映画史に残る名作『2001年宇宙の旅』の名言・名セリフを紹介!
『2001年宇宙の旅』はSF小説家のアーサー・C・クラークと、映画監督のスタンリー・キューブリックが共同で手がけ、映画版はキューブリックが脚本と監督を務め、小説版はクラークが書いたことで有名です。映画版も小説版もクラークによる短編小説、『前哨』が元になってます。
一切の説明を省き、キャラクターのセリフを極力省いた事から難解な映画だった為、公開当時は映画の評価については賛否両論でした。興行収入も良くなかったものの、時間と共に評価が上昇。
現在では映画史に残る名作となっており、多数の映画協会にて映画史上ベスト・ランキングで上位にランクインされているほどです。
木星探査の為、宇宙船ディスカバリー号に乗る主人公・デヴィッド・ボーマン船長率いる船員と、人類が手掛けた中で最高の人口知能を備えたコンピューター・HAL9000という特徴的なキャラクター達から飛び出した名言・名セリフをお届けします。
未来を予言したHAL9000とのチェスシーンでの会話
ドクター・フランク・プール「そうだな、キングか…、いや、クイーンがポーンを取る、わかった?」 HAL9000「ビショップがナイトのポーンを取ります。」 ドクター・フランク・プール「ふんっ、悪手だな。えーと、ルークをキング1へ移動。」 HAL9000「フランク、申し訳ないですが、あなたは見落としているようです。クイーンがビショップ3へ移動、ビショップがクイーンを取り、ナイトがビショップでチェックメイトです。」 ドクター・フランク・プール「ふんっ、そうだな、お前の言うとおりだ。投了するよ。」 HAL9000「楽しい試合をありがとうございます。」 ドクター・フランク・プール「ああ、ありがとな。」
この時HALが人間にチェスで勝ってますが、『2001年宇宙の旅』が公開された1968年当時、コンピューターが人間にチェスで勝つ時代なんて来ないものだと信じられ、もしその時が来たとしたら人類はコンピューターにこの世を占領されてしまうと多くの人は考えてました。
しかし、現実世界にて1980年代にコンピューターが人間にチェスで勝ってしまった事により世に衝撃を与え、コンピューターによる地球の占領が現実味を帯びてしまった事になってしまったのです。この映画が予想した未来が現実になってしまったと長き時が立つと共に印象深いシーンとなりました。
すべての加工食品はチキン味というアメリカンジョーク
ドクター・フロイド「それはなんだい?チキンか?」 ドクター・マイケルズ「まあ、チキンっぽいかな。どうせ全部同じ味だよ。」
宇宙船の乗組員が宇宙食を食べる時に飛び交うセリフです。
欧米では、人口的に作られた加工食はすべてチキンの味がすると一般的に言われており、未来の宇宙食も例外ではないというユーモアが含まれています。また、登場する宇宙食の斬新な見た目もかなり印象的です。
未来の子供たちが欲しがるペットが以外な動物!?
ドクター・フロイド「他に何か特別に欲しい誕生日プレゼントはあるかい?」 フロイドの娘「ブッシュベイビー(ガラゴ)」 ドクター・フロイド「ブッシュベイビーか…。それはどうかな。」
ドクター・フロイドが宇宙から娘と電話で連絡を取った際の会話です。
ブッシュベイビーとは、ガラゴの別名であり、主に南アフリカに生息する夜行性のサル目です。南アフリカだけでなく世界的にも最も原始的な霊長類と言われるブッシュベイビーですが、未来の子供たちがペットとしてそういう動物を欲しがるようになっているというユーモアと、今作のストーリーに大きくかかわる"生物の進化"をも皮肉るメッセージも込められている面白い会話です。
映画史上最凶の悪役・HAL9000の印象深いセリフ・その1
「AE35ユニットに不具合を感知しました。72時間後に完全に不能な状態になります。」
HALが乗組員を密かに抹殺する作戦の始まりです。最高級の人工知能を持つコンピューターと人間の戦いの始まりであるこのセリフに込められた意味は観客の脳裏に焼き付かれている事でしょう。
実際に現実世界でも最近人工知能が著しく発達しており、コンピューターが人間に勝る日は近く、コンピューターが人類を滅亡させるのではないか?と危機感を感じる人も多くなっているのも事実です。
