傑作SF映画『ブレードランナー』の魅力を徹底解説【ラストネタバレや詳細考察まで網羅】

2017年11月5日更新

1982年公開のSF映画『ブレードランナー』。リドリー・スコットが描く近未来の世界観はその後のメディア作品に多大な影響を与えました。35年ぶりに続編の制作が決まった「ブレードランナー」のあらすじ・キャスト・見どころを徹底解説いたします。

SF映画の金字塔『ブレードランナー』とは?

原作はフィリップ・K・ディック著の『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』。『スター・ウォーズ』や『スター・トレック』といったスペースオペラ主流の時代にあってリドリー・スコットは“退廃した未来都市”という独自の世界観を描き出しました。公開当時は限定的ともいえた評判が徐々に広がりを見せSF映画の金字塔と呼ばれるまでに成長したのです。

宇宙への移住が始まった近未来、人間は自分たちとよく似たレプリカントを奴隷として扱い過酷な労働を強いていました。自由を求めるレプリカントたちを処分する時に湧き起こる疑問「人間らしさとは何か?」。その後のメディア作品に多大な影響を及ぼした『ブレードランナー』の魅力をお届けします。

『ブレードランナー』のストーリー【ネタバレあり】

ブレードランナー

2019年、環境破壊が進んだ地球では宇宙への移住が一般化し酸性雨に晒された都心部では僅かばかりの人々がひしめき合って暮らしていました。遺伝子工学の発展により誕生した人造人間「レプリカント」たちは人間の代わりに危険な作業、過酷な労働を強いられていたのです。

そんなある日、6名のレプリカントが人間に反逆し地球に潜伏しているという報が入ります。デッカードはレプリカント処分の任に就く特別捜査官、通称“ブレードランナー”。協力要請しようと訪れたタイレル社でレプリカント識別テストを披露したところ、テストの結果は社長秘書のレイチェルがレプリカントであることを示唆していました。

レプリカントを開発したタイレル博士はレプリカントの脳に自分の姪(レイチェル)の記憶を植え付け人間だと信じ込ませていたのです。アイデンティティーを見失ったレイチェルはタイレル社を飛び出してしまいます。

ブレードランナー

一方デッカードは潜伏中のレプリカントを次々と処分し最後の1人、レプリカントのリーダーであるバッティと激しい死闘を繰り広げていました。追い詰められ最早これまでと覚悟しますが、自らの寿命が尽きるのを悟ったバッティはデッカードの命を救いやがて動かなくなったのです。

レイチェルやバッティ等ネクサス6型のレプリカントは安全装置として寿命を4年と定められています。バッティ一が地球に来たのもタイレル博士に会って寿命を延ばしてもらうためでした。未来を絶たれ絶望してもなおバッティは死に直面する人間を見殺しにすることができなかったのです。

『ブレードランナー』のメインキャストを紹介

リック・デッカート/ハリソン・フォード

ハリソン・フォード ブレードランナー

主人公デッカートを演じるハリソン・フォードは『スター・ウォーズシリーズ』のハン・ソロ、『インディ・ジョーンズシリーズ』の主人公といった人気キャラクターを演じ世界中に名前を知られるようになりました。

2015年『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のハン・ソロ役で30年ぶりに復活を遂げた他、2017年には『ブレードランナー』の続編への出演することが決まりファンを喜ばせています。

ロイ・バッティ/ルドガー・ハウアー

ルドガー・ハウアー ブレードランナー

反逆レプリカントのリーダー・バッティを演じるルドガー・ハウアーはオランダ出身の俳優。アメリカにおける実質的デビュー作『ナイトホークス』での冷酷なテロリスト役が注目を集め本作に抜擢されました。

2005年フランク・ミラーのアメコミを実写化した映画『シン・シティ』でロアーク枢機卿、『バットマン・ビギンズ』ではウェイン産業の社長リチャード・アールをそれぞれ演じています。

