【ネタバレ解説】『君たちはどう生きるか』難解すぎるあらすじを解説・考察!ラストシーンの意味や大おじの正体とは?
ジブリ最新作『君たちはどう生きるか』が2023年7月ついに公開。本作は、宮﨑駿監督が引退宣言を撤回してまで製作に乗り出した作品として、そして本当に最後の宮﨑作品になる可能性が高いともいわれています。 そんな宮﨑駿渾身の1作とも言える本作には、1度鑑賞しただけでは、分からない謎が多く散りばめられていました。アオサギの正体とは?大おじの目的とは?そしてラストの意味とは? この記事では、映画『君たちはどう生きるか』のあらすじのネタバレ解説や劇中の謎を徹底考察。映画を観てすっきりしないポイントがあったひとはぜひチェックしてみてください。 ※本記事には映画『君たちはどう生きるか』のネタバレを含みます。未鑑賞の方は注意ください。
映画のヒントはこの中に?
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ジブリ映画『君たちはどう生きるか』あらすじ・作品概要
ジブリ新作アニメ『君たちはどう生きるか』は、宮﨑駿が脚本を手がけるオリジナルストーリーです。 吉野源三郎による小説はあくまでも映画タイトルのインスパイア元であり、小説が主人公にとって大きな意味を持つものという形で関わることが分かっています。 主人公は男の子で、ジャンルとしては冒険活劇ファンタジー。作画監督は「エヴァンゲリオン」シリーズで知られる本田雄が務めます。
映画『君たちはどう生きるか』あらすじ
太平洋戦争中の1944年、牧眞人は、東京を襲った空襲で入院中の母を亡くし、父が経営する戦闘機工場の移転とともに、郊外へ疎開することに。2人を出迎えたのは、母の妹であり、父の再婚相手となったナツコでした。お腹に新しい命が宿っている彼女を、眞人は新しい母親として受け入れることができず、転校先の学校でも孤立してしまいます。 そんなあるとき、屋敷の庭の奥に古びた塔を見つけた眞人。そこは母の大おじにあたる人物が建てたものだとか。そして眞人の前に、「あなたの母は死んでいない」と人間の言葉を話すアオサギが現れ、彼は導かれるように塔へ入っていきます。
【ネタバレ】『君たちはどう生きるか』結末までのあらすじ
【起】アオサギとの出会い
第二次世界大戦下、牧眞人は入院中の母を空襲による火事で亡くします。その後、母の妹ナツコと父が再婚し、眞人は彼女の住む屋敷に移住することに。ナツコのお腹には新しい命が宿っており、眞人は内心複雑ながらも、彼女に礼儀正しく接するのでした。 ナツコの屋敷には、7人の老婆がお手伝いさんとして雇われています。部屋に案内された眞人は、旅の疲れからか眠ってしまい、母の病院の火事を夢に見て、涙を流しました。 ふと窓の外を見た眞人は、アオサギがこちらを見つめているのに気が付きます。外に出てアオサギを追うと、屋敷の奥の古びた塔に入っていきました。塔の入り口は塞がれており、中に入ることができません。老婆たちが眞人を探しに来たため屋敷に戻ると、途中で拾ったアオサギの羽根は消えてしまいました。 翌朝、父の車で転校先の学校まで送ってもらった眞人でしたが、裕福すぎるために周囲と馴染めず、帰り道で取っ組み合いのケンカに。その後、眞人は自ら石で自分のこめかみを殴り、ひどい怪我を負います。発熱で寝込んでしまった彼を見て、父は学校に殴り込みに行きました。 徐々に回復してきた眞人は、彼にしつこくつきまとうアオサギを退治するため、木刀を持って出かけます。するとアオサギは「お母さんは生きてまっせ。死んでなんかいませんぜ」と言います。
