ロシアのドーピング問題に迫る映画『イカロス』とは【アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞】

2018年3月28日更新

第90回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を受賞した『イカロス』。Netflixオリジナル・ドキュメンタリーとして公開されたこの作品は、驚愕の展開で話題になりました。その魅力をご紹介します。

ドキュメンタリー映画『イカロス』をご紹介!【アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞】

2014年にドイツの公共放送がスクープした、ロシアのオリンピックでのドーピング使用問題を覚えているでしょうか。 これは、ロシアの元陸上選手と、その夫で同国反ドーピング機関の元職員が行なった内部告発に端を発し、国家ぐるみのドーピング使用が明らかになった問題です。世界中から注目を集めたこの事件は、2016年のリオオリンピックや2018年の平昌オリンピックで、ロシア人選手団の出場資格が停止される事態に発展しました。 その調査の決定打となる内部告発の経緯を追ったドキュメンタリー映画『イカロス』は、第90回(2018年)アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を受賞。その魅力をご紹介します。

衝撃作『イカロス』の監督や登場人物は?

監督:ブライアン・フォーゲル

2006年ごろから映画業界に携わり始めたブライアン・フォーゲルは、2009年に俳優として『Race to Witch Mountain (原題)』に出演。2012年には、オフブロードウェイのロングラン演目『Jewtopia (原題)』の映画化でプロデューサー、脚本、監督を務め、成功を収めています。 フォーゲルはアマチュアの自転車レーサーでもあり、「世界で最も過酷な自転車市民レース」への参加が『イカロス』製作のきっかけとなりました。

モスクワ反ドーピング機関所長:グリゴリー・ロドチェンコフ

本作の製作に協力することになったのが、当時モスクワ反ドーピング機関の所長だったグリゴリー・ロドチェンコフです。 もともとフォーゲルは、自身が参加する自転車レースでのドーピング使用を考え、UCLAのオリンピック分析研究所の創始者であるドン・カトリンに協力を求めましたが、断られてしまいます。代わりに紹介されたのがロドチェンコフでした。

事実は小説よりも奇なり!『イカロス』の発端と見どころ

『イカロス』の見どころは、なんと言ってもその衝撃的で急転直下の展開です。 監督のブライアン・フォーゲルは、世界で最も過酷な自転車市民レース「オート・ルート」で勝つために、ドーピングの使用とアンチ・ドーピング検査がいかに役に立たないものかを実験し、それをドキュメンタリー映画にすることにします。実験を行ううち、人懐っこいロドチェンコフとフォーゲルはすぐに親しくなりました。 しかし、製作中にドイツの公共放送によるロシアドーピング問題のスクープがあり、事態は思わぬ方向へ。まるでスパイ映画のような、現実とは思えない展開を見せていきます。

『イカロス』はドキュメンタリー映画の魅力がわかる作品

監督であるフォーゲルは、本作について「こういう内容になる予定ではなかった」と言っています。ドキュメンタリー映画の魅力はまさにこれで、製作者にも先の展開が全く読めないということではないでしょうか。 『イカロス』は、ドーピングに関する映画の製作中にロシアの問題が発覚し、実験の協力者がまさにその関係者だったという信じられないような偶然が重なって生まれた作品です。下手なフィクションよりも衝撃的な真実を明らかにする、ドキュメンタリー映画の真骨頂と言えるでしょう。 ドキュメンタリー映画の奇跡と、ロシアのドーピング汚染の実態を、ぜひその目で確かめてみてください!