2017年11月16日更新

『わたしはロランス』あらすじ・キャスト・ネタバレ

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『わたしはロランス』

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映画『わたしはロランス』!グザヴィエ・ドラン監督が描く恋愛人間ドラマ

2012年製作、2013年9月7日日本公開の『わたしはロランス』は、カナダ・ケベック州出身の新進気鋭の若手監督グザヴィエ・ドラン監督によるラブ・ロマンス映画です。普通の恋愛映画と違う点は、主人公のカップルがトランスジェンダーの間で悩み、揺れ動くこと。 モントリオールを舞台に10年間の二人の愛の軌跡を追った『わたしはロランス』。今回はこの作品のネタバレを含むあらすじと魅惑的なキャスト、映画を彩る音楽、Ciatrユーザーや海外の感想・評価を詳しくご紹介します。

映画『わたしはロランス』のあらすじ・その1

『わたしはロランス』
モントリオールに暮らす国語教師で小説家のロランス・アリアは、美しく情熱的なガールフレンドのフレッド・ベレールと愛を育んでいました。しかし実はトランスジェンダーの性同一性障害に悩み、女性になりたいと考えていたのです。 30歳の誕生日に、ロランスはフレッドに「女になりたい」と自分の秘密を打ち明けました。ところがやはりフレッドはそれに反発し、今まで育んできた愛情は間違いだったのかと思い悩みます。 その後しばらく距離を置いていた二人ですが、フレッドはある決断をします。ロランスの一番の理解者になり、彼女をサポートすると。こうして二人の関係はリスタートすることになりました。 フレッドはロランスにメイクを教えウィッグを買い、ありのままの自分になるためには女性の服を着るべきだと促しました。こうしてロランスは仕事場にドレスで出勤しましたが、学校ではロランスの変化は受け入れられず、免職されてしまいます。 フレッドはふさぎ込み、次第にロランスから離れていきます。その後フレッドは男性と結婚し、息子も生まれました。一方ロランスは5年後、シャルロットと一緒に住み婚約していましたが、まだフレッドを深く愛していました。ロランスはフレッドにいつもこっそり近づいては、たびたびケベック州トロワ・リヴィエールのフレッドの家のそばに車を停めて様子を見ていました。

映画『わたしはロランス』のあらすじ・その2【ラストのネタバレ注意】

自分の詩集を刊行したロランスは、フレッドに1冊送りました。実はその本にはフレッドのことを思って書いた詩があり、彼女はそれに気づいてフレッドにコンタクトを取り、二人でケベック州のブラック島へ駆け落ちすることに。しかしその逃避行は、ひどい口論になって幕を閉じます。 フレッドは、ロランスのトランスセクシャルを告白された時、実は身ごもっていました。しかし、中絶していたのです。ロランスはフレッドを置いてブラック島を去り、二人はまた何年も話すことはありませんでした。 ロランスとフレッドが再び出会ったのはカフェバー。しかしその時もまた口論になってしまいます。もう二人はお互いの道を生き、決別する決意をしていたのです。ロランスと別れたフレッドは清々しい顔で一人外へ出て、ロランスはフレッドと出会った当初のことを思い返しながらその場を去るのでした。

映画『わたしはロランス』のキャスト紹介

ロランス・アリア役/メルヴィル・プポー

性同一性障害を抱えて苦悩するという難しいロランス役を演じたメルヴィル・プポーは、1973年生まれのフランス出身の俳優です。フランス映画をメインに、1992年の『愛人/ラマン』、1996年の『夏物語』、2005年の『ぼくを葬る』などに出演しています。『わたしはロランス』の演技を評価され、各国の国際映画祭で数々の賞にノミネートされました。 また、ミュージシャンとして兄弟とMUDというロックバンドを組んだり、2002年にはソロアルバムもリリースしています。父は映画プロヂューサーで、プポーは10歳から俳優活動をしていたそうです。

