(C)2017 フジテレビジョン 東宝 FNS27社

映画『昼顔』はカップルで観に行くべき映画!?実際に行ってみた【衝撃ネタバレ・解説も】

2017年7月6日更新

題材がドロドロとした不倫ドラマであるにも関わらず、映画『昼顔』はカップルで観に行くべき作品だという事が発覚!その理由とは……。映画のあらすじや結末のネタバレ、登場人物に焦点を当てた解説をふまえてご紹介したいと思います。

ドラマから3年の時を経て、スクリーンで物語が完結する

映画『昼顔』
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昼顔、その花言葉は「ほのめかす」「情事」。 そんな花をタイトルに掲げ、2014年に放送され大ヒットしたのは現在の“不倫ブーム”の火付け役ともなった『昼顔』というドラマです。純情な役柄を演じる事が多い上戸彩の“濡れ演技”が話題となっただけでなく、相手役の斉藤工は今作でブレイク、セクシー俳優の地位を確立させました。 さて、現在公開中の映画『昼顔』はそのドラマで起きた出来事から3年後の事を描いています。その壮絶なラストが口コミで話題となり、公開から一週間が経った今も多くの人が劇場に訪れているようです。しかも、なかにはカップルで今作を観に行く人も少なくないのだとか。「不倫」を題材にした映画を、何故カップルで観に行くのか……果たして観に行って良いような映画なのでしょうか。 そんなことが気になって仕方なくなったので、元からドラマのファンである筆者が実際に『昼顔』を、異性を引きずって観に行ってきました。この記事では、そこから解った男女での『昼顔』の捉え方の違いをベースに、「今作はカップルで観に行くべき映画」である理由、そして作品の魅力・見所を徹底解説したいと思います。

映画『昼顔』あらすじ

映画『昼顔』
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ドラマ版『昼顔』で、互いに夫・妻がいながらも惹かれ不倫に及んでしまった笹本 紗和と北野 裕一郎。不倫がバレてしまい、駆け落ちをするも引き離された彼らは、北野の妻である北野 乃里子によって、「今後一切接触をしない」という誓約書を結ぶ事となります。 不倫発覚後、自殺未遂をした妻・乃里子を放っておけずに結婚生活を継続させた裕一郎。それに対して紗和は夫と離婚し、仕事も辞めて自分の事を知る人がいない海辺の街へと引っ越していました。 それから3年後のこと。カフェでバイトとして雇われる事となり、質素な生活を送りながらひっそりと生きていた紗和の目にある一枚のチラシがとまります。それは市民ホールで開催される、蛍の生態に関するシンポジウムの案内であり、なんと講師はあの北野 裕一郎だったのです。

映画『昼顔』
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誓約書を交わした身でもある紗和は、そのチラシを見なかった事にしようとしますが強い想いに負けて市民ホールへと足を運びます。裕一郎は彼女の存在に気づき、取り乱しますが「この後三浜自然の森へ行こうと思う」という言葉を残します。 その言葉にハッとした紗和は先回りをして森に向かうも、すれ違いで彼に会う事ができませんでした。しかし、後日また森に向かった彼女はそこで裕一郎と再会してしまうのです。それから逢瀬を重ねる彼らは、森から駅へ向かう行き帰りのバスの中で言葉を交わさずに心を通わせていきます。 燃えあがる恋心、今度こそは結ばれるかもと有頂天になりながらバスを降りた彼らの前に現れたのは、壮絶なカークラクションを鳴らしながら待ち伏せる裕一郎の妻、乃里子でした。

女の狂気が加速する、衝撃のラストが凄まじい【結末ネタバレ】

映画『昼顔』
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妻・乃里子に関係がバレてから、裕一郎は彼女と離婚をする方向で、紗和の家に転がり込んで同棲を始めます。しかしその最中、紗和は自分との関係を正式なものにしたいと話す裕一郎が、嘘をついて乃里子に会いに行っている事を知ります。 早速、紗和は乃里子の家に決着をつけに向うことに。しかし、そこで乃里子が怪我をして車椅子で生活をしている事を知ります。実は、裕一郎は彼女の怪我に同情して身の回りの事を助けていたのです。そして同時に紗和は、乃里子の口から裕一郎と離婚をする決意を聞いて一安心します。 紗和の悩みが解決した頃、裕一郎は紗和にマリッジリングを買い、彼女にプロポーズをします。ようやく結ばれる、必要なものは残すとこ離婚届のみという時、事件が起こるのです。 離婚届を受け取りに乃里子宅に向かった裕一郎。乃里子は別れを惜しむかのように、駅まで送って行くと彼を乗せて車を走らせます。