レイチェル/ショーン・ヤング

ショーン・ヤング ブレードランナー

タイレル社の秘書レイチェルを演じたのはモデル出身のショーン・ヤング。本作のヒロイン役で見せた美貌が話題となり一躍スターとなりました。ケヴィン・コスナー主演の『追い詰められて』、ニコラス・ケイジの『アパッチ』、マット・ディモン主演の『死の接吻』において美貌のヒロイン役を好演。

その一方で元恋人へのストーカー行為による告訴やパーティー会場で警備員に働いた暴行行為による逮捕とお騒がせ女優として名をはせています。

カブ/エドワード・ジェームズ・オルモス

いつもデッカードの側にいる警察官。折り紙を得意としています。カブを演じたのはエドワード・ジェームズ・オルモス。代表作にテレビシリーズ『特捜刑事マイアミ・バイス』のマーティン・キャステロ警部役があります。

近未来退廃都市の秘密

ブレードランナー

『ブレードランナー』の舞台となる2019年のロサンゼルスは、酸性雨が降り注ぐ上に街並みも雑多な雰囲気を醸し出しています。中でも特筆すべきは「強力わかもと」の看板や着物を模したような服を着る人、そして日本料理の屋台が営業しているなど、至る箇所で日本らしい描写が見受けられる点でしょう。

これは監督のリドリー・スコットが東京を訪れた際に見た、煌びやかな夜の新宿・歌舞伎町のイメージが強烈にあったからと云われています。なお、後にリドリーが大阪ロケを敢行した『ブラック・レイン』も、当初のロケ地として歌舞伎町を希望していました。

ストーリーを深堀り!5通りのブレードランナー

バージョン違いができた理由

ブレードランナー

映画によっては幾通りかのバージョン違いが存在することがありますが、本作は中でも相当こんがらがった映画といえるでしょう。

商業的な事情つまり大衆ウケを考慮した上での削除や変更、編集の際生じた齟齬の修正を繰り返した結果、5つのバージョンが出来上がったというワケです。

混乱の極み!5つのバージョンそれぞれの特徴

リサーチ試写版(ワークプリント)【1982年】

ブレードランナー

劇場公開前に、観客の反応を見るために行われたテスト試写バージョン。日本料理の屋台でデッカードが「何か」を4つ注文するシーンの、その注文品が何かが確認できます。しかし、全体的に観客の反応が芳しくなく、修正を余儀なくされることとなります。

オリジナル劇場公開版【1982年】

Keisuke__Aoyagi 映像に陶酔できるのでかなり見たが心が晴れるものはない。好きなのはプリスが登場するシーンでファファ~ンとブルースが流れるところ。こんな世界はごめんだね。

リサーチ試写版の反応を踏まえ、1982年に初めてアメリカで一般劇場公開されたバージョン。デッカード役のハリソン・フォードのナレーションの追加や、デッカードとレイチェルのカップルの旅路で締めるというハッピーエンドとなっています。

また、エンディングの空中撮影シーンではスタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』のアウトテイクを使用しています。

完全版(インターナショナル版)【1982年】

ブレードランナー 完全版

ヨーロッパや日本で劇場公開されたバージョンがこちら。オリジナル劇場公開版ではカットされた暴力・残虐シーンなどが復活しています。

ディレクターズ・カット版(最終版)【1992年】

ブレードランナー

Akihiro_Shinagawa SFの名作と聞き楽しみにして見た作品。 荒廃した未来という当時では珍しい設定と日本の花魁?の映像が非常に印象的。 大筋の内容は理解できたが主人公がレプリカントかどうかまではしっかりと描写されていたか分からなかったので原作は未読だが読みたいと思う。

1982年の劇場公開から10年経ったことを記念し、監督のリドリー・スコット自ら編集作業を行ったバージョン。こちらは、ハリソンのナレーションとエンディングの空中撮影シーン(前述の『シャイニング』のアウトテイク)がカットされています。その代わりに、デッカードが「ユニコーンの白日夢」を見るシーンが追加されています。

