ドラマ『シナントロープ』制作秘話!龍ちゃん×久ちゃんに聞く【遠藤雄弥×アフロ】
毎週月曜23時6分からテレビ東京で放送中のドラマ『シナントロープ』。『オッドタクシー』の此元和津也さんが脚本を手がけ、緻密に張り巡らされた伏線と巧みな会話劇が話題を集め、大きな反響を呼んでいます。 なかでも異彩を放ち、視聴者の心をつかんでいるのが、闇の組織〈バーミン〉に所属する“りゅうちゃん”こと龍二と、“きゅうちゃん”こと久太郎のコンビ。闇組織の一員でありながら、どこか肩の力が抜けるやり取りと、息の合った掛け合いで人気が急上昇中です。 そんなりゅうちゃん・きゅうちゃんを演じる遠藤雄弥さん、アフロさんにインタビューを実施。『シナントロープ』制作の裏話をたっぷり伺いました。 ※インタビュー取材の模様を収めた動画コンテンツを、YouTubeのciatr/1Screenチャンネルで公開中!
タップできる目次
- ドラマ『シナントロープ』作品概要・あらすじ
- 【脚本を読んでの感想】龍二×久太郎のコンビを成立させるために不可欠だった遠慮なくぶつかり合える関係性
- 【初対面の印象】普段からりゅうちゃん、きゅうちゃんと呼び合う仲に
- 【撮影秘話】龍二(遠藤雄弥)が撮影前にアツい決意表明?!久太郎をいかに輝かせられるかが自分の仕事
- 【森田想(睦実役)との共演について】『辰巳』『アイスと雨音』に続く再演
- 【バーミンのボス・折田と対峙して】染谷将太の圧倒的存在感とプレッシャー!変な汗が出るほどの恐怖を感じた
- 【久太郎 vs 折田】撮影チーム全体で作り上げた静寂とクライマックスの名シーン
- 【シナントロープメンバーとの撮影秘話】坂東龍汰はキバタンそのままの明るさ?
- 【オリジナルのラップを制作?】きっかけは塚田役・高橋侃のあるエピソード?
- 【オリジナルラップの制作秘話】リリックで知った龍二の本当の気持ち?
- 【『シナントロープ』キャラに自分を例えると?】ふたりは久太郎×久太郎?
- 【アーティストとして演じることへの向き合い方】台詞を発することへの違和感はあるのか?
ドラマ『シナントロープ』作品概要・あらすじ
アニメ「オッドタクシー」で緻密な伏線構成と巧みな会話劇を生み出した脚本家・此元和津也が、原作・脚本として完全オリジナルストーリーを書き下ろしたミステリードラマ。監督を務めるのは、映画「もっと超越した所へ。」やドラマ「忘却のサチコ」ほか、多彩な映像作品を手掛ける山岸聖太。 キャストには、水上恒司(都成剣之介)、山田杏奈(水町ことみ)をはじめ、坂東龍汰(木場幹太)、影山優佳(里見奈々)、望月歩(田丸哲也)、鳴海唯(室田環那)、萩原護(志沢匠)、高橋侃(塚田竜馬)ら、シナントロープの個性豊かな面々が揃う。さらに、謎の組織<バーミン>のメンバーとして染谷将太、遠藤雄弥、アフロ、森田想が出演。 現代の若者たちのリアルな心情と、不穏で魅惑的な世界観が交錯する中、緻密な伏線と会話劇で紡がれる青春群像ミステリーが描かれる。
『シナントロープ』あらすじ

舞台は、街角に佇む小さなバーガーショップ“シナントロープ”。そこで働く8人の若者のひとり、大学生の都成剣之介は、同僚の水町ことみに密かな想いを寄せていた。 しかしある日、店で不可解な強盗事件が発生し、穏やかだった日常は徐々に歪み始める。恋愛と友情、絆と裏切り、運命と選択──揺れ動く感情と関係性が次々と事件を呼び込み、真実と虚構が絡み合う中、都成の想いの行き着く先に待つものとは一体何なのか。
【脚本を読んでの感想】龍二×久太郎のコンビを成立させるために不可欠だった遠慮なくぶつかり合える関係性

