2024年11月6日更新

【ネタバレ】『すばらしき世界』の結末は?三上の死因や原作との違いを徹底解説!

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『すばらしき世界』
©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

『ゆれる』(2006年)や『永い言い訳』(2016年)などの西川美和監督がメガホンをとり、役所広司が主演を務めたヒューマンドラマ『すばらしき世界』。刑務所を出所したばかりの元ヤクザの男の生涯を切り取ります。 この記事では、『すばらしき世界』のネタバレ考察を紹介!原作との違いについても探っていきましょう。 ※この記事には『すばらしき世界』の結末までのネタバレが含まれます。

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【ネタバレなし】『すばらしき世界』あらすじ

公開日 2021年2月11日
キャスト 役所広司 , 仲野太賀 , 橋爪功
監督・脚本 西川美和

殺人罪で服役し、13年の刑期を終えて出所した三上(役所広司)。人生の大半を刑務所で過ごしてきた彼は、右も左もわからないまま一般社会に放り込まれます。 そんななか、母親を探してくれるというテレビプロデューサーの津乃田(仲野太賀)と出会った三上は、取材の申し出を承諾し、ドキュメンタリーの撮影がスタートしました。 今度こそカタギになると決意していた三上でしたが、怒りっぽい性格と暴力を振るう癖はなかなか抜けず、その経歴から職探しにも苦労することになります。

【ネタバレ】『すばらしき世界』の結末までのあらすじ

【起】三上の出所

殺人罪で13年の刑期を終え、旭川刑務所から出所した三上。彼は身元引受人になってくれた東京の弁護士・庄司(橋爪功)のもとへ向かいます。庄司とその妻・敦子(梶芽衣子)は、三上の出所を祝ってくれました。 同じころ、テレビの制作会社を辞め小説家を目指す津乃田のもとに、敏腕テレビプロデューサーの吉澤(長澤まさみ)から三上を取材するよう仕事の依頼が届きます。津乃田は三上が心を入れ替え、幼いころに生き別れになった母親と再会するという感動のドキュメンタリーを制作するため、三上にコンタクトを取りました。 三上はすぐに取材を承諾します。しかし彼はあるとき倒れてしまい、高血圧で治療が必要なことがわかります。

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【承】仕事を探す日々

生活保護を受ける生活から早く抜け出したいと願う三上は、運転手になることを決意します。しかし刑務所に収容されていた間に免許は失効しており、またイチから免許を取り直すことに。 そんなある日、三上はスーパーで万引きの疑いをかけられ、無実であることを主張し激昂。店長の松本(六角精児)は、実際に無実であったのとその迫力におののきますが、三上の人柄を知ると「免許が取れたら仕事を紹介する」と言ってくれました。 意気揚々と教習所に通い始めた三上でしたが、彼の運転は荒っぽく、教官を怒らせてしまいます。

【転】向かう先は故郷・福岡

『すばらしき世界』
©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会 subarashikisekai-movie.jp

ある日、津乃田と吉澤と3人で焼き肉を食べた帰り道、三上はサラリーマンがガラの悪い2人組に絡まれているを見つけます。サラリーマンを救い出し、2人を路地裏に連れていく三上。そこで彼は大乱闘をくり広げ、津乃田たちは、カメラを回してその様子を見守りました。 しかし三上が暴走し、あまりの暴力的な姿に津乃田はカメラを持ったまま逃げ出します。 その後、三上は教習所でもうまくいかず、役所で教習費用を申請することもできず、テレビの話も無くなってしまいました。 自暴自棄になった彼は、かつての仲間に連絡を取り、福岡に飛びます。しかしそこで目にしたのは、ヤクザ稼業も陰りを見せ、以前のようにはいかない現実でした。 そんななか津乃田からの電話で、三上がいた施設と連絡がついたと知らされます。確かな書類や証言などはなにもありませんでしたが、三上は当時施設を手伝っていたという女性と園の歌を歌いました。

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【結】三上にとってのすばらしき世界とは

東京に帰った三上は、ケースワーカーの井口(北村有起哉)の提案で、介護施設で働くことに。津乃田と庄司夫妻、松本は三上の就職を祝ってパーティを開いてくれました。 三上は日々懸命に働くなか、知的障害のある同僚・阿部(田村健太郎)と仲良くなります。しかしある日、彼は阿部がほかの職員に殴られているところを目にしました。頭に血が上った三上でしたが、ぐっとこらえて身を隠します。 ほかの職員たちは、阿部のいないところで「ここの職員には前科者や障害者が多い」などと笑っていました。三上もそれを笑って受け流します。 台風が近付いたある日の帰り道、かつての妻から電話があり、こんど娘と3人で食事をしようと約束します。 雨に濡れて帰った三上は濡れた洗濯物を取り込み、そのまま倒れてしまいます。翌日、知らせを受けた津乃田が三上の家に駆けつけると、彼は帰らぬ人となっていたのでした。

