2020年10月12日更新

映画で“女性”の歴史を辿る。フェミニズムを描いたおすすめ映画9選【国際ガールズデー】

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10月11日は国際ガールズデー!名作映画で知るフェミニズムとその歴史

昨今、様々な立場の人たちが「フェミニズム」を考え、語る時代になってきました。 1910年代に婦人参政権運動から始まった男女平等を目指す考え方は、1960年代の女性解放運動(=ウーマン・リブ)を通して「フェミニズム」という名前を与えられます。その頃から前者が第1波、後者が第2波フェミニズムと呼ばれるように。 しかし婦人参政権運動の歴史やウーマン・リブの過激な活動から、「フェミニズム」という言葉に対して「男性嫌悪」「女性の権利拡大」というイメージを持つ人も多いかもしれません。

エマ・ワトソン
©︎Dennis Van Tine/Future Image/WENN.com

そんななか、2014年にイギリスの女優エマ・ワトソンが国連で行ったスピーチが、大きな注目を集めます。 そのスピーチのなかでワトソンは、「フェミニズム」とは男女の平等を目指すものであり、どちらかの性を優位に立たせようとするものではないと、その言葉を本来の意味に引き戻しました。 それ以降、「第3波フェミニズム」とも言える新たなムーブメントが起こり始めます。2012年からは、国連によって毎年10月11日が「国際ガールズデー」と定められ、女子の権利とエンパワーメントを国際社会に訴えかける活動も行われています。 そこで今回は、フェミニズムの歴史やフェミニズム的テーマを扱った作品を紹介していきましょう。性別を問わず必見の名作を選びました。

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【第1波フェミニズム】「男女平等」への第一歩『未来を花束にして』(2017年)

『未来を花束にして』(Suffragette)キャリー・マリガン、アンヌ=マリー・ダフ
©︎Focus Features/Photofest/zetaimage

『未来を花束にして』は1910年代のロンドンを舞台に、婦人参政権を求めて文字通り“闘った”女性たちを描いた作品です。 当時、貧困層の女性は男性以上の重労働と低賃金に苦しみ、子供の親権は父親のみが持つなど、父親または夫の所有物として人生を送っていました。 そんな状況を変える法律を作るため、女性も政治に関わる権利を求めて運動が起こります。 メリル・ストリープ扮する実在した社会活動家、エメリン・パンクハースト夫人は「これまでの平和的な交渉では、耳を傾けてもらえなかった」として過激な抗議活動を指示しました。 「男女平等」の第一歩を踏み出すのが、いかに過酷なものであったか知ることができます。

【第2波フェミニズム/ウーマン・リブ】男性社会からの女2人の逃避行『テルマ&ルイーズ』(1991年)

『テルマ&ルイーズ』スーザン・サランドン、ジーナ・デイヴィス
©︎MGM/Photofest/zetaimage

専業主婦のテルマと、独身でウェイトレスのルイーズは親友同士。2人は日頃のうっぷんを晴らすためドライブ旅行に出かけましたが、立ち寄ったバーでテルマがレイプされそうになってしまいます。 助けに入ったルイーズが誤って男を射殺してしまい、彼女たちはそのまま逃げることに。犯罪者となってしまった2人ですが、その逃避行で性の解放や自分で進む道を決めるなど、それまで知らなかった人生の喜びを見出していくのでした。 男たちの支配から逃れた2人の女性の姿をいきいきと描いた本作は、1960年代後半にアメリカから世界に広まった「女性解放運動(=ウーマン・リブ)」を思わせる作品となっています。

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【第2波フェミニズム/ウーマン・リブの反省点】自分の人生は自分で決める『モナリザ・スマイル』(2004年)

