2026年9月20日更新

『我々は宇宙人』門脇康平監督に聞く生涯ベスト映画―「映画を観て抱く感情のすべてが詰まった」1本とは?

このページにはプロモーションが含まれています

2026年9月25日(金)より全国公開される長編アニメーション映画『我々は宇宙人』で、企画・脚本・監督を務めた門脇康平監督。YOASOBI『優しい彗星』のMVなどを手がけてきた映像作家で、本作では自身の幼少期の記憶や感覚を起点に、実写とアニメーションの境界を行き来する独自の映像表現に挑んでいます。 今回ciatr編集部では、そんな門脇監督に「映画」をテーマにインタビューを実施。幼い頃の映画体験から、高校時代に進路を決定づけた一本、映画館で作品を観る際の座席へのこだわりまで、映画との関わりをたっぷり伺いました。 さらに、門脇監督が「人生を形づくった」と語る生涯ベスト映画3本も紹介。それぞれの作品との出会いや心に残り続けている理由を通して、現在の創作につながるルーツに迫ります。 ※インタビューの模様を収録した動画コンテンツを、YouTubeのciatr/1Screenチャンネルで公開中です。

映画『我々は宇宙人』作品概要

公開2026年9月25日(金) 全国劇場公開
企画・監督・脚本門脇康平
声の出演坂東龍汰 , 岡山天音 , 山﨑天(櫻坂46) , 松井ケムリ , 槙木悠人 , 中込佑玖 , 鈴木咲 , 末永陽
音楽Yaffle
主題歌adieu「ささくれ」(作詞・作曲:Yaffle)
企画・製作・制作NOTHING NEW
配給TOHO NEXT・NOTHING NEW
出品第79回カンヌ国際映画祭 監督週間/アヌシー国際アニメーション映画祭2026 長編コンペティション部門
公式サイト公式サイトはこちら

2022年に“才能が潰されない世の中”を目指して誕生した映画レーベル・NOTHING NEWによる初の長編アニメーション映画『我々は宇宙人』。 第79回カンヌ国際映画祭監督週間でワールドプレミア上映され、アヌシー国際アニメーション映画祭2026の長編コンペティション部門にも選出されるなど、公開前から注目を集めていました。 企画・脚本・監督を務めるのは、YOASOBI「優しい彗星」などを手がけてきた門脇康平監督。写実的な映像表現と緻密な世界観で、内気な青年・翼と人気者の暁太郎をめぐる物語を描きます。音楽はYaffle、主題歌はadieu「ささくれ」。声の出演には坂東龍汰、岡山天音、山﨑天(櫻坂46)、松井ケムリ(令和ロマン)らが名を連ねます。

あらすじ

我々は宇宙人
©NOTHING NEW, MIYU PRODUCTIONS

「ピーピロリロリロ。地球での極秘任務完了。宇宙へ帰還します!」 平成のある田舎町内気で“普通”であることに悩む少年・翼は、小学3年生の春、クラスの人気者で“特別”な存在の暁太郎と出会い、親友になる。ふたりだけの遊び、意味のない会話、夕暮れの帰り道-世界は確かに、彼らのものだった。 しかしある日を境に、暁太郎はクラスの中で浮いた存在となり、噂や視線が彼を囲んでいくやがて起こる、取り返しのつかない事件。 「もしもさ、俺が宇宙人だったらどうする?」 これはふたりの青春物語なのか それとも消したい記憶なのか。30年にわたる友情を描いた、かぎりなく青い旅立ちの物語――