三上の死因は?ラストシーンを解説

三上の死という衝撃的な幕切れを迎えた本作ですが、彼の死因はなんだったのでしょう? 結論から言えば、三上の死因は高血圧による脳梗塞か心筋梗塞だと思われます。 映画冒頭で三上は高血圧症と診断され、医者から安静に療養することを勧められています。しかし彼は教習所に通ったり、職探しに奔走したり、むかしの仲間に会いに行ったりと、安静とは程遠い生活を送っていました。 映画全編を通して、三上が発作を起こして薬を口にするシーンは何度も出てきます。ひとつ気になるのは、これまでは発作が起こればすぐに薬を飲んでいたのに、ラストのあのときだけ、なぜ薬を飲まなかったのかということです。 間に合わなかったのか、それともあえて薬を飲まなかったのか、はっきりとした答えはわかりません。しかし彼は元妻とその娘と会う約束をしていたので、「あえて薬を飲まなかった」という消極的自殺の可能性は低そうです。 どちらにせよ、これから平和な日々が訪れようとしていた矢先の彼の死は悲しいものです。

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三上のモデルは実在する人物

『すばらしき世界』は、1990年に刊行された佐木隆三の長編小説『身分帳』を原作としています。 『身分帳』は、実在した田村明義をモデルにした、実話ベースの作品です。田村は実際に殺人犯として刑務所に服役していました。出所した彼は佐木に連絡を取り、「自分のことを小説にしてくれ」と依頼したことがきっかけとなって同作が生まれました。 田村の出所後、社会復帰への険しい道のりを佐木が入念に取材し、1冊の本にまとめたのが小説『身分帳』です。

原作小説『身分帳』と映画版の違いは?

原作の『身分帳』と映画『すばらしき世界』では、変更された設定やシーンが多くあります。映画化するうえで、より観客に訴えかける内容になるよう、西川監督は悩みに悩んだといいます。 時代設定や身分帳の扱い、三上の職歴など、主な変更点を紹介します。

時代設定

原作の主人公・山川は、昭和61年に刑期を終えて出所。それから昭和60年代に彼が社会復帰を目指して奮闘する様子が描かれます。 映画の時代設定は、公開年とほぼ同じ2000年代になっています。西川監督は、原作の60年代も現在も、長年刑務所で過ごした人が社会復帰する難しさは変わらないのではないかと語っています。

身分帳の登場シーン

原作・映画ともにキーアイテムとなる身分帳とは、受刑者の生育歴や受刑歴が詳細に記された資料です。本来は刑務所の内部資料で門外不出となっていますが、原作のモデルとなった田村は、自分の裁判の際に被告人の権利として、これをノートに書き写していました。 原作では、その身分帳は著者の佐木に山川本人から直接送られ、「自分のことを小説にしてほしい」と頼まれます。 一方映画では、三上が生き別れた母を探してもらうためにテレビ局に身分帳を送り、それを津乃田が読むことで、三上の経歴が明らかになっていきます。

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刑務所出所後の三上の職歴

原作の主人公・山川は、出所後に運転免許を取り直し、運送会社に就職しています。しかしその後、事故を起こしてしまいました。 一方、映画の主人公・三上も運転免許の再取得のために教習所に通うものの、その後どうなったのかはっきりとは描かれていません。また三上は、運送会社には就職せず、介護施設で職を得ています。

最期のアパート

原作では、山川はある理由から東京のアパートを引き払って福岡のアパートに住んでいました。そしてそこで悲劇が起こります。 映画では、三上は福岡に帰らず、東京のアパートで最期のときを迎えます。こちらは、出所後に彼が築いてきた人間関係の深みを感じさせるシーンとなっており、映画のエンディングにふさわしいものになったと言えるでしょう。

『すばらしき世界』のタイトルの由来は?

刑務所から出所後、三上は社会復帰に向けて多くの挫折やトラブルを経験していきます。しかしそんな彼に寄り添ったのは、津乃田をはじめとする周囲の人々でした。身元引受人の庄司弁護士夫妻、スーパーの店長の松本、ケースワーカーの井口など、三上の状況を案じる人々がいたのです。 裏社会しか知らなかった三上にとって、堅気の世界は未知の世界です。松本役の六角精児と西川監督は、インタビューで、そういった人々のおかげで、三上は「この世界もまんざら捨てたもんじゃない」と思えたのでは、と語っています。

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『すばらしき世界』をネタバレ解説でおさらい!

人生の大半を刑務所で過ごした男が、一般社会で生きるために奮闘する『すばらしき世界』。周囲の人々のやさしさに触れながら、主人公・三上は成長していきます。 こちらのネタバレ考察を楽しんでいただけたなら、ぜひ本編ももう1度楽しんでください!