2018年12月7日更新

俳優ライアン・ゴズリングの軌跡と、出演映画が名作ぞろいの理由

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幼い頃の演技体験によって救われ、真面目に誠実に"演じること"に徹する俳優ライアン・ゴズリング。この記事では幼少期〜最新作『ファースト・マン』までの彼の軌跡を辿りつつ、彼の演技への姿勢と、出演映画が名作揃いである理由を紐解いていきます。

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真面目で誠実な俳優、ライアン・ゴズリング出演の映画が名作揃い!

幼い頃の演技体験によって救われ、真面目に誠実に"演じること"に徹する俳優ライアン・ゴズリング。『ラ・ラ・ランド』や『ブレードランナー2049』での活躍が記憶に新しいですが、このほかにも『ラブ・アゲイン』や『ドライヴ』そして『きみに読む物語』などなど、ひとつの型にはまらない幅広いジャンルの作品に出演しているだけでなく、そのどれもが名作揃いであることも特徴的です。 この記事では彼の軌跡を辿りつつ、彼の演技への姿勢と、出演映画が名作揃いである理由を紐解いていきます。

少年ライアン・ゴズリングの"俳優"としての原体験

「子どもでいることが大嫌い」だった

ライアン・トーマス・ゴズリングは1980年11月12日、カナダのオンタリオ州にあるロンドンという街に生まれました。巡回セールスマンの父、秘書をしていた母、パフォーマーとしても活動していた姉の4人家族の末っ子として育ちます。 俳優を志したきっかけは、スーパーマンやバットマンに並ぶアメコミヒーローのひとりである刑事、ディック・トレイシーの活躍を描いた映画『ディック・トレイシー』。1945年〜1947年にかけて4本もの実写映画が制作された人気作です。 幼年のゴズリングはそれは落ち着きのない子どもだったらしく、4歳の時には『ランボー』(1982)に影響を受けすぎて、周りにいた子どもたちにステーキナイフを投げつけるという仰天のエピソードがあるほど。 The Guardianによるインタビューで彼は「ぼくは子どもでいることが大嫌いだったんだ。言われた通りにやること、自分の体、すべてが嫌いだった。子どもでいることや子どもらしく振る舞うなんてことは、ぼくの気を狂わせたよ」と語っています。 そうした感情を内に秘めていた彼の姿は、周囲にとっては落ち着きのない少年にしか見えなかったのかもしれません。

演じることが唯一の救いだった

子どもでいることが大嫌いだったライアン・ゴズリングの少年時代のあだ名は"トラブル"。失読症でもあった彼は周囲に馴染めず、小学校時代にはいじめにも遭い、ケンカばかりでした。ついにはADHD(注意欠陥・多動性障害)の診断まで下され、特殊学級に入れられたこともあったといいます。 これを受けて彼の母は仕事を辞め、ホームスクーリングを施すことに。ホームスクーリングのかたわら、映画を観たり、チェット・ベイカーやビリー・ホリデイを聴いたりして1年を過ごしました。この経験についてライアン・ゴズリングは、同じくThe Guardianによるインタビューで「決して自分を見失わない、自立性のような感覚を培うことができた」と語っています。 一般的とは言えないようなこうした幼少期の中で、彼の救いとなったのは"演じること"でした。パフォーマーとして活動していた彼の姉に誘われて人前で歌を歌ったり演技をしたりした経験は、少年の彼にとって唯一の「周囲に褒められること」だったのです。 演じることで、彼は少しずつ自分に自信をつけていきました。

子役時代〜映画俳優になることを決意するまで

1993年、当時12歳だったライアン・ゴズリングはディズニー・チャンネルの番組『ミッキーマウス・クラブ』でジャスティン・ティンバーレイクやブリトニー・スピアーズ、クリスティーナ・アギレラなどと共演。子役としていくつかの番組へ出演を重ねていきます。 『フランケンシュタインと僕』(1996)でスクリーンデビューを果たしたこともあり、17歳のときには高校を中退して演技の仕事に打ち込んでいきました。テレビ番組への出演が主な仕事だった中で、やがて少しずつキャラクターの造形に時間をかけたり、様々な役柄を演じたいと思うようになり「テレビ番組への出演はやめて、映画俳優として生きていこう」と決断したといいます。