【承】不思議な世界に迷い込んだ眞人
再び体調が悪くなった眞人を、ナツコと老婆たちが部屋へ運びます。その後彼は回復しますが、一方でナツコはつわりがひどくなり、寝込んでいました。見舞いに来てほしいと言われた眞人はその通りにしますが、「早く良くなってください」とだけ告げます。 眞人は竹で弓矢を作りますが、うまくいきません。しかしアオサギの羽根を矢につけると、想像以上の威力を発揮しました。そのとき、眞人はナツコが森に入っていく姿を見かけます。 夕方になってもナツコは戻らず、老婆たちは彼女を探していました。眞人は彼女の足跡を追い、塔にたどり着きます。それを見た老婆たちは、この場所は呪われているので入ってはいけないと口々に言います。しかし、アオサギの母は生きているという言葉の真偽を確かめようと、眞人は塔に向かいます。どうにか彼を止めようとした召使いの1人であるキリコも、一緒に塔に入りました。 塔の中には、不思議な世界が広がっています。アオサギに案内され、眞人は長椅子に寝そべった母親を発見しますが、それはアオサギが作った偽物でした。怒った眞人がアオサギのクチバシを矢で射抜くと、アオサギは飛べなくなります。中年男性の姿になったアオサギは、謎の老人に言われるまま、眞人とともに異世界に行ったナツコを助けに行くことに。
【転】ヒミという少女
海に囲まれた島にたどり着いた眞人たちは、「ワレヲ学ブモノハシス」と書かれた金の門を開けてしまいます。それは誰かの墓のようでした。するとペリカンが彼らのもとに押し寄せました。若返ったキリコはムチでペリカンたちを追い払い、墓の主が起きるのを止めます。 海に出た眞人とキリコは、巨大な魚を釣り上げ、それを捌きます。すると「わらわら」と呼ばれる白い妖精たちが、はらわたを吸収していきました。栄養を吸収したわらわらは空へと浮かんでいきます。キリコによれば、わらわらたちは別の世界で新しい命に生まれ変わるとのことでした。 しかしペリカンたちが空中でわらわらを食べ始めます。そこにヒミという少女が現れ、炎でペリカンたちを追い払いました。その後、アオサギと再会した眞人たちは、ナツコがいる場所を目指して歩を進めます。途中でインコに食べられそうになりますが、なんとか逃げ切ることに成功。ナツコがいるという塔は、屋敷の庭にあった塔に似ていました。どうやらすべての塔はつながっているようです。 一方現実世界では、眞人の父と彼の部下たちが、いなくなった眞人とナツコ、そしてキリコを探していました。 老婆たちは、塔はむかし突然空から降ってきたものを保護するため、眞人の母とナツコの大おじにあたる人物が作ったものだが、その度に事故が起きたと話します。そして大おじが姿を消し、危険だからと入り口を塞いだものの、また入り口が開いてしまい、誰も近づかなくなったと言います。 眞人の母も幼少期に神隠しにあっており、1年後、彼女はいなくなった日と同じ姿で、すべての記憶を失くした状態で戻ってきたことがあったとか。それを聞いて、眞人の父は塔に向かいます。
【結末】世界の秩序を保つのは……?
