原田芳雄のプロフィール
原田芳雄は1940年2月29日生まれ、東京都足立区出身です。本所工業高校を卒業後、普通のサラリーマンとして会社勤務を始めましたがたった3ヶ月で退社します。1963年劇団俳優座養成所に入所し、役者になるべく一歩を踏み出しました。
正式な劇団員となって、1967年には連続ドラマ『天下の青年』の熱血教師役で俳優デビュー。その翌年には石原慎太郎のハードボイルド小説を原作にした『復讐の歌が聞こえる』に出演し、映画デビューも果たしました。ともにいきなり主役という幸運なスタートであり、その後着実にキャリアを重ねていきます。
原田芳雄の家族は?
息子はギタリストの原田喧太
原田芳雄は一般女性と結婚し、二人の間には一男一女がいます。
長男の原田喧太はギタリストとして活躍しています。デーモン小暮や及川光博など、さまざまなアーティストと共演している実力派です。既婚で、妻の姉は佐藤浩市の妻という間柄です。
娘は女優の原田麻由
長女の原田麻由は女優としてキャリアを重ねています。いまだ脇役ながら、『千年の愉楽』や『まほろ駅前狂騒曲』など秀作への出演が続いています。
俳優座「花の十五期生」の一人
太地喜和子ら錚々たる顔ぶれが揃う
俳優座養成所時代の15期同期には、夏八木勲、栗原小巻、前田吟、林隆三、地井武男、高橋長英、秋野太作、赤座美代子、太地喜和子、小野武彦、村井国夫ら、錚々たる顔ぶれが勢揃いし、「花の15期生」と呼ばれました。
夏八木勲や地井武男ら、ここ数年相次いで他界
太地喜和子は早くに亡くなりましたが、ここ数年の間に、原田芳雄、夏八木勲、地井武男ら15期のメンバーが相次いで他界しており、残された面々の沈痛な追悼コメントを耳にすることが多くなりました。
ちなみに原田芳雄は、1971年の段階で市原悦子らとともに俳優座をやめています。
『祭りの準備』の演技が高く評価される
幸運なデビューの後も、良作に出演し、圧倒的な個性と存在感を持つ俳優としての地位を固めていきます。
とりわけ、1975年の映画『祭りの準備』でみせた演技は高く評価され、原田芳雄初期の代表作のひとつになりました。
監督は黒木和雄。昭和30年代の高知県を舞台に、シナリオライターになる夢を実現するため苦悩しながら、やがて旅立つ青年の姿を描きます。主人公の沖楯男を江藤潤が演じ、原田芳雄は、強盗殺人を起こすことになる楯男の友人・中島利広役で強烈な印象を残しました。キネマ旬報やブルーリボン賞の助演男優賞を受賞しています。
数々の名作映画に出演し、たくさんの賞に輝く
『ツィゴイネルワイゼン』【1980】
作曲家サラサーテが演奏する「ツィゴイネルワイゼン」のレコードをきっかけに、現実とも夢ともつかぬ妖艶な世界に巻き込まれていく4人の男女を描きます。監督は鈴木清順。中砂糺を原田芳雄が演じたほか、もう一人の男に藤田敏八、それぞれの妻に大谷直子と大楠道代が扮しています。
1980年のキネマ旬報第1位、ベルリン映画祭特別賞、日本アカデミー賞最優秀作品賞など、数々の賞に輝いた傑作です。
『浪人街』【1990】
マキノ正博監督による1928年の同作を、黒木和雄監督が4度目のリメイクに挑んだ傑作時代劇です。江戸時代、下町に生きる破天荒な浪人たちの姿を描きます。原田芳雄は、反骨精神旺盛な主人公の浪人・荒牧源内を魅力的に演じました。
また本作は、勝新太郎の遺作映画としても知られています。
『寝盗られ宗介』【1992】
原作はつかこうへいの舞台喜劇。ドサ回り一座の座長と彼の妻の一風変わった関係を柱に、周囲の座員たちを巻き込んだドタバタ騒動をコミカルに描きます。主人公の北村宗介を原田芳雄が演じ、妻のレイ子には藤谷美和子が扮しました。
原田は今までにないタイプの役柄でありながら、そのコメディセンスは高く評価され、キネマ旬報の主演男優賞など複数の賞を受賞しています。
『父と暮せば』【2004】
井上ひさしによる戯曲をもとに、黒木和雄監督が戦争レクイエム三部作の完結作として映画化したのが本作です。昭和23年の広島、原爆で家族を失い、一人生き残った娘の前に死んだはずの父が現れます。
娘を宮沢りえ、わが子ためにこの世に蘇る父親を原田芳雄が演じ、二人のしみじみとした名演が感動を呼びました。原田は三部作すべてに出演しています。
松田優作に多大な影響を与えた原田芳雄
若くして亡くなり伝説と化した名優・松田優作は、駆け出しの頃原田芳雄を見て憧れ、その全てを真似ることで演技の勉強をしたことは有名です。
二人は1974年の映画『竜馬暗殺』で初共演。坂本竜馬を原田、暗殺を企てる右太を松田が演じていました。
遺作となった『大鹿村騒動記』
2011年7月に公開された『大鹿村騒動記』が、数多くの作品に出演し続けてきた原田芳雄の最後を飾る作品になりました。
長野県下伊那郡に実在する大鹿村を舞台に、300年以上継承されている大鹿歌舞伎を上演する村民たちの人間模様を描きます。原田芳雄は、鹿肉料理の食堂を営む主人公の風祭善を演じました。駆け落ちから戻ってくる妻には大楠道代が扮しています。監督は阪本順治です。
最後まで貫いた役者魂
2011年7月11日、原田芳雄は、ガン闘病中の痩せ衰えた姿で舞台あいさつに登場し、壮絶な役者魂を見せつけました。それからまもなく、公開3日後の7月19日、肺炎により他界しました。
映画界に対する功績が高く評価され、死後、政府により旭日小綬章が授与されています。