2020年5月16日更新

【結末ネタバレ】『今夜、ロマンス劇場で』はなぜ泣ける?オマージュ満載&キャストの魅力全開!

『今夜、ロマンス劇場で』サムネ

泣けるロマンティックラブストーリー『今夜、ロマンス劇場で』。いったい本作はなぜこんなにも胸に響くのか。ラブファンタジーとしての面白さ、ヒロインの綾瀬はるかをはじめとするキャストの魅力、演出、主題歌など「うるっ」とくるポイントをご紹介しましょう。

目次

『今夜、ロマンス劇場で』泣ける理由を徹底分析!散りばめられたオマージュも紹介

2.5次元のモノクロお姫様が、カラフルな現実世界で恋をした!

1960年代の映画の世界を舞台に、これまでありそうでなかった不思議なラブストーリー『今夜、ロマンス劇場で』。お姫様と青年の恋模様を描く本作のお姫様は、リアルな人間ではありません。映画の中から飛びだしてきた、いわば2.5次元プリンセスです。次元を超えたファンタジックな恋愛ストーリーですが、人を愛する切なさはとてもリアル。 ストーリーはもちろん、魅力的なヒロインをはじめキャストたちの熱演、ゆるい笑いや華やかな映像美など、喜怒哀楽のツボをとことん刺激して、ことごとく涙腺を緩ませてくれます。 今回はそんな「うるっと」ポイントを多角的にチェック。突飛ともいえる設定の本作がなぜこんなにも心を揺さぶるのか、分析していきましょう。

「異次元」ラブファンタジー『今夜、ロマンス劇場で』のあらすじ

主人公は、映画監督を夢見る青年・牧野健司。彼は古いモノクロ映画に登場するヤンチャなお姫様・美雪に恋をします。ところがある夜、落雷とともに彼女がスクリーンの中から生身の姿で出現。健司はいきなり「しもべ」扱いされてしまいます。 ふたりの奇妙な共同生活が始まり、健司は美雪に少しずつ現実世界のことを教えるように。同時に純粋で自由奔放な彼女に癒され、あきらめかけていた映画監督になるという夢に向かって歩き出す勇気を持ち始めました。 美雪もまた、健司の優しさに惹かれるようになりますが……。

『今夜、ロマンス劇場で』の主なキャストを紹介

綾瀬はるか/美雪

モノクロのスクリーンから飛び出してきた美しいお姫様・美雪を綾瀬はるかが演じます。 綾瀬はるかは、2000年の第25回ホリプロタレントスカウトキャラバンで審査員特別賞を受賞し女優デビュー。以来、着実にキャリアを重ね、今やトップ女優として国民的人気を誇っています。2013年のNHK大河ドラマ『八重の桜』の主演など出演作品は多数。 近年では、ドラマ『奥様は、取り扱い注意』(2017年)や『義母と娘のブルース』(2018年)への主演で注目されました。また、2019年にはNHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』でヒロインを務めています。 劇中で注目して欲しいのは、彼女の衣装。なんと25着もの衣装を着用しています。

坂口健太郎/健司

突然目の前に現れた美しい理想の女性に惹かれていく、穏やかで誠実な青年の健司を演じるのは坂口健太郎。 彼はメンズノンノの専属モデルとして活動する傍ら、2014年に映画『シャンティ デイズ 365日、幸せな呼吸』の瞬役で俳優デビュー。それ以後の目覚ましい活躍ぶりには目を見張るものがあります。 2016年のNHK朝ドラ『とと姉ちゃん』での星野武蔵役などが話題になり、一躍人気若手俳優の一人に。映画『64-ロクヨン-』では、第40回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞しました。

本田翼/成瀬塔子

2017年に『奥様は、取り扱い注意』でも綾瀬と共演している本田翼。彼女が演じるのは、健司に密かに思いを寄せる社長令嬢・成瀬塔子役です。 2006年にファッション雑誌Seventeenの専属モデルとしてデビューした彼女は、2011年から女優活動を開始。2012年にはドラマ『GTO』の生徒・神崎麗美役で一気に注目を集めました。 近年では、ドラマ『ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜』(2019年)や、LINEモバイルのCMなど多方面で活躍しています。

北村一輝/俊藤龍之介

本作には北村一輝も出演します。彼が演じるのは、撮影所の代表作『ハンサムガイ』に出演している看板スター・俊藤龍之介。 北村は長い下積み期間を経て、1999年の映画『皆月』と『日本黒社会 LEY LINES』で、キネマ旬報新人男優賞およびニフティ映画大賞助演男優賞を受賞しました。また、映画では「テルマエ・ロマエ」シリーズや『猫侍』(2014年)、ドラマでは「ガリレオ」シリーズや『ニッポンノワール〜刑事Yの反乱〜』など、多数の作品に出演しています。 2019年のNHK朝ドラ『スカーレット』では、ヒロインの父・川原常治を演じました。