Q. 『オッドタクシー』などで知られる此元和津也さんの脚本を最初に読まれた時の感想をお聞かせください。 遠藤さん 久太郎も龍二もそうなんですけど、たくさんの魅力的なキャラクターが登場していて、今の時代を生きる若者たちにも共感してもらえるような、本当に見どころの多い脚本だなと感じました。 そして何より、セリフがとても多くて戦々恐々としていました。最初は「これ、覚えれるかな?」っていう気持ちもありましたね。 アフロさん セリフが本当にたくさんあって、まずそれが嬉しかったです。「こんなにいっぱい、自分が表現できる場所を作ってもらえたんだ」と思って。 同時に、最初から最後まで読んだ時に「りゅうちゃん(龍二)とのコンビネーションが本当に肝になってくるな」と感じたんです。だからこそ、なるべく早く「何でも遠慮なくぶつけ合える関係にならなくちゃいけない」と思いました。
『オッドタクシー』を鑑賞した感想

Q. 此元和津也さんの代表作『オッドタクシー』をご覧になった感想について 遠藤さん 面白かったですよね。今までに観たことない、ありそうでなかったような世界観で。すごい人気あるしね『オッドタクシー』。 アフロさん あと音楽的にもヒップホップのアーティストが関わったりしていたので。そういった意味でもすごい気になって観ていました。
【初対面の印象】普段からりゅうちゃん、きゅうちゃんと呼び合う仲に

Q. おふたりは初共演ということですが、初対面の印象と、撮影を通して変化した印象をそれぞれお聞かせください。 遠藤さん 初対面の印象はそうですね……「アフロさんは笑顔が素敵な青年だな」って思いました(笑)。 アフロさん 青年だった?(笑) 遠藤さん どこか“青年感”があったんですよね。実際には年齢はそんなに変わらないんですけど。 久太郎と龍二は、沖縄から上京した幼馴染という大きなキャラクターの幹があって、すぐに全部を剥き出しにしてぶつかり合える関係性が必要でした。 そんな中、衣装合わせの後に「ちょっと一回飲みに行こう、ご飯行こう」と誘ってくれて、彼が助け舟を出してくれたように感じたんです。幼馴染を演じる上で、僕自身も絶対にそういう時間が必要だったので、そのきっかけを作ってくれたアフロくんには本当に感謝しています。 そのおかげで、きゅうちゃんとりゅうちゃんの関係性、そしてこのコンビネーションをしっかり築き上げることができたと思っています。本当に、めちゃめちゃ感謝しています。

アフロさん ――その感謝を、いま受け取っているところです(笑)。 まったく謙遜せず「俺のファインプレーだったな(笑)」と……でも違うんですよね。本当は、けっこう照れるんですよ。いきなりご飯に誘うって、やっぱり恥ずかしいし、「そういうタイプの相手じゃなかったらどうしよう?」って迷いもあって。 自分はミュージシャンなので、正直に言えば「演技に関しては素人」という自覚があるんです。これは大事な感覚だと思っているので捨てたくないんですが、一方で、ドキュメンタリーの要素や“リアルさ”の力を借りないと、ずっとキャリアを積んできた俳優さんと真正面から向き合えない──そんな気持ちもありました。 だからこそ、その日のうちに「遠藤さん、“りゅうちゃん”って呼んでいい?」って聞いたんですよね。心の中の自分は耳が真っ赤でした。恥ずかしくて、「これ、むちゃくちゃダサいことなんじゃないか?」って思いながら(笑)。 役者の世界の常識は分からないし、「役名で呼び合うことって、実はすごく照れくさいことなのかな?」とも思ったんですけど……でも、そんなこと言っていられないと思って。「一回ご飯食べに行こう」「役名(りゅうちゃん)で呼んでもいい?」という提案を全部受け入れて、付き合ってくれた遠藤さんには本当に感謝しています。 快く受け入れてくれたのがすごく心強かったし、助かりました。
【撮影秘話】龍二(遠藤雄弥)が撮影前にアツい決意表明?!久太郎をいかに輝かせられるかが自分の仕事

Q. きゅうちゃんとりゅうちゃんの関係性を創り上げる上で、撮影で意識されたことをお聞かせください。 遠藤さん 今回、セリフ量がとにかく多かった上に、ふたりで成立させるシーンが本当にたくさんありました。そこで、アフロが「撮影前にふたりでセリフ合わせをしてから現場に入ろう」と言ってくれたんです。 そのおかげで、ドラマの現場には、ふたりで稽古をしてある程度お芝居を固め、セリフをきちんと「ふたりの息が合う状態」で臨む、ということを毎回やっていました。

