『国宝』春江はなぜ俊介と結婚した?喜久雄との関係を原作から解説

映画『国宝』(2025)で、俊介と結婚し、梨園の妻となった春江。喜久雄への深い愛情を持っていたはずの春江が、俊介を選んだことに驚いた方も多いはずです。 この記事では、春江が俊介と結婚した理由、喜久雄との関係性、さらには原作との違いについて、考察・解説していきます! ※この記事は、映画『国宝』のネタバレを含みます。
『国宝』春江の基本プロフィール
名前 | 福田春江 |
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立場 | 喜久雄の幼馴染で恋人。のちに俊介と結婚し、子供を授かる。 |
キャスト | 高畑充希 |
喜久雄の幼馴染で、恋人関係にあった福田春江。ヤクザの息子であった喜久雄の運命に寄り添い、2人で刺青を入れるなど幼少期から一心同体でした。 やがて、喜久雄が歌舞伎の世界に入り関西へ拠点を移すと、春江も彼を追って上阪。ミナミのスナックで働き始めます。そのスナックには、喜久雄とともに花井半二郎の息子・俊介も訪れていました。 ある日、怪我を負った半二郎が、彼の代役として俊介ではなく、養子の喜久雄を抜てき。「曾根崎心中」の舞台で圧巻の演技を見せる喜久雄に対し、俊介は悔し涙を流して客席をあとにします。春江は俊介に寄り添い、2人は姿を消しました。 歌舞伎界を去ってから長い月日を経て喜久雄の前に現れた2人は、結婚して子供を授かっていたのです。
春江はなぜ喜久雄と結婚しなかったの?

喜久雄からのプロポーズを断った春江
喜久雄は1度、布団の中でプロポーズをしています。しかし、春江は「喜久ちゃんは役者、いまが登り坂の大事なとき。(中略)喜久ちゃんの一番の贔屓になる」とやんわりと断りました。しかしその言葉とは裏腹に、翌朝何も言わず去っていく喜久雄を横目で見ながら、春江は涙を流します。 少年時代から一緒にいた春江は、喜久雄の芸への執念を一番感じていたのかもしれません。「贔屓になる」という言葉を否定せず、何も言わず稽古へ向かう喜久雄の姿を見て、私は必要ないのだと悟ったのではないでしょうか。
春江は本当に喜久雄を裏切ったの?
春江は喜久雄を裏切ったわけではない、と考察します。 半二郎が喜久雄を代役に指名した夜、俊介は春江の家を訪れていました。俊介にとって、気持ちを吐露できる相手が春江だったのでしょう。結局、俊介は思い直して帰りますが、春江も俊介の思いを感じ取っていた、と考えられます。 そして公演当日。観客席には、形は違えど喜久雄の芸への執念に敗れたふたりがいました。俊介は「本物の役者になりたい。なりたいねん」と、胸の内をさらけ出します。喜久雄と共に俊介の成長も見てきた春江は、そのプライドの高さも知っており、この言葉は重い意味を持ったはず。 自分に本音をぶつけてくれた俊介の姿を見て、この時春江は彼を支えていこうと決意を固めたのではないでしょうか。
春江は喜久雄を裏切って俊介と浮気したわけではないのか

上記の考察からするなら、春江は喜久雄と俊介で天秤に掛けていたわけではないと考えられます。 歌舞伎界から去った春江と俊介は、地方巡業でその芸を細々と続けていました。そして長い年月が過ぎ、2人は再び帰ってきたのです。跡取りとなる子供が生まれた春江にとって、丹波屋に戻ることは1つの執念だったのかもしれません。 スキャンダルにより喜久雄が「血を汚した」と丹波屋の女将・幸子にボロカスに言われる中、聞こえているはずの春江は一切目を向けず、子供を世話していました。喜久雄へのマイナスな感情というよりは、喜久雄に、そして俊介に尽くしてきた春江の、次に尽くすべき相手が息子・一豊になったと感じさせる場面でした。
春江と喜久雄を繋いでいた幼少期からの絆

春江と喜久雄は、長崎時代から付き合っています。喜久雄は「目の前で父を殺される」という悲惨な光景を目にして、復讐に燃えていました。このときから、春江は喜久雄の心の内を理解しており「銃を使って復讐しないように」と、警告しています。 「喜久ちゃんがおらんかったら生きていけんもん」とまで伝えていた春江。少年院に入っても、遠距離になっても彼女は喜久雄を信じ、追い続けました。 久々にあった喜久雄が、興奮混じりに芸について語る様子を嬉しそうに聞いていた春江ですが、その熱意が燃えれば燃えるほど、喜久雄の中心にはいられない彼女の寂しさが募っていったのかもしれません。
春江が入れた刺青は?
長崎時代、喜久雄と春江は二人で刺青を入れました。喜久雄が背負ったのは、父と同じ「翼を広げたミミズク」。 劇中で「恩を忘れない」という意味を持つと語られたミミズクの刺青は、極道の息子であった証を体に刻むもの。そして、春江もまた喜久雄との絆を示すだけでなく、その“業”を共に背負う覚悟を持って、刺青を入れることを選んだのでしょう。 原作では、刺青を入れる際に3時間痛みに耐えた春江に対し、2回に分けようとする喜久雄に彫り師から「坊っちゃんは弱かなあ」とイジられる微笑ましいシーンもありました。
小説と映画の違いは?
原作と映画の大きな違いが、映画冒頭しか登場しなかった立花組の組員「徳次」、そして映画未登場の芸人「弁天」の存在です。2人とも原作の重要人物であり、春江とも終盤まで何度も交流があります。 また、春江のエピソードとして、両親との交流や悲惨な幼少期、後半では俊介亡き後に多額の借金を作ってしまった丹波屋を1人で背負おうとする姿も描かれました。そして晩年には、ボロボロになっても役者は舞台に立ってほしいと思ってしまう自分を「体の芯から役者の女房」と評しています。
春江を演じたのは高畑充希

春江を演じたのは、国民的人気女優の高畑充希。近年も『ウィキッド ふたりの魔女』(2024)でのエルファバ役の声優や、『ゴールデンカムイ』での梅子役など、その抜群の演技力で観客を魅了し続けています。 喜久雄と俊介に対しては、共演した吉沢亮と横浜流星の性格を重ねて「追いかけていた喜久雄と助けになりたい俊介」と、春江が恋した2人を分析してました。
『国宝』春江は喜久雄を一途に思い続けた女性

映画『国宝』のメインキャストの1人・春江を紹介しました! 春江は喜久雄を一生支えるつもりで、長崎から大阪へとやってきました。しかし、芸に命を燃やす喜久雄に対し、春江は「自分は必要ない」と感じたのではないでしょうか。 小説では、歌舞伎界から消えた後の俊介との生活や、喜久雄の最後の舞台を見届ける春江なども描かれています。より深く春江という人物を追ってみたい方は、ぜひ原作小説を読んでみてください。