『攻殻機動隊 ARISE』シリーズを徹底解説!【劇場版から漫画まで】

2017年7月6日更新

『攻殻機動隊』シリーズから派生した作品『攻殻機動隊 ARISE』。劇場版4部に加えてTV版を加えた全5部にてお送りします。素子や荒巻、トグサ、バトーとの出会いと公安9課設立まで、電脳ウィルスを巡る彼らの戦いについてまとめてみました。

『攻殻機動隊 ARISE』とは?

士郎正宗原作の漫画『攻殻機動隊』シリーズの1つで、劇場用のアニメ映画です。それぞれ"border"と名づけられており、1部2話ずつの4部とTV版完全新作yrophoric Cultの5部からなっています。

今までもアニメ化はされていましたが、このシリーズでは作画デザインや声優も一新しており、かなり雰囲気が変わっています。物語も、荒巻以外はまだ公安9課に所属する前で、彼らの出会いも含めて描かれています。

上司を殺害した犯人を追う501という機関に所属する素子。公安9課の上長として、その事件を調べている荒巻。そして、素子に同僚を殺されたというバトーに、娼婦殺人事件を追うトグサと、今までのシリーズとは全く違う彼らの顔を見ることができます。

各物語のあらすじ

劇場版ではからborder:1順に公開されましたが、アニメ版はborder:4からの放送で、追加でテレビ版が入っています。解説と振り返りの意味を含め、各話のあらすじについて簡単にご紹介します。

border:1Ghost Pain

舞台は2027年6月、501機関に所属する素子の上司であるマムロ中佐が亡くなったことにから物語は始まります。マムロ中佐には武器密売の収賄の容疑がかかっており、公安9課の荒巻がその捜査に当たっていました。しかし、棺を開こうとした時素子が出現。彼女はマムロの部下であり、これが荒巻との出会いでした。

棺には中佐の遺体はなく、中には自走地雷。この事から、素子や荒巻はマムロ中佐が殺害されたことを予測します。自走地雷を追う中、トグサ、バトーとも対面を果たした素子。その内に自分に疑似記憶が植え付けられていること、中佐の口座から素子の口座への金の動きから、殺害の犯人にさせられそうになっている事実にたどり着きます。

そして、発見されたマムロ中佐の遺体から真実を知ると、実は中佐は副大臣の武器密売の不正を暴こうとして嵌められたことが発覚しました。漸く真相に辿りつき自由の身となった素子は、荒巻から「己の部隊を持て」と進言されます。

border:2Ghost Whispers

虐殺の容疑を掛けられたソガ大佐の法定から物語は始まります。公安9課ではロジコマの1体に謎のデータが送られ、荒巻は素子にデータの解析を依頼。すると、調査中にソガ大佐の部下であったバトー、イシカワ、ボーマの3人が襲い掛かります。彼らの目的はロジコマの様子。追い詰められた素子ですが、窮地を米軍情報部に所属しているヴィヴィーという女性に救われます。

ヴィヴィ―は日米で開発した大容量モジュールに関わる人物であり、モジュールが盗用されたため、解除コードをロジコマに退避させた人物でした。素子は、ヴィヴィー、サイトー、パズと手を組みアジトに突入しますが、ソガ大佐に防壁迷路を打ち込まれます。ソガ大佐の目的は、軍事機密情報を収めたパンドラの解放で、交通システムの膨大な処理能力を使ってそれを行おうとしていたのです。

しかし、素子はソガ大佐を始め部下たちもファイアスターターというウィルスにより疑似記憶を植え付けられていると推測。素子の予想は的中し、イシカワとボーマ、続いてバトーも解放します。そして、春日事務次官が己の亡命のためにパンドラを解放しようとしていたこと、ソガ大佐は利用されていた事実が判明しました。しかし、春日次官さえも誰かの手によって唆されていたことを知ります。

