2018年7月5日更新

これはムリゲー。最強モブゾンビランキング

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ゾンビ
©T.C.D / VISUAL Press Agency

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猿でも分かるゾンビ映画史

もともと「ゾンビ」という言葉は、ハイチなどで信仰されるヴードゥー教の呪術によって、人間に使役される死者のことです。戦前の映画などでも、この古典的なゾンビを主題とした作品があります。 ところが、現代の我々が描く「ゾンビ」のイメージを作り上げたのは、ジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』(1968)なのです。 噛まれると感染してゾンビとなる、理性はない、人を食う、頭部を破壊しない限り不死身である、緩慢に移動するなどの基本ルールもこの作品で生まれました。 この映画と、『ゾンビ』(1978)、『死霊のえじき』(1985)のゾンビ三部作で、ロメロ監督は世界中の映画作家に影響を与えたのです。 そんな出自をもつ古今東西の映画に登場するゾンビの中でも、モブなのに強いゾンビをランキング形式で紹介します。

第5位:全編主観映像によるモキュメンタリーに登場するおばあちゃん『REC/レック』

スペインのモキュメンタリー映画、「REC/レック」シリーズ第一作。消防士の密着取材という体をとって、全編がビデオカメラによる主観映像です。 テレビ局のレポーター(マヌエラ・ベラスコ)とカメラマン(パブロ・ロッソ)は、取材中に通報のあったアパートに消防士たちとともに向かいます。 住人が奇声を発しているという通報でしたが、警官とともに部屋に入ると半裸の老女がいきなり警官に噛みつくのです。それをきっかけに謎の感染がどんどん進行していって、感染者は凶暴なゾンビのように人を襲います。 何といっても最初に登場するゾンビ化したおばあちゃんが強烈。しかも、『REC/レック2』(2009)で明かされる感染症の秘密も興味深いです。

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第4位:ゾンビなのに身体能力に優れた、元・陸上選手『アイアムアヒーロー』

花沢健吾による漫画の実写化作品です。さえない漫画家である主人公を大泉洋が演じます。 ある日、身の回りの人間が次々にゾンビ化していく、「巻き込まれ」感が恐ろしいです。本作においてのゾンビは、ZQN(ゾキュン)と呼称されます。 ゾンビものの定番として、人間たちはアウトレットモールに逃げ込み、独自のコミュニティーを作るのです。その周囲をZQNの群れが取り囲んでいるのですが、その中で1人、元アスリートらしきZQNがいます。 驚くべき身体能力をもつ、そのZQNは背面跳びで軽々とモールの屋上に侵入し、人間たちを餌食にしていくのです。

第3位:集団で協力して壁を越えてくるゾンビの群れ『ワールド・ウォーZ』

『ワールド・ウォーZ』
© 2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

原作小説はありますが、映画とは設定以外の共通点がないようです。主演のブラッド・ピットは製作にも関わっています。 元・国連職員のジェリー(ブラッド・ピット)が、家族とともにフィラデルフィアを車で移動中に渋滞に巻き込まれ、突如として人々が車を放棄して逃げ惑い始めます。世界中で人間が凶暴なゾンビと化す、伝染病が流行り始めたのです。 日常の風景が一気に地獄と化します。中でも極めつけはエルサレムでの戦闘シーンでしょう。 エルサレムでは、壁を築いてゾンビを防いでいたのですが、ゾンビの群れは自らの体を何層にも積み重ねて壁を越えて侵入してくるのです。無数のゾンビの襲撃で阿鼻叫喚の混乱が描かれます。

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第2位:ゾンビ化したドーベルマンと制御不能の生物兵器『バイオハザード』

言うまでもなく日本製のゲームを原案とする、「バイオハザード」シリーズの第一作です。ミラ・ジョヴォヴィッチの代表作と言ってもいいでしょう。 多国籍企業「アンブレラ」社が密かに開発していたウィルス兵器が、何者かの手により研究施設で万延。感染した者はゾンビと化して人を襲います。 注目すべきゾンビとしては、斧で襲ってくる、片足を骨折しているアンデッド。また、感染した実験用のドーベルマン犬は、ゾンビに似合わず俊敏な動きで襲ってくるので脅威です。 その中でも、最大の恐怖はラスボス的な生物兵器でしょう。襲った相手を体内に取り込むことによって急速に変異し、巨大化するという無敵のゾンビなのです。

第1位:自我に目覚めたゾンビの指導者『ランド・オブ・ザ・デッド』

『ランド・オブ・ザ・デッド』ユージン・クラーク
©Universal Studios/Photofest/zetaimage

第1位は大御所、ジョージ・A・ロメロ監督の作品です。ロメロ作品らしく世相を反映した内容で、当時のブッシュ政権を皮肉ったものではないかと言われています。 地球上にゾンビが蔓延してから3年、生存者は川に囲まれた島の中で街を築いていました。富裕層は高層ビルに、貧民はスラムで暮らしています。 街はカウフマン(デニス・ホッパー)によって牛耳られていましたが、虐げられた人々は徐々に反抗していくのです。 そんな中で、自我に目覚めたゾンビ(ユージン・クラーク)が現れ、他のゾンビたちを率いて川を渡り街を襲い始めます。この「ビッグ・ダディ」と呼ばれるゾンビは他のゾンビと会話したり、知性を持っているようなのです。 『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004)のエドガー・ライト監督とサイモン・ペグが、ゾンビとしてゲスト出演しているシーンにも注目してください。

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ゾンビ映画の歴史は現在進行形

いかがでしたか? 他にも「疾走する」ゾンビが登場する『バタリアン』(1985)、『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004)なども取り上げたかったのですが、惜しくもランク外でした。 そもそもゾンビ映画の歴史は、「ルールからの逸脱」の絶えざる模索でした。発明者であるロメロ自身も、自我に目覚めたゾンビを作りだしてしまったのです。 ゾンビ化した動物、人間に恋をしてしまうゾンビまで無数のバリエーションがあります。これからもその歴史は刷新されていくでしょう。 また、すでにモダン・ゾンビ映画の先駆けの『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』(1968)で、当時の世相が作品に反映されていました。ゾンビと化して親を襲う子どもは「若者の反抗」、生存者のグループで黒人青年がリーダーシップをとるのは「黒人の公民権運動」の象徴というわけです。 次はどんな奇抜なゾンビが登場するか楽しみですね。