俳諧師・小林一茶の波乱の人生を描いた映画『一茶』が公開
俳人として知られる小林一茶の名は、誰しもが学校の授業などで耳にした事があるのではないでしょうか。
本作品は日本を代表する小説家・藤沢 周平が日本を代表する俳諧師、小林一茶について、家族との愛憎や確執、世間への葛藤などを緻密に描き出した作品です。
映画『一茶』のあらすじ
幼い頃に母を亡くしていた一茶は新しく来た継母との折り合いが悪く、江戸へと奉公へ出される事となります。一茶は江戸で俳句に出逢い、寂しさを埋めるように俳句の世界へと入っていき、やがて俳諧師として認められるようになりますが、一方で田舎俳句と揶揄されます。
その後、貧しい暮らしを送る中、父が逝去したことで家族と相続と争ったり、故郷に戻り結婚するも妻子と先立たれるなど、苦しい生活は続きます。しかし、一茶はその悲しみや苦しみの中からも俳句を生み出し続け、俳諧師としての生涯を生き抜いたのでした。
映画『一茶』のキャストを紹介!
小林一茶/リリー・フランキー
本作品の主人公、俳諧師・小林一茶です。とても人間臭く、家族との間に確執を抱えながら特に苦しみ、時に家族を憎みながら、後に俳句の世界で天才と呼ばれた人物です。
リリー・フランキーは俳優ほか、多方面で活躍しており、2005年に母親との半生を綴った長編小説『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』は大ベストセラーとなり、ドラマと映画にまでなっています。
俳優としての評価も高く2008年に出演した映画『ぐるりのこと。』では、ブルーリボン賞・新人賞を最高齢で受賞しました。2017年には本作品の他に三島由紀夫の小説を原作とした映画『美しい星』や漫画原作の映画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』に出演予定です。
さつ/中村玉緒
3歳で実母を亡くした一茶が8歳の時に迎えた継母でしたが、馴染む事が出来なかった一茶にとっては確執のある人物です。しかし、同時に一茶の俳句に大きな影響を与えている人物でもあります。
中村玉緒は1953年に『景子と雪江』にて映画デビューを果たすものの、暫くは芽が出ず、1970年代にテレビドラマで母親役を演じるようになり女優としての地位を得ていきました。当時の代表作には1976年の『岸壁の母』やテレビドラマ『必殺シリーズ』があります。
また、バラエティ番組にも多く出演しており、1994年に明石家さんまが司会の『明石家多国籍軍』で天然ボケっぷりを披露し、その強烈なキャラクターが受けて世間に広く知られる事となりました。近年ではNHKの連続テレビ小説ドラマ『べっぴんさん』に出演しています。
仙六/伊藤淳史
仙六は一茶の異母兄弟で、兄・一茶思いの弟です。
伊藤淳史は幼少期から子役として活躍していましたが、バラエティ番組『とんねるずのみなさんのおかげです』の中の”仮面ノリダー”というコーナーのチビノリダーで出演し一気に知名度が上がりました。
2001年にはNHKのテレビドラマ『僕はあした十八になる』で放送文化基金の金賞と男優演技賞を受賞し、演技力でも評判され、2005年にはテレビドラマ『電車男』の主役を演じ話題となりました。近年では2015年の『映画 ビリギャル』で日本アカデミー賞優秀助演男優賞も受賞しています。
弥五兵衛/石橋蓮司
弥五兵衛は一茶の父です。義母であるさつと折り合いが悪く江戸へと奉公へと出された一茶に対して、心苦しく思っています。
石橋蓮司は中学生時代から劇団に所属しており、1955年に映画『ふろたき大将』に主演でデビューしています。その後1968年に演出家の蜷川幸雄や、俳優の蟹江敬三と共に劇団現代人劇場を旗揚げして以来、劇団の解散と新規劇団旗揚げを繰り返し、その中で劇作家・唐十郎の作品を上演しました。