その正体はヴィヴィー。彼女は米軍にある機関のプログラムであり、己の存在を確かめるために今回の事件を起こしたのでした。事件は無事解決し、バトーを始め、イシカワとボーマは今回の件を通して素子の部隊に入ることとなります。

border:3Ghost Tears

突然発生したダムでの爆破事件とビルでのテロ事件からこの物語は始まります。テロ事件を追っていた素子は、実行犯メンバーにカルディスタン独立運動の英雄"スクラサス"の刺青を発見します。一方でトグサはダム事件を追っており、現場に残された義体からホセという技師を調査します。ホセは素子の恋人だったのですが、実は裏で爆破されたダムの持ち主であるサイード博士、ホヅミ大佐と繋がっていました。

素子たちはスクラサスこそがファイアスターターでは、と予測を付けますが素子はその人物は既に死去していると言い切ります。実は、素子こそが以前のスクラサスだったのです。そして、ホセへの疑惑が強まる中、テロ事件の容疑者にホセの写真を見せたところ、容疑者はホセこそが新しいスクラサスだ、と言うのでした。

その後、副大臣をターゲットにしたテロの際に襲ってきたアームスーツ、義体の捜査中に襲ってきたサイードの部下の操作をホセが行っていることが明らかになり、ホセは対峙した素子を"スクラサス"と呼び、自殺しました。ホセの自殺により事件は解決。素子はトグサの今回の手腕を買い、スカウト。そこでトグサが生身で既婚者という事実を知り、笑うのでした。

border:4Ghost Stands Alone

街中でのデモの最中に、群衆と警護も含んだ無差別発砲事件が発生します。同時ハッキングという手口から、ファイアスターターが疑われる中、素子たちはツダ・エマという少女を確保します。ホヅミ大佐がエマの引き渡しにやってきますが荒巻がそれを拒否。エマとファイアスターター、ホヅミとの関係を調べようと、荒巻はエマを501機関に移送します。

移送の最中に「電脳は人を幸せにすると思う?」と語るエマ。物語の核心を突く一言です。そんなエマの電脳に潜り込んだ素子は、エマの中にもう一人、男のゴーストが存在する事を知ります。彼の名は通称スケアクロウ、ハッカーでした。エマはクルツ付きの電子戦技官で、調査中に彼の人格が彼女に入り込んだのです。

しかし、スケアクロウはトグサの脳をハックして逃亡。501機関が戦場となります。捜査を進めるうち、黒幕はホヅミであり、デモで起きた発砲事件も自分と敵対する大臣を屠るための演出だったのです。ホヅミは国外開発派だったため、武器を輸入することを目的としており、国内派の一掃を目論んでいたからです。

闘争したエマとスケアクロウは最終的に義体を破壊され、2人の自我が消失。ホヅミも繋がっていた海外のカルテルの報復を受け、全てが明るみに出る事となりました。

TV版完全新作Pyrophoric Cult

ファイアスターターのブローカーをしているパイロマニアを追った事件です。ある時航空便で爆弾テロが起きます。この爆弾は義体に気化爆弾を仕込まれた人間爆弾であり、ムラサカという男でした。彼は米軍情報部でありパイロマニアを捜査していたのですが、逆にウィルスに感染させられてしまいます。そして疑似記憶により自爆テロを起こしたのです。

パイロマニアは武器密売のエージェントでもあり、彼の目的は裏切者のホヅミ大佐を殺害することでした。素子はホヅミを餌にパイロマニアを捕まえようとします。脳殻だけとなったホヅミの護送準備の最中、ファイアスターターの発動により混乱が起きる中、ホヅミに危機が及ぶ寸前でなんとかパイロマニアを捉えるバトーとトグサ。しかし、彼の記憶はほとんど喪失していた上、クルツの手引きによって逃がしてしまいます。

クルツは実はファイアスターターに傾倒していた人物だったのです。クルツによって解放されたパイロマニアは再びホヅミとファイアスターターのワクチンを持つ素子を狙いにきます。戦闘は電子戦となり、素子は脳にファイアスターターを入れられそうになるのですが、作戦が功をなし、見事パイロマニアの記憶を消滅させることに成功しました。

