実際の政治に大きな影響を与えた社会派映画10選

観客を喜ばせるためではなく強く何かを伝えるために作られている映画もあります。そして伝えるだけに留まらず、政治にまで影響してしまうほどのパワフルな映画を10作品選択しました。こちらは複数の海外記事を翻訳し、まとめた記事です。
目次
- 社会的な影響を与えた映画10作品を紹介!
- 1.アメリカ国民が政治に希望をもてなくなった『JFK』【1991】
- 2.安全な中絶手術を望んでしまう『サイダーハウス・ルール』【1999】
- 3. 温暖化に注目を集めさせた『デイ・アフター・トゥモロー』【2004】
- 4. 人種差別とその関係を暴露した『マルコムX』【1992】
- 5.共和党の報道機関に対する態度を変えた『大統領の陰謀』【1976】
- 6.反乱の教科書となった『アルジェの戦い』【1966】
- 7.妊娠中絶を合法にした『アルフィー』【1966】
- 8.売春防止法の発端『赤線地帯』【1956】
- 9.未成年の労働法の改革へ導いた『ロゼッタ』【1999】
- 10.死刑制度について論争を巻き起こした『殺人に関する短いフィルム』【1988】
社会的な影響を与えた映画10作品を紹介!
皆さんはなぜ映画を見に行きますか?現実から逃げるために映画館に行き、スクリーンにドップリはまる方も中にはいるかもしれません。巨大な銃で巨大なCGのうさぎを撃っているシーンとか…。特に内容は関係なく、なんとなく楽しめればいいと思っている方もいるのではないでしょうか?
ただし、安っぽいスリルと笑いだけではない作品も多くあります。ときに映画が世界を変えてしまうこともありえるのです。チケット売り場を飛び越えて現世界の社会を変えたフィルムを10作品ご覧ください。
1.アメリカ国民が政治に希望をもてなくなった『JFK』【1991】


オリバー・ストーン監督の1991年に公開された『JFK』はかなりの議論を勃発し、映画による精神的作用についての研究が行われました。スタンフォード大学のリサ・バットラー臨床心理士の1997年の研究から『JFK』鑑賞後、怒りの感情が2倍になることがわかったそうです。
さらに、政治的概念にも影響があったそうです。映画に感化され、投票などの政治にかかわろうとする意志がかなり下がってしまうことが明らかになりました。どうやら何をやっても無駄という考えにいたるみたいです。
アメリカのもっとも影響力のある政治家、CIA、軍産複合体や暴力団をとり囲んでいる膨大な陰膨が視聴者を無力にしてしまうようです。
2.安全な中絶手術を望んでしまう『サイダーハウス・ルール』【1999】


1999年にアカデミー賞をとったラッセ・ハルストレム監督の『サイダーハウス・ルール』ではマイケル・ケインが中絶手術に没頭するウィルバー・ラーチ医師を演じました。
第二次世界大戦中のまだ中絶が強く禁止されていたアメリカのメイン州が舞台の作品です。ラーチ医師はひどい苦境にたたされている女性たちを哀れんで手術を施していました。
南イリノイ大学のケネス・マリガンとフィリップ・ハベルが行った2011年の研究によると映画の影響によって中絶手術に対する意識が高まり、安全で合法的な中絶手術を望むようになるということがわかりました。
この研究では『サイダーハウス・ルール』を見たグループと見ていないグループの近親相姦の事例に対しての意見を比べました。その結果見た側は合法的な中絶手術をより支持するということがわかったのです。映画は中絶手術に対する評価に対してとても重要な効果を表しました。
3. 温暖化に注目を集めさせた『デイ・アフター・トゥモロー』【2004】


なぜか温暖化によって氷河期を迎えることとなったという科学的にはおかしな設定の災害映画が環境問題に対する意識を高めたとはにわかには信じられないかもしれません。しかし、イェール大学の研究者が映画公開3週間後におこなった全国的なアンケート調査が映画の影響を裏付けました。
映画を見ていない人のうち72パーセントが温暖化の影響に注目していました。そして、映画を見るとそれが83パーセントにまで上がることがわかりました。さらに映画鑑賞者は都心の洪水などの気候の変化による災害がここ50年でおこるかもしれないと心配する傾向にあることが判明したそうです。
529人がこのアンケート調査に協力してくれたそうなのですが、世界で興行収入5億を得た『デイ・アフター・トゥモロー』ならば世界規模の影響を及ぼしたと考えても良いのではないでしょうか。
4. 人種差別とその関係を暴露した『マルコムX』【1992】

マルコムの存在が、組織やアメリカの白人社会に邪魔になると暴力で排除するという今もなくならない構図。
過激な発言が注目されますが、考え方を柔軟に変えていく姿勢も持ち合わせていました。もし生きていたらという思いが尽きません。
本当の彼のことを知っているのか?