中尾明慶/山中伸太郎

中尾明慶が演じる山中伸太郎は健司の同僚であり友人、良きライバルで、社長令嬢の塔子に片想いしています。 中尾は2000年に子役デビューを果たし、その後『3年B組金八先生』(2001年)や『GOOD LUCK!!』(2003年)、『WATER BOYS2』(2004年)などの作品で注目されるようになりました。そのほかにも「ROOKIES」シリーズや『監察医 朝顔』(2019年)をはじめとするドラマ、映画、舞台、CMと幅広く活躍をつづけています。 2013年に、映画『時をかける少女』で共演した女優・仲里依紗と結婚しました。

石橋杏奈/吉川天音

女優、モデル、タレントとして活躍する石橋杏奈が演じるのは、ある老人が入院している病院の看護師・吉川天音です。老人が持っている脚本に興味を持っています。 石橋は、2006年にホリプロスカウトキャラバンでグランプリを受賞。翌年ドラマ『失踪HOLIDAY』で主演デビューを飾り、この作品でヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞しました。 2008年から2011年までファッションSeventeenの専属モデルとしても活躍し、NHKのバラエティ番組『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』にレギュラー出演するなど、その活動は多岐にわたっています。

柄本明/本多正

ベテラン俳優の柄本明が演じるのは、健司が通う映画館ロマンス館の館長・本多正。お金にがめついところもありますが、映画をとても愛している人物です。 柄本明は、劇団東京乾電池の旗揚げ人のひとりであり、1980年から数々のテレビドラマや映画で活躍をつづけています。主に名バイプレイヤーとして知られていますが、1998年の主演映画『カンゾー先生』では、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞をはじめとする多くの賞を獲得しました。 NKH大河ドラマ『功名が辻』(2006年)では、実の息子・柄本時生と親子共演。その後も『万引き家族』(2018年)や、2020年公開予定の『燃えよ剣』など注目作に立て続けに出演しています。

加藤剛/老人

病院に入院している余命いくばくもない老人は、結末の書かれていない映画の脚本を持っています。 この老人を演じたのは加藤剛。彼は1970年から2006年にかけて36年もの長きにわたり、TBSの時代劇『大岡越前』で大岡越前守忠相を演じたことで知られています。俳優養成所から舞台役者としての経験を経て、1960年代からテレビや映画に出演し始めました。晩年の作品では、『沈まぬ太陽』(2009年)や『舟を編む』(2013年)などがよく知られています。 加藤は、2018年6月に胆のうがんのためこの世を去り、本作が遺作となりました。

油断してると泣かされる!号泣者続出のわけとは?

前半で観客を映画の世界に引き込むことに成功!そして、後半の「うるっと」パートへ

『今夜、ロマンス劇場で』は、現実にはありえない世界観に観客を引き込むことに成功しています。美雪がスクリーンを飛び出して、現実世界にやってきてからというもの、健司は何度も小さなトラブルに巻き込まれてしまいます。そのドタバタで笑わせ、観客は健司と美雪が惹かれ合っていく過程、そしてその行く末に期待を高めていきました。 そこで突然、美雪の秘密が明らかに。

現実の人間に触れれば消えてしまうとわかってから、ふたりの恋は“惹かれ合っているのに触れ合えない”という切ない障害に阻まれます。ふたりの想いが近づくほど、その障害が観客にも重くのしかかってくるのです。 その後のふたりの決断、すべての想いが溢れ出すラストシーンには、誰もが涙せずにはいられないでしょう。

シェネルによる主題歌「奇跡」が映画の世界観にぴったり

本作の主題歌は、オーストラリア出身の人気歌手・シェネルによる「奇跡」。劇場用映画としては2012年に公開された『BRAVE HEARTS 海猿』の「ビリーヴ」以来、約6年ぶりのタイアップとなります。 R&B、ヒップホップなど多彩なジャンルを歌い上げるシェネルですが、今回は映画の壮大な世界観を感じさせるラブバラードを熱唱しています。 本作のストーリーにぴったりのこの曲が、私たちの涙腺をより刺激してくるのです。

北村一輝の怪演に注目!日本映画黎明期のオマージュ満載

北村一輝演じるスターは日活アクション映画の看板俳優たちを彷彿とさせる

北村一輝演じる京映撮影所のスター・俊藤龍之介、通称「ハンサム・ガイ」。この愛称は、日活アクション映画の看板俳優だった小林旭が「マイト・ガイ」、二谷英明が「ダンプ・ガイ」と呼ばれていたことに倣っています。 また、彼が撮影している主演映画『怪奇!妖怪とハンサムガイ』も、どことなく当時流行していたエロ・グロ・ナンセンスな作風の映画のようですね。