傑作スポーツ映画『タイタンズを忘れない』に助演

ライアン・ゴズリングのキャリアにとっては、子役から本格俳優へと移行する架け橋的な作品となったのが『タイタンズを忘れない』(2000)です。「真面目な演技」を軸にしようという決意を胸に映画俳優の道を歩み始めたものの、安定した仕事がなかった時に得ることができたのが本作の役でした。 『タイタンズを忘れない』は1971年に起きた実話をもとに製作された映画です。時代は黒人の公民権運動直後、まだまだ差別意識が残っていた頃のこと。ヴァージニア州立高校にできた、白人黒人混合のアメフト・チームが舞台です。 若きライアン・ゴズリングはアメフト部員の1人、試合中にわざと手を抜いて黒人クォーター・バックに怪我をさせ、退部させられるアラン・ボズレイという青年の役を演じました。 この作品を機に、彼は様々なインディーズ系の映画に出演していきます。

『ザ・ビリーバー (原題)』で映画初主演を飾る

2001年、ライアン・ゴズリングは映画『ザ・ビリーバー (原題)』で初主演を飾ります。ある若き青年が強烈な反ユダヤ主義思想を抱きながらも、自身がユダヤ人であることの矛盾に苦しむ姿が描かれた作品で、ライアン・ゴズリングの演技は高く評価されました。 センシティブな内容のストーリーだったこともあり、本作は劇場公開には至らず、商業的には失敗となってしまいます。しかしながらライアン・ゴズリング本人にとっては、後に自分で語ったように「その後のキャリアを包んでプレゼントしてくれた作品」となったのでした。

サイコスリラー映画『完全犯罪クラブ』でサンドラ・ブロックと共演

続く2002年、ライアン・ゴズリングは映画『完全犯罪クラブ』でサンドラ・ブロックと共演し、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(2001)で名を馳せたマイケル・ピットとともに完全犯罪を目論む高校生を演じました。 本作は小規模ではありながらも成功を収め、ライアン・ゴズリングの演技は「こんなクズの役でも並外れた才能を見せている」などと評されました。

豪華な俳優陣のなかに参加した『16歳の合衆国』

ライアン・ゴズリングのキャリアの大きな足掛かりになった作品のひとつが、『16歳の合衆国』(2003)です。 本作は父親役で出演しているケヴィン・スペイシーが製作にも関わっているためか、母親役にレナ・オリン、カウンセラー役にドン・チードル、後に『ブルー・バレンタイン』(2010)でゴズリングと共演するミシェル・ウィリアムズなど、豪華な俳優陣が敷かれています。 ライアン・ゴズリングが演じるのは16歳の繊細な少年で、恋人の弟であり知的障害を抱えていた男の子を刺し殺してしまう、という悲劇的な行動を起こす人物。 支離滅裂な感情を振り回すような、難しいキャラクターを見事に演じきったことによりゴズリングは高く評価されました。

ライアン・ゴズリングの代名詞的作品『きみに読む物語』

若き男女の美しき純愛ストーリーが描かれた『きみに読む物語』はライアン・ゴズリングの代名詞的作品のひとつであり、言わずと知れた名作映画のひとつであると言えます。 1940年のアメリカ南部シーブルックを舞台にした、ライアン・ゴズリング演じるノアとレイチェル・マクアダムス演じるアリーのラブストーリー。どんな障害が立ちふさがろうともアリーのことを想い続けるノアの純愛に心揺さぶられます。 「映画史上最高のキスシーン」とも評された作品ですが、撮影中、主演のライアン・ゴズリングとレイチェル・マクアダムスは全く仲良くなれず、常にけしかけ合うような間柄だったのだとか。とは言いつつ、撮影後にふたりは恋仲になったというなんとも奇妙な後日談も有名です。

ジャンキーの教師役でアカデミーにノミネート『ハーフネルソン』

『きみに読む物語』に続くライアン・ゴズリングの代表作となったのが『ハーフネルソン』(2006)。薬物中毒の中学校教師と、ドラッグの売人を兄に持つ女子学生との奇妙な友情が招く悲劇を描いた作品で、批評家からも高い支持を得ました。 ライアン・ゴズリングは本作の役作りのためにニューヨークのブルックリンに移り住み、中学2年生を担当する教師の生活をひたすら真似る(シャドーウィングする)ことで、役へと入り込んでいきました。アカデミー賞の主演男優賞にもノミネートされた彼の演技は、「催眠術のような、人物への深い理解を見せている」「偉大な演技に関心を寄せる人は、彼の演技を見逃すことはできない」などと評されています。 終始静かに展開されるストーリーの中で、ライアン・ゴズリングの繊細な演技が楽しめる一本です。

