『ワンダーウーマン1984』を観る前に読みたい!映画における女性ヒーロー像の変遷
『ワンダーウーマン 1984』公開!ハリウッド映画における女性ヒーロー像の変遷を振り返る
2017年に公開され、全世界で大ヒットを記録した『ワンダーウーマン』。その続編がついに2020年12月18日、日本で公開となりました。前作が確立したフェミニズム×スーパーヒーロー映画としての成功を、今回も引き継ぐことができるのかが注目されるところ。 そこでこの記事では、これまでのハリウッド映画で描かれてきた女性ヒーローたちの変遷を、キャラクターにフォーカスして振り返ってみたいと思います。時代とともに変化を遂げてきたフェミニズムの流れは、ハリウッド映画にどのような影響を与えているのでしょうか。
レイア・オーガナ (「スターウォーズ」シリーズ)
ハリウッド映画における女性ヒーローの先駆者は、1977年にスタートした「スター・ウォーズ」シリーズに登場。帝国軍との長きに渡る戦いを指揮し続けた反乱軍のレイア・オーガナです。 初めは「囚われの姫」というヒロイン的存在でしたが、ハン・ソロとの恋愛、結婚・出産を経た後も、帝国軍打倒という目標を掲げて最前線で将軍として戦い続けました。レイアというキャラクター自身が、抑圧される女性からリーダーに変貌する様を体現してみせたのです。 2015年から始まった『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』を始めとする続3部作では、女性ジェダイのレイが主人公に。レイはレイアの意志をしっかりと受け継ぎ、ジェダイとしての使命を全うしました。レイアを演じたキャリー・フィッシャーも、レイを演じたデイジー・リドリーにそのバトンを手渡したといえるでしょう。
サラ・コナー (「ターミネーター」シリーズ)
ごく普通のウェイトレスだった女性が、世界を救おうと奮起する戦士に変わったのが「ターミネーター」シリーズのサラ・コナー。1作目『ターミネーター』(1985年)から2作目『ターミネーター2』(1991年)で見せた変貌ぶりには驚かされます。 未来で救世主となる息子ジョンをターミネーターから守るため、筋肉隆々な戦士の体に肉体改造したサラ。ジョンにも自分の身を守るよう戦闘技術を教え込もうとする固い意志には、もはや「戦うお母さん」というのも生温いような確固とした信念があります。 しかしそれ故、決して社会通念上の「良き母」とはいえませんが、それこそが戦士サラの真骨頂。それまでの良妻賢母といった固定概念をごっそり覆し、子を守るため自らが前に出て戦う母親像を見せつけました。
ララ・クロフト (「トゥームレイダー」シリーズ)
ゲーム界の女性ヒーローだったララ・クロフトが、映画界に舞い降りたのが2001年の『トゥームレイダー』。ララ・クロフトというキャラクターは欧米で特に高い人気を誇り、ギネスに「ゲームヒロインとして最も成功した人間の女性」と認定されています。 トレジャーハンターで考古学者・冒険家という肩書きを持つララは、別名「トゥームレイダー (墓荒らし)」とも呼ばれていますが、古代文明の謎を解き明かすという目的があります。自らの意志を曲げない姿勢は、ララに命を吹き込んだアンジェリーナ・ジョリーにも共通する点ですね。 アンジェリーナ・ジョリーは、その後『Mr.&Mrs.スミス』(2005年)や『ウォンテッド』(2008年)などアクションもこなすハリウッド女優として成功。また彼女自身がフェミニスト・慈善活動家として知られており、この時代の「独立する女性」のロールモデルともなりました。
ヒット・ガール (「キック・アス」シリーズ)
