不気味に笑うOPの意味とは?アニメ『妄想代理人』の謎をネタバレ考察!【今敏】

2017年12月31日更新

2004年に放送されたアニメ『妄想代理人』は、国際映画祭で輝かしい受賞歴を持つ今敏監督がはじめて手掛けたテレビシリーズです。今回は難解な本作を読み解く鍵となるいくつかの謎を解説します!

『妄想代理人』、世界的に評価の高い今敏監督の初のテレビアニメを徹底解説!

『妄想代理人』は2004年に放送されたマッドハウス製作のアニメで、『パプリカ』や『東京ゴッドファーザーズ』などが世界中の映画祭で評価された今敏監督がはじめて手掛けた全13話のテレビアニメです。 その内容はTVアニメでは類を見ない本格派なサスペンスホラーで、「少年バット」と呼ばれる謎の通り魔犯による一連の事件とその真相が描かれています。緻密に組まれたプロットと今敏監督のフィルム的な演出も見ごたえ十分で、アニメファンならずとも存分に楽しめます。 今回はそんな『妄想代理人』の分かりづらい部分や散りばめられた謎をネタバレありで徹底解説します!

『妄想代理人』のあらすじ

キャラクターデザイナーの鷺月子は、超人気マスコット・マロミを生み出したことで思いがけない成功を手にしますが、周囲からの期待と嫉妬によって追い詰められていました。そんなある日の帰り道、月子は正体不明な通り魔の襲撃を受けます。 犯人は金色のローラーブレードと野球帽を身に着けた少年の姿をしており、その後も被害者が続出。世間では通り魔「少年バット」として恐れられ始めます。 事件を担当する刑事の猪狩慶一と馬庭光弘は月子から事情聴取をするものの、月子の供述は要領を得ません。だが、捜査を進めるうちに一連の通り魔事件の奇妙な共通点が浮かびあがってきて……。

少年バット事件に深くかかわってくる登場人物

鷺月子(さぎつきこ)/CV:能登麻美子

本作の主人公の女性。キャラクターデザイナーとしてM&Fに勤めており、人気キャラ「マロミ」の生みの親でもあります。 子供時代のトラウマから心に闇を抱えており、さらに仕事で行き詰っていたところ、少年バットの襲撃を受け第1の被害者となりました。

猪狩慶一(いかりけいいち)/CV:飯塚昭三

少年バット事件の捜査を担当する刑事。月子の供述に違和感を覚えながらも、次々と起こる通り魔事件に翻弄され、最後は事件から手を引くことになります。 視聴者と共に事件の真相を追いかけていく導き役です。

馬庭光弘(まにわみつひろ)/CV:関俊彦

部下として猪狩ともに事件を追う若手の刑事。偽少年バットである狐塚が死亡したことで職を追われますが、その後も自ら事件を追いかけ、月子が少年バットを生み出した真相を突き止めました。

逆に怖い!不気味に笑うOP、眠っているEDの意味

『妄想代理人』でまず気になるのが独特なオープニング。ミュージシャンの平沢進が手掛けた「夢の島思念公園」の爽やかなメロディに、異様な状況で笑っているキャラクターたちが合わせられ、わずか90秒の映像で視聴者はギョッとさせられました。 そのインパクトからネット上ではさまざまな考察が飛び交いましたが、今監督は深夜放送の視聴者を叩き起こすつもりで作ったと語っていることから考えると、「笑い」は生きていること、動いていることの象徴のようなもののようです。 EDでは一転して、キャラクターたちはマスコットのマロミを中心に眠りこけています。実は「?」型になっているのも意味深です。 監督は、OPの少年バットの周りにはキャラクターたちが倒れている予定だったとも語っており、OPとEDで少年バットとマロミが対になっているのも『妄想代理人』の物語を暗示しています。

入り組んだ少年バット事件の全貌は?【ネタバレ】

いくつかのプロットと巧みなミスリードが入り混じった『妄想代理人』は、全体の物語が掴みづらい構成になっています。 一連の通り魔事件のきっかけとなった鷺月子が襲われた事件は、実は月子の狂言であったことが中盤に明らかになります。その後の事件は、精神的に追い詰められた人たちを月子が生み出した空想上の存在であった「少年バット」が襲っていた、というのが事件の真相でした。 ところが途中で模倣犯が出現しています。ぽっちゃりした小学生・牛山と中年の警察官・蛭川を襲ったのは、自分を聖戦士と思い込んだ中学生・狐塚でした。狐塚犯人のミスリードがさらに事件の全貌をわかりづらくしています。

本筋からは独立した第8話「明るい家族計画」

第8話「明るい家族計画」は自殺志願サイトを通じて知り合った三人の珍道中がコミカルに描かれています。 メインストーリーとの関連でいえば、少年バットの模倣犯であった狐塚も同じサイトにFOXというハンドルネームで書き込んでいたこと、そして最後に三人の前に少年バットが現れることで繋がってはいるものの、1連の少年バット事件とは関係のない独立したエピソードです。 とはいえ1話完結としての完成度は抜群で、中々自殺を成功させられない三人が実はすでに死んでいるというオチに視聴者が気づく仕掛けが随所にちりばめられており、特に三人の影がないことは終盤にはっきりと明示されています。最初は他人だった三人の心温まる交流とのギャップも秀逸です。 また、サブタイトルである「明るい家族計画」は、一昔前には薬局の隣などに設置されていた避妊具の販売機のキャッチコピーで、老人と少女とホモセクシャルな成人男子という構成の三人を皮肉ったタイトルとなっています。

実は事件は終わっていない!?『妄想代理人』の世界で繰り返される事象

本作を改めて振り返ると、最終話と1話は非常に類似点が多い作りになっています。 たとえば、月子の部屋番号510や少年バット事件の被害者を予見していた白髪の老人は物語の途中で亡くなりますが、最後は刑事の馬庭が同じ姿で1話と同じ数式のようなものをアスファルトに書きなぐっています。 さらに、1話と代り映えのしない街のようす、マロミの代わりにはまた新たなキャラクターが流行しており、世界はまた同じ道をたどることが示唆されています。 今回はアニメ映画監督として国際映画祭で数々の賞を受賞した今敏監督のテレビアニメ『妄想代理人』を解説しました。細かな演出までみていくとまだまだ考察の余地を残している本作。見返してみると初めて観たときとは違った新たな発見があるかもしれません。