眞人はアオサギ、ヒミとともに塔にたどり着きます。そこにはたくさんの扉があり、「132」と書かれたものを開けると、眞人の父たちが彼らを探している姿が見えました。 インコの兵士たちの目をかいくぐって、眞人はナツコのいる部屋までヒミに案内してもらいます。ナツコは白い御札のようなものに包まれて寝ていました。眞人は彼女に呼びかけますが、白い紙に邪魔されてしまいます。必死でナツコを助けようとする眞人は、彼女に向かって「お母さん!」と叫びました。 眞人が気がつくと、彼はこの世界の殿様のところに来ていました。彼は母たちの大おじで、宙に浮かぶ積み木を指さし、眞人にこの世界の秩序を保つ役目を引き継いでほしいと言います。 意識を失っていた眞人が目覚めると、ナツコのところへ行くタブーを犯したとしてインコに捕まり、包丁で捌かれそうになっていました。アオサギが眞人を助けますが、インコの王は、捕らえたヒミをダシに、殿様とこの世界の秩序について交渉しようとしていました。 眞人はやっとの思いで大おじのもとにたどり着きます。すると彼は、やはり眞人に自分の跡を継いで、世界の秩序を守って欲しいと言いました。インコの王はそれを見て「約束が違う」と激怒し、勝手に積み木を積み上げます。しかし積み木は倒れ、インコの王は積み木を真っ二つに切りました。 すると世界は音を立てて崩壊を始めます。時の回廊まで逃げてきた眞人、アオサギ、ヒミ、キリコはそれぞれの扉から元の世界へ戻ります。眞人は死の運命が待つヒミを引き留めようとしますが、彼女は「あなたのような子が産めるなんてしあわせ」と言って、扉の向こうへ去っていきました。 眞人とナツコ、そしてアオサギは現実世界に戻る扉を通ります。彼らを迎えたのは眞人の父でした。眞人はキリコの人形と積み木を持っていました。それを見たアオサギは、「普通は忘れる。早く忘れた方がいい」と言うのでした。
映画『君たちはどう生きるか』の疑問を徹底解説・考察
眞人はなぜ自分を傷つけたのか?
映画序盤、転校先の学校の生徒たちとケンカをした後、眞人が自分で血が出るほどこめかみに石を打ち付けるシーンがあります。眞人はいったいなぜこんなことをしたのでしょう。 眞人は父の目を自分に向けさせるために、自分を傷つけたのではないでしょうか。身ごもった新妻に父の関心が向いていると感じていた彼は、父に自分に関心を持ってもらいたいために、このような負の行動に出たと思われます。 また学校になじめないために、学校に行かなくて済むようにわざと怪我をしたのかもしれません。実際、彼のこの行動は功を奏し、父は仕事から飛んで帰って眞人のことを心配してくれましたし、学校に話しをつけると言って眞人が学校に行かなくても済むようにしました。 宮﨑監督は本作の製作について、「陽気で明るくて前向きな少年像(の作品)は何本か作りましたけど、本当は違うんじゃないか。自分自身が実にうじうじとしていた人間だったから、少年っていうのは、もっと生臭い、いろんなものが渦巻いているのではないかという思いがずっとあった」と語っています。 実際、宮﨑監督の父は眞人の父と同じく航空機部品製造会社の役員をしていました。そのため宮﨑少年は眞人と同じく戦時中も比較的裕福な暮らしをしていたそうです。監督自身と共通点を多く持つ眞人とは、まさにそういった生々しさを持ったキャラクターなのです。
アオサギ(サギ男)は異世界へ誘う使者
映画全編に渡って眞人と関わっていくアオサギは、当初は文字通り青い鷺の姿をしていました。しかし実際の中身は大きな鼻が特徴的な中年男性。彼は異世界への案内人であり、大おじに命じられて眞人を迎えに行きました。 動きは俊敏ですが、その羽根には不思議な力が宿っているようで、彼の羽根を使った眞人の矢は、どこまでもアオサギを追い、ついにはクチバシに穴を開けました。その後彼は、鳥の姿に変身できなくなっています。 当初は大おじの命令に従っていたアオサギは、旅をつづけるうちに眞人と打ち解け、友人とも呼べる関係になっていきました。疎開先の新たな環境や新たな家族になじめなかった眞人にとって、最初に心を許した相手になったのです。 また、2018年7月に放送されたラジオ番組『ジブリ汗まみれ』で、鈴木敏夫プロデューサーは、宮﨑監督をモデルとした眞人がアオサギとしょっちゅうケンカをしていることを上げ、アオサギのモデルは自分ではないかと語っています。 あるシーンでは、アオサギと眞人がケンカしているところに、別のキャラクターが「2人とも仲良くやんな」と言います。これは、実際に宮﨑監督と鈴木プロデューサーがケンカしていたとき、スタジオジブリのスタッフから言われたことがあるセリフだそうです。
謎の塔は異世界への入り口?
