シリーズ史上最高と名高い『シャーロック・ホームズの冒険』
シャーロック・ホームズと言えば、推理作家のコナン・ドイルによって生み出されたみなさんご存知の名探偵。
今回は1984年から1994年まで放送され、英国で最も人気・評価ともにシリーズ最高と謳われるドラマ版『シャーロック・ホームズの冒険』。日本でも1985年以降、何度も放送された往年の名作です。
そんなドラマ『シャーロック・ホームズの冒険』について今回はとことん掘り下げていきます。
『シャーロック・ホームズの冒険』のメインキャスト
シャーロック・ホームズ:ジェレミー・ブレット
世界で最も高貴な探偵ホームズ役には舞台名優のジェレミー・ブレットが起用されています。見どころはジェレミーが変人の名探偵ホームズをどのように演じているかですよね。
本作で演じたシャーロックがジェレミーの代名詞ともいえる役になりました。その他の主な出演作は映画『戦争と平和』や映画『マイ・フェア・レディ』などがあります。多くの舞台で培われた経験が彼を最高のシャーロック・ホームズに仕立て上げました。
また意外にも1981年に舞台『シャーロック・ホームズ』でワトソン役を演じています。
ジョン・H・ワトソン:デビッド・バーク【第1・2シリーズ】
第1、第2シリーズではデビット・バークが起用されています彼が演じるワトスンは豪快でユーモアにあふれた人物として演じられています。テレビドラマを中心に活躍した俳優です。
ドラマ『名探偵ポワロ』にも出演しています。
ジョン・H・ワトソン:エドワード・ハードウィック【第3シリーズ以降】
ホームズの相棒であり親友でもあるワトソン役には第3シリーズからエドワード・ハードウィックが起用されています。彼が演じたワトスンはデビット・バークが演じたワトスンとは異なり、シニカルで礼儀正しいイギリス紳士として演じられています。
彼は他にも映画『ラブ・アクチュアリー』等に出演している俳優。原作に忠実に従って描かれた紳士ワトソンにも注目です。多くの賞にノミネートされる等演技力に定評があります。
ハドスン夫人:ロザリー・ウィリアムズ
ホームズが下宿先の大家ハドスン夫人は、ロザリー・ウィリアムズが演じます。自由気ままな下宿人ホームズに手を焼きながらも面倒見が良い人物として演出されています。ファンの間ではハドスン夫人が原作に忠実に演じられていると評判も高く、演技力に定評がある女優です。プライベートでもジェレミーと親交がありました。
ロザリー・ウィリアムスは映画『蜜の味』にも出演しています。
レストレード警部:コリン・ジェボンズ
ホームズに敵対心を燃やして対抗するレストレード警部を演じるのはコリン・ジェボンズ。ホームズに敵対心を燃やしながらも、時にはホームズの元に助けを求めにやってくる警部です。
『シャーロック・ホームズの冒険』のあらすじ
世界一の名探偵シャーロック・ホームズが相棒のワトソンと共に様々な謎を解き明かしていくミステリードラマ。自由奔放で変人なホームズが警察や当事者が見過ごした証拠を発見し、次々と謎を解いていく姿は爽快です。
物語は基本的に事件の当事者、もしくは行き詰った警察がホームズの元を訪ねてくるところから始まるという、さすが探偵小説の金字塔。探偵もののセオリーを踏襲した作風です。
変人のホームズと常識人で紳士ワトソンのコンビが推理をしていく様子は見どころ満載ですね。
シリーズ中の傑作エピソードベスト7
ここでは珠玉の傑作エピソード7選を紹介します。
1.バスカヴィル家の犬 1987年放送
ある日、大富豪のバスカヴィル家の当主が何者かによって殺害されました。バスカヴィル家の莫大な財産を狙った犯人による犯行。名探偵ホームズがこの謎に挑みます。
2. 四つの署名 1987年放送
若い女性の父親の謎の失踪、そして数年前から年に一回彼女の元に届く高価な真珠の贈り物と謎の人物からの手紙。そこにはある秘密が。ホームズがこれらの謎を解き明かしていきます。
3.ボヘミアの醜聞 1984年放送
シャーロック・ホームズはボヘミア国王からある写真を取り返すように頼まれます。その写真が写しているものはアメリカの歌手であり女優のアイリーン・アドラーと国王の親密な様子。そして所有者は何とアイリーン・アドラー。
彼女は写真をネタに国王を脅していたのです。ホームズはこの難しい依頼を解決できるのでしょうか?
