2017年8月11日更新

エリア51って? SF作品への理解が深まる中級者向けSF用語解説!

このページにはプロモーションが含まれています
2001年宇宙の旅
©MGM

AD

SF作品をさらに深く楽しむためのSF用語説明・中級編!

初級編に引き続き、さらなるSF用語を集めてきました。今回は、映画を見ていて聞き流しがちな12個のSF用語を解説します。反物質、ワームホール、サイバネティクスなどなど、聞いたことあるけど意味はちょっとという言葉も一度知ってしまえば簡単です。よりSF映画を楽しむために一度おさらいしておきましょう。

ラグナロク

マイティ ソー バトルロイヤル
©MARVEL STUDIOS/DISNEY

ラグナロクは北欧神話における神々の最終戦争のこと。日本語に訳される場合は神々の黄昏と訳されることが多いです。 まずラグナロクの前兆に、厳しい冬が3度続くフィンブルヴェトが始まり、太陽と月は飲み込まれ、生命は死に絶えます。そして、魔狼フェンリルや巨蛇ヨルムンガンド、巨人族を率いたロキが神々の地アースガルズへと攻め込みます。オーディンやトールといった神々がそれに立ち向かいますが、次々と相打ちになり、ラグナロクの後に残るのは灰ばかりになります。 北欧神話をベースとしたSF映画は少ないですが、新約聖書にも見られるこうした終末論・最終戦争観は、欧米の人類最後の戦いを描いたSF作品に大きな影響を与えています。

ジオフロント

ジオフロント(Geofront)とは地下に築かれた巨大都市または、それを目的とした空間のことです。それぞれ地下のgeo+開拓線のfrontを意味しています。 実際にバブル期の日本では東京に残された二つのフロンティアとして、東京湾岸一帯のウォーターフロント、そしてジオフロントの開発が計画されています。その後、湾岸一帯は大きく様変わりしましたが、ジオフロントは計画案だけで終わってしまいました。 ジオフロントの利点としては気候や災害に左右されないこと、欠点としてはエネルギー供給や採光の難しさなどがあります。SF作品においては、核戦争におけるシェルターや、荒廃した世界の最後の砦として登場することが多いです。アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズでは、芦ノ湖周辺の第三新東京市の地下には巨大なジオフロントが広がっています。

AD

反物質

スター・トレック ビヨンド
© Paramount Pictures

反物質とは、ある物質に対して質量とスピン角運動量が同じで、電荷などが正反対の物質のこと。簡単に言えば電気的にプラスマイナスが正反対の性質を持つ物質です。特に注目されているのは、反物質が持つ対消滅と呼ばれる性質です。その性質は、とある物質と対になる反物質が接触すると、それらの持っていた質量が全てエネルギーに転換されるというものです。 これは恐るべきエネルギーで、1g同士の物質・反物質を対消滅させるとおよそ90兆ジュールのエネルギーが発生するとされており、これは核分裂反応の比ではありません。SF作品では超長距離航行を可能とする対消滅エンジンや、強大な力を持つ兵器のエネルギー源といった形で、天文学的な量のエネルギーを供給する設定として扱われています。本当に科学によって反物質が解明されれば、それに近いことが可能になると言われています。 たとえば「スタートレック」シリーズのワープコアは対消滅反応を利用しています。

ワームホール

インターステラー
©T.C.D / VISUAL Press Agency

ワームホールは1957年にジョン・アーチボルト・ホイーラーによって命名された二点の空間を結ぶトンネルのことです。いわゆる亜空間の一種で、ワームホールが通過可能な構造であれば時間・空間にとらわれることなく、ワープやタイムトラベルが可能になります。いまだ実現していませんが、カリフォルニア工科大学のキップ・ソーン博士の論文や、NASAが公式に言及したこともあり、徐々に現実味を帯びてきています。 タイムトラベルやワープが絡むSF作品には、ワームホールが出てくることが多いです。また、ガチSF映画としても名高い『インターステラー』にも登場しています。

AD

サイバネティクス

『ゴースト・イン・ザ・シェル』
© 2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved. 4月7日(金)全国公開

サイバネティクス(cybernetics)はギリシャ語の舵を取るものを意味するキベルネテスを語源とする言葉で、第二次大戦後にアメリカの学者ノーバート・ウィーナーによって提唱されました。サイバネティクスはそれまで別々で考えられてきた生物と機械とシステムを統一的に扱うことを目指した学問です。中でも、生物のシステムをフィードバック系として捉えた点が画期的でした。 SFでよく目にするサイボーグ(cyborg)はサイバネティック・オーガニズムの略であり、生命体(オーガン)にフィードバック制御による自動機械を組み込むことで、サイボーグ技術が可能になったのです。『ゴースト・イン・ザシェル』でスカーレット・ヨハンソンが演じたミラ・キリアン少佐もサイバネティクスが生み出した存在とも言えます。

