映画『あの頃ペニー・レインと』!1970年代の音楽と青春が蘇る
映画『あの頃ペニー・レインと』は10代で雑誌『ローリングストーン』のライターをしていた監督のキャメロン・クロウ自身の体験を基にした自伝的な作品。第73回アカデミー賞で脚本賞を獲得しました。
1970年代のアメリカでロックバンドに熱狂する若者たちの青春と恋愛を描いた人気作です。2013年にはローリングストーン誌が選ぶ「男性も観るべき映画」の1本として選ばれており、男女ともに楽しめる内容です。
映画『あの頃ペニー・レインと』のあらすじ
15歳のウィリアムは家出した姉が残したレコードをきっかけにロックの世界にハマリます。雑誌『ローリングストーン』のライターになるチャンスを得た彼は、期待の新星として注目されるロックバンド スティルウォーターのツアーに同行取材を始め、そこでグルーピーの1人であるペニー・レイン(ケイト・ハドソン)と出会うことに。
グルーピーとはバンドの追っかけをする女の子のグループのことで、彼女たちにとってバンドメンバーと親しくなり肉体関係を持つことがステータスになります。
グルーピーの中でも一際目を引くペニー・レインに恋心を抱くウィリアムですが、彼女がバンドのギタリストであるラッセル(ビリー・クラダップ)と付き合っていることを知るのでした。
『あの頃ペニー・レインと』のキャスト
ウィリアム・ミラー/パトリック・フュジット
パトリック・フュジットは11歳の時に演技の勉強を始めテレビドラマへの出演経験はあったものの、本作への出演で一気に注目を浴びました。『あの頃ペニー・レインと』の撮影中には、約7センチ身長が伸び、声変わりもしたそうです。
その後は『幸せへのキセキ』の飼育員役や『ゴーン・ガール』の警察官役で出演し、『ER緊急救命室』や『Dr.HOUSE』などのドラマにはゲスト出演もしていました。
現在『ウォーキング・デッド』の原作者・製作陣によるテレビドラマ『アウトキャスト』では、悪霊と戦う主人公カイル・バーンズを演じ、さらなる出世作になるのではと話題になっています。
幼少時代のウィリアム/マイケル・アンガラーノ
飛び級したために同級生から”ガキ”とからかわれる幼少時代のウィリアムを演じるのは、イタリア系の米国人俳優マイケル・アンガラーノです。本作への出演をきっかけに『シービスケット』や『ロード・オブ・ドッグタウン』など、次々と映画やドラマへ出演しています。
2008年には米女性誌ヴァニティフェアで期待の新人に選ばれました。
スティーブン・ソダーバーグが監督を務め、エミー賞やゴールデングローブ賞にもノミネートされた歴史医療ドラマ『The Knick/ザ・ニック』にも出演しています。
ペニー・レイン/ケイト・ハドソン
伝説的なグルーピーのペニー・レインを演じるケイト・ハドソンは、本作でその名を世に知らしめました。彼女は自ら監督のキャメロン・クロウに直談判しオーディションを受け、その演技に感動した監督がペニー・レイン役に抜擢したそうです。
その後の彼女の快進撃は止まらず、『10日間で男を上手にフル方法』にアンディ・アンダーソン役、『NINE』にステファニー役で出演。『Mother’s Day(原題)』(2016年全米公開)ではジェニファー・アニストン、ジュリア・ロバーツらと共演しました。
2017年に公開されるピーター・バーグ監督による『ディープウォーター・ホライゾン(原題)』にも出演しています。
ラッセル・ハモンド/ビリー・クラダップ
バンドのギタリストでファンの憧れの的であるラッセル・ハモンドを演じるのはビリー・クラダップ。ラッセルはイーグルスのリーダー グレン・フライをモデルに描かれたキャラクターです。
トニー賞の受賞歴もあるクラダップは、バリー・レビンソン監督作『スリーパーズ』トミー・マルカノ役、ティム・バートンが監督の『ビッグ・フィッシュ』ウィル・ブルーム役、ザック・スナイダーが監督作『ウォッチメン』ドクター・マンハッタン役など多彩な役柄を演じ、演技力に定評があります。
エレイン・ミラー/フランシス・マクドーマンド
ウィリアムの母親エレイン・ミラーを演じるのはフランシス・マクドーマンドです。コーエン兄弟監督作品の常連である彼女は、彼らが監督・製作の『ファーゴ』マージ・ガンダーソン役でアカデミー主演女優賞を獲得しています。
本作ではロックを嫌う厳格で過保護な母親を演じ注目を集め、アカデミー助演女優賞にノミネートされました。
