2017年8月7日更新

ネタバレ注意!『ラ・ラ・ランド』名場面とオマージュ映画を徹底比較&解説!

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弱冠32歳のデイミアン・チャゼル監督にアカデミー賞監督賞をもたらした、ジャズへの愛があふれるミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』。そこにはチャゼル監督の映画愛もオマージュという形で表されていました。オマージュされた作品と比較して、名場面もプレイバックしていきます!

映画『ラ・ラ・ランド』でオマージュされた作品を比較解説!デイミアン・チャゼル監督の映画愛がすごい!

デイミアン・チャゼル監督が『ラ・ラ・ランド』で表現したかったのは、芸術に対する理想と現実、伝統と革新、そしてそのどちらをも愛でるということではなかったでしょうか。 この作品には往年の名作ハリウッド・ミュージカルはもちろん、チャゼル監督が愛してやまないフランス映画の名シーンもオマージュという形で登場しています。 古き良き時代から現代をつなぐ名作たちを、『ラ・ラ・ランド』でオマージュされた名場面とともに比較解説していきます。ミュージカル映画の名曲にも注目してご覧ください!

『シェルブールの雨傘』(1964)

『ラ・ラ・ランド』はよく、『ロシュフォールの恋人たち』の冒頭オマージュから始まり『シェルブールの雨傘』のラストで終わると比較されていますが、確かにこの2作品の影響は大きいようです。 特に『シェルブールの雨傘』のオマージュは、作品全体の雰囲気と悲恋のストーリーに見ることができます。また、『ラ・ラ・ランド』の主テーマ「ミアとセバスチャンのテーマ」や主題歌「シティ・オブ・スターズ」は、メランコリーな主題歌「シェルブールの雨傘」を彷彿とさせます。 最後には別れが待っている『シェルブールの雨傘』のメロドラマ的展開のオマージュは、『ラ・ラ・ランド』のアンニュイな部分を担っているようですね。

『雨に唄えば』(1952)

「ア・ラヴリー・ナイト(A Lovely Night)」/「雨に唄えば(Singin' In The Rain)」

ミアとセブがパーティを抜け出して、車を探しながら坂道を歩いて行くシーンで歌い出す「ア・ラヴリー・ナイト」。 セブが歌いながら街灯をつかんで回る場面は、『雨に唄えば』でジーン・ケリーが「雨に唄えば」を歌っているタップシーンのオマージュ。街灯の模様もそっくりです! 『雨に唄えば』では雨の中、傘も差さないで踊っていますが、『ラ・ラ・ランド』では綺麗に晴れた晩で、雨の少ないLAらしい演出です。

「エピローグ(Epilogue)」/「ブロードウェイ・メロディ(Broadway Melody)」

ラストシーンを彩る『ラ・ラ・ランド』一番の見どころの「エピローグ」には、数々のオマージュが隠されています。 その中でも『雨に唄えば』からの「ブロードウェイ・メロディ」のシーンは、とてもきらびやかで印象深いシークエンスです。同じく終盤に登場するシーンで、主人公ドンの妄想を表現しています。 明るい原色の衣装に身を包んだ群衆たちが躍る中で、主人公が妄想するという点はそのまま!本作では「エピローグ」に歌詞が付いていないので歌ってはいませんが、主人公が人の流れを進んでいく様子も似ています。 『雨に唄えば』はブロードウェイ、『ラ・ラ・ランド』はハリウッドのキラキラ感がこれでもかとグイグイやって来る、終盤にふさわしいシーンでした。

『ロシュフォールの恋人たち』(1967)

「アナザー・デイ・オブ・サン(Another Day of Sun)」/「キャラバンの到着(Arrivée des camionneurs)」

『シェルブールの雨傘』の名コンビ、ジャック・ドゥミ監督とミシェル・ルグランの音楽で製作されたフレンチ・ミュージカル映画『ロシュフォールの恋人たち』。 オマージュされたのは冒頭のシーンで、車から降りてきたキャラバン隊の人々が躍り出すシークエンスです。『ラ・ラ・ランド』の冒頭では、ハイウェイで渋滞する車から人々が次々降りて踊り出します。 冒頭シーンのカラッとした明るさは、港町を舞台にした『ロシュフォールの恋人たち』と晴天のLAから始まる『ラ・ラ・ランド』の最大の共通点です。

『ブロードウェイ・メロディ』(1929)

「エピローグ(Epilogue)」/「ビギン・ザ・ビギン(Begin the Beguine)」

『ブロードウェイ・メロディ』は1929年に製作されたアメリカのミュージカル映画で、MGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)が配給したミュージカル第1作目を飾った作品です。 この作品からオマージュされたシーンは、エレノア・パウエルとフレッド・アステアが星空をバックにしたステージで「ビギン・ザ・ビギン」を踊るタップダンスでした。さすがにこんな華麗で軽やかなタップを真似することなんてできません! 『ラ・ラ・ランド』では「エピローグ」シークエンスの中で、セブとミアが星空をバックにワルツを踊っています。「プラネタリウム」のシーンでも星空の中に浮かんでワルツを踊った二人なので、ラストでもワルツを踊るのが自然な流れかもしれませんね。