『攻殻機動隊 ARISE』の主要な登場人物

草薙素子

攻殻機動隊

501機関に所属しており、最初の階級は三佐でした。気の強さは相変わらずですが、今までの作品よりも跳ね返りっぷりが強く、よりクールなキャラクターとなっています。デザインの所為なのか、そういう設定なのか表情もより硬くなり、とてもストイックなキャラになりましたね。

過去にはゲリラのリーダーも務めており、その記憶を消すように多くの義体に乗り換えていましたが、自身を喪失する恐怖から、ある時から義体の乗り換えはやめた様子。彼女にもゴーストが存在している、という証明ともいえるでしょうか。義体を頻繁に乗り換えることは、類まれなる才能の持ち主だという証明になると共に、ロボットと人との境界線を曖昧にしてしまうようです。

荒巻大輔

公安9課の長として活躍中でborder:1では部長でした。キレ者で優秀なのは本作品でも変わらず、部署を隔てて素子にもいろいろな仕事を依頼してきます。しかし、一番気になったのは荒巻の髪の色がこげ茶、という点ではないでしょうか。髪型は変化はないのですが、色が違うのでそれだけでも雰囲気が変わりますね。

バトー

バトー 攻殻機動隊

初登場はborder:1にて。素子に同僚を殺された、と、敵として登場します。既に目は義体化した状態で眠らない男としてその界隈では有名な様子。素子を揶揄ったり、生意気な口をきいたりするの部分も全く変わっておらず、いいコンビという感じですね。度々、敵として登場しましたが、その格闘能力は敵に回ると恐ろしい限りです。

トグサ

トグサ 攻殻機動隊

新居浜署というところに務める特捜の刑事として登場、後に素子の部下となります。物腰が柔らかく、どこか飄々としていますが仕事には熱心で鋭い目線を持っている。といった感じでしょうか。しかし、子供が生まれる際には妻が破水したと聞いてオロオロするなど、チャーミングな一面も。家族を大事にしているというキャラクターは変わっていないようですね。

ロジコマ

ロジコマ 攻殻機動隊

『攻殻機動隊』シリーズお馴染みのロボットといえば"タチコマ"ですが、『攻殻機動隊ARISE』では、タチコマならぬ、ロジスティクス・コンベイヤー・マシン、略してロジコマが出現します。タチコマはAIが搭載され自我まで芽生える程に発達したロボットでしたが、ロジコマの頃は出力装置が信号式である、などアナログな部分があります。

支援用輸送車両だったので搭乗スペースがありませんでしたが、素子が振り落とされたことやバトーの乗れたら面白いかも、などの考えをきっかけに、今のタチコマスタイルになりました。バトーはタチコマをとても可愛がっていますが、面白いかも、などの台詞から当時から既に興味があったことがうかがえます。

作中では素子の渡したプログラムによって喋れるようになったもロジコマですが「了解されました」や「極めて接近中」など、言語がたどたどしくて、天然な部分がなかなか可愛らしいです。

501機関とは?

攻殻機動隊

素子が所属していた501機関に関しては特別映像の『DECODE 501FILE』にて詳細が語られています。陸軍内部でも実体を知る者はほとんど存在しない隠れた組織です。クルツが「元々は陸軍開発実験団医学実験隊義体研究部特殊義体研究課501分室の備品」と語っており、義体化した兵士は人としてではなくモノとして扱われるとも断言しています。

この機関は戦闘用の義体兵士の開発と訓練を主としており、見方によっては目的のためならば手段を択ばないような兵士を育てている、と認識してもいいのかもしれません。クルツはゴーストによりアップグレードするファイアスターターに傾倒していましたが、自身が人なのか、機械なのか、という問いの結果"ゴーストによるバージョンアップ"に無限の可能性を見出したのかもしれません。

『眠らない眼の男 Sleepless Eye』とは?