映画『昼顔』
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しかし、車内で彼女の抑圧していた感情が一気に吹き出し、それは狂気となって車を猛スピードで加速させます。市内から山道に入り、裕一郎の止める声を聞かずにいた乃里子は、無理心中をするつもりで無茶な運転をしていたのです。結果、事故に遭い、助手席に座っていた裕一郎は即死。乃里子は生きていました。 彼の死を聞いた紗和は警察に向かい、遺体と遺品を前に泣き崩れます。乃里子に彼が買ったはずのマリッジリングの在処を聞くも答えは得られない。生きる希望を失ってしまった彼女は、三浜の人影のない駅の線路に寝そべり、自殺を図ります。しかし直前で考えを改め、生きていく事を決意。後に、彼女のお腹には裕一郎との間に出来た新たな命が宿っていた事がわかるのでした。

男性は『昼顔』を観て何を想う?

映画『昼顔』
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筆者は6月17日土曜の14時台のものを鑑賞してきたのですが、一週間が経ったにも関わらず映画館の後ろ半分がほぼ満席である事に驚きました。しかも、驚いたことはそれだけではありません。なんと、客層の多くがカップルであり、一人で観に来た男性の数も少なくなかったのです。意外や意外と思いながら、座ったのは前半分の後方真ん中の席。後ろ半分に比べて前半分はお一人様のお客が多く、どことなく“わけあり感”のようなものを感じましたね。 さて、筆者が映画館に引きずっていった彼は観賞後に一言こう言いました。「この物語の中で“悪い人”が誰なのか、わからない」と。 正直映画はバッドエンドという結末であり、紗和が狂った妻によって愛する人を失ってしまったという印象が強いです。 しかし、彼は「そもそも誰の立場にも立てなくて、感情移入をするキャラクターがいなかった。それに確かにノリさん(乃里子のこと。もはや「さん」付け)は怖かったし悪者として描かれているけど、実際悪くないよね」と続けました。 確かに、そうなのです。乃里子は、そもそも何も悪い事していませんでした。勿論、妻として足りていない部分はあったかもしれませんが、それでも一線を超えたのは裕一郎の方です。彼女はただ、最初から最後までめちゃくちゃ裕一郎の事が好きだっただけなのです。「本当に乃里子は悪者であったのか」という考察は、記事の後半で改めてご説明したいと思います。 ちなみに、その他の彼の感想として以下のようなものがあがりました。 ・(乃里子の部屋に乗り込む紗和に対して)「二人で密室にいちゃダメでしょ、密室はヤバい」 ・たまにシュールなシーンが挟まっていて笑いそうになった。 ・事故のシーンが生々しく胸が痛い。 そして、 ・不倫は幸せにならないと強く感じた。 この感想こそが、ずばり『昼顔』がカップルで観に行くべき映画である理由に繋がるのです。

実はカップルにこそ向いている映画!?

映画『昼顔』
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今作を観に行くカップルは、2通りに分かれると思います。付き合う前か、既に付き合っている男女かということです。しかも付き合う前におけるカップルのなかには、もしやすると「昼顔カップル」である、またはその一歩手前まできている方もいるのではないでしょうか。 ドラマ版は「不倫」というものを、本来ならしてはいけない行為でありながらその背景にある「純愛」に焦点を当てて官能的に描いていました。それ故、世の中の「昼顔妻」にときめきと希望を与えたと思うのです。なので、映画版も「不倫ってダメな事だけど、なんだか許さない恋って美しいわよね」「俺たちも、こういう関係になってみない?」なんて、不倫をそそのかすような内容かと思いこんだ「昼顔カップル」が鑑賞しにいく可能性があります。 しかしこの作品の恐ろしいところは、ドラマでそういった「昼顔」ファンをそそのかしておいて、映画で彼らに最高のしっぺ返しを食らわせるという点にあります。「不倫(浮気)したら、死ぬよ(マジで)」「全てを失うよ」って事を酷なくらい表現しています。つまり、不倫手前のカップルにとっても、普通のカップルにとっても“戒め”となる映画として機能するのです。 さらに、今作では不倫(浮気)をされた側の感情描写がドラマ版より一層、切に描かれています。それを目の当たりにすることで、余計「不倫(浮気)はやめとこう」というような、防止の役割を担ってくれます。 また、「どのシーンが印象的だったか」や「どの登場人物の立場で観た?」と、観賞後に映画の感想を共有することでお互いの恋愛観の理解をより一層深めることもできますね。付き合っている人がもしかすると、浮気をしている(しそう)と思っている方は、今作を一人で観るのではなく(何故なら観賞後超モヤモヤするだろうから)二人で観に行きましょう!

