2020年8月22日更新

『天空の城ラピュタ』の魅力を都市伝説やトリビアから考察!シータの名前がラストの伏線に?

天空の城ラピュタ
© Studio Ghibli/Buena Vista Home Entertainment/zetaimage

シータとパズーの冒険を描いた名作『天空の城ラピュタ』。スタジオジブリ長編アニメ映画1作目である本作は、30年以上にわたって愛され続けてきました。この記事ではそんな本作の都市伝説やトリビアから、隠された魅力をひも解いていきます!

目次

不朽のジブリ名作『天空の城ラピュタ』の魅力を都市伝説やトリビアからひも解く!【ネタバレ注意】

天空の城ラピュタ
© Studio Ghibli/Buena Vista Home Entertainment/zetaimage

1986年に公開された宮崎駿監督作品『天空の城ラピュタ』。本作はシータとパズーが、天空に浮かぶというラピュタ帝国を探しにいく冒険物語です。 ジブリ1作目といえば1979年の『ルパン三世 カリオストロの城』や1984年『風の谷のナウシカ』かと思われがちですが、スタジオジブリ設立は1985年なので、実は本作が長編アニメ映画1作目にあたります。 公開から30年以上にわたって愛され続けてきた、ジブリ初期の傑作『天空の城ラピュタ』の魅力とは?この記事では、数ある都市伝説やトリビアを解説していきながら、本作の魅力について考察していきます! ※ここからは『天空の城ラピュタ』について、詳しい情報を紹介していきます。ネタバレ要素も含まれるので、未鑑賞の方はご注意ください。

そもそも「ラピュタ」っていったい何?

そもそも映画のタイトルにもなっている「ラピュタ」とは、いったいどんなものなのでしょう。 空に浮かぶ島・ラピュタは、もともとラピュタ帝国という古代国家でした。この帝国は超科学技術を持っていましたが、その技術を持ってしても克服できない疫病が流行したことで滅亡してしまいます。 劇中に登場する空中都市は、帝国が滅亡した後、宮殿や神殿がある中枢部分だけが残って浮遊していたもの。内部には巨大な飛行石があり、その力によって空中に浮かんでいます。 作中で敵役として登場するムスカは帝国王家の末裔であり、再びラピュタを支配しようと企んでいました。

「ラピュタ」という名前の由来は『ガリバー旅行記』だった

「ラピュタ」という名前の由来となった小説は、アイルランドの作家・ジョナサン・スイフトによる『ガリバー旅行記』第3編です。この小説には、「ラピュータ」という天空の島が登場します。 ラピュータは、数学者や天文学者などの学者たちが治めている浮島で、地上の島を知性によって支配していました。この国の人々は進歩を重視した結果、言葉を省略して単語だけで会話するようになります。 『天空の城ラピュタ』の企画原案には、確かに「ガリバー旅行記第三部に描かれた、空中の浮島ラピュタ」と書かれているため、この小説がモデルであると見て間違いありません。(参考:『出発点 1979~1996』宮崎駿) 『ガリバー旅行記』は産業革命の時代よりも100年以上前の作品ですが、『天空の城ラピュタ』の世界観とうまく融合して、架空の地域ながらもリアリティある設定が作られました。

かつて「ラピュタ」に住んでいたラピュタの民はどんな種族だった?

作中では、シータやムスカがラピュタの民の末裔であることが明かされています。彼らの先祖はラピュタで生活していたはずですが、故郷を捨てて地上に降り立ったようです。はたしてそこにはどんな理由があったのでしょうか。 実はラピュタに暮らしていた人々は、帝国で原因不明の疫病が流行ったことをきっかけに、ゴンドアの谷のような場所に移り住んだのだとか。 また作中のシータのセリフから、彼らがラピュタに戻らなかった理由も想像できます。 ゴンドアの谷の歌には「土に根をおろし、風とともに生きよう。種とともに冬を越え、鳥とともに春を歌おう」という歌詞が。天空に浮かぶラピュタからやってきた人々は、大地の魅力を発見したのではないでしょうか。 シータの言うとおり、彼らは「土から離れては生きられない」ようになったのです。

