名作SFアニメ『イヴの時間』をネタバレ解説！【あらすじ】

2010年に公開され、今なおSF作品として高い評価を得ているアニメ映画『イヴの時間』。2005年に個人制作のアニメ作品『ペイル・コクーン』を発表し、話題をさらった吉浦康裕監督の最新作として公開当時から注目を集めた作品です。 今回はそんな『イヴの時間』のあらすじや分かりづらい用語の解説、本作を観た人の感想にいたるまでまとめて紹介します！

ロボットがさまざまな分野で活躍し、人間型ロボットであるアンドロイドも人間社会へと溶け込んでいる未来の世界。 家事用アンドロイドであるハウスロイドが一般家庭にも普及する一方で、頭上に浮かぶホログラムのリングを除いて人と見た目の差がないアンドロイドに精神的に依存する人々が着実に増え始めていました。 ある日、高校生の向坂リクオは自宅のハウスロイド・サミィの行動記録の中に奇妙なログを発見。気になったリクオは友人のマサキと共にGPSの記録を追っていきます。二人が辿り着いたのは「人間もロボットも区別しない」という奇妙なルールを掲げる喫茶店・イヴの時間でした。

主人公の男子高校生。両親と姉、ハウスロイドのサミィと生活を共にしています。普通の人と同じくサミィを家電として扱っていましたが、アンドロイドと人間を区別しない喫茶店『イヴの時間』に通うようになってから徐々に変わっていきます。 かつてはコンクールに入賞するほどのピアノに打ち込んでいましたが、とあるコンクールでロボットの演奏に感動したことがきっかけでピアノを辞めてしまいました。 リクオを演じるのは福山潤。『コードギアス 反逆のルルーシュ』のルルーシュ役、『狼と香辛料』のクラフト・ロレンス役など演じるキャラクターの年齢層も幅広い実力派声優です。

リクオの家の女性型ハウスロイド。家では無表情で家事をこなしますが、喫茶店・イヴの時間ではアンドロイドとは思えない豊かな表情を見せます。好きだったリクオのピアノを真似て密かに練習するなど、可愛らしい一面を持っています。 サミィ役を演じるのは『機動戦士ガンダムSEED』のラクス・クライン役で知られる田中理恵。無感情だったサミィが徐々に打ち解けていく演技が絶妙です。

イヴの時間でウエイトレスを務める女性。トキサカ事件により全身不随の重傷を受けますが、リハビリにより社会復帰を果たしました。エンディングの後には、アンドロイドのAIを開発した潮月と過ごす姿が描かれています。 ナギ役は「とある」シリーズの御坂美琴役や『みなみけ』の南春香役で知られる佐藤利奈が好演しています。

劇場版『イヴの時間』の原作となったのは2008年からウェブ上で公開された『イヴの時間』ファーストシーズンです。全6話、各15分で構成されていたウェブ版はそれぞれのエピソードの完成度の高さが話題を呼び、たちまち再生回数が300万回を突破。新たに編集した劇場版『イヴの時間』が2010年から公開となりました。 SF映画というとアクションやサスペンスのイメージがありますが、本作は人間とアンドロイドの交流を描いた心温まるドラマが展開していきます。劇場版のほかにも、Blu-ray化されているオリジナル版、コミカライズ版、小説版が発売されており、それぞれが補完し合う内容となっているので、さらに深く『イヴの時間』の世界を知りたい人はそちらも要チェックです。

劇中に登場するロボット三原則はSFの世界では有名な言葉です。SF小説の大家アイザック・アシモフが生み出した原則で、1条は「人間に危害を加えない」、2条は「1条に反しない限り命令に服従する」3条は「どちらにも反しない限り自己の身を守る」という三箇条です。 『イヴの時間』でもロボットたちの行動を縛る重要なファクターとなっており、監督である吉浦康裕もアシモフの一連の作品が元ネタとインタビューで答えています。

倫理委員会は反ロボット団体で、アンドロイドを人間として扱い、精神的に依存してしまうアンドロイドホリック(通称ドリ系)が増えていることに危機感を抱き、反ロボットの大規模な広告を打っている組織です。 アンドロイドと人間が交流を持つ施設を探し出し、最終的にイヴの時間にも魔の手が伸びていきます。

倫理委員会の前身組織による行き過ぎた取り締まりにより起こった傷害事件で、民間人にも負傷者を出しました。事件の被害者の中には、当時5歳だったナギと思われる少女もいましたが、報道はされませんでした。

物語はアンドロイドと人間がそれぞれ集まる喫茶店・イヴの時間で展開していきます。店内は背景から小物にいたるまで3DCGで精密に作られているため、店内のシーンでは本当にイヴの時間に入り込んだような感覚になります。 さらに、一度作ってしまえばカメラを自在に動かせるという3DCGの利点を生かし、奥行きや動きが感じられるカットも多く、大胆なカメラワークも新鮮です。

リクオとサミィに限らず、さまざまな人間とロボットが絆を結んでいく『イヴの時間』。Twitter上の感想でもやはり「感動した」「泣いた」という声が多く上がっています。劇場版だけでは明かされていない情報もあるため、続編も気になるところです。 あなたも、『イブの時間』を訪れてみてはいかがでしょうか？