結局、一体誰が“悪者”なの?【登場人物解説】

さて、先ほど男性からの感想でもあった「この物語の中で“悪い人”が誰なのかわからない」という事に焦点を当てたいと思います。今作は主人公である紗和の視点で描かれている事もあり、彼女が裕一郎を乃里子に奪われた悲劇のヒロインだという印象を強く鑑賞者に与えています。 しかし、ここで少し考えてみたいのです。果たして紗和は悲劇のヒロインなのでしょうか?

紗和は“幸せになる気満々”で幼い?

上戸彩『昼顔』
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自分の事を知る人のいない海辺の街に引っ越して来た紗和。しかし、彼女の雰囲気はドラマ版を知る鑑賞者にとって、以前と変わっていて、どこか違和感を感じるものがあるのです。それを感じ取れるのが、彼女が市場やコンビニで買い物をするシークエンスです。彼女は物を買う際、ほとんどお店の人間の顔を見る事なく、むしろ素っ気ない態度をとります。 紗和といえば、もともと純真で明るい性格のキャラクターでした。裕一郎もそこに惹かれたのですが、今作の彼女はどこか暗く、他人とのコミュニケーションを避けます。それもそのはず、不倫がバレただけでなく生活や仕事、ほとんど全てのものを失ったわけですから落ち込むのも仕方ありませんよね。 しかし、彼女はそんな現実から逃げると共に新たな生活を築くべくして引越しをしたはず。自分の事を知る人のいない街に越してくる利点は、自分がなりたい自分になれる事ではないでしょうか。今の生活を、そして自分という人間を良くしようという向上心があれば、どうとでもできるのにそうしない。ここが紗和の醸し出す違和感の一つとなるのです。 さらなる紗和の違和感は、街の人間に自分の不倫をしたという過去が知られた際にとった、彼女の行動にあります。彼女はまるで弁明するかのように、繰り返し「私、幸せになろうなんて思っていません」と周りの人間に言います。いえいえ、彼女は幸せになる気満々でした。

映画『昼顔』
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裕一郎と逢瀬を重ねるようになってから、彼が一度雨のせいで遅れて森に現れる事があります。その際彼女は彼に対して強く怒るのです。「もう一生会えないかと思った」と。ここから「裕一郎と会えないと怒る」、つまりこの時点で紗和が「裕一郎と会うことは当たり前」だと思っている事がわかります。 それに何を隠そう、「幸せになろうなんて思っていない」と言いながらも、乃里子の元から自分の元へと来て、生活を共にしていた裕一郎を「未来の旦那さん」として周囲に紹介していましたよね。尚、先述の裕一郎の遅刻の件も含め、劇中で彼女は些細な事に対してよく機嫌を損ねます。なんだか、幼いのです。 不倫相手として一線を引いていた時に比べ少し幼いそれらの態度は、前述の向上心を失った態度と関係して、全体的な彼女の違和感を造り上げる要因となっているのです。

