映画『ホウセンカ』のネタバレあらすじ&考察!声優キャスト一覧やアニメの原作を徹底解説
アニメ映画『ホウセンカ』あらすじ【ネタバレなし】

| 原題 | 『ホウセンカ』 |
|---|---|
| 監督 | 木下麦 |
| 原作・脚本 | 此元和津也 |
| 企画・制作 | CLAP |
| キャスト | 小林薫 , 戸塚純貴 , 満島ひかり , 宮崎美子 , ピエール瀧 |
予測不能なストーリーで大きな話題となった『オッドタクシー』の木下麦(監督・キャラクターデザイン)と此元和津也(脚本)が再びタッグを組んだ『ホウセンカ』。制作スタジオは『映画大好きポンポさん』(2021年)や『夏のトンネル、さよならの出口』(2022年)を手掛けたCLAP。 主人公の阿久津実役には小林薫を迎え、そのほか豪華キャストで贈る期待の新作です。
『ホウセンカ』のあらすじ解説
独房で孤独な死を迎えようとしている無期懲役囚・阿久津実(小林薫)。「ろくでもない人生だったな」とつぶやく彼に、人の言葉を操るホウセンカが話しかけてきます。阿久津は自らの過去を回顧しはじめました。 1987年、ヤクザだった阿久津は、愛する那奈と息子・健介との3人で暮らしていました。しかし、ある時息子の病気から大金が必要になります。阿久津は家族を守るため、兄貴分・堤と共に3億円の強奪計画に手を染めることになりますが……。
映画『ホウセンカ』を全編ネタバレ徹底解説
平穏に暮らす阿久津と那奈

無期懲役で服役中の阿久津は、死期が迫っていました。彼は「生まれたてと死ぬ間際の人としか話せない」ホウセンカに、自らの人生と「大逆転」について語り始めます。 1987年、ヤクザの阿久津実は那奈と、その連れ子である赤ん坊の健介とともに、庭にホウセンカが咲くアパートで暮らし始めます。 ヤクザという身分のため、阿久津は籍を入れず、愛を言葉にすることもありません。家族になりたい那奈は内心では寂しさを抱えていましたが、3人の日々は幸せに満ちていました。一方で、阿久津たちの幸せは、仕事と金をくれる兄貴分のヤクザ・堤の存在が常にありました。
阿久津は金のために堤と取引をすることに

息子・健介が4歳になった時、重い心臓疾患が見つかります。完治にはアメリカでの移植手術しか手段がなく、2億円という莫大な金が必要でした。 金策に困っていた阿久津に対し、兄貴分の堤が組の金庫から3億円を強奪する話を持ちかけます。家族を救うため、阿久津は、堤に「従うフリをしながら、逆に利用して大金を得る」という危険な賭けに出ることを決意。 強奪は成功し、2億円で健介の手術を終えます。さらに、堤を出し抜いて残りの大金を阿久津が隠したのです。阿久津は強奪事件の罪を被り、無期懲役で収監されました。
刑務所から暗号を送り続ける阿久津

収監された阿久津は、籍を入れていない那奈や健介との面会が許されません。さらに、堤が那奈たちの行方を追っているため、文通も簡単にはできませんでした。 阿久津に残された連絡手段は、郵便局が転送してくれる"1年間だけ"旧住所に手紙を出し続けること。手紙は刑務官による検閲を受け、怪しい言葉は黒塗りされます。 しかし、ここから阿久津の「大逆転」が始まりました。阿久津には「頭の中に方眼紙がある」という天才的な能力があり、能力を活かして正確な街の地図を制作します。そして、刑務所からの黒塗りされた手紙を組み合わせると、"隠し場所のヒント"が分かるよう細工していたのです。
阿久津の大逆転劇が終結

30年の時が流れ、老いた那奈は手紙の暗号を見つけ、家賃を払い続けていたアパートへ向かいました。 そこで病を患っていた那奈はホウセンカと話し、阿久津のもとに差し入れとして送ります。その後、那奈と成長した健介は大金と宝物を回収。堤もその動向をキャッチして部下に急いで捜索させますが、空振りに終わってしまいます。 獄中の阿久津はホウセンカからの伝言で「人生最後の賭けに勝利した」と悟りました。阿久津は大金とともに、似顔絵とあの頃言えなかった「愛している」という言葉を残して、静かに息を引き取りました。
【考察】阿久津の「大逆転」の本当の意味とは

阿久津が語った「大逆転」の意味は、2つの考察ができます。 最も分かりやすいのが、那奈へ「愛」を届けることに成功した、という「大逆転」です。ヤクザという立場から生前は愛を言葉にできず、籍も入れられなかった阿久津。刑務所から送り続けた暗号の手紙が、30年の時を経て開封され、那奈がその想いと遺産を受け取りました。 自らの命が尽きる間際に、ようやく伝えたかった愛の「証明」を成し遂げたことこそが、最大の「大逆転」であったと考えられます。 また、もう1つの考察としては、兄貴分・堤に「勝ち逃げ」したという大逆転もあったかもしれません。那奈の間に入ろうとする堤に対して、阿久津が一切関与できないトリックで大金のありかを託し、すべてを完遂させて亡くなったのです。
【考察】ホウセンカは阿久津の心の声?花言葉にも意味が