アフロさん 本当にふたりでカラオケボックスでよく練習したよね。その時もりゅうちゃん、きゅうちゃんと役名で呼び合っていて。しかも実際にカラオケでの撮影シーンもあったじゃん。 遠藤さん あった(笑) アフロさん だから不思議な気持ちになったよね。「場所は変われど、同じDAMチャンネルだ」みたいな(笑)。 そうやって地続きでつながっていく感じがあって、俺が願っていた“ドキュメントの力”を作品に借りられている気がしました。それがすごく良かったです。 それから衣装合わせの初日に、りゅうちゃんが俺の出ている場面の中でもすごく正念場になるシーンについてスタッフ全員の前で 「このシーンが本当にこの作品の肝だと思う。いかに輝かせられるかが、自分の仕事だと思います」と言ったんですよね。 もう武士でしたね。すごいなと思いました。自分の“おいしさ”じゃなくて、「作品が良くなるためにはこれが一番いい」ということを、はっきりと言葉にできる。その献身的な姿勢が本当にすごいと思いました。 遠藤さん あそこは本当に印象に残るシーンだからね。絶対に外せない。だからこそ、良いとか悪いとかじゃなくて、「ここはもう俺の龍二が頑張らないと」と、すごく思いましたね。
【森田想(睦実役)との共演について】『辰巳』『アイスと雨音』に続く再演

Q. 遠藤さんは『辰巳』で森田想さんと共演されていましたが、再演された感想をお聞かせください。
遠藤さん 『辰巳』では彼女が相棒役だったので、どこか変な感じもするというか……。きゅうちゃんはきゅうちゃんで、想ちゃんと別作品で共演していたり、なんだか“みんな知り合いで、みんな友達”みたいな空気が心地よかったですね。

改めて、森田想さんはどっしりしているなと感じました。今回の睦美は、本当に素敵で、『辰巳』の葵というキャラクターとはまったく違う「想ちゃんにしか演じられない睦美」を表現していたと思います。僕らがいないところでの睦美のシーンをこれから観るのが楽しみですね。

Q.アフロさんは『アイスと雨音』(2017)で森田想さんと共演されていましたが再演された感想をお聞かせください。
アフロさん 僕は森田想の“公式お兄ちゃん”って名乗っているんですね。向こう(森田さん)は別に認めてないんですけど、こっちでは一応公式ということになっていて(笑)。 なので、彼女の出演作は基本的に全部チェックしているんですが、その度に「すごい奴だな」と思います。一個向こうまで振り切っていくというか、『辰巳』の時もそうでした。 だから今回、俺たちと一緒に演じたシーン以外で、彼女がどんなふうに力を発揮しているのか──それを観るのも本当に楽しみです。
【バーミンのボス・折田と対峙して】染谷将太の圧倒的存在感とプレッシャー!変な汗が出るほどの恐怖を感じた

Q. 染谷将太さん演じる、裏組織「バーミン」のボス・折田と対峙された際の印象をお聞かせください。
気づいたら龍二としてしか、その場にいられなくなる感覚に

遠藤さん 染谷とは3、4作品ぐらい一緒にやっていて、今回もまた共演できたんですが──あの小屋のシーン。あれが、僕らが初めて染谷演じる折田と絡むお芝居だったんですよ。 その時、改めて「(染谷)すげえなあ」と思ったし、気づいたら“龍二としてしかそこにいられなくなる”感覚がありました。 きゅうちゃんは関係性的に折田と思想がすこし違う部分もあるけど、龍二はさ、その板挟みになりつつも「折田の言うことに忠誠を誓ってやんなきゃ」みたいな気持ちでいるわけで。そうすると変な汗が出てくるんですよ。怖くて。「(染谷)すごいな」って。

アフロさん それは役としての龍二が汗をかかせてるの? 遠藤さん もっと奥まで行ってるかもしれない。俳優としても圧倒されてるところがあったかもしれない。役と表現者としてのプレッシャーが両方来て「うわぁ」みたいな。だから本当に、染谷すごいなって改めて思った。これは想ちゃんに対しても同じだけど……そんな折田でしたね。
「自分の言葉」でステージに立ち続けてきた17年、その誇りを胸に現場に挑む
遠藤さん どう対峙してみて? 今回(染谷将太さんは)「はじめまして」でしょ? アフロさん 今回、はじめましてで。でもほら、年が俺の方が上だから。 遠藤さん 「あいつ後輩だから」じゃないよ(笑)。 アフロさん 俺はそういうところでどうにか自分を奮い立たせてたんだよ。 遠藤さん いいんだよ、今、野球部発揮しなくて(笑)。 アフロさん 作品も観てるし、彼が出てる素晴らしい作品がいっぱいあるのも知っていて、役者としてのキャリアも素晴らしい、表現者として本当にすごい人だって分かってる。ただ、「俺の方が年は上なんだ!」 その細い背骨でどうにか立ち向かってますよ。「俺の方が人生長く生きてんだ」っていうのでね(笑)。そんなことを思いつつ、でもやっぱり「嬉しいな」という気持ちがありました。 俺は、俳優としての技術的な意味で言えば、もちろんりゅうちゃん(遠藤さん)にも敵わないし、想にも染谷にも、全然足元にも及ばない。 でも17年間、自分の言葉でステージに立って表現してきた──その部分だけは自分で誇りを持っているので、「その部分で太刀打ちできることがあるんじゃないか」と思って臨みました。
【久太郎 vs 折田】撮影チーム全体で作り上げた静寂とクライマックスの名シーン