門脇康平監督プロフィール

門脇康平は、映画監督・アニメーション作家。東京藝術大学デザイン学科卒業後、アニメーション制作会社に就職し、その後独立。舞台映像やCM、プロダクトPVなどの制作を経て、ミュージックビデオを中心に活動するアニメーション作家となる。 YOASOBI「優しい彗星」のMVをはじめ、NHK「みんなのうた」のアニメーション映像、中国アニメ『時光代理人 -LINK CLICK-』第2期EDなどを手がけ、『映像作家100人』には2021年、2022年に選出された。 2026年には劇場長編アニメーション『我々は宇宙人』で企画・脚本・監督を担当。同作は第79回カンヌ国際映画祭「監督週間」に正式出品され、ワールドプレミア上映された。 さらにアヌシー国際アニメーション映画祭2026、オタワ国際アニメーション映画祭2026の長編コンペティション部門、ニュージーランド国際映画祭2026などに選出され、国内外から注目を集めている。

門脇康平監督が選ぶ生涯ベスト映画3選

生涯ベスト映画①『ドラえもん おばあちゃんの思い出』(2000)

門脇  1本目は、『ドラえもん』の劇場版と同時上映されていた、30分くらいの短編映画「おばあちゃんの思い出」です。 この作品を観返したときに、まさに「こういうものを作りたいから、自分は絵を描いているんだ」と思ったんですよね。 フィクションの中だったら、もう会えないおばあちゃんにも会うことができる。現実では見られないものを見せてもらえる、その感動ってすごいなと思って。 一枚絵とは違って、映像って時間の流れの中で観るものじゃないですか。タイムスリップを描くにしても、そこには時間の経過が必要になる。「おばあちゃんの思い出」を観たときの感動を、一枚の絵だけで表現するのは難しいんじゃないかと思ったんです。 そこで、「絵じゃなくてアニメだったらできる」と気づいて。見えないものを見せたり、見たいけれど見られないものを形にしたりする。映画やアニメの魅力が、そのまま詰まっている作品だなと高校生の頃に思いました。今でも大好きな作品です。

『ドラえもん おばあちゃんの思い出』作品概要

2000年に公開された短編アニメーション映画。『映画ドラえもん のび太の太陽王伝説』の同時上映作品として劇場公開されました。原作は、藤子・F・不二雄による同名の短編漫画。 3歳のときに亡くなった大好きなおばあちゃんに会うため、のび太がタイムマシンで幼い頃へと戻る物語。もう二度と会えないはずの人に、もう一度会いに行くという切実な願いを、ドラえもんならではのSF設定を通して温かく描いています。家族への愛情や別れの寂しさ、そして思い出の大切さが凝縮された一編として、シリーズの中でも長く愛され続けている作品です。

生涯ベスト映画②『ターミネーター2』(1991)

ターミネーター2
©1991 – STUDIOCANAL – Tous Droits Reserves

門脇  2本目は、すごく悩んだんですけど、『ターミネーター2』です。 自分が初めて「かっこいい」と思った男って、もしかしたら『ターミネーター2』のアーノルド・シュワルツェネッガーだったんじゃないかなと思っていて。とにかく、ものすごく憧れていました。 「おばあちゃんの思い出」とは全然違うんですけど、憧れていた期間がすごく長かったし、その気持ちもすごく強かったという意味で、今でもかなり心に残っている作品です。 「こんなふうに強くなりたい」と本気で思っていましたし、誕生日プレゼントに『ターミネーター2』のフィギュアをもらったりして。本当に憧れの存在でしたね。

ターミネーター3
TM © 2003 IMF3

Q. 「ターミネーター」シリーズで、「2」以外にお好きな作品はありますか。 門脇  世間的な評価は必ずしも高くないかもしれないんですけど、『ターミネーター3』がすごく好きですね。特にラストがすごく好きですし、墓地みたいな場所で、明るい時間帯に戦うシーンもよい。トイレを壊しながら1対1で戦うところも、画としてすごくかっこいいなと思っていました。 その後のシリーズ作品も一応すべて劇場で観ているんですけど、好きな順で言うと、やっぱり「2」と「3」ですね。