4.踊る人形 1984年放送
ある紳士がホームズの元に色々な姿の人形が描かれている絵をもってきます。彼はこの謎の不気味な絵の送り主を突きとめてほしいとホームズに依頼をします。
相棒のワトソンはあまり気にした様子を示しませんが、ホームズはすぐにある事実に気付くのです。
5.孤独な自転車乗り 1984年放送
音楽の家庭教師がホームズの元にある相談を持ち掛けてきます。相談の内容は一本道を自転車で走っている時に黒ずくめの怪しい男に後をつけられているというものでした。
嫌な予感を感じたホームズは、ワトソンと彼女の手助けすることを決めます。
6.まだらの紐 1984年放送
ホームズの元にヘレンという女性が訪ねてきます。そして彼女はホームズに、義父がヘレンに姉が以前死んだ部屋で生活するように強制させていることと、姉の死の先触れとなった音が最近聞こえることを彼に伝えます。
実は、嫌な前触れを感じたヘレンはホームズに助けを求めに来たのでした。彼女の話を聞いたホームズは依頼を受け、様々な不審な点に気が付いていくというストーリー。
7.赤髪組合 1985年放送
ある奇妙な経験をしたという赤紙の初老の男性がホームズの元へやってきます。その体験に興味を惹かれたホームズは彼の依頼を引き受けるというもの。
ベネディクト・カンバーバッチも尊敬するジェレミー・ブレット
ベネディクト・カンバーバッチと言えば言わずと知れた大スター。彼はドラマ『シャーロック』でシャーロック・ホームズを演じた俳優としても名が知られています。
そんな彼にはある尊敬する人物がいます。彼の名はジェレミー・ブレット、1984年から1994年の10年間ホームズを演じた俳優です(上記参照)。
ベネディクト・カンバーバッチはジェレミーについて次のように述べています。
「僕はジェレミー・ブレットが演じるホームズを見て育ったんだよ。彼の演じるホームズには本当に夢中だったよ。」
ベネディクト・カンバーバッチは続けてブレットの力強い印象について語っています。
「僕が若かった時、彼の鷹のように威厳のある、ある意味とても冷たい印象に感銘を受けたよ。彼の鳥のくちばしのような鋭い鼻、きれいにオールバックにされた髪型、唇、そして時折赤くなる憂いのある目、どれをとっても素晴らしいんだ。」
ジェレミー・ブレットの俳優としての経歴は素晴らしいもので、多くの俳優から尊敬を集めています。晩年は躁鬱病に苦しみ、闘病生活を送りました。
そして1995年に心不全のため帰らぬ人に・・・。
『シャーロック・ホームズの冒険』が一番な秘密
1.ユーモアに溢れている
ジェレミー・ブレットが演じる前のホームズは、めったに笑わない冷淡な人物として演じられてきました。しかし、コナン・ドイルはホームズをよく笑う人物として描いています。
ジェレミーはその部分に注目しました。彼はホームズを冷静沈着でありながらも、すぐに笑顔を浮かべるキャラクターとして再定義したのです。
また『シャーロック・ホームズの冒険』シリーズには原作にはないコミック的な要素も含まれています。このユーモア路線が人気を集めた要因の一つでしょう。
2.ホームズの仕草
ジェレミー・ブレットは舞台俳優としてのキャリアがありました。彼の指導者は名優ローレンス・オリヴィエでした。ジェレミーはローレンス・オリヴィエから身振り、手振りが観客にキャラクターの印象を与えることを学びました。
ローレンスの演技指導を経た彼は、ホームズを特徴的な身振り、手振りや仕草を使い徹底的に演じました。彼の手の動きに注目してシリーズを見てみるのもおすすめです。
3.コナン・ドイルの娘が制作に携わっていた
本ドラマ『シャーロック・ホームズの冒険』のいくつかのエピソードは、コナン・ドイルの娘に承認を元に作られています。
ジェレミー・ブレットがホームズを演じたことによって得た最大の賛辞は、コナン・ドイルの娘からの「あなたは幼かった私のシャーロック・ホームズだわ。」と書かれた手紙だったそう。
原作者の家族からも祝福されるドラマだったんですね。
4.ジェレミー・ブレットは私生活でもホームズそのものだった
ジェレミー・ブレットにまつわる話を見てみると、彼はホームズから素のジェレミーに切り替えるのが難しかったようです。ホームズは非常に厳しい人物です。
キャストがマンチェスターで撮影を行っていた時に、彼らが宿泊していたホテルのスタッフはこのように言ってます。
「私たちはジェレミー・ブレットの到着を待つのは大好きでした。しかしホームズの到着を待つ時間は恐怖を感じる時間でした。」引用:eggvan.com
5.ジェレミー・ブレットは自身の演技に満足することはなかった
ジェレミー・ブレットはホームズの演技に満足することはありませんでした。
1989年に彼は「ホームズは今までで一番難しい役だったよ。マクベス(シェイク・スピアの戯曲『マクベス』の主人公)を演じるよりも難しかったんだ。」と述べています。
ジェレミーが演じたのは原作そのままのホームズではありません。コナン・ドイルが描いたホームズに、ジェレミーはアレンジを加えて新たなホームズ像を作ったのです。