「バルス」の語源は?たった3文字でインパクトのある滅びの呪文に

『天空の城ラピュタ』のラストで唱えられる呪文「バルス」。地上波で本作が放送されるたびに、ツイッターなどでお祭り騒ぎになることでもおなじみです。「バルス」はラピュタ語で「閉じよ」という意味で、この呪文とともにラピュタは崩壊します。 この呪文がなぜ「バルス」という言葉になったのかは、制作側からは明らかにされていません。最も有力な説は、諸星大二郎の漫画『マッドメン』からの引用である、というもの。 宮崎駿は、諸星に「ナウシカ」の絵を描いてほしかった、と公言するほどの彼のファンです。そんな諸星が描いた『マッドメン』の中には、「バルス」という「楽園崩壊」の意味を持つ言葉が登場します。 宮崎駿は同様のニュアンスを持つ言葉として、この言葉を劇中に登場させたのかもしれませんね。 またもう1つの説としては、「平和」を意味するトルコ語の「bans(バルシュ)」がもとになっているのではないかというものがあります。 いずれにしても「バルス」はたった3文字でありながら、観客に大きなインパクトを与える呪文です。ラピュタ崩壊の呪文だけあって、普通はよりものものしい呪文を設定しそうですが、宮崎駿のセンスが光ったセリフとなりました。

飛行石のモデルとなった鉱石はラピスラズリだった!どうして飛べるの?

神秘的な青色に輝く、美しい飛行石。宝石のような見た目がファンの心をつかみ、ジブリショップなどではグッズとして販売されました。 ショップでは品名として「ラピスラズリ」の名前が書かれており、この鉱石がモデルの1つという説も。ラピスラズリは、日本では瑠璃(るり)とも呼ばれています。

また飛行石のモデルとなったのは、宮崎駿の少年時代に人気を博した、福島鉄次による絵物語『沙漠の魔王』なのだそうです。 『砂漠の魔王』は、イスラム世界の説話集である『千夜一夜物語』に登場する、有名な『アラジンと魔法のランプ』をもとにした物語。作中には、飛行石を使用して空を飛び、呼び出した者の命令にしたがう大きな魔人が登場します。 「ラピュタ」に登場する飛行石の力はこれとよく似ていて、ロボット兵を操ったり、ラピュタ王家の血を引く者が特定の呪文を口にすることで、さまざまな現象を起こしたりすることが可能です。 しかし一方で「飛行石」とは言うものの、『天空の城ラピュタ』での実際の描写は「飛んでいる」というより「浮いている」だけではないか、ともいわれています。 いずれにしても、飛行石で浮遊できる詳しい仕組みはわかっていません。ラピュタの古代文明は、現代の科学では解明できないほどに発達していたのでしょう。

『天空の城ラピュタ』のモデルとなった場所はどこ?

ノスタルジックな街並みや、ラピュタ帝国のミステリアスな外観など、『天空の城ラピュタ』にはあらゆる印象的な風景が登場します。 そんな本作のモデルといわれている場所は、世界各地に数多く存在。ペルーにある世界遺産マチュピチュや巨大な熱帯樹林に覆われたカンボジアのベンメリア遺跡、フランスにあるモンサンミッシェルなど、どれも美しい神秘的な場所ばかりです。 また宮崎駿が作品制作前に訪れていたイギリスのウェールズは、パズーとシータが出会った街のモデルとなっています。 ウェールズは作中の街と同じく、炭鉱が盛んな地域です。親方とシャルルが街を巻き込んでケンカするシーンは、ウェールズを訪れたことがきっかけで挿入されました。(参考:『出発点 1979~1996』宮崎駿)

『天空の城ラピュタ』の時代背景は?パズーの父親が撮った写真がヒント

『天空の城ラピュタ』はいつの時代の物語なのか、作中では具体的に語られることはありません。 しかしながら、パズーの父親が撮ったラピュタの写真には「1868.7」と明記されているので、19世紀後半が舞台であると考えられます。 宮崎駿はインタビューで「産業革命のころを背景にしている」と述べていたので、その時期とちょうど一致しますね。(参考:『出発点 1979~1996』宮崎駿) また本作の主な舞台となっているのは、産業革命において重要な地であるイギリスです。作中に登場する銃火器なども、イギリスのものをモチーフにしているんだとか。

ラピュタを発見したパズーの父はどうして死んでしまった?

ラピュタを発見し、証拠写真も撮っていたパズーの父。しかし彼の主張は誰にも受け入れられることがないまま、帰らぬ人となってしまいました。彼の死因はいったいなんだったのでしょうか。 1986年に発行された小説版では、その経緯が以下のように書かれています。 「スラッグ渓谷に母親と一緒に来る前、パズーが住んでいた町で、冒険家の父親は、新飛行船建造のためのスポンサー探しに出かけた時、不慮の事故で死んだ。」 パズーがラピュタを探すことにこだわったのは、事故死した父の無念を晴らすためだったのかもしれませんね。

