『心が叫びたがってるんだ。』アニメと実写を観比べてみた【あなたはどっち派?】

2017年7月29日更新

2015年に公開され話題となったアニメ映画『心が叫びたがってるんだ。』の同名実写版映画が2017年7月公開されました。アニメ版は好評を博しましたが、果たして実写版はどんな評価を受けているのでしょうか。オリジナルエピソードや違いなど、それぞれの良さに注目しながら比較してみました。

実写版『心が叫びたがってるんだ』公開!「あの花」の超平和バスターズ原作の実写化

長編アニメーション『心が叫びたがってるんだ』は、2015年9月から劇場公開されました。愛称は「ここさけ」。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』で話題を呼んだアニメーション制作チーム“超平和バスターズ”が、原作として参加しています。 本記事ではそんなアニメ版「ここさけ」と実写版「ここさけ」の違いなどを挙げつつ比較していきます。まずはあらすじをおさらいしましょう!

実写映画『心が叫びたがってるんだ。』のあらすじ

おしゃべりが大好きだった成瀬順は幼い頃に両親の離婚をきっかけに言葉を失い、心まで閉ざしたまま高校3年生の春を迎えます。クラスでの存在感はゼロ。同級生の坂上拓実も、彼女に関心をはありませんでした。 しかしある日、ふたりは「地域ふれあい交流会」の実行委員に任命されてしまいます。仁藤菜月や田崎大樹も含めた寄せ集めメンバー4人に、担任の城嶋一基はミュージカルを提案。その話を聞いても、クラスの誰もがとまどうばかり。けれど順だけは密かに「歌で自分の気持ちを誰かに伝えたい」と願っていました。 反対する皆の前で思わず「私はできるよ」と歌ってしまう順。言葉を失ったはずの順の想いに拓実たちやクラスの皆も心を動かされ、力を合わせてミュージカルを作ることに決定。全員参加で準備を進めます。しかし本番当日になって突然、順が音信不通に。このピンチを、拓実たちは乗り越えることができるのでしょうか……。

気になるのはキャストと音楽!アニメとの違いを検証

“実行委員”4人のイメージはピッタリ

主役の坂上拓実を演じた中島健人は、ジャニーズに所属する5人組男性アイドルユニット・Sexy Zoneのメンバーです。ちょっとアンニュイな雰囲気は拓実「そのもの」。ただしアイドル的な見せ場はなく、ダンスも歌もほどほどにこなしたそうです。 ヒロインの成瀬順は、NHK朝ドラ『べっぴんさん』でブレイクした芳根京子。「声を出したくても出せない演技」が秀逸です。切ない思いを表情の変化と仕草を駆使して、巧みに感情を表現しています。 拓実の元カノ、仁藤菜月役の石井杏奈はダンス&ボーカルグループE-girlsのダンスパートを担当。得意のダンスを生かした、実写版ならではの若さはじけるチアリーディングシーンは必見です。 野球部元エースの田崎大樹を演じた寛一郎は、俳優である佐藤浩市の長男であり、三國連太郎の孫にあたります。祖父や父親に似た恵まれた体格と強い存在感で、アニメ以上に硬派なキャラクターとして大樹を演じきっています。実写版オリジナルのカリメロ頭が、とても似合っていますね。

もうひとつの“主役”、音楽の使い方も忠実に再現

アコーディオンを拓実が弾き語るところから、アニメとほぼ同じ音楽の世界が広がっていきます。「玉子の中にはなにがある」(原曲「Around the World」)、「わたしの声」(原曲「グリーンスリーブス」)も、原曲、歌詞ともにそのまま歌われています。音楽室で拓実がピアノを弾くシーンは、実写版ならではの美しさです。 王子がダンスを踊る相手や一部演目はアニメ版と違いますが、「心が叫び出す」(原曲「ベートーベンピアノソナタ第8番 悲愴」)と「あなたの名前呼ぶよ」(原曲「Over the Rainbow」)の神ハーモニーは変わりません。 また、ミュージカルに「青春の向こう脛」というタイトルをつけるキャラクターも、アニメと実写版では異なります。アニメではこのタイトルを酷評していた大樹が、なんと実写版では名付け親となっています!

アニメ『心が叫びたがってるんだ。』のココがいい!

