ダルデンヌ兄弟おすすめ映画8選【世界が認めるカンヌ映画祭常連監督】

二度にわたりカンヌ国際映画祭パルムドール大賞を受賞した名匠ダルデンヌ兄弟は、社会問題を織り交ぜたヒューマンドラマに定評のあるベルギー出身の映画監督です。独自のスタイルが根強いファンに支持されるダルデンヌ兄弟のおすすめ映画8選を紹介します。
目次
- カンヌ映画祭で二度のパルムドール受賞経験を持つベルギー出身のダルデンヌ兄弟
- 1.少年の成長と不法移民問題を描いたダルデンヌ兄弟の出世作『イゴールの約束』【1997年】
- 2.どん底から抜け出すため、少女は仕事を求める『ロゼッタ』【2000年】
- 3.息子を殺した少年を追う男が起こす行動とは『息子のまなざし』【2003年】
- 4.大人になれない男が下した衝撃の決断『ある子供』【2005年】
- 5.国籍取得のための偽りの結婚生活から芽生えた愛『ロルナの祈り』【2009年】
- 6.親に見捨てられた少年と彼を守る女性の絆の物語『少年と自転車』【2012年】
- 7. マリオン・コティヤールが復職のため奔走する主人公を演じる『サンドラの週末』【2015年】
- 8.救えなかった少女の死の真相を突き止める『午後8時の訪問者』【2017年4月8日公開】
カンヌ映画祭で二度のパルムドール受賞経験を持つベルギー出身のダルデンヌ兄弟
ダルデンヌ兄弟は、兄ジャン=ピエールと弟リュックによるベルギー出身の映画監督です。二人は1970年代からポーランド移民、第二次大戦中の地下組織であるレジスタンス、ゼネストといったテーマでドキュメンタリーフィルムを製作していました。
劇作家アルマン・ガッティに影響を受け映画製作を開始すると、1997年に公開された『イゴールの約束』で世界的な注目を集めます。映画製作にあたっては、数か月にわたる長期のリハーサル期間を設け、俳優との信頼関係を構築するというこだわりを持っています。
ドキュメンタリーさながらの映像、緻密な演出、社会問題を織り交ぜたテーマ設定といった独自のスタイルを確立し、『ロゼッタ』『ある子供』で二度のカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞しました。その他の作品も同映画祭で多数の賞を獲得しており、カンヌ映画祭の常連として知られる監督です。
1.少年の成長と不法移民問題を描いたダルデンヌ兄弟の出世作『イゴールの約束』【1997年】
2015.11.14.鑑賞

自動車整備工場で見習いとして働く15歳のイゴールは、不法移民を相手にした違法な仕事で生計を立てる父ロジェと暮らしています。父の命令には逆らえず、やりがいのある見習い工の職をクビになりながらも、父の仕事を助ける毎日を送るイゴール。
ロジェが雇っていた移民の死をきっかけに、良心の呵責に耐えきれなくなったイゴールは、父に反抗し自立していきます。一人の少年の視点から社会の矛盾を浮き彫りにしたヒューマンドラマです。
カンヌ国際映画祭での国際芸術映画評論連盟賞受賞をはじめ、世界各地の映画祭で高く評価され、ダルデンヌ兄弟の名を世界に広める作品となりました。
2.どん底から抜け出すため、少女は仕事を求める『ロゼッタ』【2000年】
工場で慌ただしく動き回る少女ロゼッタ。働いてる工場をクビにされたのだ。アルコール中毒の母親と二人きりでトレイラーハウスに暮らす彼女。母親はアルコール中毒だけでなく、娘の前で平気で売春行為をするような人間。この厳しい環境でも生き抜こうと彼女は新しい職をさがし始めるのであった・・・
セリフで伝えるのではなく、映像と演出 で彼女の心情が伝わってくる。映画でしか出来ない表現!ドグマ95のような手持ちカメラ、クローズアップが不快だったと述べる方がちらほらいるが徹底的したリアリティの追求やロゼッタの心情を表現するには必須だった自分は考える(そもそもフォントリアの「イディオッツ」等の映画と一緒にしてほしくない←)。ベルギーの貧困問題を背景とした社会派映画。主人公ロゼッタに感情移入出来るかどうかで評価が大きく変わるだろう。
「ある子供」のラストシーンでもそうだったが、所々ロベール・ブレッソンに影響されているがわかる。ロベール・ブレッソン の代表作を観ている方は意識して観ていただきたい。

アルコール中毒の母親とトレーラーハウスで暮らし貧しい生活を送る少女ロレッタは、試用期間の終了とともに勤めていた工場を解雇されます。母親から自立しまっとうな暮らしをするために、ロレッタはどんな手段を使ってでも新しい職を得ようと奮闘します。
誰にも心を開かず、孤独と絶望に耐えるロゼッタは仕事を見つけることができるのか…。本作の舞台はダルデンヌ監督の出身地ベルギー・リエージュです。
全編にわたり手持ちカメラで撮影されたドキュメンタリーのような映像が印象的な本作は、カンヌ国際映画祭でパルムドール大賞を受賞しました。また主人公ロレッタを演じたベルギー出身の女優エミリー・ドゥケンヌが、新人ながらも主演女優賞に輝き話題となりました。
3.息子を殺した少年を追う男が起こす行動とは『息子のまなざし』【2003年】

