『未来少年コナン』、ジブリ作品へと繋がる傑作アニメの魅力!
1978年にNHKで放送された『未来少年コナン』は、スタジオジブリの巨匠・宮崎駿がはじめて監督を務めた名作アニメ。『天空の城ラピュタ』の原型ともいえる世界観と、島で育った少年コナンが飛び回るアニメーションといった本作の魅力は現代でも色褪せていません。 今回はそんな『未来少年コナン』のあらすじや登場人物といった基本設定から、本作の魅力に至るまで徹底解説します。
島育ちの少年コナンの旅立ち!『未来少年コナン』のあらすじ
西暦2008年、超磁力兵器を使った最終戦争によりほとんどの人間は滅び、大陸は海へと沈みました。それから20年後、少年コナンとおじいの二人だけが暮らす孤島・のこされ島に少女ラナが流れ着きます。 地球最後の生き残りだと思っていた二人はラナを歓迎しますが、そこに科学都市インダストリアが送り込んだ、ラナを狙う兵士たちの影が忍び寄ります。追手による激しい銃撃戦の末、ラナは連れ去られ、おじいは命を落としてしまいました。 ひとり島に残されたコナンは悲しみを乗り越え、おじいが残した言葉を胸に旅立つことを決めます。
『未来少年コナン』の世界を彩る登場人物、担当した声優は!?
コナン / CV:小原乃梨子
コナンはのこされ島で生まれた12歳の少年です。自然の中で育ったためか身体能力が高く、銛一本でインダストリアの兵士たちと渡り合います。足の指の力も人間離れしており、足の指だけでものに掴まるシーンも。偶然に出会った少女ラナを助けるため、のこされ島から旅立ちます。 コナン役を演じた小原乃梨子は、テレビ朝日版『ドラえもん』の野比のび太でお馴染みの女性声優です。
ラナ / CV:信沢三恵子
コナンと同い年の12歳の少女・ラナ。過去に太陽エネルギー開発に関わり、唯一の生き残ったラオ博士の孫娘で、博士の居場所を知る人物として科学都市インダストリアの者たちから追われています。敵に屈しない意志の強さを持つ、典型的なジブリヒロインです。 ラナの声を担当したのは信沢三恵子です。『母をたずねて三千里』のフィオリーナ役のほか、『サマーウォーズ』にも陣内万理子役で出演しています。
ダイス / CV:永井一郎
ダイスはインダストリアの船バラクーダ号の船長を務める男です。最初にラナをさらった人物ではありますが、後半はコナンたちに協力します。部下からの信頼も厚く、憎めない人物です。 ダイスを演じた永井一郎は、国民的アニメ『サザエさん』の初代磯野波平役として知られている声優です。
レプカ / CV:家弓家正
インダストリアの行政局長を務めるレプカは、独裁政権を目論む野心家の男。大きな力を持つ太陽エネルギーの秘密を手にするため、ラオ博士への手掛かりとなるラナを執拗に追いかけます。裏設定として『ジブリ・ロマンアルバム 天空の城ラピュタ』ではムスカの末裔という記述も。 レプカ役を演じたのは家弓家正。レプカのほか『風の谷のナウシカ』のクロトワ役など、悪役を演じることが多い声優です。
モンスリー / CV:吉田理保子
モンスリーはレプカの部下で、インタストリア行政局次長を務める28歳の美女。口癖の「バカね!」からも分かるように気が強く、格闘能力も高いです。ラナの追手を率いる敵として登場しましたが、後半はコナンたちと行動を共にするツンデレっぷりを発揮し、最終話ではバラクーダ号の船長ダイスと結婚しました。 モンスリー役を演じた吉田理保子は、『アルプスの少女ハイジ』のクララ役、『魔女っ子メグちゃん』の神崎メグ役など、ヒット作に多く出演しています。
原作はアメリカの小説!記念すべきNHKアニメシリーズ第1作目
『未来少年コナン』は1978年に放送されたTVアニメで、NHK初のアニメシリーズとなった記念すべき作品です。70年代に『世界名作劇場』が人気を博していたこともあり、原作にはアメリカの児童文学『残された人々』が選ばれました。 また、本作はスタジオジブリのアニメ監督である宮崎駿の初監督作品としても知られています。コナンやラナといったキャラクターの名前や、インダストリアやハイハーバーといった土地名こそ原作と共通するものの、設定やストーリーは宮崎駿によって大幅に変更が加えられました。 原作は冷戦時代を描いたダークSF作品でしたが、アニメ版ではより少年・少女向けの健全な方向にアレンジされ、まさにNHKアニメ第1作目として相応しいものとなっています。海外児童文学を原作とする、という部分はNHKアニメに受け継がれていき、『キャプテン・フューチャー』、『アニメーション紀行 マルコ・ポーロの冒険』と続いていきます。
ジブリ映画を思わせる爽快感のあるアニメーションが好評!
