の生徒たちを妬み、凶行に及んだのです。 宅間は裁判の前から死刑判決でも控訴しないと弁護団に話していたとされています。死刑確定後は、主任弁護士への手紙で「6ヶ月以内、できれば3ヶ月以内の死刑執行を望みます」と記し、6ヶ月以内に死刑が執行されなかった場合、“精神的苦痛を受けた”として国に損害賠償訴訟を起こす準備もしていました。 通常、死刑の執行は確定から約1年4ヶ月後から約18年6ヶ月後とばらつきがあり、平均は約6年8ヶ月後です。宅間の死刑は2003年8月28日の確定から、1年足らずの2004年9月14日に執行されました。

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映画『葛城事件』のキャストを解説

葛城清役/三浦友和

三浦友和

葛城家の大黒柱である葛城清。彼は親から受け継いだ金物店を営んでいますが、息子たちには後を継がせず、特に優秀な長男の保には「スーツでバリバリ働いてもらいたい」と望んでいました。一方で、抑圧的で支配的な父親・夫であり、気に入らないことがあると暴力に訴える人物でもあります。 「アウトレイジ」シリーズなどへの出演で知られる、名優・三浦友和が演じました。

葛城信子役/南果歩

南果歩
PRTIMES

葛城信子は清の妻であり、保と稔の母親です。清の暴力に怯えて暮らす彼女は、大学にも行かずに引きこもっていた稔をなにも言わずにただ受け入れたり、彼が保の息子に怪我をさせたときには嘘をついてかばうなど、稔を甘やかしていました。また精神的に不安定な一面もあります。 信子を演じた南果歩は、近年ではドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』(2020年)などに出演しています。

葛城保役/新井浩文

新井浩文

葛城家の長男である葛城保。子どものころ学校の成績は良かったようですが、社会に出てからはうまく行かず、会社をクビになってしまいます。その事実を妻に打ち明けることができず、自ら命を絶ってしまいました。 演じた新井浩文は、2019年に俳優活動を停止しています。

葛城稔役/若葉竜也

若葉竜也

葛城家の次男である葛城稔。幼いころから両親の手に負えない子どもだったようで、大学生になると学校に行かず、家に引きこもるようになりました。母の信子には甘やかされていますが、父の清は彼に厳しく接しています。 清を演じたのは、1998年に大河ドラマ『徳川慶喜』で俳優デビューした若葉竜也。映画『市子』(2023年)やドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(2024年)などに出演しています。

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星野順子役/田中麗奈

田中麗奈

星野順子は死刑制度に反対する人権活動家で、稔と獄中結婚します。稔の境遇に心を痛めた彼女は、自分が彼とコミュニケーションをとることで更生を促し、稔を救いたいと願っていました。しかし稔は彼女を受け入れようとしません。 順子を演じた田中麗奈は、1998年に出演したCMでブレイク。同年に公開された映画『がんばっていきまっしょい』で女優デビューし、活躍をつづけています。

映画『葛城事件』の感想・評価

葛城事件
葛城事件』の総合評価
3 / 2人のレビュー
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40代男性

お父さんが強烈ではあるけど、昭和の時代はこういう人たくさんいたと思う。一番ダメなのは自分はいつも正しくて、被害者で、間違ったことはなにもやっていないと思っているところ。次男のしたことは擁護できないが、彼だけを責めることもできない。

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30代女性

なかなかしんどい映画だった……。家族が壊れていく過程を描く映画のようで、実は最初からこの家族は壊れていた。それを「家族だから」で無理矢理まとめていた代償が次男の凶行だったんだろうか。キャストの演技がとにかく素晴らしい。

衝撃の実話……『葛城事件』が怖すぎる

実在の殺人犯をモデルに、加害者家族と犯人が凶行に及ぶまでの過程を描いた『葛城事件』。私たちの日常に潜む社会や家族の圧力によって、1つの家族が崩壊していく様子は現実味があり「怖すぎ」と戦慄させられます。 1度観たらもう2度と観たくないような、後味の悪さも本作の魅力です。