ラブドールに本気の恋をする。『ラースと、その彼女』

ライアン・ゴズリングが次に演じたのは、『ラースと、その彼女』の主人公で、小さな田舎町に住む心優しい青年ラース。シャイな性格のせいで女性と話すことも苦手な人物です。 ビアンカと名付けられたラブドールと本気の恋に落ちる純粋無垢な青年と、そんな彼を優しく見守る街の人々の様子を描いた温かなストーリーは好評を博し、アカデミー賞の脚本賞にもノミネート。ライアン・ゴズリングの演技も、ゴールデン・グローブ賞の主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネートされています。 切ない後味の残るラストが印象的なラブコメディ映画です。

ミシェル・ウィリアムズとの共演作『ブルーバレンタイン』

2007年から3年もの間、大作への出演から遠ざかっていたライアン・ゴズリングは、2010年に映画『ブルーバレンタイン』でミシェル・ウィリアムズと共演。主演のふたりの演技は例に漏れず好評で、ふたりともゴールデン・グローブ賞の主演男優・女優賞(ドラマ部門)にノミネートされています。 本作はあるカップルが恋に落ち、愛し合い、そして別れるまでを描いたストーリー。時系列に沿って物語が進むのではなく、幸せだった過去と冷めきった今の対比がなされているので、振り幅の大きい脚本が特徴です。美しく儚いエンドロールは必見。 本作を皮切りに、ライアン・ゴズリングは連続してたくさんの映画に出演していきます。

3年間の空白ができたのはなぜ?

『ブルーバレンタイン』に至るまでの3年間、ライアン・ゴズリングはなぜ映画の出演から遠ざかっていたのか。具体的な理由ははっきりとは語られていませんが、きっかけとなったのは2009年公開の映画『ラブリーボーン』からの降板でした。それは2007年、本作の撮影開始のわずか2日前での出来事です。 2010年のThe Hollywood Reporterによるインタビューの中で、彼は以下のように語っています。 「撮影開始の前の段階で、ぼくらはもっと話し合うべきだったんだ。それができなかったのが大きな問題だった。大作だったし、対処しないといけないこともたくさんあったせいで、彼(監督のピーター・ジャクソン)は俳優たちと個別に打ち合わせることができなかった」 「そしてぼくは与えられていた役柄(娘を無残に殺された父親)は100キロ近くあるような男だと思っていたから、老けて見えるように27キロも増やして思い切り太って、ヒゲもたくわえた。だけどそれは監督の求めるものではなくて、ぼくは役を降りることになった」 当初、ライアン・ゴズリングはピーター・ジャクソン監督とプロデューサーのフラン・ウォルシュの元を2、3回訪れ、「この役はぼくには若すぎます。適任ではありません」と訴えたそう。しかしふたりは「大丈夫、大丈夫だよ、ちゃんと君を老けたように見せられる。髪だって薄くできるよ」と説得したといいます。 そしてこの降板を経て、彼は「自分のエゴなんか出すべきではないという重要なことを悟った。役柄より自分の年齢が若くても構わないんだ」と語り、マーク・ウォールバーグが役を引き継いだことについても「彼が引き継いでくれたことで良い映画になったと思う」と語りました。 大作への出演がなかった3年間、役作りで太った体を引き締めるということはもちろん、いかに演じることに徹するべきなのかということを深く考える時間が、彼には必要だったのかもしれません。

初のコメディリリーフでも才能を発揮!『ラブ・アゲイン』

妻に浮気され離婚した中年の男が若いプレイボーイと出会ったことでモテ男へと変わっていくラブコメ映画『ラブ・アゲイン』(2011)で、ライアン・ゴズリングは初のコメディリリーフを演じました。 後にColliderによるインタビューで語ったところによると、ライアン・ゴズリングは次々と女性を丸め込んで落としてみせるプレイボーイを演じるために、ロサンゼルスにある「Varnish」というバーで開かれたカクテル教室に通ったのだとか。 そのかいあってか、本作の演技で今度はゴールデン・グローブ賞の主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネートされました。 『ラブ・アゲイン』はただのサクセスストーリーでは終わらず、終盤には登場人物の様々な思いが交錯するのも印象的。ライアン・ゴズリングのハンサムな姿に憧れる人も多いことでしょう。観終わったあとは、スニーカーを履くのにためらうこと請け合いです。