『モナリザ・スマイル』ジュリア・ロバーツ、ジュリア・スタイルズ
©︎Columbia Pictures/Photofest/zetaimage

1950年代のアメリカ。美術史講師のキャサリン・ワトソンは、ある思いを抱いて名門女子大学ウェルズリーに赴任します。 アメリカで最も保守的とされる同校の学生たちは、非常に優秀でありながら、将来は良家の子息と結婚し、家庭に入ることが最良の生き方だと信じていました。 親や婚約者、夫、恋人に振り回されて生きる学生たちに「自分の望む人生を」と訴えるワトソンでしたが、彼女自身もまた、大切なことを見落としていたのです。 『テルマ&ルイーズ』で描かれたように、「ウーマン・リブ」の活動家たちは、男性社会やそれまで女性の役割とされていたものからの解放を、“すべての女性が”望んでいるものと考えがちでした。 そういった考え方は当事者である女性たちからも拒絶され、その反省が「第3波フェミニズム」に組み込まれていきます。

【第3波フェミニズム】ムスリム女性の現状を当事者の視点から描く『少女は自転車に乗って』(2013年)

活発な少女ワジダは幼なじみのアブドゥルと自転車競争をしたいと願っていましたが、「女の子だから」という理由で自転車を買ってもらえません。そこで、自転車代を手にいれるためにワジダがとった行動は意外なものでした。 どんな国に住む女の子も、男の子と平等に様々な機会を得るべきであり、その無限の可能性を応援しているのが「国際ガールズデー」。ワジダのように、自転車を手に入れるだけでも社会的制約が阻んでくることこそが、広く知られるべき現状です。 物語の舞台であるサウジアラビア出身のハイファ・アル=マンスールが脚本・監督を手がけた本作では、ムスリム女性の現状が当事者の視点から描かれています。 女性にとって、様々な制約がある現実を受け止めながらも決して暗くならず、少しずつ慣習やステレオタイプから脱していこうとする登場人物たちの姿に、ポジティブな力を感じられるでしょう。 また本作は、サウジアラビアで初めて女性が映画監督を務めたこと自体も、強いメッセージとなっています。

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【第3波フェミニズム】「ありのまま」の自分を受け入れるディズニーの新たなプリンセス『アナと雪の女王』(2014年)

『アナと雪の女王』
© Walt Disney Pictures

『アナと雪の女王』では、王子様が悪役として登場します。「王子様との結婚」が最高の幸せだったディズニー・プリンセスにとって、これは大変な価値観の変化です。 ハンス王子は王位継承権がずっと下位で、アナを騙してでも他国の王女と結婚することでしか現在の地位を保てない人物でした。彼は、男性社会の中でも生きづらい立場にある男性の象徴かもしれません。 一方でエルサは「こうあるべき」という固定概念に囚われ、女性が自分の能力を活かし「ありのまま」で生きることの難しさを体現していました。 またアナは一般人のクリストフと惹かれ合いながらも、男女の恋愛や結婚だけが「真実の愛」ではないというメッセージを伝えています。

【第3波フェミニズム】女性と男性が同等に活躍する『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015年)

スター・ウォーズ 最後のジェダイ レイ
©︎LMK

言わずと知れた大人気スペースオペラ「スター・ウォーズ」シリーズの新たな三部作の第一作目『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は、登場人物やその設定がフェミニズムの視点からも重要なものになっています。 シリーズ通算7作目にして初めて女性のレイが主人公となったことはもちろん、当初は「お姫様」だったレイアも「将軍」となり、レジスタンスを率いる強い女性になりました。 また、本作では初の女性悪役キャプテン・ファズマも登場しています。 女性キャラクターと男性キャラクターが同等に物語を動かす本作は、フェミニストたちにも好意的に受け止められました。

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【第3波フェミニズム】主人公マックスもフェミニスト!?『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
© 2015 Warner Bros. Entertainment Inc.

大人気カーアクションシリーズの新章として大ヒットした『マッドマックス 怒りのデスロード』。 イモータン・ジョー率いるシタデルの砦が象徴するのは、女性は人としての尊厳を奪われ、弱い者は足蹴にされる、父権主義的男性社会です。 そこから脱出するために立場の違う女性たちが団結する本作は、非常にフェミニズム的な作品だと言えるでしょう。

ニュークス『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
© 2014 Warner Bros. Entertainment Inc.