『ターミネーター2』作品概要

ジェームズ・キャメロン監督による1991年公開のアメリカ映画。1984年公開の『ターミネーター』の続編にあたります。 未来から送り込まれた新型ターミネーター・T-1000から少年ジョン・コナーを守るため、前作では敵だったT-800(アーノルド・シュワルツェネッガー)が今度は味方として現れるという、鮮烈な構図の反転も大きな見どころ。 液体金属で自在に姿を変えるT-1000の表現には当時最先端のCG技術が用いられ、映画の映像表現に大きなインパクトを与えました。第64回アカデミー賞では、視覚効果賞、メイクアップ賞、音響賞、音響効果編集賞の4部門を受賞しています。

生涯ベスト映画③『天空の城ラピュタ』(1986)

天空の城ラピュタ

門脇  やっぱり、ジブリは避けては通れないですね。『天空の城ラピュタ』は、「ここに強烈に憧れた」という一つのポイントがあるというより、映画を観て抱くような感情が全部詰まっている作品だと思っています。 楽しいし、苦しいし、幸せな気持ちにもなるし、憧れもある。それに「こういうものを作りたい」とも思わせてくれる。そういう感情が全部入っている感じがする。ジブリ作品の中で一番好きな作品は何かと聞かれたら、自分は迷わず「ラピュタ」と答えると思います。

『天空の城ラピュタ』パズー、ドーラ

小さい頃に特に好きだったのは、ドーラたちが木造の線路みたいなところを進んでいって、後ろから線路をどんどん壊しながらパズーたちを追いかけるシーンです。 当時はアニメがどうやって作られているのかなんて全然知らなかったんですけど、「絵がすごい!」と思って。兄弟と一緒にゲラゲラ笑いながら、「めちゃくちゃ壊れてる!」って大喜びで観ていましたね。

『天空の城ラピュタ』作品概要

宮崎駿監督が1986年に発表した、スタジオジブリ初の長編アニメーション映画。 空から降ってきた少女シータと、鉱山で働く少年パズーが、伝説の浮遊都市ラピュタを目指して冒険を繰り広げます。飛行石をめぐり、軍や空中海賊ドーラ一家に追われながら、やがてふたりは壮大な空の旅へ。 音楽は久石譲が担当。空を駆ける高揚感あふれる冒険と、滅びゆく文明への郷愁をあわせ持つ世界観は、現在まで多くの人に愛され続けています。

【映画の原体験】父親の隣で観た、80年代のアメリカ映画

「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2
© 1989 Universal City Studios,Inc. All Rights Reserved.

Q. 門脇監督の映画の原体験についてお聞かせください。 門脇  おそらく自分の一番古い映画の記憶は、アニメより先に実写映画なんですよね。父親が観ていた映画を、横で一緒に観ていました。 本当に父親の趣味がそのまま出ているんですけど、『ターミネーター』や『ロッキー』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』みたいな80年代のアメリカ映画や『タイタニック』だったり。ジャッキー・チェンやブルース・リーの作品もかなり観ていました。 当時は内容を全部理解していたわけではないと思うんですけど、とにかく実写映画をたくさん観ていて。振り返ると、それが自分にとっての映画の原体験だったのかなと思います。 その後、もう少し大きくなってから劇場でジブリ作品を観た記憶もありますが、一番最初の入り口は、意外と実写映画でした。

【監督を志したきっかけ】「これが自分の作りたかったものかもしれない」と気づかせたのは『ドラえもん』の映画

Q. 映画監督を目指したきっかけについてお聞かせください。 門脇  高校1年生の頃に友達と、「昔観たドラえもん映画を観返そう」みたいな会をやったことがあって。そのときに、子供の頃に観ていた『ドラえもん』の映画を改めて見返したんです。 子供の頃って、たぶん自分が好きな場面ばかり観ていたと思うんですけど、高校生になるとストーリーや作品全体の流れもちゃんと追えるようになるじゃないですか。 そうやって改めて観たときに、「これが自分の作りたかったものなのかもしれない」と思ったんです。 それまではずっと画家を目指していたんですけど、そこで初めて、「自分がやりたいのは絵を描くことそのものではなくて、アニメ映画を作ることなのかもしれない」と、はっきり思ったのを覚えています。