『ムーラン・ルージュ』(2001)

「プラネタリウム(Planetarium)」/「僕の歌は君の歌(Your Song)」

ユアン・マクレガーとニコール・キッドマンが主演したミュージカル映画『ムーラン・ルージュ』では、二人が雲の上に浮かんでエルトン・ジョンの「僕の歌は君の歌」を歌いながら踊るシーンが有名です。 このファンタジックなシーンをオマージュしたのが、「プラネタリウム」のシーンです。『ムーラン・ルージュ』のクリスチャンとサティーンのように、セブとミアが心を通わせていく最も美しいシーンと言っても過言ではありません! ユアン・マクレガーとニコール・キッドマンが生歌とダンスを吹き替えなしで披露した『ムーラン・ルージュ』同様、自身の歌と踊りで勝負したライアン・ゴズリングとエマ・ストーンの熱演も話題になりました。

『眠れる森の美女』(1959)

「プラネタリウム(Planetarium)」/「いつか夢で(Once Upon a Dream)」

『ムーラン・ルージュ』と同じく「プラネタリウム」の星空のシーンでオマージュされたのは、ディズニーアニメの『眠れる森の美女』からラストのダンスシーンです。 「いつか夢で」もワルツ調の曲で、よくよく聴けば「プラネタリウム」もディズニー映画で使用されてもおかしくないファンタジックな仕上がりです。 『眠れる森の美女』ではオーロラ姫とフィリップ王子がラストシーンで、雲の上で踊りながらエンディングを迎えます。セブとミアが星空に昇ってシルエットになった場面が、まるでディズニー映画のようです。

『パリの恋人』(1957)

オードリー・ヘプバーンとフレッド・アステアが共演したフランスを舞台にしたミュージカル映画『パリの恋人』には、凱旋門前で色とりどりのバルーンを飛ばすシーンがありました。 『パリの恋人』はあまりにも美しいヘプバーンと、おしゃれすぎる映像美に感嘆してしまう作品です。『ラ・ラ・ランド』には、この凱旋門のバルーンをオマージュしたシーンがあります。 「エピローグ」に登場する凱旋門の前では、パリに撮影に来たミアが化粧を施されています。そして『パリの恋人』でヘプバーンが持っていたような色とりどりのバルーンを持たされていました。

『踊る大紐育』(1949)

「エピローグ(Epilogue)」/「ニューヨーク・ニューヨーク(New York, New York)」

MGMミュージカル映画『踊る大紐育』は、3人の水兵たちのニューヨークでの恋と冒険を描いた作品です。水兵役をジーン・ケリー、フランク・シナトラ、ジュールス・マンシンが演じています。 レナード・バーンスタインが作曲した名曲「ニューヨーク・ニューヨーク」で始まる冒頭シーンは、これからの24時間の上陸に心躍らせる水兵たちの心境をよく表した名場面です。 『ラ・ラ・ランド』では「エピローグ」に水兵が登場しています。ミアとセブがパリのセーヌ川を歩いて行くシーンですね。 そう言えば『ロシュフォールの恋人たち』の冒頭シーンでも水兵たちが踊り、作中にもたくさん登場しています。こちらの影響も大きかったのかもしれません。

『怒りのキューバ』(1964)

キューバ映画『怒りのキューバ』から、水中撮影の方法がオマージュされています。『怒りのキューバ』はアメリカの資本主義支配下にあったキューバと、キューバ革命について描いた作品です。 革命前の人々の暮らしには格差があり、貧しい農民や夜の街の女を描く一方、ビルの屋上でパーティするブルジョワ階級の人々も映し出しています。パーティでプールに飛び込む女性をワンショットで水中まで追ったシーンが、『ラ・ラ・ランド』でも夜のパーティシーンで再現されています。 1997年のアメリカ映画『ブギーナイツ』でも、このプールでの水中撮影方法が使用されており、チャゼル監督はそのどちらの作品も観ていてオマージュを捧げているのかが気になるところです。

『巴里のアメリカ人』(1951)

『巴里のアメリカ人』はジーン・ケリーの代表作の1つで、MGMミュージカル全盛期に製作された傑作です。パリを舞台にした悲恋物語で、ジーン・ケリーがアメリカ人画家ジェリーを、レスリー・キャロンがフランス人女性リズを演じています。 恋人のいるリズに告白した後のジェリーが妄想するシーンに登場するパリの街並みは、まるで絵画のようなタッチで描かれた背景。『ラ・ラ・ランド』でそれをオマージュしているのが、「エピローグ」でミアとセブが歩いて行くセーヌ川の背景です。 なぜこのシーンだけ絵画のように描かれているのか不思議でしたが、『巴里のアメリカ人』のオマージュということなら納得です!