テレビ、ドラマには多数出演し、悪役やコミカルな役まで幅広く演じており、代表作の1990年の映画『浪人街』で披露した殺陣が高く評価されています。2016年に『ふろたき大将 故郷に帰る』が作成され、60年ぶりにデビュー作と同じ役を演じました。
菊/佐々木希
菊は、一茶が故郷に帰った際に結婚した最初の妻ですが、幼子と共に若くして亡くなっています。
佐々木希は2006年にギャルコンJAPAN」にて初代グランプリ、「第2回プリンセスPINKYオーディション」でもグランプリを受賞という史上初の快挙を成し遂げて芸能界入りしました。その後は雑誌「PINKY」のモデルを務めながらテレビでも活躍。2008年にバラエティ番組『爆笑レッドカーペット』で地上波デビューを飾ります。
美しすぎる美女として人気を博し、2008年11月1日公開の映画『ハンサム★スーツ』で女優としてデビューを果たすと、翌年には『神の雫』で連続ドラマにも初出演。2010年にはアメリカの映画情報サイト「最も美しい顔100人」の33位にランクインされ、世界的にもその美しさが評価されています。
原作者は直木賞作家の藤沢周平
今作品の原作者であり、直木賞も受賞経験のある日本を代表する藤沢周平は1927年12月26日生まれ、山形県鶴岡市の出身です。藤沢の作品には農村を舞台にしたものが多いのですが、その背景には農家の家に生まれ幼い頃より農作業に携わってきたという事実があり、この事実は藤沢作品に大きな影響を与えています。
小学校時代から小説や雑誌を好んで読んでおり、高校時代に学校内の同人雑誌『砕氷船』に参加しています。卒業後は教員の仕事、記者の仕事を経験し、1971に『溟い海』オール讀物新人賞を受賞して小説家デビュー。翌年には『暗殺の年輪』で第69回直木賞を受賞し、本格的な作家活動を開始しました。
作品には町人ものや娯楽色の強い大衆小説が多く、江戸を舞台にした出逢いと別れを描いた『橋ものがたり』や、江戸の町の牢獄に勤める医者が事件を解決する『獄医立花登シリーズ』が代表作となっています。1997に胚不全のため、69歳で亡くなりました。
監督は大河ドラマ『北条時宗』を手掛けた吉村芳之
吉村芳之は大学卒業後NHKに入り、大河ドラマの演出を手掛けている人物です。手掛けた大河は、1987年の『独眼竜政宗』や2001年の『北条時宗』などが代表作としてあげられており、主には時代物で活躍。
監督作品としては、2013年に伊達政宗を主体とした『臥竜の天~伊達政宗 独眼竜と呼ばれた男~』があります。今作品『一茶』については次のようなコメントを残しています。
人は自分の思うままに生きようとすると周囲と衝突し迷惑をかけときには非難を浴びる。で、つい気持ちが萎え遠慮することになる。老いてくるとますますその傾向が強くなる。しかし一茶は、居場所を求め愛を求め思いのままに生涯を貫いた。そこから彼の句が生まれる。「雀の子そこのけそこのけお馬が通る」、「露の世は露の世ながらさりながら」・・・。正反対に見える作風の根っ子は実はひとつなのだ。愛おしい男の物語である引用:cinra.net
小林一茶を追求した映画!
俳人・小林一茶という人物が一体どういった人物なのか?物語の中では、彼の人生に深く入り込みその人間臭さや俗物的な部分までも深く掘り下げて描いています。
一茶を既に知っていた読者からも「こんなに俗っぽく人間臭い人物だったのか」と驚きの声が上がる中、主演を務めたリリー・フランキーは次のように語ります。
「一茶の句が、なぜ、今も人々に愛されるのかを、自分なりに考え、一茶自身の愛しさを伝えることができたらと、恐縮しながら、真摯(しんし)に向き合いたいと思います」とコメント。「一茶のように、低い目線で、人間臭く生きてゆくこと。その在り方と、くじけない気持ちを少しでも定着できるよう、無欲の欲で、作品に献身したいと思います」引用:oricon.co.jp
知られざる小林一茶という人物について奥深く触れる事の出来る作品となっているようです。