2018年1月9日更新

【ネタバレ解説】『キングスマン:ゴールデン・サークル』は前作と比べて何が面白いのか

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キングスマン:ゴールデンサークル (プレス)
© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

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よりエンタメ性が高まった『キングスマン:ゴールデン・サークル』

2015年に公開されるや否や、「007」シリーズなどの歴代スパイ映画のオマージュをふんだんに散りばめながらも、度肝を抜くようなアクション及び殺戮シーンが話題となって大ヒットを記録した『キングスマン』。元々はマーク・ミラー原作のコミック作品であり、今作の監督マシュー・ボーンの『キック・アス』もミラー原作コミックという共通点があります。 『キングスマン』では何より教会という神聖な場所で行われた、血みどろな殺戮シーンが非常にクールでした。また、サミュエル・L・ジャクソンが悪役ヴァレンタインを好演し、“頭部爆発”というバイオレンスなシーンも見所でしたね。

キングスマン:ゴールデンサークル (プレス)
© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

さて、そんな前作から約2年が経って帰って来た『キングスマン:ゴールデン・サークル』。今作はヴァレンタイン並みのサイコな悪役が登場し、またもや身体の内側から殺されちゃうタイプのウエポンによって人々が脅かされるという展開です。あれ?なんだか前作と同じ? いいえ!前作と比べると、今作はよりエンターテイメント性が高まっています。笑えて、バイオレンスがあって、泣けて、軽いノリもあって、楽しい……そんな『キングスマン:ゴールデン・サークル』の見所をご紹介しましょう。

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映画開始30分でキングスマン全滅!思い切りの良さが凄まじい

キングスマン:ゴールデンサークル (プレス)
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映画開始直後に、立派なキングスマンとなったエグジーの元にチャーリーが現れます。チャーリーとは前作でエグジーと同じキングスマンの候補生でした。しかし、彼は悪の手先となりエグジーを殺そうとします。ノリの良い音楽をBGMにして繰り広げられるこのアクションシークエンスが、早速“キングスマン節”溢れるカメラワークで我々を虜にさせます。 チャーリーの息の根は止めずに、急な襲撃から何とか逃げ切ったエグジー。しかし、チャーリーの義手が車内に残され、そのためキングスマンの極秘情報がハッキングされます。そして、ビックリしてしまうくらいエグジーとマーリンを除く全てのキングスマンが爆破されました。あの可愛いロクシーやJBも、何のためらいもなくドッカーンです。マシュー・ボーン監督、鬼畜過ぎる! 実は「キングスマン」はトリロジーで製作するという話が以前からあるのですが、監督は所謂続編の壁に直面していたようです。彼は何がなんでも、「新鮮さ」を重視したうえでストーリーを続ける事を心がけたようで、このキングスマン全滅というのも、その一貫だったのではないでしょうか。

使えない部下はミンチにしてバーガーにして食べましょう

何より今作で魅力的なのはヴィラン。名女優ジュリアン・ムーアが演じる、50年代の文化に倒錯したスーパーサイコなポピーさんです。自分的にはForbesやTIMES(経済雑誌)に“今年最も活躍した女性起業家”特集に載りたい、しかし、いかんせんドラッグマフィアなので表にでる事ができない。 そんな鬱憤を、イケメンの部下を雇うたびに身体に金の入れ墨を入れてマーキングしたり、使えなかったらミンチにして次の部下に食べさせたり、エルトン・ジョンを誘拐して個人コンサートを開かせて晴らしています。

キングスマンゴールデンサークル (プレス)
© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

凄いですね、使えない人材をミンチにするならともかく、それで作ったバーガーを召し上がれだなんて。遂に「キングスマン」シリーズにカニバリズムというジャンルが介入したようです。 そして、案外あっけない最期であったものの、彼女が細工した青筋ドラッグは中々の代物だったと言えるでしょう。前作の「頭部爆発」に共通する“内なる浸食”、これはどう足掻いても止められない。嫌な事をしますね、マシュー・ボーン監督(褒め言葉)。

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ハリーとエグジー、対照的なキングスマンとしての生き方

キングスマンゴールデンサークル(プレス)
© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

ああ、ハリーは本当はスパイなんかよりも、蝶の研究がしたかったのだな、という事が一連の記憶喪失の出来事でより濃く描かれているのが印象的です。キングスマンにならなければ、好きな事が出来るだけでなく、恋愛を経て家庭を築き、一般人として幸せに暮らしていけた。しかし、彼はそうせず、“ガラハッド”としてスパイ人生を歩む事にしたのです。故に、掟破りな恋人も作らず、私生活を完全に消しました。 さて、彼の死後、その“ガラハッド”のコードネームを受け継いだエグジーはどうでしょう?