ロボット兵は何者?実はあの作品にも登場

天空の城ラピュタ
© Studio Ghibli/Buena Vista Home Entertainment/zetaimage

ラピュタを守っているロボット兵。ジブリ作品の『風の谷のナウシカ』に出てくる巨神兵と見た目が似ていて混同されがちですが、基本的には別物です。 巨神兵は山々を超えるほど巨大で、体も肉で出来ています。一方ロボット兵は人の2~3倍程度の大きさで、体はセラミックで出来ているのです。 また実はロボット兵は2種類存在しています。1つは戦闘用で、もう1つはラピュタの庭園を守る番人のような存在です。戦闘用のロボットには飛行用に腕に突起があり、膜のような羽を使って飛ぶことも可能。 実はこのロボット兵は、アニメ『ルパン三世』の2ndシーズン(1977〜1980年)にも登場しているのです。第155話「さらば愛しきルパンよ」は宮崎駿が制作した最終回となっており、ここにラムダという名前のロボット兵が登場します。

シータの本名が伏線だった?初期段階ではドーラの娘という設定も

シータの本名にはラピュタの王位継承者であることが隠されていた

シータには、ラピュタ王国を受け継ぐ者としてもう1つの名前がありました。それはリュシータ・トエル・ウル・ラピュタ。 ウルはラピュタ語で「王」、トエルは「真の」を意味しており、この名前は彼女がラピュタの正統な王位継承者であることを示しています。

シータはドーラの娘という設定だった?

空中海賊の女ボス・ドーラは、はじめこそシータから飛行石を奪おうとする敵だったものの、パズーを思いやる彼女の健気な姿勢に心を打たれていきます。しまいには、シータに対して「アタシの若い頃にそっくりだよ」などと話していました。 実は当初、シータはドーラの娘という設定だったのです。シータにシンパシーを感じるドーラの姿が見受けられるのは、この設定があったからかもしれません。 また宮崎駿の著書『出発点 1979~1996』の中では、パズーの設定について「ドーラが母親で、あちこちに出てくるじいさんがみんな父親」と説明しています。 パズーとシータという2人の子供が繰り広げる活劇に、親役を登場させる必要があったということでしょう。そのため作品を通してドーラは、彼らの母親的な存在を担っているのです。

ムスカの本名にもラストに続く伏線が隠されていた!

ラピュタ帝国王家の末裔であるムスカの本名は、ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ。 彼の名前にもシータと同じように、「王」を表すウルが入っています。彼の一族もかつてのラピュタ帝国で、シータの一族と同じく王家の1つだったのでしょう。 ムスカの目的は、ラピュタの王に君臨し、全世界を支配すること。そのためには、彼の一族が代々受け継いできた古文書とは別に、シータの一族に引き継がれていた飛行石が不可欠だったのです。 しかしシータの名前には「真の」という意味のトエルが入っていますが、ムスカの名前にはありません。彼が崩壊するラピュタとともに転落するという結末は、ここで示唆されていたのかもしれませんね。

パズーとシータのその後が描かれた?幻の別エンディング

『天空の城ラピュタ』には、本編とは異なるエンディングが存在するという都市伝説があります。しかし結論から言うと、別の結末を描いたストーリーは存在しません。 この都市伝説の発端は、『天空の城ラピュタ』がテレビ放送された際、映画とは別バージョンのエンディング(スタッフロール)が流れたこと。 「パズーとシータが抱き合う」「シータと水牛」「凧に乗るパズーとシータ」「飛行機に乗ってシータに会いに行くパズー」という4つの場面が描かれました。 どれも2人の後日譚のように捉えられる内容だったため、このエンディングを観て映画本編のあとに2人が幸せに暮らしたと解釈した人がいても不思議ではありません。 しかしこれらのシーンは映画本編に描かれている場面と、ジブリの関連資料集に掲載されたイラストをつなぎ合わせたものでした。そのため、パズーとシータのその後を描いた別ストーリーというわけではないのです。

『風の谷のナウシカ』の世界とリンクしている?

風の谷のナウシカ
©Studio Ghibli/Walt Disney Pictures

宮崎駿監督によるもう1つの名作ジブリ映画『風の谷のナウシカ』は、『天空の城ラピュタ』と同じ世界が舞台なのではないかと言われています。 その根拠となっているのが、ラピュタに住むキツネリス。ロボット兵の肩に乗っていたり、何匹かで遊んだりしていたこの生き物は、『風の谷のナウシカ』にも登場しています。テトと名付けられ、ナウシカと行動をともにしていましたね。 また2つの作品には“高度に発達した古代文明が崩壊した後の物語”という共通点があります。直接的なつながりはないようですが、よく似た舞台設定となっているのは確かです。

『天空の城ラピュタ』はほかのアニメ作品とも関係があった!