品行方正な振る舞いが求められるのはいつも女子……そんな風に生きづらく感じている少女たちにパンチを食らわせて覚醒させたのが、「キック・アス」シリーズのヒット・ガール。不道徳な女子ヒーローとしては群を抜いています。 ヒット・ガールは幼い頃から父親に暗殺者として教育され、一切の躊躇もなく血飛沫を飛ばして大人たちを殺していくというキャラクター。おまけにそのセリフには放送禁止用語があり、映画公開後は物議を醸しました。 男性ヒーローが主人公の作品ではよくある身体的攻撃や汚い言葉遣いを、女子が無遠慮に使うことの一種の清々しさ。ヒット・ガールを演じたクロエ・グレース・モレッツの魅力も後押しし、ヒット・ガールは性差の壁をぶち破る役割を果たしたようです。
カットニス・エヴァディーン(「ハンガー・ゲーム」シリーズ)
日本ではそこまでヒットしなかった「ハンガー・ゲーム」シリーズですが、原作小説が広く読まれている欧米では評価が高く、主人公の少女カットニス・エヴァディーンの人気はまさに「ヒーロー」並み。演じたジェニファー・ローレンスもフェミニズムのアイコンになるような認知度の高い女優です。 特にハリウッドでは、2016年に「ハリウッド俳優が愛する女性キャラクター」の第1位に選ばれたほど。物語の内容は政治的で暗く、カットニス自身も明るいキャラクターではありません。しかし、圧政下で強制的に行われる死のゲームの参加者だったカットニスが、民衆を率いる革命家となっていく様には高揚感を覚えます。 ジェニファー・ローレンス自身、ハリウッド俳優のギャラに男女格差があることを告発した経験が。2013年に若くして『世界のひとつのプレイブック』でオスカー女優となった彼女は、それをおごりとせず社会的発言の原動力として権力と戦える賢い女性なのです。
フュリオサ(『マッドマックス 怒りのデスロード』)
荒廃した終末世界を舞台にしたアクション映画シリーズ「マッドマックス」に、予想外のフェミニズム作品が登場。2015年に公開されたシリーズ第4作『マッドマックス 怒りのデスロード』に颯爽と現れたのが、フュリオサ大隊長です。 カリスマ的リーダーのイモータン・ジョーが支配するシタデル砦で、「産む機械」にされた女性たち。彼女たちを逃すため、フュリオサは大胆な脱走計画を立てます。いつものマッチョ的なアクションを楽しみにしていた本シリーズの男性ファンは、そのアクションを活かしつつもフェミニズムを前面に押し出した作風に驚いたかもしれません。 この裏には、監督ジョージ・ミラーの妻であり、本作の編集を手がけたマーガレット・シクセルの力があったことは想像に難くないでしょう。また、フュリオサを演じたシャーリーズ・セロンも男性と同等のギャラを勝ち取り、男女の賃金格差の問題に取り組んでいる「ヒーロー」の1人です。
ワンダーウーマン(「ワンダーウーマン」シリーズ)
男性ヒーローが主流であり、女性ヒーローを主人公にしてもヒットしないというのが定説だったハリウッド映画界。それを思い切り覆してくれたのが、2017年に公開したガル・ガドット主演の『ワンダーウーマン』です。 何よりマーベルのヒーロー映画に比べてダークな上、これという大ヒット作が出ていなかったDCエクステンデッド・ユニバース作品。それがまさか、DCコミックス初の女性スーパーヒーローであるワンダーウーマンを主人公にし、初の女性単独監督による映画が世界的な大ヒットとなって救世主になるとは! この流れは2018年のマーベル作品『ブラックパンサー』にも引き継がれており、男性ヒーローが主人公でありつつもマイノリティの女性たちの活躍が目覚ましい作品です。2020年には続編『ワンダーウーマン 1984』も公開され、着実にハリウッドにも女性がメインとなって活躍できる場が広がってきていると感じさせます。
『ワンダーウーマン』続編『ワンダーウーマン 1984』は2020年12月18日公開!
ハリウッドにおけるフェミニズムの流れを一気にたぐり寄せた『ワンダーウーマン』。その続編である『ワンダーウーマン 1984』がいよいよ2020年12月18日に日本で公開されました。 世界的なコロナ禍によって公開延期が相次いだ2020年。この年を締めくくる貴重な洋画大作としては申し分ない作品です。ぜひダイアナの勇姿を映画館で目撃しましょう!