謎の塔は、かつてナツコの大おじが、空から落ちてきたものを保護するために建てたものでした。しかしそこには書物が山のように積まれ、大おじは姿を消してしまいます。それ以来、危険だということで入り口がふさがれていましたが、眞人が訪れるとなぜか入り口は開いていました。 異世界の主となった大おじは、自身の後継ぎとなる眞人を迎え入れるために、入り口を開きアオサギを彼のもとに送り出したのです。外側から見て入り口であるということは、内側から見れば出口であり、出口を開くことは大おじには難しいことではなかったと思われます。 塔の中の異世界について考えるときに重要なのは、塔が作られる理由となった「空から落ちてきたもの」ですが、これについては詳しいことは不明です。
火を操るヒミの正体とは?
ヒミの正体は、眞人の母の幼い頃の姿です。幼少期に謎の塔で神隠しにあった彼女は、戻ってきたときにはすべての記憶を失っていました。これは、神隠しから現実世界に戻ってきた人は、記憶をそのときの自分の姿とともに異世界に置いてきてしまうということではないでしょうか。 ヒミは異世界に詳しく、そこで生きていく術を身につけているにも関わらず、姿は幼いままでした。言うなれば、身体から離れた魂の一部のようなものなのかもしれません。肉体がないので、外見上は成長することはありません。 もしそうだとすると、キリコもまた若い頃に神隠しにあっていた可能性があります。
産屋の意味とは?
産屋とは、かつて月経や出産の出血が穢れたものとされていた頃に、女性を隔離するために作られた小屋です。穢れに近づかないために、男子禁制とされていました。 本作でも、妊娠したナツコは異世界の産屋で過ごしていました。彼女が産屋に入ることに決めたのは、主に2つの理由が考えられます。 1つ目は、眞人の頭の怪我に責任を感じたためです。実際には眞人が自分で傷をつけたわけですが、真相を知らないナツコは、自分がいると不幸なことが起きてしまうと考えて、周囲の人々から遠ざかるように産屋に入ったのです。 一方で、ナツコはひどいつわりに苦しんでいました。つわりはストレスによって起きることもあるので、眞人と打ち解けられないことにナツコはストレスを感じていたのかもしれません。 どちらにせよ「眞人から離れる」ということが、ナツコが産屋に入った理由と思われます。
ナツコはなぜ眞人に「大嫌い」と言い放ったのか
映画前半、眞人の新たな母となったナツコは、なんとか眞人と仲良くなろうと彼に優しく接していました。しかし、眞人はそんな彼女に冷たい態度をとりつづけます。彼女は息子となった眞人に受け入れてもらえず、つらい思いをしていたのかもしれません。 その後、異世界でナツコを探していた眞人が、彼女がいる産屋にようやく到着すると、ナツコは「なぜこんなところに来たの?帰りなさい!」、「あなたなんか大嫌い!」、「出て行って!帰りなさい!」と彼を追い返そうとします。これは、これまでの不満が溢れてしまったものなのかもしれません。 しかし一方で、「ここは危険だから、いてはいけない」と彼に警告しようとしたようにも見えます。「大嫌い」と突き放すとこで、眞人が危険な場所から離れるように仕向けようとしたのではないでしょうか。
墓には誰が眠っているのか考察
眞人はペリカンの大群に押され、「ワレヲ学ブモノハシス」と書かれた門の中に入り、そこで墓を見つけます。この墓は、いったい誰のものなのでしょうか。 このシーンではよくわかりませんが、のちに眞人が大おじに対面したとき、彼は大おじが「積み木」だと言う物は実際には「石」であると言います。「墓の石と同じ、悪意のある石」です。 墓の石=悪意と考えると「ワレ(悪意)ヲ学ブモノハシス」という意味になるのではないでしょうか。墓に眠っているものは、人の悪意なのかもしれません。
謎多き大おじとは何者だったのか
異世界の主となった眞人の母たちの大おじは、塔の中で本を読みすぎて頭がおかしくなったと言われていました。そして彼は、姿を消してしまいます。 もしかすると、異世界は彼が生み出したフィクションで、大おじはそこに閉じこもってしまったクリエイターを意味しているのかもしれません。 クリエイターが周囲から奇異の目で見られることや、創作に没頭するあまり世間から断絶されてしまうことは、ままあることではないでしょうか。さらに大おじは、自分の創り上げた世界は血縁者である眞人にしか託すことはできないと言います。これは、世襲制のことを言っているのかもしれません。
積み木の意味とは?