『未来少年コナン』にムスカの先祖が登場している

シータの持つ飛行石を狙って、彼女を拉致したムスカ。 実はムスカの先祖が、宮崎駿監督のアニメ『未来少年コナン』(1978年)に登場しているのです。この作品のレプカというキャラクターは、ムスカの先祖にあたります。 この設定は公式から紹介されており、『未来少年コナン』は時系列上『天空の城ラピュタ』よりも昔の話であることも明かされているのです。 宮崎駿作品のつながりを知ることで、より物語の想像が膨らんでいきますね。

庵野秀明監督のアニメ『ふしぎの海のナディア』との関係性

実は『天空の城ラピュタ』と、庵野秀明監督によるアニメ『ふしぎの海のナディア』(1990〜1991年)には深い関係があります。 庵野秀明のコメントによると『未来少年コナン』の続編にあたる『未来少年コナン2』の企画案から、『天空の城ラピュタ』と『ふしぎの海のナディア』の2作品が生まれたのだとか。 その企画案の内容は、少年と少女が不思議なペンダントを探して潜水艦で旅をする道中、ペンダントを付けねらう悪党に遭遇するという物語。確かにそれぞれの作品に通ずるものがありますね。

主人公・パズーの声優がアニメ「ワンピース」で「海賊になる」宣言!

『天空の城ラピュタ』でパズーの声を担当したのは、アニメ「ワンピース」(1999年〜)でルフィの声優として知られる田中真弓です。 『天空の城ラピュタ』の劇中で、シータに「私のためにパズーを海賊にしたくない」と言われたパズーは、笑いながら「僕は海賊にはならないよ」と爽やかに宣言しています。 その数年後、アニメ「ワンピース」にて田中真弓演じるルフィは「海賊王に、俺はなる!」と高らかに宣言! 直接的なつながりはないものの、同じ声で真逆のことを言っており、今になって聞くとクスッと笑えるエピソードになっています。

綾波レイで知られる名声優・林原めぐみが出演していた

アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズの綾波レイ役や、『名探偵コナン』(1999年〜)の灰原哀役で知られる声優・林原めぐみ。 実は彼女は、『天空の城ラピュタ』で多数のキャラクターの声を担当しています。しかし彼女が担当した役どころは、青い服の婦人やロボット兵が落ちてくる回想シーンの老婦など、名もない人物ばかり。 ベテラン声優となった今では信じがたいですが、『天空の城ラピュタ』は彼女が新人の頃の作品なので、いわゆるモブキャラクターを多数演じていたのですね。

最大の魅力は、宮崎駿の作り上げた想像力をかき立てる世界観!

ここまで見てきた都市伝説やトリビアから、『天空の城ラピュタ』の面白さの正体が見えてきます。それは、何度観ても観客の想像力をかき立てる、作り込まれた世界観です。 特に注目すべきポイントは、現実と架空世界の融合が、とてもバランスの良いものであるということ。実在するマチュピチュなどを思わせる幻想的な空中都市の存在、そしてイギリスのウェールズに訪れた実体験から生まれた炭鉱の町。 これらの風景は、色彩豊かなアニメーションで生き生きと描かれ、すべての人にとって入り込みやすい場所でありながら、どこか異空間のような雰囲気も両立しているのです。 また登場人物の裏設定なども、作品をより楽しませてくれる要素の1つ。女海賊ドーラの母親的な役割によって子供たちが支えられ、子ども2人による壮大な冒険活劇ながらも、綺麗にまとまっています。 さらには産業革命の時代がテーマというしっかりとしたコンセプトに、『ガリバー旅行記』や『砂漠の魔王』といった複数作品のエッセンスが調和し、『天空の城ラピュタ』という1つの世界観を作っているのです。 この世界観にはこれら多数の要素が盛り込まれていながら、作中ではそのすべてを語ることはしません。だからこそ観る人は、そこから自由に想像を膨らませ、何度でも楽しむことができるのではないでしょうか。 そうして結果的に『天空の城ラピュタ』は、30年以上経っても愛され続ける不朽の名作となっているのです。

都市伝説やトリビアから分かる『天空の城ラピュタ』が愛され続ける理由

天空の城ラピュタ
© Studio Ghibli/Buena Vista Home Entertainment

この記事では『天空の城ラピュタ』について都市伝説やトリビアを解説しながら、作品の魅力をひも解いてきました。 本作の魅力をひとことで言い表すとすれば、多くの要素が絡み合って生まれた壮大な世界観です。宮崎駿作品すべてにいえることかもしれませんが、彼は自らの経験を作品に落とし込み、魅力あふれるものに仕上げています。 そして観客は世界観に含まれる多様な要素から、想像力をかき立てられることでしょう。宮崎駿監督のジブリ作品に都市伝説が多いのは、観た人が想像を膨らませて、物語をのその先を想像したくなるからではないでしょうか。