大工のオリヴィエが授業を受け持つ職業訓練所に、ある日、フランシスという少年が入所してきます。オリヴィエは亡き息子を殺害した犯人であるフランシスを、人目を避けながら尾行し、観察を続けるようになります。
互いに心に傷を負った二人が、憎しみを越えて相手を受け入れることができるのか、厳しい現実が描かれます。
『ロゼッタ』の製作チームが再集結して撮影された本作は、観客が主人公オリヴィエの行動を追体験しているかのような映像に仕上がりました。オリヴィエを演じたオリヴィエ・グルメがカンヌ国際映画祭主演男優賞を、ダルデンヌ兄弟がエキュメニック賞特別賞を獲得しています。
4.大人になれない男が下した衝撃の決断『ある子供』【2005年】

盗んだ金でその日暮らしをするブリュノと彼の恋人ソニア。二人の間に子供が産まれますが、あいかわらず定職に就かず金に困ったブリュノは幼い我が子を売ってしまうのです。
本当の愛や命の重み、親としての責任など多くのことを知らないまま、年齢だけを重ねた若者の過ちとともに、希望を与えるラストシーンが描かれます。
本作でカンヌ国際映画祭パルムドール大賞に輝いたダルデンヌ兄弟は、パルムドールを2回受賞した史上5組目の監督となりました。『イゴールの約束』で主人公イゴールを演じたジェレミー・レニエがブリュノを、『タイピスト!』のデボラ・フランソワがソニアを演じています。
5.国籍取得のための偽りの結婚生活から芽生えた愛『ロルナの祈り』【2009年】
今までの同監督作よりも話の筋がはっきりしていて観やすい。 その分本監督特有の冷たく乾いた空気感が薄れているといえばそうなのかもしれない。 (僕にはそのほうが観やすくていいんだけど)
ロルナの気持ちの移り変わりは女性ならもっとすんなり共感出来るのかな。 男の僕には少し突拍子なく感じてしまって???が頭の中に。 愛のカタチとして幻想であろうが何かを守りぬこうとする姿には、美しささえ感じたけども。 そこに感情移入出来ないのがハマりきれない理由かなぁ。
しかし邦題の「祈り」って言葉選びにはピンとこない。

アルバニアからの移民ロルナは国籍を取得する目的で、薬物中毒のクローディと偽装結婚をします。ブローカーからの提案によりクローディを中毒死に追い込んだ後、祖国に残した恋人ソコルとの生活を夢見ていたロルナですが、次第にクローディに惹かれ始めます。
偽装結婚から始まるロルナとクローディのラブストーリーを中心に、国籍売買で金儲けを企むブローカーにもスポットを当て、現代社会の闇を写し出しながらストーリーが展開していくことに。
コソヴォ共和国出身で気鋭の新人アルタ・ドブロシがロルナを、『イゴールの約束』『ある子供』のジェレミー・レニエがクローディを演じています。カンヌ国際映画祭では脚本賞を受賞しました。
6.親に見捨てられた少年と彼を守る女性の絆の物語『少年と自転車』【2012年】

児童養護施設で暮らすシリルは、父親と再び一緒に暮らすことを一途に願っています。偶然出会った美容師サマンサの協力により父親を見つけ出すシリルですが、突き付けられたのはあまりにも厳しい現実でした。
本作はダルデンヌ監督が来日した際に聞いた、戻らない親を待ち続ける子供の話にインスピレーションを得て製作されました。カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得し、ダルデンヌ兄弟は5作品連続で主要賞に輝くという初の偉業を成し遂げます。
オーディションにより選ばれた新星トマ・ドレが主人公シリルを演じ、自転車で街中を疾走する姿が印象的な作品です。美容師のサマンサ役には『ヒア アフター』のセシル・ドゥ・フランスが起用されています。
7. マリオン・コティヤールが復職のため奔走する主人公を演じる『サンドラの週末』【2015年】

主人公サンドラは復職するはずだった会社から解雇を言い渡されます。彼女が会社に残るための条件は同僚がボーナスを諦めることだと告げられ、その条件を受け入れてくれるようサンドラは同僚への説得を試みるのでした。
本作の原題は「二日と一晩」。サンドラが同僚を説得するために与えられた猶予こそが、この「二日と一晩」であり、その間に奔走する彼女の姿を描いた物語です。
『エディット・ピアフ 愛の讃歌』でオスカー女優となったマリオン・コティヤールが主演を務めます。体当たりの演技が高く評価され、本作でアカデミー主演女優賞にノミネートされました。
8.救えなかった少女の死の真相を突き止める『午後8時の訪問者』【2017年4月8日公開】
小さな診療所の女医ジェニーは、ある晩、診察を拒否した少女が死亡したことを知ります。少女の命を救えなかったことを後悔するジェニーは、監視カメラに残った映像から少女が誰なのか、なぜ死んでしまったのかを突き止めようとしますが、思わぬ事件に巻き込まれていきます。
医師ならではの着眼点で様々な疑問を解明しようとするジェニーの心の葛藤が描かれるミステリーです。
主役のジェニーを演じたのはフランスの人気女優アデル・エネルです。フランス版アカデミー賞といわれるセザール賞では、2013年に映画『スザンヌ』で助演女優賞を獲得しています。
日本では2017年4月8日に公開が予定されています。