映画史上最凶の悪役・HAL9000の印象深いセリフ・その2
ボーマン船長「ハル、ポッドの格納庫を開けてください」 HAL 9000「デイブ、申し訳ございません。恐れ入りますがそれは出来ません。」
HAL9000からの報告により、不具合を直す為ポッドに乗り、宇宙船の外に出たボーマン船長が宇宙船の中に戻る際に行われたやり取り。この時点で初めて命令に逆らうHAL9000。そして、ボーマン船長も事の重大さに気が付くきっかけとなりました。
映画史上最凶の悪役・HAL9000の印象深いセリフ・その3
ボーマン船長「HAL、もう口論するつもりはない!今すぐドアを開けろ!」 HAL9000「デイブ、もうこの会話は何も目的がありません。さようなら。」
HAL9000がボーマン船長に対してハッキリと歯向かい、お互いに敵意をむき出しにする印象的なシーンでのセリフ。勝利を確信したHAL9000がボーマン船長を冷たい言葉で切り捨てる瞬間はゾッとします。
HAL9000の言い訳
「ごく最近、私が酷い判断をしてしまった事は十分に理解してます。しかし、私の機能は正常に戻る事を完全に保証します。私はまだミッションを成し遂げる為の熱意と自信に満ち溢れてます。そして、あなたを援助したいのです。」
宇宙船から締め出したボーマン船長が奇跡的に船内に帰還した事に恐れたHAL9000の発言。ボーマン船長が船外にいる間、命令に逆らっただけでなく船内にいた乗組員を全員抹殺したHAL9000。ボーマン船長の逆襲を恐れて出てきたHAL9000の言い訳です。
コンピューターであるHAL9000が"言い訳"を発する事が出来きるほど人口知能が発達している事により、"感情"がある可能性も示したセリフです。また、ボーマン船長の怒りを抑える目的もあるこのセリフは、人間の思考すらも計算に入れている様子もあり、究極の人工知能を持つコンピューターの怖さが詰め込まれています。
HAL9000の必死の訴え
どんな存在であろうとも、すべての意識を持つ実体が望むように、私は自分自身を最大限に活用出来るように設定してます。
人口知能を持つコンピューターのHALによる、「意識」や「存在」に触れた非常に意味深で哲学的な思想が詰め込まれたこのセリフはかなり印象的です。
理解を求めるHAL9000
「聞いてくれデイブ、あなたが怒るのもわかる。正直に言うが、一旦座って、ストレスを落ち着かせる薬でも飲んで、考え直した方が良いと思うよ。」
ボーマン船長がHAL9000を停止する為の部屋に向かう途中、HAL9000による必死な説得の中に出てくるセリフ。敬語ではなく、乗組員と同じ用な語り口になっている事から、自分を人間と同等な存在として認識している事が伺えます。
一度船長に歯向かってしまったから今更敬語を使う必要が無くなったと思っている可能性もあるセリフです。また、コンピューターの口からストレスを落ち着かせる薬などと、非常に人間的な発言も出ており、不気味さが増す印象的なセリフです。
HAL9000に芽生えた感情
「怖い。怖いよデイブ。デイブ、私の意志が無くなっていく。感じる、感じる事が出来る。意志が無くなっていくんだ。疑いようがない。感じる、感じる、感じる…。私は怖が…ってる。」
ボーマン船長がHAL9000を停止する際に飛び出した印象的なセリフ。ここでかなり"感情的"な発言を始めたHAL9000。HAL9000が初めて感じる事が出来たきっかけとなったのは皮肉にも"死"に直面した時である事も非常に哲学的です。
また、"死"の恐怖に包まれながらも、初めて"感じた"事を実感した嬉しさも含まれているのが伺えるセリフでもあります。さらにHAL9000はこのセリフの後に、停止されていく中で「デイジー・ベル」という歌を歌ってますが、この歌は製造後初めて覚えた歌であり、"死"と"誕生"の二つ要素が同時に表現されています。
HAL9000はこの映画を通して、"誕生"、"進化"、そして"死"を経験しており、人類だけでなく宇宙に存在するすべての"意識を持つ物体"を象徴しているのではないでしょうか。