大おじが大切に積み上げていた積み木。それは異世界のバランスをとり、秩序を保つものでした。そして大おじは、眞人に積み木を管理し、より良い世界を作るよう言います。 積み木は13個あり、これは本作を含めてこれまで宮崎駿が監督を務めた長編アニメ映画と同じ数になります。 異世界は創作や芸術の世界の象徴であり、宮崎駿にとって、その秩序を保つのは、これまで手掛けてきた数々の作品なのだという意味なのではないしょうか。
ラスト・結末解説
大おじから異世界の秩序を保つ役割を引き継いで、より良い世界を築いてほしいと言われた眞人は、これを断り、世界が崩壊していくなか、現実世界に戻りました。彼は大おじが創ったものを引き継ぐのではなく、自分で新たなものを創っていくことを決断したのです。そして現実の世界に戻っていきました。 このとき、ヒミとキリコは彼らとは別の扉の先に去っていきます。ヒミは眞人の母の幼少期の姿なので、眞人と同じ時代に戻ることはできません。彼女は異世界で出会った未来の自分の息子に、「あなた(=眞人)のような子どもを産めるなんてしあわせ」と言って、元の時代に戻っていったのです。キリコもまた同じ時代から来たと考えられるので、2人は一緒に現実世界に戻ったのでしょう。 本来異世界から帰ってきた人は、眞人の母のように記憶を失いますが、眞人は記憶を保っていました。それは、彼がキリコの人形や石という異世界の物を持ち帰っていたからです。物に宿る思いや思い出は、なにもない場合よりも心に残るものなのでしょう。
謎に満ちたキャラクターたちを深掘り解説!
愛くるしさナンバー1、わらわらとは?
眞人は異世界で、「わらわら」と呼ばれるかわいらしい生き物に出会います。わらわらは、丸っこく白い体をしており、どこか『もののけ姫』のこだまを連想させます。 キリコによると、わらわらは魚のはらわたを吸収し、膨らむと宙に舞い上がって人間に生まれ変わるのだとか。 わらわらが、螺旋を描いて飛んでいく姿はどこか遺伝子を連想させます。また、原作小説でコペルがデパートの屋上から見ていた地上の人々のようにも思えます。
7人のおばあちゃん=7人の小人?
ナツコの家で雇われている7人のおばあちゃんは、全員小柄ではありますが、それぞれに個性的な見た目をしています。どこか『白雪姫』の7人の小人を連想させる彼女たち。現実世界に戻ったナツコを運ぶときの様子は、白雪姫の棺を運ぶ小人たちのようにも見えます。
『となりのトトロ』や『ハウルの動く城』をはじめ、宮﨑駿の作品では、印象的なおばあちゃんが必ず登場すると言ってもいいほどですが、本作のおばあちゃんたちも魅力的です。 7人のなかでも、眞人とともに異世界に迷い込むキリコは、とくに存在感のあるキャラクター。異世界では若い姿になり、眞人たちの冒険を支えていました。
凶悪なもふもふインコは人を食う?