攻殻機動隊

『攻殻機動隊 ARISE』で脚本を担当した藤咲淳一がストーリーの軸を描き、それを大山タクミが漫画化した作品です。眠らない男とは、バトーの義体化した目のことを示しており、『攻殻機動隊 ARISE』本編でも素子がバトーのことをそのように呼ぶシーンがありましたね。

レンジャー部隊で活躍していた頃の話や、素子との出会いを彼目線にて描いています。元の作者と絵を描いている人物が異なっておりますが、大山タクミは画質の美しさに定評があり、読む漫画というよりも見る漫画ということで、描き込みっぷりの凄さも話題の1つとなっており、電脳空間の描写などは凄い!の一言です。

なかなかキャラクターの心情を知ることのできる機会がないので、違った目線で本編を見てみたい方にオススメです。

『攻殻機動隊入門 あらいず』とは?

攻殻機動隊

2014年の1月から6月までTOKYO MXにて放送していたショートアニメで、『ロジコマンガ』を原作としています。『攻殻機動隊ARISE』についての解説ショートアニメとなっており、ロジコマから分離したロジ子とコマ子というキャラクターが解説をします。ロジ子はピンク色ボブヘアに眼鏡をかけた天然キャラで、コマ子が紺色長髪で吊り目の突っ込みキャラです。

解説要員の2人のほか、ロジコマにくさなぎもとこ、ばとー、とぐさ、いしかわ、などお馴染みのキャラクターもデフォルメ化して登場。『攻殻機動隊ARISE』の各ストーリーの解説のほか、専門用語の解説もあります。作品は知っているけど分からない部分が多い、という人は特に楽しめるアニメーションではないでしょうか。

『攻殻機動隊ARISE border:less project』とは?

クリエイターたちが『攻殻機動隊ARISE』の世界観を独自の目線で映像化したショートムービーを公開しました。テレビドラマや舞台の演出を務める映画監督、本広克行がプロデューサーを務めており、全部で5本ムービーが紹介されました。

本広克行と笹口悦民が監督を務めた『FORESEEING 2027』、ヨーロッパ企画の山口淳太が監督を務めた『memory』などを始め、『COLOR』、『島村ユキは田中ケンジを忘れない』、『WORKING HIGH』がその作品となります。

このうちの『FORESEEING 2027』については、本広克行総監督を務め、2014年のイベントの際に上映された他、webでも公開されました。動画配信サイトのYOUTUBEにて、公式チャンネルが各映像を公開しています。

攻殻機動隊シリーズとの関連

攻殻機動隊

公安9課が設立する前の物語、ということで全てのシリーズと比較すると単純に過去の話となります。しかし、声優、デザインの双方とも一新していることから別のものだと考えているファンもいるそうです。確かに、サイバーテロ犯罪を扱ってはいますが、ストーリーの構成や持って行き方も含めて別作品として楽しむというのも有かな、と感じます。

部隊はARISEは2027年~2029年までを描いており、9課が設立した後の第1期アニメが2030年からを描いているので、時期として設立前の3年間を描いたことになっています。アニメを今から見る方はシリーズ1から順に見た後にARISEに触れるのがオススメです。

『攻殻機動隊 ARISE』と『新劇場版』との関連

2015年に公開された『攻殻機動隊 新劇場版』は、ARISEの完結版になります。部隊は2029年の3月、総理大臣の暗殺事件を巡る物語となっています。ARISEの劇場版によって素子たちが出会い、そして集結し、活躍し、いよいよ劇場版を持って『攻殻機動隊』が生まれます。

ARISEでキーワードとなったファイアスターターも登場し、素子の生い立ちにも迫るなど気になるポイント盛りだくさんです。既に公開は終えていますが、ブルーレイ、DVDが発売していますので気になった方は手を伸ばしてみてはいかがでしょう。