1997年のアメリカの政治雑誌、ジャーナル・オブ・ポリティクスにミシガン州立大学とコロラド大学ボルダー校からヒューストンのアフリカ系アメリカ人についての共同研究が発表されました。
この研究によると『マルコムX』という映画そのものとそれに対してのメディアの報道が一般人の政治に関する考え方に変化を及ぼしたようです。
特に映画を直接鑑賞した人と映画についてのドキュメンタリーをCBS(アメリカの放送局)で見た人が影響を強く受けました。政治内でおこる人種差別と人種間の関係性を重要視するようになったそうです。
5.共和党の報道機関に対する態度を変えた『大統領の陰謀』【1976】


アメリカの新聞(ワシントン・ポスト)記者ボブ・ウッドワードとカール・バーンスタインがウォーターゲート事件を追いかけ、共和党のリチャード・ニクソン大統領の権力の乱用を暴露するという内容のアラン・J・パクラ が監督した作品です。
この二人の勇敢な記者を描いた『大統領の陰謀』はアメリカのジャーナリズムの学校への入学者を増やしたそうです。
1979年にオレゴン大学とカンザス州立大学の教授が共和党と人民党の報道機関に対する考えがそれぞれどのように映画の影響を受けたか研究しました。
予想はつくと思いますが、改進的な考えをもつ人は映画の中の報道機関にいいイメージをもち、逆に保守的な考えを持つ人は報道機関に悪いイメージをもつという研究結果が得られました。
人民党は記者が書いたり話したりする内容をある程度規制する法律が必要だとコメントしたそうです。一方共和党は報道機関をがっちり制限したほうが良いと強く主張したみたいです。
6.反乱の教科書となった『アルジェの戦い』【1966】
1954年から1957年にアルジェリア人がフランスから独立しようと武装蜂起し、はじまった戦争についてのドキュメンタリー映画です。監督のジッロ・ポンテコルヴォは中立な立場で双方の視点からこの映画を作ったようですが、フランスの権力者たちは監督をアルジェリア派だとひどく非難しました。
フランスでは政治的に危険と判断され、公開後5年もの間上映禁止になってしまいました。幸運なことに反乱の教科書または反乱を抑える教科書としてフランス以外では上映されていたみたいです。
ブラックパンサー党からアイルランド共和国軍まで『アルジェの戦い』からテクニックを勉強したようです。同じように2003年、米国国防総省がイラクのゲリラ部隊に勝つためのトレーニング用に映画を使ったそうです。
7.妊娠中絶を合法にした『アルフィー』【1966】
女性だけではなく、男性から見てもシビれるカッコよさな訳です。 水色のベスパに乗るのが夢だね。

女好き過ぎるイギリス俳優への伝統の罰ゲームかなんかかと思った。アルフィーはでも自分の不幸を人のせいにしないしハッパもやってないのでえらい。あれ?やってないよな?

イギリスがまだ妊娠中絶を禁止していたころにマイケル・ケイン主演のクラシック映画『アルフィー』が1966年に上映されました。
アルフィーのセフレが妊娠し、苦しみながら不法に中絶するという結末を迎える映画です。この非合法的な妊娠中絶というテーマに観客は多大なるショックを受けました。
公衆は『アルフィー』をスキャンダルとして受け止めるだけではなく、心を動かされたそうです。そうでなくては一年後にイギリスの国会が妊娠中絶法を制定し、認可された医者による中絶を許可するということにはならなかったでしょう。
ちなみに『アルフィー』で行われたような危険な中絶は改めて禁止されたそうです。
8.売春防止法の発端『赤線地帯』【1956】

東京のいかがわしい地域でせっせと働いている5人の売春婦にまつわる話です。溝口健二監督は当時日本の社会において常に後回しにされていた女性の人生にスポットをあて脚色しました。この目新しい内容は観客と政治家に強い衝撃を与えたそうです。
公開から数か月後、国民からの強い要望により日本の政府は売春防止法を施行しました。この法律の効果はいまいちわからないそうですが、『赤線地帯』の効果は抜群だったようです。
9.未成年の労働法の改革へ導いた『ロゼッタ』【1999】
2015.2月鑑賞


ジャン=ピエールとリュック・ダルデンヌ監督が貧困から抜けだそうと必死にもがく17歳の女の子を撮りました。『ロゼッタ』は幅広く支持され、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞しました。
『ロゼッタ』はいいようにこき使われる未成年者を映し、それがベルキー人の興味を強く引いたようです。これによりベルギー政府は児童労働法を見直し、未成年でも最低賃金は支払われるよう改正しました。
10.死刑制度について論争を巻き起こした『殺人に関する短いフィルム』【1988】
クシシュトフ・キエシロフスキー監督の『殺人に関する短いフィルム』は気持ちのいい内容ではありませんが、映画のできはとてもよく、好きなジャンルではないと思いつつも惹かれて見てしまうかもしれない、メッセージ性の強い作品です。
残酷な殺人とそれに伴う極刑という内容は死刑執行についてポーランド中議論を巻き起こしました。観客は内容に激怒し、また動揺もしたようです。『殺人に関する短いフィルム』は死刑制度に対して議論を勃発させたことと、それにより死刑制度を廃止させたことで賞賛されました。