ジェフ・ベイブ/ジェイソン・リー
スティルウォーターのボーカル ジェフ・ベイブを演じるのはジェイソン・リー。本作の監督であるキャメロン・クロウ監督の『バニラ・スカイ』にも出演する彼は、幅広い役柄をこなす演技派です。
その特徴的なしゃがれ声で『Mr.インクレディブル』の悪役シンドロームの声優も務めています。
ポレキシア・アフロディシア/アンナ・パキン
ペニー・レインの友達でグルーピーのポレキシア・アフロディシアを演じるのはアンナ・パキンです。
彼女はジェーン・カンピオン監督の『ピアノ・レッスン』で映画初出演を果たすと、11歳の若さでアカデミー助演女優賞に輝きました。
もともと女優志望だったわけではないという彼女は女優業から離れた時期もありましたが、映画『X-MEN』シリーズやドラマ『トゥルーブラッド』に出演するなど、若手実力派女優として活躍しています。
サファイア/フェアルーザ・バーク
グルーピーの1人でオーラが見えるというサファイアを演じるのはカリフォルニア出身の女優フェアルーザ・バーク。その青い目にちなんでペルシア語でターコイズブルーを意味するフェアルーザと名付けられたそうです。
代表作として『アメリカン・ヒストリーX』が知られています。
ディック・ロスウェル/ノア・テイラー
スティルウォーターのバンドマネージャー ディック・ロスウェル演じるのは英国出身でオーストラリアでも活躍している俳優ノア・テイラーです。
テイラーは『シャイン』で天才ピアニストのデイヴィッド・ヘルフゴッドを演じ高い評価を受けました。他にも『チャーリーとチョコレート工場』、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』、『プリデスティネーション』などに出演しています。
アニタ/ズーイー・デシャネル
厳しい母親に反発し、スチュワーデスになることを夢みて家出をするウィリアムの姉アニタを演じるのはズーイー・デシャネルです。スチュワーデスになったアニタは空港で偶然再会したウィリアムに連れられて嫌々ながらも実家を訪れたことで、母親エレインとの関係を修復することができました。
デシャネルの代表作は大人気ラブコメディ作品『(500)日のサマー』のサマー役です。また、主演を務めたコメディドラマ『New Girl/ダサかわ女子と三銃士』シリーズはエミー賞やゴールデングローブ賞にノミネートされ、人気女優の地位を確固たるものにしました。
レスター・バングス/フィリップ・シーモア・ホフマン
ウィリアムの才能を信じ、彼に助言する雑誌『クリーム』の編集者で実在の人物レスター・バングスを演じるのはフィリップ・シーモア・ホフマンです。
ホフマンは伝記映画『カポーティ』で作家トルーマン・カポーティを演じアカデミー賞主演男優賞を獲得しました。大作だけでなくカルト作品まで幅広いジャンルの作品に出演していましたが、2014年に享年46歳で亡くなり『ハンガー・ゲーム』シリーズ最終章の『ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション』が遺作となりました。
『あの頃ペニー・レインと』の音楽(挿入歌)
サイモン&ガーファンクルの『アメリカ』
ウィリアムの姉アニタが家を出る理由を伝えるために母エレインにこの曲を聞かせます。また、彼女がボーイフレンドと一緒に家を出ていくシーンでもこの曲が流れていました。
アルバム『ブックエンド』に収録されていたこの曲は、「みんなアメリカを探すためにやってきた」という歌詞が印象的に繰り返され、希望を求めて自由の国アメリカを目指す若者の姿が歌われています。
エルトン・ジョンの『可愛いダンサー(マキシンに捧ぐ)』
物語の中盤、バンドメンバーと衝突したラッセルは地元の若者たちとバカ騒ぎをして一夜を過ごし、ディックによりツアーバスに連れ戻されます。ぎこちない空気で出発したバスの中で流れてくるのがエルトン・ジョンの『可愛いダンサー(マキシンに捧ぐ)』でした。
ひとり、またひとりと歌い始め最後には全員での合唱になり皆に笑顔が戻ります。音楽の持つ力を感じる感動的な場面です。
『可愛いダンサー(マキシンに捧ぐ)』はアルバム『マッドマン』に収録されています。
エルトン・ジョンの『モナ・リザ・アンド・マッド・ハッター』