しかし特に重要なのは、女性たちと行動をともにする男性キャラクター、マックスとニュークスです。 自由を求める女性たちの手助けをした彼らはフェミニズムに賛同する男性を象徴しており、ニュークスは父権的男性社会の中で苦しんでいる男性の姿でもあります。 男女平等を実現するためには女性だけでなく男性の協力も必要です。また、男女平等の社会になることで、苦しい立場から解放される男性もいるのではないでしょうか。

【第3波フェミニズム】女性監督が描いた理想の女性像『ワンダーウーマン』(2017年)

ガル・ガドット ワンダーウーマン
©WARNER BROS/zetaimage

DCコミックの人気シリーズを実写化した『ワンダーウーマン』は、アメコミ映画としては初めて女性が監督を務めたことでも話題になりました。 監督のパティ・ジェンキンスは、連続殺人犯アイリーン・ウォーノスの人生を描いた『モンスター』(2004年)で高評価を受けたことでも知られています。 女性しかいないパラダイス島からやってきたプリンセス・ダイアナが、第一次世界大戦を終わらせるため、個性的な仲間たちと協力して活躍する本作。 ダイアナの「女性らしさ」「美しさ」「かわいらしさ」を否定せず、同時に強くもあれる姿は、第3波フェミニズムのひとつの理想でもあります。

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【第3波フェミニズム】平等への「闘い」は声を上げることだけではない『ドリーム』(2017年)

 『ドリーム』
© 20TH CENTURY FOX/zetaimage

1961年、ソ連と熾烈な宇宙開発競争を繰り広げるアメリカ。依然として人種差別も残るなか、NASAでは優秀な黒人女性たちが「計算係」として働いていました。 ある日エンジニアを夢見ていたメアリーは技術部へ、幼い頃から数学の天才だったキャサリンは宇宙特別対策本部に転属になります。 しかし計算室を取り仕切っていたドロシーは管理職への昇進を却下され、キャサリンには白人男性ばかりの新しい部署で、同僚からの嫌がらせが待っていました。

『ドリーム』タラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイ
©︎Twentieth Century Fox Film Corporation/Photofest/zetaimage

公民権運動も活発化していたこの時代、黒人男性をはじめとする社会活動家たちは声を上げ、大規模な抗議活動を展開して「平等」を手に入れようとしていました。 一方で、時代のパイオニアとなった彼女たちはどのように闘い、「平等」を手に入れ、自分たちの能力を存分に発揮することができたのでしょうか。 1960年代に二重の差別を乗り越えた彼女たちの「静かな闘い」や周囲の男性たちの反応は、実話であることも手伝って、現代の私たちにも希望を与えてくれます。

誰もが自分らしく生きられる社会を目指す「第3波フェミニズム」から、性差を超えマイノリティが連帯する「第4波フェミニズム」へ

フェミニズムの源流となった婦人参政権運動では、男性と同等の権利を得るために「暴力」を用いるしかなくなってしまった歴史がありました。 1960年代、反戦運動などから派生したウーマン・リブは「男女同権」「女性の社会進出」を急ぐあまり、女性が自ら求める女性らしさや、結婚を否定するような言論が目立つようになりました。 それ以降、女性に「女らしさ」を押し付ける社会は、男性にも「男らしさ」を押し付けていることがわかってきました。 「第3波フェミニズム」は、女性だけでなく男性の生きづらさにも目を向け、性別に関係なく、誰もが固定概念や決まった役割から解放され、自分らしく生きることが真の「平等」だという考え方です。 そしてこれからは、「第4波フェミニズム」の到来も予見されています。これまで焦点が当てられていた性差別も含め、より広い分野や領域での差別や搾取の撲滅を目指そうという行動です。あらゆるマイノリティが連帯し、社会構造そのものを変革しようとしています。 今回紹介した以外の映画も、そういった視点から見てみると新たな発見があるかもしれません。