初のアクション演技を見せたのが、映画『ドライヴ』

2010年から2011年にかけてライアン・ゴズリングは5本の映画に出演しており、『ラブ・アゲイン』で初めてコミカルな演技を見せたあと、本作『ドライヴ』(2011)では初のアクション演技を見せました。 ライアン・ゴズリングが演じたのは、昼はスタントマンと自動車の整備士、夜は強盗犯の逃走専門のドライバーという2つの顔を持った男。ハードボイルドな一面と、アパートの住人と恋に落ちるロマンチックな一面の両方を観ることができる作品です。 『ドライヴ』はカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞するなど大きな成功を収め、監督を務めたニコラス・ウィンディング・レフンの名を一躍世界に知らしめることとなりました。

『スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜』では野心的な政界人に

『スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜』(2011)は、「オーシャンズ」シリーズなどで知られる俳優ジョージ・クルーニーが監督を務めた作品。ライアン・ゴズリングは、文字通り泥沼のような政治界の闇に巻き込まれていく選挙コンサルタントを演じ、またもやゴールデン・グローブ賞主演男優賞(ドラマ部門)にノミネート!同年公開の『ラブ・アゲイン』とともに、映画界を大いに賑わせる活躍ぶりを見せました。 2010年から2011年にかけてのこの大活躍ぶりについては、ライアン・ゴズリング自身も「これ以上ないほど活力に溢れているよ。これまでよりももっと、映画づくりに興奮しているんだ」とThe New York Timesによるインタビューで語っています。彼の溢れる才能と活力が見事な相乗効果を見せた1年でした。

『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』で長年の夢を叶える

『アメリカン・スナイパー』のブラッドリー・クーパーや、『ワイルド・スピードX2』のエヴァ・メンデスと共演し、哀愁ある"血筋の因果"を描いた『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』。ライアン・ゴズリングとエヴァ・メンデスとの交際・結婚のきっかけとなった作品です。 本作は『ブルーバレンタイン』のデレク・シアンフランス監督と再びタッグを組んだ映画で、ライアン・ゴズリングは家族を養うために銀行強盗に手を出してしまうバイク・スタントマンを演じました。彼にとって「人生最高の映画制作経験」にもなった一本でもあります。 その理由は「長年の夢を叶えることができた」からでした。

ライアン・ゴズリングの長年の夢はまさかの"銀行強盗"!

デレク・シアンフランス監督がVanity Fairに語ったところによると、監督は『ブルーバレンタイン』の時点で本作の脚本執筆が進んでいたといいます。そしてライアン・ゴズリングらとの食事の席で「君はまだ若いけど、これまでたくさんの経験をしてきたよね。やりたいと思っていることの中で、まだできていないことって何があるんだい?」と聞いてみると、彼の答えは「ずっと銀行強盗をしてみたいと思っていた」と言うのです。 すでに頭の中に構想があった監督は、そのまま面白がって計画内容を訪ねてみると、ライアン・ゴズリングはまさしく監督が考えていた方法とほぼ変わらない計画を語ったのです。 「ライアン、嘘だろう?それこそまさにぼくらが考えていた脚本そのものだよ。刑務所に入らなくて済む方法で、君の夢を叶えよう」 そうしてこの映画は完成したのでした。

『L.A. ギャング ストーリー』でエマ・ストーンと再共演

1940年代のL.Aを支配する巨悪のギャングに挑む6人の警察官の物語を描く『L.A. ギャング ストーリー』(2013)。『ゾンビランド』(2009)で一躍名を馳せ、2018年には『ヴェノム』を監督することになるルーベン・フライシャーによるクライム映画です。 ショーン・ペンやジョシュ・ブローリン、エマ・ストーンという、実に才能あふれるキャストが共演した一本。ライアン・ゴズリングは熱い正義感と冷静な頭脳を持つ警察官ジェリー・ウーターズ役を演じました。 ジョシュ・ブローリン、エマ・ストーンも参加したColliderによるインタビューの中で、ライアン・ゴズリングはエマ・ストーンとの再共演についてこのように語っています。 「『ラブ・アゲイン』ではバカップルを一緒にやったから、また一緒に仕事できるのは楽しみだった。だけどストーリー上、ぼくらはシリアスになる必要があってね。ハンフリー・ボガート(『カサブランカ』などで有名な俳優)みたいにやろうとしたんだけど、逆に難しくなっちゃったよ」 『ラブ・アゲイン』に続いて本作でも恋人役を演じた2人の良い関係性が伺えますね。こうして絆を深めていった彼らは、後に『ラ・ラ・ランド』で世界中を魅了することになります。

