2017年7月6日更新

映画『真夜中のカーボーイ』にまつわる魅惑的な15のコト【ダスティン・ホフマンの名演技】

大都会ニューヨークを舞台に、富と名声を求めて夢を追って生きようとする男たちの現実と孤独を描いた『真夜中のカーボーイ』。今日でも非常に高い人気がある作品ですが、こちらでは、作品にまつわる15の裏話を、作品の画像と共にご紹介しております。

1. 映画『真夜中のカーボーイ』はアカデミー賞3部門をはじめ、数々の賞を獲得!

富と名声が渦巻くニューヨークを舞台に、夢をつかもうとするカウボーイのジョーとホームレスのラッツォの友情と希望、そして挫折を描いた『真夜中のカーボーイ』。本作は、ストーリーの完成度はもちろんのこと、ジョーを演じたジョン・ヴォイトとラッツォ役のダスティン・ホフマンの演技も話題を呼び、高く評価されました。

そのため、いくつもの賞を受賞しており、第42回アカデミー賞では、ジョンとダスティンの主演男優賞、また助演女優賞が編集賞がノミネートされ、そして同賞脚色賞、監督賞そして作品賞に輝いています。

そして、アカデミー賞の前哨戦ともいわれている第27回ゴールデングローブ賞では主演のジョンが有望若手男優賞に、第23回英国アカデミー賞では作品賞、監督賞、新人賞、主演男優賞、編集賞、脚色賞の6部門を受賞しました。

2. 挫折しかけたダスティン・ホフマンの転機

ダスティン・ホフマンは『真夜中のカーボーイ』出演前、1968年に日本でも公開された映画『卒業』でのベンジャミン・ブラドック役で広く知られました。しかし自分がスターだとは思っていない反面、周囲に持ち上げられたことである種の挫折を感じていたそうです。

その頃、オフ・ブロードウェイの舞台に出演していた彼の演技が、丁度、本作のキャスティングに奔走していた監督のジョン・シュレシンジャーの目に留まります。監督にとって目の前に現れた無精ひげを生やし、だらしない服に身を包み、バワリー・アクセントを話しながら巧みに演じる姿が探していたキャスト像と重なり、彼に出演を打診したのです。

出演を承諾した彼は今作のラッツォ役で第42回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、名実ともに人気俳優となったのでした。

3. 映画『卒業』の監督が出演を止めていた?

ダスティン・ホフマンの人気を押し上げた『卒業』で監督を務めたマイク・ニコルズは、二枚目の役柄を演じたことで人気になったにもかかわらず、ホームレス役を演じようとすることに猛反対し、『真夜中のカーボーイ』に出るべきではない、と強く思っていたそうです。

実際、ダスティンはマイク監督に呼ばれて「お前は正気か?私がお前をスターにしてやったのに、こんなみすぼらしい役を、しかも主演は自分ではなくジョン・ボイトだというこの役を演じるつもりなのか。」と強く非難したそうです。また、「何がしたいんだ。怠けたいのか?」とも言ったそうですが、彼は「人物の真実を演じたいし、それが好きなんだ。」とこの発言を一蹴し、ラッツォを見事に演じたのでした。

4. よりリアルな病人になるために病気になった!

ラッツォは労咳を患っている男であり、咳をします。そんな彼を演じるために、ダスティン・ホフマンは実際に風邪を引いたそうです。

咳をしている姿を演じるにあたり、いかにも演技と分かるような咳しかできなかった彼はそこで思い悩んでいました。ただ、自分は最後までリアリティを追及し、物語の作品世界に現実味を持たせたいと考えため、身を張って演技に打ち込んだのでした。

5. フィールドワークも徹底

ダスティン・ホフマンは、スラム街に住んでいるラッツォを演じるに当たり、かなりの時間をニューヨークのスラム街で過ごしています。

富や名声が行きかう大都市の片隅にあるスラム街にはそれらとは真逆の孤独で悲惨な生活を送る人々が住んでおり、ラッツォという人物がどういう中で生きているのか、そして、そこでどういう感性や価値観を育んだのかを体得したかったのだそうです。

そこで、彼は自らスラム街で様々な浮浪者らを観察し、彼らの精神動向や立ち振る舞いを学んでいました。

6. 小石を使った役作り?

ダスティン・ホフマンの役作りは、足を引きずる演技にまで及びます。

彼が演じたラッツォは片足を引きずって歩く人物であり、自然に片足を引きずりながら歩くためにダスティンは自分の靴の中に小石を入れて演技をしていました。意図的に足を引きずるのではなくごく自然に足を引きずることで鑑賞者に違和感を与えない様にしていたのです。

7. あの有名なシーンは本気の怒りだった!