『グリース』(1978)

「サムワン・イン・ザ・クラウド(Someone In The Crowd)」/「私はサンドラ・ディー (Look At Me, I'm Sandra Dee)」

ミュージカル映画『グリース』からもオマージュされているシーンがあります。ジョン・トラボルタとオリビア・ニュートン・ジョンが共演した作品で、数々の名曲を生み出した学園ミュージカルの定番です。 オリビア・ニュートン・ジョン演じる転校生サンドラが、新しい学校の友だちと寮のベッドで歌うのが「私はサンドラ・ディー」。『ラ・ラ・ランド』では、ミアとルームメイトたちが歌う「サムワン・イン・ザ・クラウド」のシーンで同じようにベッドに座っています。

『ウエストサイド物語』(1961)

「サムワン・イン・ザ・クラウド(Someone In The Crowd)」/「アイ・フィール・プリティ(I Feel Pretty)」

ブロードウェイ舞台を映画化した『ウエストサイド物語』は、音楽をレナード・バーンスタインが担当し、すべての曲が後世に残る秀逸なミュージカル・ソングを創り上げました。 全編ジャスティン・ハーウィッツによるオリジナル・ソングという『ラ・ラ・ランド』も、おそらく後世に残る名曲ばかりになったのではないでしょうか。 プエルトリコ系移民のマリアとイタリア系移民のトニーの悲恋を描いた作品で、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を元にしています。マリアをナタリー・ウッド、トニーをリチャード・ベイマーが演じました。 『ウエストサイド物語』からのオマージュは、マリアがトニーへの恋心を歌った「アイ・フィール・プリティ」で、カーテンをドレスのように胸に当てて「ミス・アメリカ」を気取る場面。 『ラ・ラ・ランド』のミアは、ルームメイトとパーティへ着て行くドレスを選ぶシーンで、やはりカーテンをドレスに見立てて胸に当てていますね。

「シティ・オブ・スターズ(City Of Stars)」/「マリア(Maria)」

もう1つ、『ウエストサイド物語』からのオマージュが見つかっています。今度は逆に、トニーがマリアへの恋心を歌う「マリア」のシーンです。トニーがパーティで出会ったマリアと恋に落ち、夕暮れ時一人通りを歩きながら歌います。 セブがミアとの出会いから、二人の恋の行く末を想って歌う「シティ・オブ・スターズ」も、黄昏時の桟橋が舞台です。沈む夕日が二人の悲恋を物語っていて、どちらも実にメランコリーなシーンとなっています。

『ニューヨーク・ニューヨーク』(1977)

「オーディション(ザ・フールズ・フー・ドリーム)(Audition(The Fools Who Dream))」/「ニューヨーク・ニューヨーク(New York, New York)」

ライザ・ミネリとロバート・デ・ニーロが共演したマーティン・スコセッシ監督のミュージカル映画『ニューヨーク・ニューヨーク』は、ジャズ・サックス奏者と歌手の悲恋を描いた物語です。どこかプロットが『ラ・ラ・ランド』に似ていませんか? ジャズを愛するジミーをロバート・デ・ニーロ、歌手を目指すフランシーヌをライザ・ミネリが演じています。二人は愛し合いながらも、お互いの音楽キャリアのために別れを選びます。まるでミアとセブ! ライザ・ミネリが歌う映画主題歌「ニューヨーク・ニューヨーク」は、ジミーがフランシーヌのために作り二人を成功に導いた思い出の曲。ミアもパリ行きを賭けた「オーディション」で思いの丈を歌で表現し、女優としての成功を収めました。

『カサブランカ』(1942)

「ミアとセバスチャンのテーマ(Mia & Sebastian's Theme)」/「アズ・タイム・ゴーズ・バイ(As Time Goes By)」

ハンフリー・ボガードとイングリッド・バーグマンが共演した『カサブランカ』は、ミアが幼いころに連れられて観た往年の名作の一つ。ミアの部屋の壁にもバーグマンの顔を大きく写したポスターが飾られ、憧れを抱いていることがわかります。 ミアのバイト先のカフェの向かい側には『カサブランカ』で使われたセットがあり、これもミアのモチベーションアップの源になっています。 『カサブランカ』は第二次世界大戦中のモロッコを舞台にした再会と別れのメロドラマで、名曲「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」も印象深く作品全体に響いています。「ミアとセバスチャンのテーマ」も二人の出逢いと別れのシーンをさまざまなアレンジで彩り、メランコリックな曲調で二人の儚い恋を象徴していました。

『ウィークエンド』(1967)

ジャン=リュック・ゴダール監督による仏伊合作映画『ウィークエンド』の冒頭の車が渋滞しているシーンが、『ラ・ラ・ランド』でも冒頭の渋滞シーンとしてオマージュされています。 渋滞している車を横から映し出していく様子や、渋滞にしびれを切らしてクラクションを鳴らしている音などが再現されています。『ラ・ラ・ランド』では、その緊張感を歌で解き放ち、一気に「アナザー・デイ・オブ・サン」で明るいLAのハイウェイに様変わりさせていきます。 ゴダールの『ウィークエンド』では、そんな緊張感あふれるオープニングから集団的ヒステリーが起こり、次々異常な事件が相次ぎます。ゴダールは不条理でショッキングな「悪夢のウイークエンド」を、文明批判として描き出しました。