フレッド・ベレール役/スザンヌ・クレマン

ロランスを理解し支えようとするフレッド役を演じたスザンヌ・クレマンは、1969年生まれのカナダ出身の女優です。グザヴィエ・ドラン監督作品の常連で、2009年の『マイ・マザー』と2014年の『Mommy/マミー』にも出演しています。本作も含め、評価の高いドラン監督作品ですばらしい演技を見せているといえます。 本作では、第65回カンヌ国際映画祭のある視点部門で最優秀女優賞を受賞。『Mommy/マミー』では、心に傷を負って吃音になり高校教師を休職しているカイラを演じ、『マイ・マザー』で共演したアンヌ・ドルヴァルと再び共演しました。

ジュリエンヌ・アリア役/ナタリー・バイ

ロランスの母親役を演じたナタリー・バイは、1948年生まれのフランス出身の女優です。そのキャリアは1970年から始まり、1972年に映画デビュー、以降テレビ・映画界の第一線で活躍し続けています。セザール賞では助演女優賞を2回、主演女優賞を2回受賞しました。 フランス映画界の巨匠であるフランソワ・トリュフォーやジャン=リュック・ゴダールの作品にたびたび出演しており、スピルバーグ監督の『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』にも出演しています。グザヴィエ・ドラン監督の作品では本作の他に、2017年公開の『たかが世界の終わり』で主人公の母親役で出演しています。

『わたしはロランス』の監督グザヴィエ・ドランとは?

弱冠19歳の時に映画デビュー作となる『マイ・マザー』で製作・監督・主演・脚本を務めた才能あふれる若手監督、それがグザヴィエ・ドランです。カナダ・ケベック州モントリオール出身で、自身の作品のほとんどがケベック州を舞台にしています。『たかが世界の終わり』までに6作品を製作しており、どの作品もカンヌ国際映画祭に出品されて高い評価を受けています。 ドラン監督の作品の特徴は、親子や家族や恋人同士の激しい衝突、またはその修復を描いていて、時に痛々しいまでの表現で観る者を圧倒します。しかしそんな重いテーマの反面、スタイリッシュでカラフルな映像美と音楽選曲の秀逸さは、作品をより高い次元に押し上げているのです。 2015年にはアデルに請われて楽曲「Hello」のミュージックビデオを監督したり、ガス・ヴァン・サントが作品にほれ込み『わたしはロランス』の全米公開のプロデューサーを請け負ったりと、各方面のアーティストにその才能を認められています。

『わたしはロランス』の音楽センスがすごい!

本作の音楽担当はノイアで、『Mommy/マミー』でも音楽を担当しています。この2作品は音楽の選曲センスや使用するタイミングの良さが話題になっており、音楽が作品の重要な一部となっていることがわかります。 ロランスとフレッドがモントリオールで過ごした10年間に沿った、1980~90年代のポップ/ニューウェーブの楽曲を使用し、その時代へトリップできるようになっています。特に印象的なものは、ヴィサージの「Fade To Gray」、デペッシュ・モードの「Enjoy The Silence」、ザ・キュアーの「The Funeral Party」、デュラン・デュランの「The Chauffeur」など。
本作の公式サイトには使用された楽曲がリストになっており、そこからYouTubeやAmazonで検索できるようになっています。ヴィサージ「Fade to Gray」を使用したパーティシーンのミュージッククリップも観ることができます。ところでそのパーティシーンにはドラン監督がカメオ出演しています!