Q. クライマックスに、きゅうちゃんと折田の印象的なシーンがありますが、そのシーンの撮影秘話をお聞かせください。 **アフロさん あのシーンは、静けさがちゃんとあって、すごくよかったですね。きっと……もっと経験があったり、技術のある人だったら、スタートのタイミングでスイッチがパチンと入るのが“本物のプロ”なのかなと勝手に思っているんですけど、俺はやっぱりそうじゃなくて。 少しずつ、その場の空気だったり、染谷の表情だったり、いろんなものを汲み取りながら、カチンコが鳴る前の時間も使って、時間をかけて作っていく。 久太郎にとっての正念場でもあったので、それを撮影チームも察してくれて、現場がすごく静かだったんです。まさに“チームが一つになっている瞬間”というか。 「俺のためにやってくれてるんだな」っていうのが、ひしひしと感じられて、すごく嬉しかったです。
【シナントロープメンバーとの撮影秘話】坂東龍汰はキバタンそのままの明るさ?

Q. その他、シナントロープのメンバーとの撮影で印象的だったエピソードをお聞かせください。 遠藤さん

坂東龍汰(木場役)くん、面白かった。今回がはじめましてだったんですけど、勝手にアンニュイなイメージを抱いていて、物静かで繊細なタイプなのかなと思っていたんです。 でも実際に話してみたら、僕もカメラが好きで、彼もカメラが好きで。さらにちょっと共通の先輩がいたりして、その話を振ったら「イエーイ!」みたいな感じで、めちゃくちゃ明るかった。すごくいい子で、楽しい時間が流れていました。

ただ、今回の役ではあまり絡めなかったんだよね。シナントロープメンバーで僕らが絡んだのは、水上くん(都成役)、志沢役の 萩原くんと……。 アフロさん

俺は冒頭の乗り込むシーンがあるから、大体みんなと(撮影していて)。 遠藤さん 待合室とかでご挨拶して、人となりを知る。それがすごく楽しかったですね。坂東くんと高橋侃くん(塚田役)は、とにかく明るかったですね。
【オリジナルのラップを制作?】きっかけは塚田役・高橋侃のあるエピソード?