オーバーロード

2001年宇宙の旅
©MGM

オーバーロードは、人類の進化に介入する超越的な存在や異星人を指す言葉です。元々はイギリスのSF作家アーサー・C・クラークの『幼年期の終わり』に登場する異星人でした。アイザック・アシモフ、ロバート・ハインラインと並ぶ、SF界のビッグ3として知られるクラークですが、本作では人類の進化を異星人による飼育として捉えた点が新しく、いまだに人類に介入するオーバーロードのような存在が登場する作品が多くあります。 クラークとキューブリックが協力した『2001年宇宙の旅』にも人類を進化へと導く存在が登場しています。

AD

エーテル

『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』
© MARVEL STUDIOS/WALT DISNEY/zetaimage

エーテルは19世紀から20世紀初頭まで物理学の分野を中心に議論されていた、空間を満たしている仮定の物質です。古代ギリシャにおいて、万物を火、水、土、空気に分類する四大元素説をアリストテレスが発展させ、天体を構成する第五元素アイテールを仮定しました。このアイテールを語源にして、17世紀にデカルトによって光が伝播するのに必要な媒質として考えられたのがエーテルです。 現代ではアインシュタインの特殊相対性理論などによってエーテルというアイデアは廃されましたが、SFの世界では、架空の技術としていまだに使われることがあります。また、ファンタジーのような過去のテクノロジーをベースにした世界では、空間を満たす魔法の源のような扱われ方をする場合もあります。 MARVEL原作の『マイティ・ソー ダークワールド』では世界を変える強大なエネルギーとしてエーテルが登場しています。

メトセラ(長命人種)

メトセラは『旧約聖書』の創世記に登場し、969歳まで生きたとされる人物で、ノアの箱舟で知られるノアの祖父としても有名です。キリスト教・ユダヤ教では長命なことのたとえに使われ、SFにおいてもロバート・A・ハインラインが小説『メトセラの子ら』で、長命種の名前として使っています。 同じく寿命に関するものとしてはテロメアもよく登場します。テロメアは1930年代に発見されたDNAの末端部分のことで、現代では老化に大きく関係していることがわかってきています。作品内で極端に寿命が短い人物の理由付けとして使われることも多いです。

AD

エリア51

インデペンデンス・デイ
©20th Century Fox/Photofest/zetaimage

エリア51はアメリカ空軍が管理するネバダ州南部の空軍基地。CIA主導で数々の軍事実験を行っていたという機密性の高さから、UFOが墜落したロズウェル事件への関与や、秘密裏に宇宙人を飼っているなどの陰謀説が尽きない場所です。 シリアス・コメディ問わずエイリアンや宇宙人を研究する施設として扱われ、『インディペンデンス・デイ』でも宇宙船を捕獲して研究を行っている秘密施設として登場しています。

第五氷河期

デイ・アフター・トゥモロー
©20th Century Fox/Photofest/zetaimage

地球の数百万年の歴史の間で、過去4回大きな氷河期が確認されています。次に氷河期が訪れれば第五氷河期ということになります。氷河期が起こる原因としては、温室効果ガスと呼ばれる二酸化炭素とメタンを主とした大気組成、太陽を回る地球の軌道、大陸の配置の三つが挙げられます。 映画では『デイ・アフター・トゥモロー』で現代に到来した氷河期が描かれています。映画内では実際に起きた現象や理論を取り入れており、パニック映画としても、SF映画としても見ごたえのある作品です。

慣性飛行

ロケットや宇宙船がエンジンを停止し、何も力が働いていない状態での飛行を慣性飛行と呼びます。これは中学校の物理で習うニュートンの運動法則の一つ、慣性の法則によるもので、地球上に比べて空気抵抗や重力が極端に小さい宇宙は慣性が働きやすい環境です。そのため、宇宙航行においては慣性飛行を出来るだけ活用することになります。 慣性飛行に限らず、宇宙を舞台とする場合はこの慣性を利用した移動が描かれることも多いです。

AD

内宇宙(インナースペース)

フリー画像

地球から広がる外宇宙に対して、人間の内部に広がる領域は内宇宙(インナースペース)と呼ばれることがあります。1960年代に始まったSFのニューウェーブの中で、J・G・バラードが「SFは外宇宙より内宇宙をめざすべきだ」と言ったことで注目を集め、SFの大家フィリップ・K・ディックも『ユービック』では人間のインナースペースを一つの異次元として使っています。 いまだに解明しきれない人体を宇宙にたとえるのは言い得て妙です。