SFアクション映画の名作『マトリックス』
ウォシャウスキー姉妹監督、キアヌ・リーブス主演の『マトリックス』は、1999年アカデミー賞4部門を受賞したSFアクション巨編。
仮想現実(ヴァーチャル・リアリティ)の世界を舞台に、主人公の天才ハッカー・ネオと彼の仲間たちはコンピュータによる支配から人類を開放するための闘いに身を投じます。
1. 窓ガラスに隠されたメッセージ
ネオのやる気に欠けた勤務態度を上司が叱るシーン。ここで、ふたりの人物が窓を洗っています。このとき窓を流れるせっけん水が、マトリックス、または本編を通して繰り返し現れるコードを象徴すると言われています。
実は、この説には続きがあったと言われています。
上司が規則違反を繰り返すネオを注意している間、カメラのアングルが移動し、石鹸がついた窓ガラス(マトリックスを表わす)が映りました。このときのネオは反抗的な態度のままですが、会社に残る意思はあるかたずねられ、上司に同意します。
この瞬間、窓の石鹸も洗い流されることにより、ネオがマトリックスに課されたルールに追従するということが表されています。こうしてネオは再びマトリックスの世界を構成するシステムの一部となり、結果として、コードを抹消し、救世主になる彼の道も遠のいたのでした。
2. アダム・ストリートに隠されたメッセージ
ネオは、モーフィアスの仲間に会うため、アダム・ストリートで待つように告げられました。
アダムはよくある名前ですが、神に最初に創られた人間の名前でもあります。「最初」は「1(one)」にも通じ、そして、そのアナグラムから作られた名前「ネオ(Neo)」を意味するのです。
3. ネオを殺した犯人はモーフィアスだった?!
モーフィアスは青と赤の薬を渡す際、これがネオの入出力信号を特定するようになると説明しました。
実はこの薬は、服用者に心停止を引き起こす薬だったのです。薬の服用時、トリニティがネオの入力信号を検出するためにテープとワイヤを取りつけます。
ネオが自己修復する割れた鏡を見つけると、鏡はネオの体を這い上がって口内に侵入し、次の瞬間、ネオはマトリックスの外の世界に居ます。
重要なことは、ネオが死ぬことによりマトリックスの外の世界に出られるということです。
自己修復する鏡は、ネオが世界を異なるように知覚しはじめた時に感じとった心停止のサインかもしれないし、めまいの症状かもしれません。ネオの身体を這い上がって行く液体や、そのときネオが感じる寒さもまた心停止のサインの可能性があります。
4. 7つの大罪を象徴する登場人物たち
貪欲の罪 – エージェント・スミス
7つの大罪の内、貪欲の罪を象徴するキャラクターはエージェント・スミスです。
映画の中でエージェント・スミスはマトリックスの世界から逃れたいという欲求を持っています。そのためにサイファーを雇ってモーフィアスを捕まえ、メインフレームへのアクセス・コードを手に入れようとします。
エージェント・スミスは、大きな力を得るためには、誰かを拷問することも厭いません。
暴食の罪 – 人間
暴食の罪を象徴するのは人類です。
エージェント・スミスは人類のことを、増殖し、あらゆるものを死滅に追いやるガン細胞だと語っています。
人類は他の種のために何ひとつ残さず、過度な消費への欲望に突き動かされ、ガンのようにすべてを食らい尽くすのです。
肉欲の罪 – マウス
肉欲の罪を象徴するキャラクターはマウスです。
マウスが作成した訓練プログラムに、「赤いドレスの女」を盗むシーンが出てきますが、これは彼が背負う肉欲の罪をはっきりと示しています。
憤怒の罪 – タンク
憤怒の罪を象徴するキャラクターはタンクです。
タンクが激しい怒りを示すのは、サイファーにより仲間や弟ドーザーが殺されたことなどがきっかけです。タンクは、この激しい怒りに駆り立てられて、弟の復讐をしようとします。
嫉妬の罪 – サイファー
嫉妬の罪を象徴するキャラクターはサイファーです。
サイファーは、トリニティとネオの関係に異様なまでの嫉妬を示します。
トリニティにネオのことを聞いたり、どうして自分には朝食を差し入れなかったのかストーカーのように尋ねたり、挙句の果てにはマトリックスの世界でもう一度注目を浴びるために敵のエージェント・スミスと取引まで交わして友人を殺してしまいます。
傲慢の罪 – モーフィアス
傲慢の罪を象徴するキャラクターはモーフィアスです。
モーフィアスの目的はオラクルに選ばれた救世主を探すことだけで、救世主のネオを見つけた後は、誰の意見にも耳を傾けず自分の意志を貫きました。たとえ、引き換えにネオを救うために自分を犠牲にすることになっても。
オラクルは、モーフィアスが救世主を救うためならすべてを投げ打つということさえネオに予言しています。
怠惰の罪 – トリニティ
怠惰の罪を象徴するキャラクターはトリニティです。怠惰とは、するべきことをしないということ。
トリニティは、救世主に恋に落ちると予言されますが、その事をモーフィアスに言いません。マトリックスの世界からネオを解放し、愛するようになった後もなかなか想いを告げようとせず、長い間口を閉ざしたままでいます。
ようやくトリニティが行動に出るのは、彼女もネオも敵の手にかかり、死に瀕してからでした。
5. 予言者オラクルの正体は、すてきなグランマだった?!
実は、オラクルは、知恵と助言、おいしいおやつをくれるおばあちゃんのような存在でした。
オラクルはネオのことをなんでも知っています。誰かがネオに恋心を抱いていることや、ネオにおやつのクッキーをあげればすべてうまくいくようになることなど、みんなお見通しなのです。
6. ネオの名前は「救世主」を意味していた!
ネオのファイルフォルダに書かれた「1(One)」の文字。
この文字は、後にネオがオラクルにより「選ばれた者(the One)」、つまり、人類を救う救世主になることを暗示しています。
7. 赤いタイルは「危険」のメタファー?!
映画『マトリックス』でほとんど使われない赤色は、「危険」を意味します。
この色が示す通り、主人公たちの目の前に座る老人はまもなく敵のエージェントに姿を変え、文字通り、危険な存在になるのです。
8. 危険なブロック遊び
下にあるブロックに書かれた「9」と「V」の文字は、9Vバッテリーを示している可能性があります(9Vバッテリーは、よく略して9Vと表記されます)。
『マトリックス』の世界においては、人間も、本質的にバッテリーに変えられているのです。
9. パスポートの日付に隠された秘密
2001年9月11日に有効期限が切れるネオのパスポート。
この日付についてはさまざまな憶測が飛び交っています。もしこの日付が意図的にふられたものだったと考えるなら、ありうる可能性は、「1(One)」という数字を繰り返し使用するためだったということです。
このこともまた、「ネオ(Neo)」が救世主であるということを示唆していました。