アフロさん 高橋侃が元々美容師をやっていたという話を聞いて、実は俺も美容師免許を持っているんですよ。俺が持っている唯一のギャップがそれなんですけど。あとは、イメージ通りのハンバーグ好きなんですけどね(笑)。 そんな共通点から話していた時に、彼が言った言葉ですごく印象に残ったものがあって。「美容師を一回区切って俳優をやるようになって、一番嬉しいことは、美容師を“特技として差し出せるようになったこと”」と話してくれたんです。 例えば現場でエキストラさんが多くてヘアメイクさんが足りなかったら、少し手伝えたり、友達の髪を切ってあげたり。そういう風に「お金を介さずに自分の技術を差し出せるのが嬉しい」と。 その話を聞いて、「確かに自分が一番得意なことって、本来そういうもんだったな」と思ったんです。お金を払ってでもやらせてほしいぐらいの、“好き”や“特技”。 じゃあこの現場で俺が差し出せる特技って何だろうと考えた時に、「ラップかもしれないな」と思って、「一緒に曲作ろうぜ」なんて誘ったんです。 別に何か大きく貢献できてるわけじゃないんですけど、俺が久太郎になりきってリリックを書いて、りゅうちゃんは、りゅうちゃんで龍二になってリリックを書いて、1曲作ったんですよ。 それを作ることで、俺たち自身の役への理解が深まったり、「内輪でこんなん作ったんすよ」ってチームに聴かせることで「前のめりだな」という姿勢が少しでも伝わればいいな、なんて思いながら。 基本は楽しく作っていたんですけど、侃からもらった言葉や姿勢は、すごくそのリリックの中にも、俺たちの空気にも内包されている気がして、いい時間だったなと思います。
【オリジナルラップの制作秘話】リリックで知った龍二の本当の気持ち?
アフロさん 制作したラップがすごいよかったんですよ。その中で俺が、「え! りゅうちゃんそんなこと思ってたの?」みたいなリリックが出てくるんですよね。 それを見た時に、俺がLINEで「りゅうちゃん、こんなこと思ってんの?」って聞いたら。「いや、俺はそう思ってやってるよ」って言われて。 それが嬉しくて、きゅうちゃんとしても「そうなんだ!」ってなったんです。沖縄に帰る、帰らないの話がfふたりの間にあるんですけど、俺(久太郎)は「帰ろう」って言っている一方で、りゅうちゃんは「いや、もうちょっと折田と働く。だから先に帰ってて」っていう立場なんです。 その時、「沖縄に帰りたいと思っているのって、きゅうちゃんだけなんだな」「そういうすれ違いなのか」と思っていたんですけど。 (リリックで)りゅうちゃんが「いや、帰りたい気持ちはもちろんあるよ。現実として生きていく上で、折田と仕事をする選択をしているんだ」と。 俺はその気持ちを、ラップのリリックで初めて知ったんですよ。「そうだったんだ!」って。てっきり(龍二は)沖縄に未練がなくて「東京にずっといるつもりなのかな?」と思っていたから。 遠藤さん いや、帰りたいでしょう(笑)。 アフロさん そのリリックを見た時に、俺は「なんか嬉しいよ」と思って。それもきっと役作りというか、お互いの役の理解にすごく力になったと思います。
【『シナントロープ』キャラに自分を例えると?】ふたりは久太郎×久太郎?

Q.シナントロープメンバーで、ご自身に近いキャラクターは誰になりますか? アフロさん (遠藤さんは)キュウちゃんじゃない? 遠藤さん 俺、そんな忘れっぽい? アフロさん 忘れっぽいっていうか、明るさ! 遠藤さん 俺、明るいかな? アフロさん だから俺たちはきゅうちゃんときゅうちゃんだよ。 もちろん(遠藤さんは)龍二も内包していると思うけれど、“きゅうちゃん感”はあるのかもしれない。ずっと全方位に気を配っていて、本当にすごかったですね。 今日も、エキストラさんが段取りを少し間違えて注意された後に、それを見かねて「美味しく食べてくださいね」ってフォローを入れていたりして。「こいつは気がつく男だよ。」 遠藤さん いやいや、冷静に見ているなよ(笑)。 アフロさん: すごい奴だなと思いました。でも、段々どの現場に行ってもさ、どうしても年齢が上がってくるでしょう。「年齢じゃない」と言いつつ、やっぱり年長者に気を遣うみたいな風潮はどこかにあって。 自分たちが不機嫌だと、その影響がどんどん大きくなっていくのは常々感じていて、そんな話もよくしていたんですよ。 だから常に機嫌良くいるっていうのが、年長者のマナーなんだろうなって、すごく思って。りゅうちゃんを見ていても、それを徹底してるから本当にすごいなと思います。 そういう意味では、坂東くんなんかも若くしてずっとムードメーカーをやっていて、かっこいいなと思ったし。もちろん、みんなが一生懸命取り組んでいる中での話ですけどね。
【アーティストとして演じることへの向き合い方】台詞を発することへの違和感はあるのか?

Q.これまでアフロさんはアーティストとして嘘のない言葉をダイレクトに伝えてこられました。演技で人の言葉を借りて、台詞を発することに違和感を感じられたことはありますか? アフロさん 本当の言葉っていうのは、本当の気持ちを言うために“嘘”を言う時もあります。音楽でもより“本当”を伝えるためにフィクションの力を借りることはよくあって。 核心の部分には全く嘘がないんだけど、そこに到達するまでの道筋を、現実に起きた通りじゃなくても、“より分かりやすく、より色濃く、みんなが思い描ける形”で描いた方がいい時がある。だから音楽でやっていることが全部本当で、全部現実かというと、そういうわけではないです。 その前提があった上で読み解くと、どの台詞も単体ではなく、全部が脈々とつながっている。だから、ある台詞が正直しっくりこなくても“その先にある気持ちの終着点”が自分の中でしっくりきていれば、その言葉は自然とスムーズに出てきます。今までずっとそうで、これまで役を演じる中でそこがズレたことはありませんでした。
取材・文:増田慎吾