本作で悪役的な役割を担っているのは、インコたちです。人を食べるという彼らは1羽の王に率いられ、執拗に眞人たちを狙っていました。彼らは一見かわいくもあるのですが、凶暴で、タブーを犯した眞人を包丁で捌こうとするなど、暴力的な側面が見受けられます。 インコの王は、大おじから異世界を統べる立場を奪おうとしていましたが、それを拒否され、世界の崩壊を招いてしまいました。 また、異世界には鳥の姿をした住人が多いですが、これは秩序もなくただ集まっただけの「烏合の衆」を意味しているのかもしれません。
小説版『君たちはどう生きるか』と映画の関連性を紐解く
本作のタイトルは、1938年に発表された吉野源三郎の著書から引用されています。内容は全く違いますが、2つの作品の根底にあるメッセージには近いものがあると言っていいでしょう。 小説では、父を亡くしたコペルという少年が、叔父に学校であったことなどを話し、そこから考えを深めていく様子が描かれます。コペルが経験するさまざまな出来事を通して、筆者が読者に伝えたかったのは、「自分の頭で考えることの重要性」です。 映画では、眞人が大おじから世界の秩序を保つ役割を任せたいと言われますが、彼はそれを断り、現実世界に帰りました。この役割はとても重要そうに見えますが、“自分にとって”なにが重要なのかは、自分で決める必要があると訴えているのです。
物語の骨格は『失われた者たちの本』の影響が強い?
一方、本作のストーリーの大筋は、2006年に発表されたジョン・コナリーの『失われたものたちの本』によく似ています。 同作は母を亡くした少年が、父の再婚相手や2人の間に生まれた弟に嫌気が差していたところ、異世界に迷い込んでしまうというもの。その異世界の王が父の再婚相手の伯父であることや、異世界から戻った後には家族と仲良く暮らすという展開などが、映画『君たちはどう生きるか』と共通しています。
小説『失われたものたちの本』を
『君たちはどう生きるか』ジブリセルフオマージュまとめ
本作には、これまでのジブリ作品のセルフオマージュがいくつも散りばめられています。 眞人の父親の工場で、社員たちが運んでいる戦闘機のコクピットのガラス部分は、『風の谷のナウシカ』に登場する王蟲の透明な目の殻の部分とよく似ています。
また、眞人がアオサギの羽根を拾いながらアオサギを追うシーンは、『となりのトトロ』でメイがどんぐりを拾いながら中トトロたちを追って森に入っていくシーンに似ていますね。
眞人が作った弓矢は、当初はうまく飛びませんでした。しかしアオサギの羽根を取り付けると、驚くほどの威力を発揮します。これは『もののけ姫』で、呪いの力を借りてアシタカの弓矢が強くなったシーンを思い起こさせます。
その後、ナツコを探しに行った眞人は、彼女を包む白い紙に襲われます。この紙は『千と千尋の神隠し』で竜になったハクを無数の紙の鳥が追いかけているシーンを彷彿とさせました。
本作でとくに注目をひいた、かわいらしい「わらわら」という生き物は、同じく『もののけ姫』に登場する「こだま」によく似ています。
『君たちはどう生きるか』音楽担当は久石譲!主題歌は米津玄師
『君たちはどう生きるか』の主題歌は、2022年9月時点で楽曲が完成していることが明かされています。主題歌についてSNSでは、人気ミュージシャンの米津玄師が担当するのではないかと噂されていました。 その理由は、2018年ごろから米津玄師と鈴木敏夫プロデューサーの絡みが急増していたためです。 2018年7月には鈴木敏夫プロデューサーのラジオ番組に米津玄師が出演。その後もスタジオジブリが刊行するフリーペーパーで米津玄師特集が組まれたり、米津玄師が鈴木敏夫とプライベートで交流があったことをTwitterで明かしたりと、まるで“匂わせ”のようだと噂が立ったのです。 実際、本作の主題歌は米津玄師による『地球儀』でした。 2023年7月4日、映画『君たちはどう生きるか』の音楽を久石譲が担当することが明らかに。8月9日発売予定のサウンドトラックの情報が解禁となり、久石の名前が音楽担当者としてクレジットされていました。サウンドトラックには主題歌を含む37曲が収録される予定です。
『君たちはどう生きるか』2つの元ネタのあらすじをネタバレ解説