トランスジェンダーについて知りたいいくつかのこと

トランスジェンダーとは心と体の性が一致していない性同一性障害のことで、LGBT(レズ・ゲイ・バイセクシャル・トランスセクシャル)と呼ばれる性のマイノリティの一つです。ロランスのように男に生まれたけれど女として生きたい男性、逆に女に生まれたけれど男として生きたい女性が、心身の不一致に悩んでいるのです。 ロランスが自分を偽って生きてきたために、またロランスとフレッドのように破局するカップルも少なくないかもしれません。ただ、ロランスの場合、女になって男を好きになるわけではなく、自分は女になりたいけれど女性を愛したいという少し複雑な性の形が示されています。 この作品では、だんだんと多様性を増してきたジェンダーに、周囲の理解が追い付かなくなってきている現実も否応なしに突きつけられています。そしてその悩みは他人に簡単に理解できるようなものではない、愛することですべてが解決するわけでもないということもシビアに語られているのです。

Ciatrユーザーの感想・批評をご紹介!【ネタバレ注意】

映像美に感動

ohayou_nihon 大量の水、色とりどりの衣類、落ち葉…降ってくるあらゆるもの、スローモーション、音楽、全てが美しくて心震え涙しました。グザヴィエ・ドラン好きです。
wowwowch 4つ下の若者が作ったとは思えない出来。 若き天才がまた1人… まず印象として映像美が入ってくる。 そして画面における構成、カメラワーク、嫌味のない演出、ストーリー所々の台詞回し、どれも40.50代の熟練したおっさんの新境地みたいな映画になってる。撮った当時は20歳そこそこだから信じられない、天才です
Megu_Komatsu 映像や音楽、ファッション、ストーリー。全てにおいて素晴らしい映画。女として生きたい主人公ロランスと、その彼女フレッドの恋愛物語は、正直いって観る人の体力を奪うくらいパワフルなものでした。初めて観たときの感想は「疲れた」。だけど、心が満たされるくらいの感動を与えてくれました!

性の境界線を越えて

Moto_Ishiduka 見た目も性別も関係ない、性の境界線を越えて本能の愛で求め合う2人がかっこよかった。自分の信じた道を進むロランスの生き方がかっこよかった。何度でも見たくなる映画。とくに愛してる故にぶつかり合うシーンが好き。
tategoto 長いのに飽きることなく感銘受けました。性別超えた人間ドラマ。観てるうちにトランス・セクシャル関係なく人間同士のぶつかり合い見せられて身動き出来なくなった。カナダの作品だけどヨーロッパ映画の雰囲気!かつモダンな作りです。女優さん、最後までミニ・ドライバーだと思って観てたなぁー(笑) 2015.11月鑑賞
Miyako__Nagumo 本当の自分になろうとしたロランスと恋人の葛藤の年月。男、女を越えてその人自身を愛するって、すごく大切だけど、ものすごく険しい道が続く。 想像よりも、スタイリッシュでオシャレな映像もなかなか良かった。

『わたしはロランス』の海外の感想・評価は?

トランスジェンダーだけの話ではない

『わたしはロランス』は熱狂的に支持される古典となるべき作品だし、ゲイやトランスジェンダーのコミュニティだけでなく、もっと幅広い観客層に観られるべき映画だと思う。
引用:imdb.com
この映画は、女になりたいと願う男性の話であり、性別を超えることについてのあるカップルの社会に対する闘いではあるが、それを一緒に乗り越えていくことについて語るものだと思う。ロランスが服装倒錯者だとか、そんなことは関係なく・・・誰かを深く愛したり、真剣に愛したりする人たちはとても共感できる物語なのだ。そして、これはトランスセクシャルの人たちに対して潜在的な偏見を抱く人々の見方を変えてくれるすごい映画だ。
引用:imdb.com

3時間近くある・・・が

実際3時間近くある長い映画だが、人の心を夢中にさせるような、10年間に及ぶトランスセクシャルの主人公の変化や影響、ロランスを取り巻く人々について語ったとてつもなく優しいストーリーだ。
美しい映像で一瞬幻覚を見るような気分になり、夢のような、比喩的な表現で占められている。主役二人の演技は本当にすばらしい。3時間近くある長い映画ではある。しかし決して退屈はしない。パワフルで、リアル、そして重要な何かがある。独創的で強烈。リズミカルで知的。