『ロミオの青い空』、煙突掃除夫の少年・ロミオを描いた傑作アニメ
『ロミオの青い空』とは1995年の1月から約1年に渡り、世界名作劇場にて放送されたアニメ作品です。物語は全33話、19世紀後半のスイスとイタリアを舞台にした物語で、リザ・テツナーの小説である『黒い兄弟』が原作となっています。 主人公は無鉄砲で活発ながら正義感が強く優しさにあふれた少年ロミオ。そして、もう1人の主人公、勇敢で知性溢れる少年、アルフレド。物語はこの2人を中心に、煙突掃除夫として働く少年たちが過酷な環境に耐えながら逞しく成長していく姿を描いています。彼らの美しい友情や絆の物語は感動を呼び、心に残る作品として今なお、多くのファンに愛されています。
『ロミオの青い空』のあらすじ【微ネタバレ】
19世紀後半、イタリアの国境に近いスイスの村にロミオという少年が住んでいました。人身売買が横行していたこの時代、ロミオは火事で怪我をした父親の治療費のため、掃除夫としてミラノに旅立つことに。 ロミオは道中、自分と同じく煙突掃除夫になりにきた、アルフレドという少年と出会います。2人は親友となり、固い友情を誓うものの、別々の親方の元へと引き取られていきました。ロミオとアルフレドの他にも掃除夫として働く少年は多く、それぞれが厳しい親方の元で苦しい日々を送ります。 やがて少年たちはロミオとアルフレドを中心に、掃除夫同盟を組み、互いに助け合うように。しかし、町に住む不良グループたちとの対決、親友アルフレドの死など、数々の困難がロミオを襲い、特に親友の死は彼に大きな衝撃を与えました。 それでもロミオは苦しみの中で再び立ち上がり、アルフレドに続く掃除夫同盟の2代目リーダーを拝命。正義の心を胸に、逞しく成長していくのでした。
美しき友情、ロミオと親友アルフレド
この物語の主人公はロミオですが、彼と親友アルフレドの物語と言っても過言ではありません。出会って間もなく、親友となった2人。互いに苦しいく辛い日々を送りながら少年たちと仕事の中で助け合い、人を信じる大切さを学んでいきます。 しかし、あまりに過酷な労働環境だったため、アルフレドは肺結核にかかってしまい、とうとう限界を迎えてしまいます。そして、アルフレドの死の間際、2人はこんな会話を交わします。 「君にはかなわないな」と言うロミオに対し「僕がどんなに君を頼りにしてきたか。ロミオはいつも僕の心の支えだったんだ。ロミオ、」と答えるアルフレド。ロミオと出会っていなければ、自分は復讐のために生きていただろう、と、アルフレドは言います。 この2人の固い友情はこの物語を語る上では欠かせないものとなっています。
高い評価とあたたかい感想が寄せられ、今なお愛される名作
ロミオとアルフレドの固い友情。少年たちとの信頼関係。そして、何より正義と優しい心を持つロミオ。過酷な時代を生き抜く彼らの姿は多くの人の心を打ち、放送されてから20年が経過した2015年には、20周年記念としてイベントも開催されました。 この作品の中に、ロミオの言葉で「本当に強い者は人を殴ったりしない。人を恨んだりもしない。本当に強いのはどんな時にも人に優しくする勇気を持った者だと」というものがあります。この言葉こそ、この物語の感動を生み出すロミオの心と言えるのではないでしょうか。 当時視聴していた人の中には彼らの姿に勇気を貰えた、という人もいます。少年労働というテーマは深く考えさせられるものでもあり、感動、勇気、と様々な思いを抱かせてくれる作品です。
いつまでも心に残る、強く美しい名言の数々
前述でも触れた「本当に強い人は人を殴ったりしない」という言葉もそうですが、この作品には心に残る数々の名言が残されています。 「黒い兄弟は助け合う。誰かの悲しみはみんなで分け合い、喜びはみんなで分かち合う。そしてみんなで力を合わせてどんな困難をも打ち破ろう」などもその1つ。労働状況というのは、内容は違えどどの時代でも過酷なもの。思わず考えさせられてしまう言葉ですね。 アルフレドの「僕は、煙突掃除夫であることを恥じたことはありません」も名言の1つ。煙突掃除夫は売り飛ばされた少年たちが働くもの。いい仕事とは見られていません。しかし、アルフレドは国王の目の前で自分の仕事を誇りに思っているとはっきり言うのです。貧しくとも、それを誇りに思える彼の魅力の詰まった一言です。
ロミオとビアンカと最終回
苦しい時を経て、親友の死を乗り越え掃除夫のリーダーとなったロミオ。少年たちとは固い絆で結ばれ、最初は厳しかった親方も優しくなり、ロミオを粗雑に扱っていた親方の妻エッタさえ、ツンケンしながらも彼を認めるようになっていました。 掃除夫として働く合間、カセラ教授という人物に読み書きを教わっていたロミオは教師になりたいという夢を抱くように。そして、最終話となる第33回。掃除夫の仕事を終えて故郷に帰ってから、10年経ったロミオの姿が描かれました。 そこにはアルフレドの妹ビアンカと結婚し、教師となる夢を叶えたロミオの姿が。ビアンカとの間には子供が生まれ、2人はその子供にアルフレド、という名前をつけていました。その頃には煙突掃除夫として子供たちが売られることはなくなっており、アルフレドとロミオの目指していた未来がやってきていたのでした。
『ロミオの青い空』の原作はリザ・テツナーの『黒い兄弟』
この物語の原作となったのは、ドイツ出身のリザ・テツナーの『黒い兄弟』という小説です。原作でも『ロミオの青い空』でも大きなテーマとなった、少年売買や過酷な労働状況について描かれているのですが、原作での主人公の名前はジョルジョであったりと、その内容は大きく異なっています。 特に、原作の方では実際にあった人身売買や煙突掃除夫として働く少年たちへの、虐待の実態を残すために書いたものだとされており、過酷な現状についてかなり色濃く描かれている様です。しかし、主人公が困難を乗り越えハッピーエンドになるという結末は原作も同じということですので、気になる方は原作もチェックしてみてはいかがでしょうか?