色あせることのない名作『カッコーの巣の上で』
ケン・キージーのベストセラー小説を基にジャック・ニコルソンを主演に迎えた『カッコーの巣の上で』。面倒を起こし精神異常を訴える犯罪者マクマーフィーが精神科施設に入れられ、高圧的な看護師に反発し、施設の患者たちに支持されていく物語です。
精神科病棟という特殊な環境の中で自然に生まれる友情。40年も前の作品ですが、今観ても感じ、考えさせられることの多い作品なのではないでしょうか。
今回は『カッコーの巣の上で』について詳しく紹介していきます。ネタバレがありますのでご注意ください。まずはあらすじからご覧ください。
『カッコーの巣の上で』あらすじ
マクマーフィーは、他人を何度も傷つけたとして有罪判決を受け再び刑務所に入れられました。付き合っていた相手の少女が18だと偽っていたが実は15だったことが判明し、今回は法廷レイプという判決を受けます。
マクマーフィーは精神治療が必要なくらい狂ってると守衛を説得し、病院に移ることに。彼は恐ろしいほど病院によくなじみ、ほかの患者たちとも良好な関係を築いていきました。
しかし、マクマーフィーにとって目の上のたん瘤的存在がいたのです。その人物が看護師のラチェッド。彼女は病院の日課という苦痛を強いる存在で、病棟きっての嫌われ者でした。
『カッコーの巣の上で』キャスト
R.P.マクマーフィー/ジャック・ニコルソン
大御所ジャック・ニコルソンは、アメリカの俳優であり、プロデューサー、映画脚本家でもあり監督。アカデミー賞を3回獲得しており、12回もノミネート、60年代から毎年代ごとにノミネートされている稀な存在です。
B級映画の『The Cry Baby Killer』で1958年にデビューしたニコルソンは、ジャンル問わず数多くの作品に出演してきました。
1970年公開、デニス・ホッパーがメガホンをとったアメリカン・ニューシネマの傑作『イージー・ライダー』でジョージ・ハンセンを演じ、一躍ブレイクを果たします。
その後、スタンリー・キューブリック監督のスリラー『シャイニング』の作家ジャック役でみせた怪演、ロブ・ライナー監督の『ア・フュー・グッドメン』のネイサン・ジェセップ大佐役など、後世に残る名演の数々を残してきました。
2000年代に入ってからも勢いは衰えず、アレクサンダー・ペイン監督作『アバウト・シュミット』(2003)、マーティン・スコセッシが香港ノワールの傑作『インファナル・アフェア』をリメイクした『ディパーテッド』(2007)などに出演しています。
ちなみに、2013年に彼はファーストレディーのミシェル・オバマとアカデミー授賞式で作品賞の発表を共に行いました。
チーフ・ブロムデン/ウィル・サンプソン
ネイティブアメリカン、クリーク族の俳優ウィル・サンプソンが大ブレイクした作品がこのジャック・ニコルソンと共演した『カッコーの巣の上で』(1976)。また、『アウトロー』(1976)にもクリント・イーストウッドの相手役で出演していました。
さらにシャチのパニック映画『オルカ』(1977)、1986年にはトビー・フーパー監督のホラー映画『ポルターガイスト』の続編『ポルターガイスト2』にネイティブアメリカ人として出演しています。
1987年、心臓と肺移植によって腎不全と栄養不良を起こし、その生涯を終え、生まれ育った地に埋葬されました。
ビリー・ビビット/ブラッド・ドゥーリフ
1970年代初期にブラッド・ドゥーリフはオフブロードウェイや『カッコーの巣の上で』(1976)を含む数々の作品に出演しています。本作がデビュー作と言われることも多いですが、実は『W.W. and the Dixie Dancekings』が最初の作品です。
とはいえ、本作のビリー・ビビット役で大ブレイクしたことは間違いないですし、この役でゴールデングローブ賞新人賞と英国アカデミー賞助演男優賞を受賞、オスカーの助演男優賞にノミネートされるなど世界に知られる存在となりました。
その後、人形の殺人鬼チャッキーを主人公とした人気ホラー『チャイルド・プレイ』シリーズ、ピーター・ジャクソンの『ロード・オブ・ザ・リング』三部作などの映画や、90年代大ブームとなったSFドラマ『X-ファイル』、『スタートレック:ヴォイジャー』などドラマでも活躍しています。
マクマーフィーの友人ビリーとチーフ
精神病院に入院中、マクマーフィーには特に絆の深い友人が二人いました。ビリー・ビビット(ブラッド・ドゥーリフ)とチーフ・ブロムデン(ウィル・サンプソン)です。ビリーは自暴自棄になりやすく、心を閉ざし、幼稚。ラチェッドに屈辱的な仕打ちを受けて、支配されていました。
チーフは統合失調症を患っていて、198cmの筋肉隆々のネイティブアメリカン。耳の不自由な患者の監房に入れられていて、話せないことから無視されていましたが、その巨体によって一目置かれた存在でした。
脱出計画
クリスマスが近づき、マクマーフィーはラチェッドの日頃のひどい扱いにうんざりし、ナースステーションにこっそり忍び込み、ガールフレンドのキャンディーを呼ぶことに成功します。アルコールをたくさん持って来させ、脱出計画を手伝ってもらうためです。
マクマーフィーは患者たちにお酒を飲ませ、キャンディーとビリーをイチャつかせます。
マクマーフィーの誤算
夜になりマクマーフィーとチーフはいよいよ脱出を計画します。しかしビリーはマクマーフィーがいなくなると知り動揺。キャンディーとデートがしたいとマクマーフィーに伝えます。ビリーとキャンディーに個室が与えられ、ことに及びました。
すぐに終わると信じ待っていると、マクマーフィーはうたた寝。翌朝、看護師ラチェッドと看守たちは患者たちが二日酔いで寝ている姿を発見することになるのです。
ビリーにセックスさせたのは誰かと問い詰め、このことを母親に報告すると彼を脅します(ラチェッドはビリーの母親と長年友達でした)。
マクマーフィーの仕業だと答えた時、自分の吃音が治っていることに気づいたビリーでしたが、それもつかの間、すぐに吃音は戻り、とても動揺して母親には言わないでほしいと懇願します。
ずれてゆく歯車
もっと考えて行動すべきだったとラチェッドに説き伏せられ、ビリーは泣きながら医者の所に駆け込んで行きました。
マクマーフィーたちがビリーを追って駆けつけると、ほんの一瞬一人になった隙に、ビリーはガラスの破片で喉を突き刺し自殺を図ってしまいます。
マクマーフィーは、ラチェッドがみんなに落ち着いて持ち場に戻るよう指示したのを聞いて、彼女にものすごい勢いで襲い掛かり殺そうとします。しかし、看守に取り押さえられ意識を失い監房に入れられてしまうのでした。
『カッコーの巣の上で』切ない結末
マクマーフィーがどうなったのか、噂が広まります。逃げ切ったと信じるものもいればロボトミーの手術を受けたと知っている者もいました。ある夜マクマーフィーは看守によって静かにベッドに戻されます。
チーフはマクマーフィーのベッドに忍び寄り、彼が無反応であることを知ります。また、おでこに傷が二つあることもわかり、それこそマクマーフィーがロボトミー手術を受けた動かぬ証拠だったのです。
マクマーフィーを置いていくのは忍びなく、チーフは野菜のようになってしまった友人を枕で窒息させます。
そして以前マクマーフィーが持ち上げることのできなかった水治療法に使う大理石の重い噴水を、鉄格子の付いた窓に思いっきり投げつけて、チーフは一人カナダへと逃亡するのでした…。