【映画の鑑賞ペース】年間200本から30本へ 制作中に変わった観方

Q. 映画を観る頻度と作品を選ぶ基準についてお聞かせください。 門脇  映画の制作に入ってから、鑑賞ペースはかなり変わりましたね。以前は年間150本から200本くらい観ていました。制作中はとにかく時間がなくて、年間30本くらいで終わってしまった年もありました。 それまでは、勉強の意味も半分あって作品を選んでいたんですけど、忙しくなってからは「せっかく観るなら、ちゃんと満足できるものを観たい」と思うようになって。評判のいい作品や、その時期に特に面白いと言われている作品の中から、まだ観ていなかったものを選ぶことが増えました。去年は特に、そういう観方をしていましたね。 今年になって作品が完成したので、最近はようやく少しずつペースを取り戻してきています。 ジャンルでいうと、韓国ノワール映画はすごく好きですし、フランス映画もよく観ます。もちろん邦画も好きですし、基本的にはかなり幅広く観ていますね。

【最近印象に残った1本】『モンスターズ・インク』の完成度に衝撃を受けた

モンスターズ・インク
© Disney/Pixar

Q. 最近ご覧になって印象に残った作品についてお聞かせください。 門脇  最近だと、『モンスターズ・インク』を今年初めて観ました。ずっと有名な作品だとは知っていたんですけど、これまで観たことがなくて。

映画 我々は宇宙人
©NOTHING NEW, MIYU PRODUCTIONS

実際に観てみたら、あまりにも完成度が高くて、すごく面白かったんですよね。「これを作れるなら、『我々は宇宙人』を作る前に観ておきたかったな」と思うくらい、最近観た作品の中では特に印象に残っています。 演出が面白くて。キャラクターのシルエットが演出上のキーになっていたり、全体のリズム感だったり。世界観の作り込みや、その中での整合性も含めて、本当に全部よくできているなと思いました。 最近は、有名なタイトルなのに自分がまだ観ていない作品を、なるべくなくしていこうと思っていて。つい最近だと『ジョン・ウィック』も、1作も観たことがなかったので、先週まとめて観ましたね。

【劇場での鑑賞習慣】ブログまで調べてベストポジションへ

Q. 座席のこだわりや、劇場での映画の鑑賞習慣についてお聞かせください。 門脇  座席は、できる限り“本当のど真ん中”を調べます。 チケットを買うときに表示される座席図の真ん中ではなくて、実際にそのシアターで観た人が「座ってみると、この席が本当の中央だった」とブログなどに書いていたりするんですよね。 それを調べて、「座席図では17番が真ん中に見えるけど、実際は18番のほうが中央らしい」みたいなところまで確認して、なるべくど真ん中を取るようにしています。音もたぶん中央が一番きれいに聞こえるように設計されていると思うので、基本的には真ん中を狙いますね。

映画『我々は宇宙人』は2026年9月25日より公開

我々は宇宙人
©NOTHING NEW, MIYU PRODUCTIONS

Q. 最後に、視聴者に向けてのメッセージをお願いします。 門脇  『我々は宇宙人』は、自分の5年間を捧げた作品ですし、スタッフも本当にたくさんの時間をこの作品に注いでくれました。アニメーターやプロデューサーをはじめ、たくさんの人が長い時間をかけて作り上げた作品なので、ぜひ劇場で集中して観てもらえたらうれしいです。 音にもかなりこだわっていますし、画面の細かいところにも、「これ持ってたな」とか「これ知ってる」と思えるものがたくさん散りばめられています。よく見ると、隅のほうをダンゴムシが歩いていたりもして。 とにかく発見に満ちた作品になっているので、ぜひ大きなスクリーンといい音響で楽しんでほしいです。

▼取材・文:増田慎吾