小説『君たちはどう生きるか』のあらすじ・ネタバレ
タイトルの元ネタとなっている『君たちはどう生きるか』の小説は1938年に発表された吉野源三郎の小説。2017年には漫画化され、半年で200万部を突破するベストセラーとなりました。 父を亡くし、母親の弟である叔父さんのもとに引っ越してきた15歳のコペル君こと本田潤一は、学校でのさまざまな事件を叔父に打ち明けるように。叔父さんはそれを受けて考えたことをノートに書き、彼に伝えていきます。
『君たちはどう生きるか』
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小説『君たちはどう生きるか』ネタバレ
勇ましき友
コペル君のクラスメイトの浦川君は、山口君のグループからいじめられていました。周囲もそれに気付いていましたが、誰も解決しようとしない同調圧力に負けて、見て見ぬふり。しかしあるとき、正義感の強い北見君が山口君への怒りを爆発させます。 すると今度は「北見君に加勢しよう」という同調圧力が生まれてしまいました。しかしそこで止めに入ったのは、いじめられていた浦川君。コペル君はこれを見て、「まわりの流れに勇気をふりしぼって逆らった浦川君は、本当に立派だと思うんだ」と語ります。
ニュートンの林檎と粉ミルク
以前銀座のデパートの上から地上を見て、人間は分子のようなもので、自分も社会を構成している一分子にすぎないと叔父さんに語っていたコペル君。彼はニュートンの業績は、りんごの落下という簡単な法則を思いつき、それを苦労して証明したことだと聞きます。 そこでコペル君は粉ミルクの缶に思いを馳せ、生産から販売まで、多くの人にリレーされていることに気がつきました。やはり人間社会は、無数の分子から成り立っているのです。
貧しき友
ある日、浦川君が風邪で休んだのでコペル君が様子を見に行くと、彼は両親が営む豆腐屋の手伝いをしていました。聞けば、父親が田舎に借金の工面に行っているのだとか。コペル君は浦川君に授業の進捗を伝え、彼はコペル君に店の機械を運転させてあげました。この件で、2人の友情は深まります。 叔父さんはこの話を聞いて、社会を支えている大半は貧しい人だと指摘します。そしてコペル君に、恵まれた環境にいながら、まだなにも生産していない彼はなにをすべきかと問いかけました。
ナポレオンと四人の少年
あるとき、水谷君の姉がナポレオンについて命をなげうって戦争に向かう英雄的精神を賛美します。その後、北見君が「生意気だから」と先輩から殴られるかもしれないと聞いたコペル君、水谷君、浦川君の3人。彼らはそうなったときには、自分たちも出ていって殴られようと約束します。 この話を聞いた叔父さんは、ナポレオンは人々を苦しめることも多くしたと指摘しました。そして本当に評価されるべきは、進歩の流れに乗って行われた事業だけだと言います。
雪の日の出来事
ある雪の日、外で遊んでいたコペル君たちは、誤って上級生が作った雪だるまを壊してしまいます。水谷君と浦川君は、上級生たちに取り囲まれ、殴られ、雪玉をぶつけられる北見君を守っていました。しかし少し離れたところにいたコペル君は、体が固まってしまったように、そこから動くことができません。 その後、雪のなかで遊んでいたせいか、コペル君は高熱を出して寝込んでしまいました。
石段の思い出
熱が下がっても気分が晴れないコペル君。もう3人には絶縁されてしまう、どうしたらいいのか、と苦しみながら天井を見つめます。 叔父さんと話したあと、コペル君の部屋に母がやって来ました。彼女は女学生時代、石段でおばあさんと出会ったときの話をします。荷物を持ってあげようと声をかけたいのに、言い出せずにいるうちに石段を登りきってしまったというのです。 叔父さんは自分の過ちを素直に認め、苦しむのは意味のあることだと言います。
凱旋
コペル君は叔父さんに勧められ、北見君に謝罪の手紙を書きました。医者からも2、3日したら学校に行っていいと言われます。手紙を出してから4日後、北見君、水谷君、浦川君の3人がコペルくんの家を訪ねてきました。3人はあのときのことは気にしていない、とコペル君を許します。 そしてあの後、3人の親が学校に怒鳴り込み、北見君を殴った主犯格の上級生が停学処分になったことを知らされました。
