谷崎潤一郎が好きな人に贈る。きっと好きになれる映画6選

2017年7月22日更新

近代日本文学を代表する小説家、谷崎潤一郎は、その流麗な文体により、耽美、デカダンス、グロテスクなど、多様で華やかな作品世界を展開していて、愛好者も非常に多い文豪です。そんな谷崎愛好者が好きになる6本の映画を紹介します。

谷崎潤一郎作品の魅力とは?

谷崎潤一郎(1886 - 1965)明治末期から昭和中期まで活躍した、近代日本文学を代表する小説家です。代表作は『刺青』、『痴人の愛』、『細雪』などがあり、漢語、古語、俗語、方言を縦横無尽に駆使した文体を特徴としています。 テーマやジャンルなども、歴史小説、ミステリー、諧謔的なユーモア小説、耽美的な幻想譚など、非常に幅広いことでも知られています。大正ロマン、フランス趣味など西洋好みなものから、江戸趣味や歌舞伎などの華やかな世界から、フェティシズム、性愛や情念、悪魔趣味などを描いたデカダンスな闇の世界まで扱っている作風は、とても一口では語れません。 そんな谷崎潤一郎を愛好するあなたにお勧めの映画を紹介します。

明治・大正期のロマンを楽しみたい人には鈴木清順の大正浪漫3部作!

『ツィゴイネルワイゼン』(1980)

あまりにもエキセントリックな作風により、日活を解雇されてしまった鈴木清順が一切の妥協をせずに撮り上げた作品です。原作は内田百閒の『サラサーテの盤』。 藤田敏八が演じる青地と原田芳雄が演じる中砂との奇妙な関係と、大楠道代、大谷直子演じるそれぞれの妻たちをめぐる怪談めいた幻想譚が、鎌倉をロケ地として美しく描かれます。ラストの鶴岡八幡宮のシーンはゾッとします。

『陽炎座』(1981)

『ツィゴイネルワイゼン』の成功を受けて、製作された『陽炎座』(1981)の原作は泉鏡花の『陽炎座』、『春昼』、『春昼後刻』です。 主演は松田優作で、あのアクション俳優の松田にアクションを一切禁じて、女に翻弄される弱い男を演じさせています。基本は松田優作演じる劇作家とそのパトロンの妻(大楠道代)との道行きですが、あの世とこの世の境界が煌びやかに逆転するのです。

『夢二』(1991)

やや時間をあけて発表された『夢二』(1991)には原作がありません。画家の竹久夢二と女性たちの交流を耽美的に描く、オリジナル・ストーリーです。 夢二を演じるのは沢田研二で、毬谷友子、宮崎萬純、広田玲央名といった女優陣も豪華。特筆すべきは『太陽を盗んだ男』(1979)などの監督、長谷川和彦が俳優として出演している点でしょう。 全2作ほど、おどろおどろしくありませんが、沢田研二の夢二の美しさが充分に堪能できます。

耽美的な世界に酔いしれたい人に

『イノセント・ガーデン』(2013)

『オールド・ボーイ』(2003)のパク・チャヌク監督のハリウッド・デビュー作です。主演は『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)のミア・ワシンコウスカで、製作はリドリー&トニー・スコット兄弟。 インディア(ミア・ワシンコウスカ)は、父を亡くし、母(ニコール・キッドマン)と2人で暮らしていました。そこに、謎めいた叔父のチャーリー(マシュー・グッド)が現れ、インディアはその不思議な魅力に惹かれます。ところが、インディアの周辺の人物が姿を消していって……。 ヒッチコックの『疑惑の影』(1943)を思わせるストーリー展開ですが、より官能的なミステリーに仕上がっています。

『エコール』(2006)

『アレックス』(2002)のギャスパー・ノエのパートナーである女性監督、ルシール・アザリロヴィックが、フランク・ヴェーデキントの小説『ミネハハ』を原作として撮った作品です。出演者は全て女性で、大半が少女。 外部から完全に遮断された、森の中にある女学校が舞台です。少女たちは毎日、儀式のように勉強しているのですが、外界に興味を抱き始めます。純粋無垢なはずの少女たちが、放つエロチシズムをお楽しみください。

グロテスクなサディズムの世界を垣間見たい人には『ソドムの市』(1975)!

そのスキャンダラスな死で名高いパゾリーニ監督が、マルキ・ド・サドの『ソドムの百二十日』を現代に置き換えて撮った、曰く付きの遺作です。マルキ・ド・サドは無論、「サディズム」の語源となった18世紀の作家。 ファシストたちが、9人の美少年・美少女を洋館に集めて、淫蕩・変態行為の限りを尽くすという内容です。実際、1979年の三菱銀行人質事件の犯人はこの映画の残虐なシーンを実際の犯罪に引用するなど、この映画に影響された部分があるので、毒気に当てられないように要注意。 18世紀のフランスで書かれた小説が、20世紀のイタリアの映画監督の作品となって、20世紀の日本人の犯罪行為に影響を及ぼすとは、恐るべき映画と言えます。谷崎のグロテスク趣味が好きな方にお勧めします。

谷崎潤一郎と映画

いかがでしたか? 大正浪漫の世界、女性的な華やかなエロチシズム、サディズムとグロテスク趣味と、近年の映画にも谷崎潤一郎的な要素で満ちているものがたくさんあります。 もともと、谷崎は1920年前後に映画の脚本を書いていた時期もあったので、谷崎作品と映画とは親和性が高いのです。また、漫画家の喜国雅彦は谷崎潤一郎のファンで、谷崎の『月の囁き』に触発されて、『月光の囁き』という作品を書いているのですが、これを塩田明彦が1999年に映画化しています。 広大な谷崎潤一郎の作品世界を、映画というキーワードで渉猟してみるのも、一興かもしれません。