ペニー・レインは、自分はグルーピーではなくバンドを支えるバンド・エイド、バンドメンバーには本気にならない、と言っていました。しかしラッセルの恋人が現れると自分は遊びにすぎなかったことを思い知らされ、ニューヨークの街へ姿を消します。
それを見たウィリアムがペニー・レインを追って、街中を探し回るシーンでこの曲が流れていました。
「ニューヨークで美しい薔薇の木は育たない」それでも、その大都会で「一人で自分の道を生きる 僕だけの種をまいて」という歌詞は、ウィリアムの気持ちを代弁しているようです。
『モナ・リザ・アンド・マッド・ハッター』はアルバム『ホンキー・シャトー』に収録されています。
バンドへの取材経験が豊富な監督ならではの演出も
監督キャメロン・クロウの自伝的作品というだけあって、実体験に基づいた演出が随所にみられます。
キャメロンが初めてツアーの同行取材をしたのはオールマン・ブラザーズ・バンドでした。ボーカリスト兼オルガンプレイヤーのグレッグ・オールマンは彼を信用せず、「お前は”チクリ屋”か?」と何度も問い詰められたそうです。
また、スティルウォーターが飛行機で移動する際に不時着することになり、メンバーが秘密を暴露するというシーンも実体験からヒントを得ています。イギリスのロックバンド ザ・フーに同行した際に飛行機事故に見舞われたものの、なんとか一命を取り留めたそうです。
ローリングストーン誌の編集者ベン・フォン・トーレスは実在の人物
ウィリアムを担当する雑誌『ローリングストーン』の編集者ベン・フォン・トーレスは実在の人物で、1980年代初期まで編集者・ライターとして在籍し、ボブ・ディランやドアーズの取材経験もありました。
ベン・フォン・トーレス役をユーモアたっぷりに演じたテリー・チェンは、本作で映画デビューを果たしています。
ラッセルの迷台詞「俺は輝ける神だ!」の裏話
バンドメンバーとの衝突の末、自暴自棄になったラッセルは「俺は輝ける神だ!」と叫び、屋根から庭のプールへ飛び込みます。
このラッセルの台詞はレッド・ツェッペリンのボーカリストであるロバート・プラントが、ロサンゼルスにあるハイアット・ホテルのテラスから実際に叫んだ言葉です。
当時、取材をしていた監督のキャメロン・クロウはこの言葉を聞いていて、ラッセルの台詞として使用したそうです。
『あの頃ペニー・レインと』の名言【ネタバレ注意】
「評論家で成功したけりゃ正直になれ。手厳しく書くんだ」
ウィリアムに記事の執筆を依頼したレスター・バングスの助言です。
その後もツアーへの同行取材中、行き詰った彼はレスターからのアドバイスでピンチを切り抜けます。
「ビールの銘柄は?」
ウィリアムが「ラッセルは50ドルとビールで君(ペニー・レイン)を売ったんだ」と暴露した時、ペニー・レインは涙を流しながらも笑顔を作ってこう聞き返します。
決してラッセルの本命の恋人になれないと悟り、傷つきながらも強がる彼女の健気さをケイト・ハドソンが見事に演じたシーンです。
『あの頃ペニー・レインと』の感想【ネタバレ注意】
ペニー・レインの魅力にやられちゃう人続出
____RiN____
可愛い可愛いペニー・レイン。
10代の華奢な身体に妖艶な微笑みをのせて、軽やかに憧れのミュージシャンたちの間をすり抜けるペニー・レイン。
いつだってみんなの中心で優雅に微笑んでいたペニー・レイン。
わたしは、彼女に憧れる周りの雑踏の中にいました。
ちっとも冴えない女の子だったけれど、あんな風に好きな人にすり寄る勇気もなくて、何よりキラキラが羨ましくて、その光の破片を、出入りしていたライブハウスで遠巻きに眺めていたことを思い出します。
グルーピーと呼ばれる、憧れのバンドグループの追っかけの女の子たち。やりたい放題なスターたちは、そこから可愛い子を見繕って、自分たちのツアーに同行させるなんてことが、よくあったバンドブーム全盛期の70年代初頭。
有名音楽誌でのデビューを控える10代の記者ウィリアムは、「スティールウォーター」の取材のためツアーに同行し、そこで、麗しいグルーピーの女の子ペニー・レインに出会います。
憧れのギタリストと好きな女の子。複雑な気持ちを抱えながらも、憧れの世界での夢の実現を果たしていくウィリアムの青春は、70〜80年代のロックミュージックに彩られ、どうやっても胸を締め付けてきます。
大切な映画です。
Naura_Tanaka
タイトルでずっと気になってて
タイミングよくWOWOWで観られました!
