2025年2月14日更新

【ネタバレ】映画『セプテンバー5』はどこまで実話?あらすじをモデルとなった事件と比較解説

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『セプテンバー5』サムネイル

1972年のミュンヘンオリンピックで起きたテロ事件の実話を基にしたヒューマンサスペンス『セプテンバー5』。第82回ゴールデングローブ賞のドラマ部門作品賞にノミネートされた話題の1作です。 この記事では、本作のあらすじを紹介し、基になったテロ事件も解説します。

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映画『セプテンバー5』のあらすじ

公開年 2025年2月14日
メインキャスト ピーター・サースガード , ジョン・マガロ , ベン・チャップリン
監督 ティム・フェールバウム

1972年9月5日、ミュンヘンオリンピックが開催されている最中、選手村でパレスチナ武装組織「黒い九月」によるイスラエル選手団の人質立てこもり事件が発生。情報が錯綜する現場でテレビ中継を担うことになったのは、スポーツ番組の放送クルーたちでした。 テロリストの要求は次第にエスカレートしていき、現地のドイツ警察は冷戦の中で機能せず。全世界の人々が異様な緊迫感の中で事件の行方を見守る中、テロリストの交渉期限が近づいていました。

【ネタバレ】映画『セプテンバー5』の結末までのあらすじ

【起】平和の祭典でテロリストによる人質立てこもり事件が勃発

1972年に西ドイツで行われたミュンヘンオリンピックでは、全世界に向けてスポーツ中継をてがけるテレビクルーが舞台裏で活躍していました。アメリカのスポーツ中継専門局「ABCスポーツ」も、その中の1つ。 エグゼクティブ・プロデューサーのルーン・アーレッジ(ピーター・サースガード)、若きプロデューサーのジェフリー・メイソン(ジョン・マガロ)、オペレーション・マネージャーのマービン・バッダー(ベン・チャップリン)もまた、この平和の祭典の中継を担っていました。 ところが競技が行われていた最中の9月5日、突然武装したテロリストたちがイスラエル選手団を襲ったという一報が入ります。銃声と思わしき音に顔をしかめるクルーたち。彼らは当時、事件現場から約100キロメートルの距離にいましたが、ニュース番組とは無縁だったため、コントロールルームは混乱に陥ります。

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【承】犯人はパレスチナ武装組織「黒い九月」

テロ事件の生中継など前例がなく、偶然にも近くに居合わせた「ABCスポーツ」の中継クルーたちは、戸惑いながらも事件を生中継で報道することに。テロリストの正体がパレスチナ武装組織「黒い九月」であり、イスラエル選手2名を殺害した後に選手村の宿舎に選手9名を人質にとって籠城したことがわかります。 テロリストの交渉条件は、イスラエルに拘束されているパレスチナ囚人と西ドイツに投獄されている赤軍派メンバーの解放。当時はまだ世界は東西冷戦の真っただ中にあり、現地警察の対応は遅れるばかりで、交渉は難航します。ABCスポーツの中継チームは、世界中が事の成り行きを固唾を飲んで見守る中、生中継を続けました。

【転】犯人グループとの交渉は決裂……報道の倫理を問う生中継

ABCニュースのプロデューサーであるジェフリーは、犯人グループもまたテレビ中継を見ていることに気付きます。情報が犯人グループに筒抜けなのではないかと。 一方、ホロコーストで家族を失ったユダヤ系ニューヨーカーであるマービンもまた、ホロコーストが行われた地であるドイツで起きたテロ事件に複雑な想いを募らせていました。彼はもしも犠牲者が出た場合、それを放送して良いのかという倫理をクルーたちに突きつけます。 さらに、ドイツ人通訳者としてチームに入っていた女性マリアンヌ(レオニー・ベネシュ)も、ドイツ人としての葛藤を抱えつつ事件の行方を見守っていました。