ファイナル・カット版【2007年】

mayaki SF映画の金字塔。

見た目は人間と区別のつかないレプリカント(人造人間)を処刑するために結成されたブレードランナーとして再び働くよう要請されたデッカード(ハリソンフォード)。植民惑星から脱走し、地球に紛れ込んだレプリカントの捜索を始めるが…。

2019年が舞台ということでしたが、日本満載でちょっと不思議な雰囲気。 レプリカントとやり合う主人公が主人公の割にびっくりするほど弱いのは、レプリカントと人間の対比なんだろうなぁと感じました。が、調べたら主人公が◯◯という説もあるようで。。

SF苦手な私でも楽しめる作品でした。

公開25周年を記念し、再びリドリー自身が編集したバージョン。細かなミスショットの修正や、新たにデジタルリマスターが施されています。また、リサーチ試写版にあったアイスホッケーマスクを着けて踊る女性のシーンなどが復活しています。

「ユニコーン」について

人気が一般化し本来描きたかったものを観てみたいという気運が高まった1992年。リドリー・スコット自ら編集作業を行ったディレクターズ・カット版にはこれまでなかったデッカードが見る「ユニコーンの夢」のシーンが追加されたことを上で述べました。

この幻想的なシーンや、ユニコーンの折り紙の隠された解釈について探ってみます。

解釈その1:玄関の残されたユニコーンの折り紙からわかること

ブレードランナー

ディレクターズカット版ができるまでは、デッカードがレイチェルを連れてエレベーターに乗り手に手をとって逃避行するというエンディングが描かれてきました。玄関先でユニコーンの折り紙を拾うシーンがありますが、そこから読み取れることといえば折り紙が得意なカブがそこに存在しただろうこと。

レイチェルはデッカードの識別テストによってレプリカントであることが判明し処分の対象となりました。最新型のレプリカント・ネクサス6型であるレイチェルは寿命が4年と定められています。

カブは居所を突き止めていながら余命幾ばくもないレイチェルを見逃してやったのでしょう。「見つけたぞ」という警告としてユニコーンの折り紙を残していったものと考えることもできます。 

解釈その2:「ユニコーンの夢」シーンによって、デッカード=レプリカントが導かれる

『ブレードランナー』 ハリソン・フォード

これまで折り紙を残す=カブの存在を示しているところまでは思いついても、なぜユニコーンなのかという点はさっぱりわかりませんでした。ところがここにきて「ユニコーンの夢」のシーンが挿入でされたことで解釈の幅が大きく広がったのです。

ユニコーンはあくまでもデッカードの夢の中に存在するもので他の人間に知る術はありません。ではカブが知っていたのはなぜでしょう?

答えはデッカードがレプリカントであり、外部の人間に記憶を埋め込まれていた存在だったから!

人間同士であれば知り得ない情報でも一方がレプリカントであれば可能だということです。カブはデッカードがレプリカントだということを知っていたからこそ、「お前の思考は全て分かっているし、常に監視ししているぞ」というメタファーを込めてユニコーンの折り紙を残したのではないか、とファンの間では解釈されています。

本当にデッカードはレプリカントなのか?

ハリソン・フォード ブレードランナー

「デッカードはレプリカントなのか?」。この命題は本作における最大の謎で未だファンの間で熱い議論が交わされています。

リドリー・スコットは「ユニコーンの夢」を追加したことで答えを言及するのではなく、想像の余地を広げてくれたのです。

リドリー・スコットが描きたかったラストとは?

最初に公開されたのラストシーンの解釈

ハリソン・フォード ショーン・ヤング ブレードランナー

監督のリドリー・スコット自身が編集した1992年のディレクターズカット版及び2007年のファイナルカット版では、デッカードとレイチェルがエレベーターに乗り込むシーンでエンディングを迎えます。

これは、ロイ・バッティの生と死を経て、人間とレプリカントは限りある命をどれだけ生きられるのか。つまり、デッカード達の今後がどう転ぶのかを観客自身に予想させようと、エレベーターのドアが閉じるシーンでスパッと終わらせたかったのではと云われています。

ディレクターズカット版以降のラストシーンが真のエンディング?