全世界賛否両論の衝撃!『オンリー・ゴッド』で復讐の鬼と化す

『オンリー・ゴッド』(2013)は『ドライヴ』のニコラス・ウィンディング・レフン監督と再びタッグを組んだ、タイのバンコクが舞台の犯罪サスペンス映画。ボクシング・クラブを運営する裏で、実は麻薬密売組織を運営している寡黙な男が殺された兄の復讐に乗り出す……というストーリーで、主演を務めたライアン・ゴズリングは役作りのためにムエタイのトレーニングを積んだといいます。 ライアン・ゴズリング本人も「これまで読んだ中で最も奇妙な脚本」と語るほど衝撃的な展開が繰り出された本作。カンヌのプレス上映会ではスタンディングオベーションとブーイングという、両極端の評価が飛び交いました。レフン監督特有の画面構成が賞讃されるのに対し、暴力描写に対して拒否反応を示す観客がいたようです。

休業と、リーマンショックを皮肉に描いた傑作『マネー・ショート 華麗なる大逆転』での復帰

2013年の初頭に「自分が何をしているのか見失ってしまった。少し休んで、なぜ、どのようにして演技をしているのかをもう一度考えるべきだと感じている。そしてたぶん、それが演技を学ぶためにも良い方法だと思う。思っている以上に、ぼくはぼく自身を休む必要があるんだ」と語り、ライアン・ゴズリングはメディアを通じて俳優業の一時休業を発表しました。 俳優として復帰を果たすのはリーマンショックの真実を皮肉に描いた傑作『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2015)です。彼はこの間に、『ロスト・リバー』という作品で監督・脚本・製作を務めますが、映画は思うようには振わず、酷評がつきまとう結果となっています。 初監督作がヒットしなかったのは残念ではありますが、おそらくこれは彼にとっての「演技と向き合う」「演技を学ぶ」という作業のひとつだったのでしょう。「ぼくはぼく自身を休む必要がある」という言葉通り、彼は"俳優・ライアン・ゴズリング"を休みながら、そんな自分の演技を客観視していたのかもしれません。

しかして"俳優・ライアン・ゴズリング"がスクリーンに帰ってくることになった『マネー・ショート 華麗なる大逆転』は見事大ヒットを記録し、アカデミー賞の作品賞にもノミネートされました。 ブラッド・ピット、クリスチャン・ベール、スティーブ・カレル、ライアン・ゴズリング演じる4人の男たちは、いかにしてサブプライム住宅ローン危機の中で巨額の利益を上げたのか?本作はバブル崩壊の兆しをいち早く見抜き、世紀の大逆転を成し遂げていく様を皮肉に描き切った物語です。

『ナイスガイズ!』ではアル中の駄目パパ私立探偵に

復帰を果たした翌2016年、ライアン・ゴズリングはアクション・コメディ映画『ナイスガイズ!』でラッセル・クロウとW主演を務めます。 アル中の私立探偵マーチが、示談屋ヒーリーによって強引にコンビを組まされ、ある失踪事件を捜査していくと、事件は国家レベルの陰謀にまで発展していく……という筋書きの本作。 アル中の駄目パパ私立探偵を演じたライアン・ゴズリングの、数年ぶりのコミカルな演技が味わい深い一本です。まるで『名探偵コナン』の毛利小五郎のような、情けないオヤジぶりに注目!

新たなミュージカル映画の傑作『ラ・ラ・ランド』で世界を魅了!

アカデミー授賞式でも話題になったミュージカル映画です。往年のミュージカル映画オタクである、デイミアン・チャゼル監督が長年温めていた作品で、『セッション』(2014)の興行的成功を受け製作されました。アカデミー賞史上最多14ノミネートのうち、監督賞など6部門を受賞した……というだけでなく、作品賞の発表の際のハプニングも込みで、歴史に残る一本と言えますね。 ライアン・ゴズリングは自分の店をもつことを夢見るジャズ・ピアニストのセブ役で、この映画のためにタップダンスとピアノを猛練習。劇中の演奏シーンはすべて自分で演奏してみせるという役者魂を見せています。 ヒロイン役のエマ・ストーンもライアン・ゴズリングもミュージカル俳優ではないため、ダンスシーンには苦労したようですが、その仕上がりが見事であることは世界の評価が証明していると言えるでしょう。