所々言葉なく魅せる映像がいいです。
バンドマンにはよくあるようなことが
ペニーがいることでキラキラして見えて
かわいい人だな とだんだんすごく好きになりました。
ビールの銘柄聞いちゃうところも
素敵な人だなと思うし
当たり前だけどペニーあっての
この映画ですね!
すごく好きな映画になりました。
海が見たいなって思う気持ちの時に
観たくなる映画です。
音楽が好きな人におすすめの映画
Teppeyc2Rock
15歳でローリングストーン誌に記事を書いた少年の実話ベースの物語。
普段ロックを好んで聴いてることもあり、最初から最後までサウンド面で楽しめたし、やっぱりロックミュージックは、聴いた人の人生をいい意味でも悪い意味でもメチャクチャにしてくれる最高の音楽だなと実感!
ペニー・レインという女性はホント魅力的で憧れるし、主人公の彼女に対する真っすぐな思いもカッコよかった!そんな主人公をアシストしてくれるクリーム誌のレスターも素敵でした^^
ストーリーも音楽も大満足できる映画でした!
yryotay
音楽好きにはすごいいい映画!
エルトンジョンの曲よかったなぁ(^^)
1970年代のアメリカの雰囲気に酔いしれる
raffffar
なんだか暖かかったな〜と観終わって思った。色合いも音楽もファッションもウィリアムやラッセルやペニーの笑顔もラストシーンも。音楽に人間とファッションが密接しているのがとても羨ましかった!時代なのかな、今とは違うんだなぁ〜と思った。70sの服を扱うお店で働いているので当時あの服はこういう風に着られて生きていたんだと知れたのが嬉しかった。花柄のシャツ、刺繍のチュニック、カギ編みのキャミソール、バンドTシャツ、こぞってみんな履いてるデニムスタイル…かわいかった!
mazda620
60年代末から70年代にかけてがよくわかってヴィジュアル映画、音楽映画、年代映画としてすごく楽しめる。
ストーリーを楽しもうとしてこの映画をみるとあまり面白くない。
この作品は監督が実際15歳でローリングストーン誌に記者として記事をかいたことから基づいて描いた半実話。
ストーリーから特別何か伝えたいものがあるというよりは、しばられた環境で育ちながら監督自身で手に入れたすきなもの、そしていろんな人と出逢って好きがより濃く深くなっていったこと、何よりペニーレインのような女性がいたこと。
バンドの人柄はわりとどうでもよくて、好きになったものに対しての姿勢っていうか、音楽を本質から見る事というか。
別の例として、よく俳優とかのプライベートや恋愛で騒ぎきなったときにイメージかわったとかあまり好きじゃなくなったとかあるけど、彼等のプライベートなんて知人でもないんだからわりとどうでもよくて、役者としてどうかということが重要であり、そういうのをファンっていうんじゃないの?って思ったりするんだけどこの作品はなんとなく似たようなことが描かれているかな。
主人公自身ライブに同行しているうちに、それは間違ってるって思うような場面にもでくわすけれど、それでも音楽として彼等のファンであること。
J-POPあるあるだけど流行が終わったらおしまいならまずファンとも呼べないしそんなのは最初から好きでもなかったんだと思う。
サイケデリックロック音楽がよくわかる映画。ボヘ感のあるロッカー、ロケバスの感じもライブ会場の感じも最高。テイストとしてこの年代は、彼等の好きなもの全てが衣食住に連動していてわかりやすくて薄っぺらい好きではない人ばかりでやっぱりすごく好み。
あ、あと出てくる人みんなイケメン。