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【結末】衝撃のラスト、テロ事件の悲劇的な結末

やがて期限が一刻一刻と近づき、ついに犯人グループとの交渉は決裂。警察の手配によって海外逃亡を図ります。西ドイツ警察は空港で犯人グループと銃撃戦を繰り広げ、テロリストの自爆テロもあり現場は大混乱に陥りました。 結局、9人の人質は銃撃戦に巻き込まれて全員死亡。犯人グループは5名の死者を出し、テロ事件は終結しました。その様子をABCスポーツのクルーたちはコントロールルームから見届ける他ありませんでした。 現場でリポートを続けてきたスポーツジャーナリストのジム・マッケイは、この悲劇的な結末を最後まで中継し、締めくくりました。

【実話】映画『セプテンバー5』のモデルは現実の事件

1972年9月5日、西ドイツ(当時)のミュンヘンで行われていたオリンピックで起きたテロ事件「ミュンヘンオリンピック事件」。パレスチナ武装組織「黒い九月」が選手村でイスラエル選手団を人質にとって立てこもった実際の事件です。 オリンピック競技が行われる最中、8人のテロリストが2人のイスラエル選手を殺害し、9人を人質にとって選手村の宿舎に立てこもりました。交渉条件は、イスラエルで拘束されているパレスチナ人囚人及び西ドイツで投獄されている赤軍派メンバーの解放。全世界が中継で事件の行方を目撃する中、交渉は決裂してしまいます。 テロリストは海外逃亡を図りますが、西ドイツ警察による空港での救出作戦によって銃撃戦に発展。人質9名は銃撃戦に巻き込まれ、結果的に警察官1名と犯人5名を含む計17名が死亡する大惨事となりました。 映画では事件を客観的に追う報道側の視点で語られている点が最大の特徴。さらに実際のニュース映像も挿入されており、その融合が作品によりリアリティを生んでいます。

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【解説】映画『セプテンバー5』が問うジャーナリズムの自由と責任

『セプテンバー5』の主人公となっているのは、アメリカ「ABCスポーツ」のスポーツ中継クルーたち。実は結果的に彼らが世界で初めて、テロ事件の生中継を担うことになったのです。 本作の舞台はテロ現場ではなく、それを全世界に映し出す中継のコントロールルーム。そこで繰り広げられるクルーたちの混乱と葛藤がメインに描かれることにより、事件を客観的かつ俯瞰的に把握することに成功しています。そして、その後のテレビ中継にも多大な影響を与えることになる報道倫理の問題が提示されました。 それは、現代でも問題視され続けている「報道の自由と責任」や「報道される被害者の人権」を問うものでもあります。当時は全世界が目撃者となりましたが、現代ではSNSによって全世界が発信者にもなり得る時代。マスメディアに対して適正な倫理観を持つことの大切さを学ぶことができる作品ではないでしょうか。

映画『セプテンバー5』のキャスト

ピーター・サースガード

テレビプロデューサーのルーン・アーレッジを演じたのは、アメリカ出身の俳優ピーター・サースガード。雑誌編集長を演じた2003年の映画『ニュースの天才』では、全米映画批評家協会賞で助演男優賞を受賞しています。

ジョン・マガロ

「ABCスポーツ」チームの若きプロデューサー、ジェフリー・メイソンを演じたのは、アメリカ出身の俳優ジョン・マガロ。2023年の映画『パスト ライブス/再会』の出演で知られています。

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ベン・チャップリン

オペレーション・マネージャーのマービン・バッダーを演じたのは、イギリス出身の俳優ベン・チャップリン。『シン・レッド・ライン』(1998年)や『完全犯罪クラブ』(2002年)などの映画に出演しています。

映画『セプテンバー5』の監督

本作の監督・脚本を務めたのは、スイス出身の監督ティム・フェールバウム。いずれも終末世界を舞台にしたディストピアSF映画『HELL』(2012年)と『プロジェクト:ユリシーズ』(2022年)を、ローランド・エメリッヒ製作総指揮のもとで監督・脚本を務めています。

映画『セプテンバー5』のあらすじは実話がもとになっていた

平和の祭典オリンピックで起きた実際のテロ事件を基にしたヒューマンサスペンス『セプテンバー5』は、日本では2025年2月14日に公開。実話との違いも含め、ぜひ劇場で事件の行方を追ってみてください!