おとぎ話感、ファンタジー感が溢れる演出

冒頭、お父さんが「お城の舞踏会」から帰るところを偶然目撃した順は、大人の事情をまったく知らず、王子様の父と王女様の不倫相手が颯爽とお馬さんに乗る様子をおとぎ話ふうに思い描き、憧れてしまいます。 さらにアニメらしいファンタジーな要素を感じさせるのが、順の声を奪った玉子の精の存在です。「君のお喋りが直るように、口にチャックをつけてあげよう」と言いながら順の口を閉じてしまうシーンは、怖いと思ってしまうこと間違いなし。

高校生らしさを強く印象付けるエピソードも

実写版では描かれていなかったものとして、大樹の部活仲間でクラスメイトでもある三嶋樹と、その同級生である宇野陽子の恋愛エピソードがあります。 またオシャレや化粧に並々ならぬ好奇心を抱いている女子高生たちの生き生きとした姿が、アニメではさりげなく、けれど巧みに表現されています。

若手声優と意外な大物俳優が「声の演技」で大活躍

アニメ版の見どころのひとつが、「声を出すとお腹が痛くなる」という順の演技です。声優にとって非常に難しい役柄を、女優や歌手としても活躍している水瀬いのりが好演しました。ちなみに水瀬は、3年2組の生徒のひとりとして実写版にも出演しています。 もうひとりアニメ版で熱演していたのが、人気女優の吉田羊。実写版の大塚寧々も芸達者さんぶりを見せていましたが、吉田羊は初めてのアニメ吹き替えにもかかわらず、意固地で素直になれない母親・成瀬泉を見事に演じきりました。

実写版『心が叫びたがってるんだ。』のココがいい!

秩父という舞台の息遣いが、さらに深まる

実写化にあたっては、アニメの舞台になった秩父のスポットがさらに頻繁に登場します。たとえばアニメ以上に重要なシーンでロケ場所として使われているのが、「言葉を司る神様」を祀っているという設定の萬松山大慈寺。秩父郡横瀬町に実在するお寺です。 冒頭は成瀬家の3人が仲睦まじく大慈寺のお祭りを楽しみ、玉子のお守りの由来が語られます。このエピソードが直後の離婚の悲しさも際立たせています。さらに実行委員4人で訪れたお祭りのシーンではあらためて、玉子をめぐる「呪い」を強調しています。 クライマックスでは「地域ふれあい交流会」の会場が秩父宮記念市民会館へと格上げされていたり、秩父という街がとても効果的に使われていたように思われます。

人と人のつながり方が、もう少しだけ濃密に

順と仲間たちのポストイットを使った温かなやり取りは、とても微笑ましいエピソードのひとつです。一方で大樹と野球部の後輩たちとの確執は、大道具にいたずらするシーンなどを通じてより深く重く描かれています。だからこそ、仲直りの感動が鮮やかに伝わってくるのではないでしょうか。 生徒たちの絆をつなぐ痩せ気味ロングヘア、ひょうひょうとした担任教師役を、実写版ではぽっちゃり丸刈りの荒川良々が好演しています。見た目は違うけれど、確かに「しまっちょ」です。

どっちの『心が叫びたがってるんだ。』が好き?実写版の評価は?

「アニメ版がいい!」

従来からの「ここさけ」ファンには、アニメ版信奉者も多いようですが、一方でアニメ版をもっと楽しむカンフル剤的な意味合いで、実写版を支持する声もあります。相乗効果で2倍楽しめる作品と言えそうですね。

「実写版がいい!」

実写版を支持する声としてもっとも多かったのが、キャストたちの演技力に関するものでした。物語としての構成、ひとりひとりのキャラクターの表情が生む機微は、やはりリアルな人間ならでは、ということでしょう。

「どちらも最高!」

「どちらも」派の多くも、芳根京子をはじめとするキャスティングの妙に惹かれているようです。アニメ版の良さを認めつつ、実写版でもキャラの魅力を失わなかった演技力にも魅力を感じています。

実写版映画『心が叫びたがってるんだ。』 のエンドロールに注目!

実写版を見るとアニメがまた観たくなり、アニメを見ると実写版がまた観たくなるーー。そんなメディアミックスの醍醐味を、「ここさけ」は確かに与えてくれる作品ではないでしょうか? 最後にひとつ。重要なエピソードの描かれ方が実写版はアニメと異なります。エンドロールが終わるまで、くれぐれも席を立たないようにしてください。