名作アニメとして多くのアニメーターに影響を与えた!
本作では、監督の宮崎駿や高畑勲がコンテ・演出の大部分を手掛けています。二人が得意とする観ているだけで気持ちのいいアニメーションは、このころから発揮されており、それがいまだに名作アニメとして本作が語られる最大の理由です。 『AKIRA』や『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』など、大作劇場版アニメに数多く参加している凄腕アニメーター井上俊之や、庵野作品ではお馴染みの摩砂雪なども、『未来少年コナン』を観てアニメーターを志したと語っており、後のアニメ業界への影響は計り知れません。
宮崎駿作品を象徴するような第6話のアクションシーン
中でも有名なのは第6話「ダイスの反逆」での脱出劇、そして主人公コナンの大ジャンプシーンです。 インダストリアでレプカたちに捕らえられたラナを三角塔から救出したコナンは、激しい追撃をくぐり抜け、塔の半ばから大ジャンプして脱出。着地したコナンは足元から痺れ、足の裏が地面に張り付いてしまいますが、追っ手を撒くことに成功します。 高い塔から飛び降りて、ビリビリと痺れたけれど助かるというのは現実ではありえないことですが、それをアニメーションの力で可能にし、視聴者も楽しませる、というのが宮崎駿作品の凄いところです。この第6話の大ジャンプはその象徴的なシーンではないでしょうか。
『未来少年コナン』のその後を描いた作品は!?
主人公の少年の前に、突然不思議な女の子が現れ、少年の冒険が始まるーーといったストーリーは『天空の城ラピュタ』の構造と似ていますが、実はこの『未来少年コナン』はジブリ映画『天空の城ラピュタ』と深い関係があるのです。 本作が好評を博したこともあり、NHKでは続編の企画が進行し、宮崎駿は『未来少年コナン2』の原案をNHKに持ち込みました。ですが、この企画はTVシリーズとしては実現せず、宮崎駿は自身の原案をもとに『天空の城ラピュタ』(1986年)が生みだすことになります。 さらに没になった企画は、後に『新世紀エヴァンゲリオン』を手掛けるアニメ制作会社ガイナックスに持ち込まれ、アレンジを加えた上で『ふしぎの海のナディア』(1990年)として放送されました。 特に『天空の城ラピュタ』は監督が一緒なことはもちろん、前述の通りストーリーなども酷似しており、その後を描いた続編ではないですが、『未来少年コナン』の正当な後継作と言えるでしょう。ややこしいですが、1999年に放送された『未来少年コナンⅡ タイガアドベンチャー』はまったくの別物です。
巨大航空機ギガントが出ないなど大幅な変更!映画版『未来少年コナン』
TV放送からおよそ1年後の1979年には、同じく日本アニメーションが製作した『野球狂の詩 北の狼南の虎』と同時上映で、劇場版『未来少年コナン』が上映されました。 TVシリーズをまとめた総集編という位置づけでしたが、ハイハーバーやギガントが登場しないなど大幅な変更がなされており、評判はあまり芳しくなかったようです。それを受けてか1984年には第24話「ギガント」から最終話「大団円」までの3話をまとめた『未来少年コナン 特別編 巨大機ギガントの復活』が公開されています。 今回は宮崎駿監督の不朽の名作として名高い『未来少年コナン』を紹介しました。ジブリ映画の源流を感じることができる本作、是非チェックしてみてください!