洋画も邦画も!名作映画へのオマージュが満載

『ローマの休日』オードリー・ヘプバーン
©Paramount Pictures/Photofest/zetaimage

映画の登場人物が現実世界に飛び出してくるという物語のスタートは、ウディ・アレン監督の『カイロの紫のバラ』(1985年)を思い起こさせます。また、美雪がもともといた映画『お転婆姫と三獣士』は、『ローマの休日』(1953年)を彷彿とさせるプリンセスの脱走劇。 健司が映画館で映画を観ているシーンは『ニュー・シネマ・パラダイス』(1988)と似ていますし、落雷によって美雪が“ある意味”タイムスリップしてきたのは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)のようです。 プロデューサーの稲葉直人と監督の武内英樹によれば、作品の雰囲気は『オズの魔法使』(1939年)や日本の「狸御殿」シリーズを意識したものだとか。さらにふたりがガラス越しにキスをするシーンは、日本映画史で最も美しいキスシーンとされる『また逢う日まで』(1950年)へのオマージュとなっています。 ほかにも数多くの映画へのオマージュが散りばめられているので、それを探してみるのも面白いかもしれません。

製作陣のこだわり!低予算映画の要素も

プロデューサーの稲葉が語ったところによると、特に劇中劇『お転婆姫と三獣士』には、当時大ヒットを記録した「狸御殿」シリーズや新東宝や戦前の大都営のような低予算作品のイメージが詰まっているのだそうです。 本作には、今ではほとんど観ることができない「消えてしまった映画」に対するレクイエムという想いも込められているのだとか。

【結末ネタバレ】美雪と健司の運命は……?

これまでのストーリーは、病室の老人が看護師の天音に映画の脚本を語って聞かせるかたちで進行してきました。 新作映画の脚本を担当することになった健司は、美雪に「僕とずっと一緒にいてくれますか?」のプロポーズのような言葉をかけます。しかし、彼女は元の世界に戻らないといけない、と言って秘密を打ち明けました。 それは、現実の人間に触れると彼女は消えてしまうというもの。健司はショックを受け、美雪は悩んだ末に健司に想いを寄せる塔子にすべてを託し、部屋から出ていってしまいます。 健司の元を去ったものの、行くところがない美雪はロマンス館の館長に声をかけられ、劇場に身を寄せることに。彼女を探し回っていた健司はやがて劇場にたどり着きます。彼は、館長の制止を振り切って美雪と再会。美雪は最後に一度だけ抱きしめてほしいと健司に言います。 場面は現在の病院に戻り、看護師の天音は「それで、彼女は消えちゃったの?」と老人に問いかけました。すると彼は「この話は結局映画にならなかったのでここまでしか書いていません」と答えます。天音は、「しあわせな結末がいいな」と言って病室を出ていきました。

天音と入れ替わりに老人の「孫」が見舞いにやってきます。しかし、老人が倒れても彼女は助け起こさず、看護師たちは不思議に思っていました。彼女たちが「孫」だと思っていたのは、美雪だったのです。 健司は、触れられなくても美雪と一緒にいたいと決断し、その思いを伝えます。こうして2人は直接触れ合うことはないものの、楽しくしあわせな生活をはじめました。あるときはネクタイ、あるときは手ぬぐいの端と端を持って、手をつないでいる感覚を味わいながら。 年を取らない美雪の隣で健司は年老いて、最期のときを迎えようとしていました。連絡を受け病院に駆けつけた彼女は、瀕死の健司に最後のわがままとして触れたいといいます。美雪が手をにぎると、健司も彼女の手を握り返します。そして健司が息を引き取るのと同時に、美雪は消えてしまいました。その後、看護師が書き上がった脚本を見つけます。 モノクロの世界に入った健司は、お転婆姫こと美雪とダンスを踊っていました。そこには、健司の友人たちも集まっています。彼らの見守られながら、健司は美雪に赤いバラをプレゼント。彼女がそれを受け取ると、モノクロだった世界に色が溢れました。ふたりがキスをすると、周囲から拍手が沸き起こります。 それが、健司の書いた脚本のラストシーンでした。

『今夜、ロマンス劇場で』は、何気ない触れ合いが愛しく思えるファンタジーラブコメディ

これまでにも、さまざまな「ひと筋縄ではいかない恋愛ファンタジー」が生み出されてきました。それはもっぱら時間差恋愛だったり、種族違いだったり。直接向き合った時に生じるすれ違いが、その切なさの根幹にあります。 一方、『今夜、ロマンス劇場で』でより強く伝わってくるのは、好きになったからこそしあわせにできない苦しみ。一緒にいればいるほど募る寂しさ。設定だけでなく描かれた葛藤にもまた、ありそうでなかった切なさが込められているのです。 触れることも抱き合うこともできない健司と美雪が決意した生き方は、観る者に大切な人とともに生きて行くことの素晴らしさを改めて教えてくれることでしょう。それはたとえば、手をつないで歩いていけることのしあわせなのかもしれません。 さまざまな意味で恋心を刺激してくれる、しあわせオーラたっぷりのおとぎ話です。