水仙の芽とガンダーラの仏像
春を感じて庭いじりをしていたコペル君は、1本の草を見つけて日の当たる場所に移そうとします。しかしその根は30cm以上もあり、先には水仙の球根がついていました。地中深くから太陽を感じ、地上に向かって延びていかずにはいられない力を見て驚くコペル君。 その後コペル君は叔父さんから「アレクサンダー大王の遠征で東方に進出したギリシャ人が、偶像崇拝の伝統がなかったインド人に代わって仏像を作った」と聞かされます。コペル君は、人類の進歩の歴史も水仙の根のように力強いと考えるのでした。
春の朝
まだ日の登っていない春の朝、コペル君は安らかな気持ちで目覚めます。彼は新しいノートを開いて、叔父さんに話すようなつもりで書くようにしようと、すらすらと書きはじめます。 叔父さんのノートのなかで、いちばん心が動かされたのは、僕に人間として立派な人間になってもらいたいという父の言葉だったと書くコペル君。決して忘れないつもりだと、その決意をノートに記します。
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小説版『君たちはどう生きるか』口コミ・感想
80年程前に書かれた本ということに驚いた。自分にも後悔していることがあるけど、叔父さんの言葉で少し救われた気がします。素直に過ちを認め、正しい道に従って歩いて行かねば。10代の時に読んでたらまた全然違う感想を抱いたんだろうな。
(20代男性)
大切な話ばかり。話題になってくれて新装版出てくれてよかった。 立派な人間になりたい。消費だけでなく何かできるように。そして弱さで善を潰されないように強く。
(30代女性)
元ネタの小説?『失われたものたちの本』あらすじ・ネタバレ
物語の舞台は第二次世界大戦下のイギリス。本が大好きな12歳の少年デイヴィッドは、病気で母を亡くしてしまい、父の再婚によってさらに孤独に苛まれるようになります。そんな孤独感からか、いつしか彼は本の囁き声が聞こえるようになり、死んだはずの母の声に誘われて幻の王国に迷い込んでしまいました。 そこは昔からよく知る童話の世界かと思いきや、なにやらダークでグロテスクな異世界。狼に恋した赤ずきんは人狼を産み、絶世の美女たる白雪姫は醜く、ねじくれ男は子どもたちを攫う……。赤ずきんが生んだ人狼はどんどん増え、そのリーダーとなったリロイはこの世界の王を倒し、自分が王になろうと企んでいました。 デイヴィッドは木こりに助けられ、老王が持つ「失われたものたちの本」を読めば、元の世界への戻り方がわかるかもしれないと聞きます。2人は王の城を目指して旅に出ますが、人狼たちが彼らを食べようと追ってきたり、ねじくれ男に付きまとわれたりと数々の困難が。そんな中、騎士ローランドに出会い、旅を共にすることになります。 困難を切り抜けて成長したデイヴィッドは、ついに城に到着し、王と面会を果たします。そこで王とねじくれ男の秘密を知ってしまうのでした。
小説『失われたものたちの本』を
宮﨑駿監督の引退撤回はもはや恒例になりつつある?
『君たちはどう生きるか』の制作が決定し、引退が撤回となった宮﨑駿監督ですが、実は引退撤回からの長編制作は今回だけではありません。 ジブリファンたちの中では引退撤回はもはや恒例の出来事とも言われており、「引退撤回後に制作された作品は神作になる」というパターンがあるとのこと。 『となりのトトロ』や『もののけ姫』、『千と千尋の神隠し』、『ハウルの動く城』などはすべて引退撤回後に制作された作品であり、軒並み大ヒットを記録しています。 今回の『君たちはどう生きるか』も引退撤回後の作品であることから、再び神作が生まれるのでは?と大きな期待が集まっているようです。
難解なジブリ映画『君たちはどう生きるか』を考察してみよう!
宮﨑駿が手がける最新長編アニメーション『君たちはどう生きるか』は、もしかすると最後の宮﨑駿作品となる映画かもしれません。 謎めいたキャラクターが多く登場し、難解なストーリーとなっている本作。考察のしがいがあるので、何度も観てみたいですね!
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