裕一郎は草食男子の皮を被った、流動系男子

斎藤工『昼顔』
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妻、乃里子の怪我を知ってから彼女の身の回りの世話をしていた裕一郎を乃里子は「彼、優しいから」と、形容します。確かに、その行動は一見優しい印象を持てますよね。しかし、果たして彼は本当に“優しい”のでしょうか? 口数が少なく、恋愛よりは自分の研究や昆虫学などに興味感心がある辺、「草食男子」だと思われがち。しかし、彼は「草食男子」なんかではありません。彼は「流動系男性」なのです。NOと言うことが苦手で、人の意見に流されやすい男性なのです。そしてNOと言わないことは、決して“優しい”というわけではありません。彼は乃里子と別れて紗和と籍を入れると決めていたのなら、早くそうすべきだったと思いませんか? もたもたと、乃里子に付き合っていたせいでこの悲劇は生まれたのです。彼がもし、はっきりと乃里子を拒絶していれば。否、そもそも彼が意思の強い人間あれば、不倫も起きずに全ての歯車は狂わなかったはず。

映画『昼顔』
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さらに今回同行した男性から、裕一郎に関して興味深い意見がありました。それは彼が実は「隠れメンヘラ」なのではないか、ということ。 確かに、彼は口数こそは少ないですが、言わなくても良い余計な事を言う癖があります。ドラマ版で彼は紗和からそれを指摘された際に、否定せず「人からそれが原因で嫌われている。職場でも鬱陶しがられ、生徒からも好かれない」と続けながら「よく結婚できたなと思っています」と話しています。 この発言は、次のように捉えることができます。人からあまり好かれない自分のような人間を愛して結婚してくれた人(乃里子)さえいれば、周りはどうであっても良い、と。そうすると、妻の乃里子だけでなく彼もまた彼女に依存していた、共依存の関係にあったのではないかと考えられるのです。 それであれば、乃里子が何故あのように狂ってしまったのか納得がいきます。

乃里子は一見狂っているけど一番共感できるキャラクター?

映画『昼顔』
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妻、乃里子は確かにやりすぎな点が多々あります。三浜の森から同じバスで駅まで戻って来た紗和と裕一郎を待ち伏せし、近くのシティホテルに連れ込んだ挙げ句、目の前で愛し合えというのですから間違いありません。そして、彼女の狂気が裕一郎を殺した。これもまた、確固たる事実です。 しかし、彼女は今作における“悪者”なのでしょうか?裕一郎を殺害した行為は邪悪極まりませんが、彼女が彼に「あなたが私をこんな風にしたんじゃない」と言うのです。これ、間違っていないのです。彼女のおっしゃる通りで、先述の裕一郎の行動や性格が、彼女を狂わせました。 むしろ、彼女は幾度も死のうとするのに死ねないのです。裕一郎と無理心中をした時も、乃里子は本気で死ぬ気でした。しかし、彼女だけ生かされたのです。裕一郎のいなくなった世界に残ってしまった彼女を、なんだか気の毒に感じてしまいます。

伊藤歩『昼顔』
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今作で描かれている乃里子に対して、鑑賞者は思わず「ヤバい」と思うでしょう。しかし、何が怖いって、彼女自身、自分がそこまで「ヤバい」状態になる事を予期していなかった事です。つまり、我々も彼女と同じ立場にたてば、いつなんどき、どんな理由で「ヤバくなる」か分からないのです。そう考えると、実は彼女が一番鑑賞者に近い存在である事がわかります。

紗和のその後はどうなる?

映画『昼顔』
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映画のラストで、彼女は裕一郎の後を追うかのように線路に寝転がり、自殺を図ります。しかし、伸ばした左手の薬指に蛍が止まって、その光が指輪のように光り輝いたのを見て、彼女は生きる事を選んだのです。 「女っていうのは強い」という事を、乃里子の生命力も然り、彼女の生気が物語っています。 その後、紗和は裕一郎の子を妊娠している事に気づきます。裕一郎との思い出が残る、あの海辺の街で育てていくかもしれませんし、はたまた新天地に引っ越していくかもしれませんね。

映画『昼顔』は単なるメロドラマの域を超えていた

映画『昼顔』
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これまで、今作がカップル向きの映画である理由や、登場人物に焦点を当てた考察を述べてきました。 映画の見所は登場人物以外にもスクリーンで観る臨場感、そして映像美など、挙げだしたらキリがありません。125分と、邦画ラブストーリーにしては上映時間が長いのにそれを感じさせない。『昼顔』は映画としての出来が非常に良いといえる作品なのです。 今作をきっかけに、改めて「不倫」というものを考えてみるのも悪くありませんね。