ブレードランナー

1992年、10周年を記念してスコット自ら編集したディレクターズカット版はデッカードとレイチェルがエレベーターに乗り込むシーンで終わります。デッカードとレイチェルが緑の高原に逃避行するというエンディングはハッピーエンドを望む大衆に寄せて軌道を変えたものだったのです。

デッカートはレプリカントなのか、レイチェルはあとどれくらい生きられるのか。様々な疑問を残しつつ幕を閉じます。想像の余地を残したエンディング、リドリー・スコットが描きたかったそんなラストではないでしょうか。

レプリカントが伝えたかったメッセージ

ルドガー・ハウアー ブレードランナー

人間に反逆したレプリカントと、それを追うデッカードとの対決を主軸としたこの作品ですが、リドリー・スコットがレプリカントを通じて伝えたかったこと、それは「実存主義」です。

寿命が4年という短期間の人生を、人間の奴隷として全うしなければならない彼らは、それに抗い自身が思う通りの人生を生きようと反乱を起こします。

ロイ・バッティが魅力的なのはなぜなのか

ルドガー・ハウアー ブレードランナー

その実存主義を顕著に体現するのが反乱者のリーダー、ロイ・バッティ。3人のレプリカントを率いて自由を求め人間に反逆します。

ルドガー・ハウアーの怪演もさることながら、ロイの凶暴なのに悲しみを帯びたキャラクター性、そしてレプリカントの背負う宿命に多くの人々が心打たれました。

彼は仲間のレプリカントたちを殺したデッカードを追い、死闘を繰り広げます。

しかしその過程で自身の寿命が尽きることを悟ると、最期にはデッカードを、「人間」として救うことを選びます。

デッカードが生身の人間すぎる件について

ハリソン・フォード ブレードランナー

敵役なのに魅力的なキャラのロイ・バッティに対し、主人公のデッカードは終始情けなさを漂わせています。

彼がしたことといえば女性のレプリカントを2人射殺しただけで(うち一人は背後から射殺!)、あとは男女のレプリカントたちにボコボコにされた上に、最後にはロイ・バッティに命を救われる始末です。

奴隷としてこき使っていたはずのレプリカントにひとたび反逆されると、人間は成す術もない__。ある意味デッカードはそうした人間の滑稽な姿を代表したキャラクターとも言えます。

デッカードブラスター情報

デッカードブラスター ブレードランナー

『ブレードランナー』でデッカードが使用する架空の銃、通称「デッカードブラスター」は、当初美術デザインを担当したシド・ミードによってデザインされましたが不採用となり、小道具を担当していたテリー・ルイスによって再デザインされました。

作品の人気によりレプリカ品も多く発売されており、日本でも少なくとも8種類以上のレプリカが製作されました。

原作はSF小説の大家フィリップ・K・ディック

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

原作小説である『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の著者フィリップ・K・ディックは、SFファンの間では名の知れた人気作家です。映画化作品を並べれば一目瞭然!

ポール・バーホーベン監督作『トータル・リコール』【1990年公開】、スティーヴン・スピルバーグ監督作『マイノリティ・リポート』【2002年公開】、どちらもディックの短編小説を原作に制作されました。

40年前に書かれたとは思えないリアリティのある近未来の姿。名立たる名匠たちが競って映画化する理由もそこにあるのでしょう。フィリップ・K・ディックは本作の公開を前に1982年3月に脳梗塞のため逝去しています。

原作小説と映画版の違い

ブレードランナー、フィリップ・K・ディック

映画の原作となったフィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』。

まず原作では「レプリカント」ではなく、タイトルにもあるように「アンドロイド」という呼称が使われています。登場人物は映画版とほぼ同じですが、デッカードに妻がいる点と、敵役のロイ・バッティがそれほど重要なキャラクターではないという点が大きな違いでしょう。

そして何よりも、原作はタイトルにある「電気羊」なる代用動物の存在が要となっています。電気動物にまで倒錯した愛情を注ぐことで人間であり続けようとする世界の歪みを、映画以上に如実に表しているといえるでしょう。