本作の鍵となるのは、「生まれたてか死ぬ間際の人しか聞けない」という、ホウセンカの声です。 この設定は、木下麦監督が過去に手掛けた『オッドタクシー』(2021)を思い起こさせます。主人公の「幻覚(視覚失認)」を物語の核心的な仕掛けとして用いたように、本作の「話す花」も単なるファンタジーではなく、死にゆく阿久津が聞く幻聴や、心のメタファーであるのかもしれません。 また、ホウセンカの花言葉には「私に触れないで」という意味があり、阿久津と那奈の関係性そのものを象徴しています。 しかし、ホウセンカは同時に「心を開く」という正反対の花言葉も持っています。死にゆく阿久津が愛を伝え、ついにその心を開いた、まさに阿久津の人生すべてが詰まった花が「ホウセンカ」だったのではないでしょうか。
映画『ホウセンカ』登場キャラ・声優キャスト一覧

阿久津実(現在)役:小林薫
本作の主人公・阿久津実は、独房に囚役されている無期懲役囚です。まもなく死を迎えようとしている彼は、あるときしゃべるホウセンカに話しかけられ、自らの過去を振り返ることに。 阿久津を演じるのは、『舟を編む』(2013年)や「深夜食堂」シリーズなどへの出演で知られる小林薫。アニメ声優としては『もののけ姫』(1997年)や『君たちはどう生きるか』(2023年)など、ジブリ作品に多く出演しています。
阿久津実(過去)役:戸塚純貴
キャラクターの詳細は明らかになっていませんが、若き日の阿久津を演じるのは戸塚純貴です。 2010年に第23回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで「理想の恋人賞」を受賞した戸塚は、翌年『花ざかりの君たちへ〜イケメン☆パラダイス〜2011』で俳優デビュー。2013年には『風切羽〜かざきりば〜』で、映画初主演を果たしました。
永田那奈(現在)役:宮崎美子
ヒロインと思われる永田那奈については、詳細は明らかになっていません。 演じるのは、数多くの映画やドラマで活躍している宮崎美子です。2018年の映画『未来のミライ』などでアニメ声優を経験しています。
永田那奈(過去)役:満島ひかり
若いころの永田那奈を演じるのは、満島ひかりです。 数多くの映画、ドラマ、舞台で活躍する満島は、映画『愛のむきだし』(2009年)や『ラストマイル』(2024年)などへの出演で知られています。『ONE PIECE FILM GOLD』(2016年)や『メアリと魔女の花』(2017年)などでアニメ声優を経験しています。
ホウセンカ役:ピエール瀧
阿久津と会話をくり広げる、しゃべるホウセンカ。その声を演じるのは、ピエール瀧です。 バンド「電気グルーヴ」のメンバーとして活動するかたわら俳優としても活躍しており、近年ではNetflixオリジナル映画『地面師たち』(2024年)などに出演しています。アニメ声優としては『アナと雪の女王』(2013年)の日本語版でオラフの声を担当しました。
映画『ホウセンカ』に原作はある?

映画『ホウセンカ』は、オリジナルアニメーションであり、原作となる漫画や小説はありません。 木下麦監督は、Febriのインタビューにて「原案自体は、僕がいくつか種のようなものを作って此元さんに提案して「これだったらやりやすい」というものを選んでもらい、そこからふたりでブレストして作っていきました」と、制作初期の流れを明かしています。
「オッドタクシー」木下麦×此元和津也のコンビが再結成

2021年にテレビ東京系列で放送された『オッドタクシー』。擬人化された動物たちの世界で、1話完結かと思われた各エピソードが最終的につながっていくミステリーです。 個性的なキャラクターデザインと見事な脚本が注目を集め、大きな話題になりました。2022年には、TVシリーズを再構成した映画版『オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』が公開されました。
監督:木下麦
監督を務めるのは『オッドタクシー』で監督デビューを果たし、注目を集めた木下麦です。 本作について「再び此元和津也さんと組ませて頂いて、完全新作オリジナルアニメーション映画を作っています」とコメント。今明かせることは少ないとしながらも「感覚の新しいアニメーションになると思います」と自信を覗かせています。
脚本:此元和津也
『ホウセンカ』の脚本を担当したのは、『オッドタクシー』でも木下監督とタッグを組んだ此元和津也です。 漫画家としても『セトウツミ』(2013年〜2017年)などの代表作で知られ、脚本家としては2019年の『ブラック校則』などでも知られています。
映画『ホウセンカ』の見どころ解説

本作の見所は、阿久津が那奈に向ける不器用な愛情です。ヤクザ映画でありながら、2人が過ごす家族の時間はどのどかで、日常の些細な幸せに満ちていました。 しかし、穏やかな描写とは対照的に、堤の冷淡な行動や強盗計画といったヤクザとしての非情な側面も描かれます。この「日常」と「非情」が同居するアンバランスさが、観客に不思議な感情を抱かせます。 さらに、独特な世界観を決定づけているのが、喋る花「ホウセンカ」という唯一無二のキャラクターの存在。ミステリー要素も巧みに絡み合い、本作ならではの「たまらない空気感」を生み出しています。
映画『ホウセンカ』は伏線回収がすごすぎる大逆転物語

『オッドタクシー』制作コンビが再タッグを組む『ホウセンカ』は、2025年10月10日公開です! 主人公・阿久津のあまりにも不器用な愛、そしてホウセンカに語った人生最後の「大逆転」とは何を意味するのか。切なくも温かい愛の物語の結末を、ぜひ劇場で見届けてください。
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