キングスマンゴールデンサークル (プレス)
© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

1作目でロンドンの不良だったエグジーは、亡き師匠ハリーを失った後も彼の教えを実践し、一人前のキングスマンとして成長しました。しかし、彼の周りには相も変わらず普通の友達がいて、キングスマンの掟破りの彼女さえも存在していましたね。彼はそういった意味でハリーと対照的な人生を歩んできました。 実際ヴァレンタインに打たれた瞬間、走馬灯すら浮かばなかったハリーは、ここにきてようやく人生を謳歌する事の大切さがわかります。師匠は自分の背中を弟子に見せて教えを説く存在。しかし、反対に「自分のようになるな」と、取り戻せない時間を悔やみながらも、エグジーに説いたシーンは彼らの師弟関係の中で非常に意味深いものでした。

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マーリン(マーク・ストロング)がいい仕事をしすぎてて泣ける

キングスマン:ゴールデン・サークル (プレス)
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さて、今作はこの男を語らずして語れません。マーリン、キングスマンのエグジー以外の唯一の生き残りでありガジェット担当の男です。前作からエグジーに対して「感情・私情を捨てろ」と口酸っぱく指導してきたクールガイですが、今作ではそんな彼の感情が溢れまくります。 酒に酔って大号泣したり、ハリーの記憶を戻したくて冷静さを失ったり……。また、ステイツマンに所属する自分と同じ立場のエージェント・ジンジャーとの出会いも彼を刺激したのではないでしょうか。彼らのような“椅子に座ってサポートするキャラ”も、本当は現場に出てバリバリ活躍したいといいう願望を秘めているのです。今まで無心で働いていた彼の、人となりがどんどん明かされていき、遂にはジョン・デンバーの大ファンである事まで発覚。 そんな彼が、大好きなJ・デンバーの『カントリー・ロード』を熱唱しながら、真のキングスマンとして自己犠牲を払うシーンは、今作で最も泣けるシーンとなっています。

次回作にも意欲的!?エルトン・ジョンも良い仕事していて笑う

キングスマン・ゴールデン・サークル (プレス)
© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

今作でいい味を出したのは、マーリンだけではありません。カメオ出演していたエルトン・ジョンもそうです。カメオというぐらいですので、観客としては誘拐されたという事がわかるシーンだけで出番は終わるものだと思ったはず。しかし、もはやカメオ出演の域に留まらずに彼は映画の終盤まで、重要な助っ人役として登場しました。ハリーもまさか、エルトン・ジョンに命を救われるとは思わなかったでしょう。彼のチケットをねだっていたのも、ハリーの私生活がようやく垣間見えて、良いギャグシーンでした。

マシュー・ボーン監督は今作に「新鮮さ」をもたらしたかったと言う事を先述していますが、その「新鮮さ」がエルトン・ジョンの起用だった事が明かされています。「人々が見て信じられない、と思う事をやりたかった。『キングスマン』は常に皆を驚かせる事を狙っている」と、話す監督。エルトン・ジョンが出演してくれるのであれば、アクションをさせるという事もかねてからの願いだったようです。 エルトン・ジョン自身も一作目から『キングスマン』を気に入っていて、撮影をかなり楽しんだ様子。「次回作ではキングスマンをやりたい」と、かなり意欲的です!

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『キングスマン:ゴールデン・サークル』は世界観を上手く広げたのでは?

キングスマンゴールデンサークル (プレス)
© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

今作は、壊滅したキングスマンにステイツマンに所属していたエージェント・ウィスキーがやってくる所で幕を閉じます。実は今回、まるで何も活躍しなかった(!)ウィスキーですが、そんな彼のスピンオフ企画および『キングスマン3』の企画が同時進行しています。 今作でもそうでしたが、マシュー・ボーンはキャラクターに焦点を当てて物語を生み出す事を得意としています。規模を大きくするのではなく、キャラクター自体の成長や彼らの辿る旅路に焦点を当てていくのが彼のスタイル。『キングスマン3』では、ハリーが恋をしてしまったり、エグジーが結婚後のトラブルに遭ってしまったり等、キングスマンの私生活がより描かれ、更なるキャラクターの葛藤を感じる作品となるかもしれませんね。

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