「ライアンなしの人生なんて考えられない」

『ラ・ラ・ランド』で3度目の共演を果たしたライアン・ゴズリングとエマ・ストーン。エマ・ストーンは前回の共演作『L.A.ギャング ストーリー』の際、Colliderによるインタビューで「ライアンさえ良ければ、またいろんな映画で一緒に仕事がしたい」と話し、『ラ・ラ・ランド』の共演後には「ライアンなしの人生なんて考えられない」とまで語っています。 さらに彼女は「彼は素晴らしい人であり、素晴らしい俳優でもあって、私にとって特別な存在なの。もちろんずっとただの友達だけどね。ほんとうの優しさを教えてくれた人よ」とベタ褒め。 ライアン・ゴズリング自身も、エマ・ストーンが本作のヒロインを務めると聞いてセブの役に飛びついたとまで言われており、ふたりの絆の深さが伝わってきます。『ラ・ラ・ランド』が世界を魅了した秘密は、ここにも隠されているのでしょう。

裏切りと誘惑のラブストーリー『ソング・トゥ・ソング (原題)』

鬼才テレンス・マリックがメガホンをとった、音楽業界の内実を描いた作品です。マイケル・ファスベンダーとライアン・ゴズリングのW主演。 作曲家のBV(ライアン・ゴズリング)とフェイ(ルーニー・マーラ)、大物プロデューサーのクック(マイケル・ファスベンダー)とウェイトレス(ナタリー・ポートマン)という2組のカップルが織りなす、裏切りと誘惑のラブストーリーです。 『ラ・ラ・ランド』(2016)でジャズピアニストを演じた経験を活かしてか、ライアン・ゴズリングがシンガーソングライターのリッキー・リーとキーボードを弾きながらデュエットをするシーンがあります。 パティ・スミス、イギー・ポップ、ジョン・ライドンなどのミュージシャンもカメオ出演。「難解だ」という意見がある反面、監督であるマリックの特徴でもある映像美は高く評価されています。

傑作SF映画の待望の続編『ブレードランナー2049』でも主演を務める

リドリー・スコット監督のSF映画『ブレードランナー』(1982)の続編。監督は『メッセージ』(2016)のドゥニ・ヴィルヌーヴで、フィリップ・K・ディックの『電気羊はアンドロイドの夢を見るか?』を基に、ハンプトン・ファンチャーが脚本を書きました。 『ブレードランナー2049』は前作の30年後のロサンゼルスが舞台となり、新人ブレードランナーのKが社会を揺るがす危機に直面して、前作のラストから忽然と姿を消していたデッカードに協力を仰ごうと捜索をはじめる……という筋書き。 本作は「長い時間をかけて、世界中に熱烈なファンを醸成してきた傑作映画の続編」として大きな期待とプレッシャーがかかっていました。しかし、実に見事に正当な続編としての物語が描かれたことで、好評を博す結果となっています。 中でもその映像美はとくに高い評価を集め、アカデミー賞で見事撮影賞と視覚効果賞を受賞。ライアン・ゴズリングの演技は大きな映画賞にノミネートされていませんが、感情が見えにくい中に温かい心の存在を確かに感じさせる彼の演技は、しっかりと高く評価されています。 「2017年はまさしくライアン・ゴズリングの年であった」と言っても過言ではないでしょう。

最新主演作『ファースト・マン』では人類初の月面歩行者に!

今や誰もが知る名優のひとり、となりつつあるライアン・ゴズリングは映画『ファースト・マン』で『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督と再びタッグを組みます。『ラ・ラ・ランド』コンビ再び!と言われるだけあって、非常に注目を集めている一本。 本作が描くのは、人類史上初めて月面に立ち、「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」という名言を残した英雄ニール・アームストロングを中心とした、NASAの宇宙ミッションの物語。 いつでも"演じること"に徹してきたライアン・ゴズリングは人類史に残る英雄をどのように演じてみせるのか。そして新時代を代表する映画監督デイミアン・チャゼルは彼の物語をどのように描くのか。 2019年最大の注目作のひとつ、『ファースト・マン』は2019年2月8日全国公開です。

ライアン・ゴズリングの魅力は、真面目に誠実に"演技"に向き合う姿勢

ライアン・ゴズリング
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ライアン・ゴズリングの演技が光り続けている理由。それは真面目に誠実に"演技"に向き合う彼の姿勢にあります。彼にとって演じることは、幼心にただ一つの自信を与えてくれた救いだったのです。 そんな彼の姿勢に共鳴するように、多くの映画が、クリエイターたちが彼を導いたのではないでしょうか。これからの映画界を担う俳優のひとりであるライアン・ゴズリングの今後の活躍を、これからも世界中が楽しみにしていることでしょう。