ジョーと話しながら歩いていたラッツォは、歩いている彼らに向かって突っ込んできたタクシーに対して車のボンネットを叩きながら「俺は歩いているんだ!」と怒る、という有名なシーンがありますが、この時のダスティン・ホフマンの怒りはラッツォとして、というよりも彼本人としての怒り、だったようです。

というのも、この場面は公に撮影を敢行していたわけではなく、歩行者もエキストラなどではない一般市民であり、信号などの交通状況も制御していない日常と全く同じ状況下で撮影しています。そのため、非常に自然体の場面に仕上がってはいますが、撮影の際はなかなか思い通りにことがゆかず、何度も何度も撮り直しを行ったようです。

そのため、ラッツォを通じて蓄積されていったダスティンの怒りもあの様に吐き出されたわけなのですが、監督はあえてその部分を作品に採用したのでした。

8. ダスティン・ホフマンの変わりように涙した女性ファンがたくさんいた

ダスティン・ホフマンは映画『卒業』で二枚目の爽やかな大学生役を演じたことで、多くの女性をとりこにし、アイドル的な人気がありました。しかし、『真夜中のカーボーイ』では、それとは真逆の風貌を持った不潔でみすぼらしいラッツォを演じたことにより、多くの女性ファンが相当なショックを受けたそうです。

9. ダスティン・ホフマンの演技が7位にランクイン!

本作でのダスティン・ホフマンの演技は大変高く評価され、公開から時間が経った今日でもそのパフォーマンスは素晴らしいものだと言われています。

2006年にプレミア・マガジン誌が統計した「最も優れた演技ベスト100」では、ラッツォ役のパフォーマンスが7位にランクインしており、映画史に残る演技となりました。

10. 同名のキャラクターがいる!?

ダスティン・ホフマンが演じているキャラクターは本名をリッツォといい、ネズミ公という意味があるラッツォという愛称で呼ばれていますが、それをオマージュして彼の様な名前が付けられたキャラクターがいます。

それがカエルのキャラクター、カーミットなどで有名な“マペット・シリーズ”のキャラクター、ネズミのリッツォです。ネズミのリッツォはマペットたちが登場する子供向け番組『ザ・マペット・ショー』第418話で初登場。ニュージャージー州で生まれた彼には1,274匹の兄弟がおり、またアルコール依存症を患っているというネズミだそうです。

11. アカデミー賞主演男優賞にまつわる面白い逸話

本作には、「カウボーイの男はゲイだ。」というラッツォの台詞を受けて、「じゃあ、ジョン・ウェインもゲイだ、とでもいうのか?」と、西部劇俳優の代名詞的存在ジョン・ウェインを引用してジョーが返答する画面があります。また、作中には西部劇は衰退していることを匂わせた場面で『ジョン・ウェイン主演/アラモ』という映画宣伝看板が登場するシーンもありました。

その年の第42回アカデミー賞では、ラッツォを演じたダスティンとジョーを演じたジョン・ボイトが揃って同賞主演男優賞にノミネートされました。ふたりは受賞を逃したのですが、その代わりに賞に輝いたのが映画『勇気ある追跡』に主演したジョン・ウェインだったのです。なんとも皮肉な逸話ですね。

12. ボブ・ディランが楽曲提供予定だった!?

最近はノーベル文学賞受賞で話題となっているミュージシャンのボブ・ディラン。実は彼の『レイ、レディ、レイ 』という楽曲はこの作品の主題歌のために制作されたものでした。ただ、楽曲制作が期日までに間に合わなかったため、ハリー・ニルソンによる『うわさの男』がテーマ曲となっています。

13. あの俳優も出演していた!

『ゴッドファーザー』シリーズや『スケアクロウ』などへ出演し、『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』のフランク・スレード中佐役で第65回アカデミー賞主演男優賞を受賞した俳優アル・パチーノ。実は、彼は『真夜中のカーボーイ』に出演していました。まだ無名の俳優であった彼はマンハッタン行きのバスに乗車していたベトナムからアメリカへ帰還した兵隊の役を演じています。

また、『ブレードランナー』や『ブラッド・シンプル』の出演で知られている俳優M・エメット・ウォルシュと『幸せのレシピ』や『グランド・ブタペスト・ホテル』などに出演しているボブ・バラバンは、本作が映画俳優デビューとなりました。

14. 造語が誕生していた!

本作の脚本家ウォルド・ソルトは、ラッツォがどういう人物かを表現するために、“scuzzy”という単語を使用しています。

これは、「下等な」という意味を持つ単語"scummy"と、「ぼやけた、曖昧な」といった意味のある単語"fuzzy"を掛け合わした、「汚い、不潔な」という意味の言葉です。この単語は、ウォルドによってはじめて公に使用された言葉だと言われています。

15. アンディ・ウォーホルと『真夜中のカーボーイ』

今作には、アメリカ人芸術家のアンディ・ウォーホルが少々関わっていました。

作中では、乱痴気騒ぎのパーティが登場し、ここにアンディのスタジオの面々も参加しているという描写がありますが、映画の設定としては、このスタジオこそがパーティーの主催者となっている、というものがあります。

また、アンディと親交のある俳優でゲイ社会ではセックス・シンボルともなっていたジョー・ダレッサンドロは、1968年に全米公開された映画『フレッシュ』で演じたカウボーイの役を演じるにあたり、『真夜中のカーボーイ』から多くのインスピレーションを得ているそうです。