2018年4月14日更新

数々の名作に影響を与えた「クトゥルフ神話」をきちんと勉強する時が来た

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クトゥルフ神話

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クトゥルフ神話とは?パルプ作家のお遊びから偉大な影響を持つ神話へ

クトゥルフ神話は1920年代ごろにアメリカのパルプ・マガジン(低価格雑誌)上において勃興した架空の神話体系です。当初は怪奇作家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトとその友人たちが互いの作品に固有名詞を貸し借りする形で始まりました。 当初は作家同士のお遊びとして行われたこの貸し借りですが、1939年に転機が訪れます。ラヴクラフトの弟子であるオーガスト・ダーレスが出版社「アーカムハウス」を設立し、これらの作品群を「クトゥルフ神話」としてまとめ、多数出版したのです。 これをきっかけに、ラヴクラフトやその周囲の作家たちの作品が「クトゥルフ神話」として認知されるようになります。そして、特にホラーやサブカルチャー界隈を中心に読者を獲得し、そこから巣立った作家たちに大きな影響を与えるようになりました。 今回はそんなクトゥルフ神話と、その影響を受けた作品群について学んでみましょう。

人間は蟻?クトゥルフ神話が描く「コズミックホラー」

クトゥルフ神話の画期的な点に「コズミックホラー」(宇宙的恐怖)という概念があります。この概念は矮小な人間には理解できない宇宙規模の存在に人々が振り回されるというもので、クトゥルフ神話の浸透に伴いホラーの1ジャンルとして定着しました。 また、クトゥルフ神話を神話足らしめているのが、宇宙規模の生物「邪神」です。クトゥルフ神話の名の由来となった「クトゥルフの呼び声」に登場する邪神・クトゥルフの姿はイカに例えられています。 多くの作家がこの神話にかかわるにつれ、邪神たちに「旧神」と「旧支配者」の対立の図式といったわかりやすい設定が付加されていきました。作品ジャンルにも宇宙的恐怖に挑む人々が登場するアクション活劇などの広がりが見られます。 日本でも有名どころでは『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』に邪神由来の敵キャラが登場するなど、多くの作品に影響を与えました。クトゥルフ神話は、特にサブカルチャー業界での影響が顕著なのです。

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クトゥルフ神話初の映画化『怪談呪いの霊魂』

クトゥルフ神話は多くが短編の形で発表されたため、原点をそのまま映像化した作品というのはあまり多くありません。そんな中で一番最初に映像化されたのが『怪談呪いの霊魂』(1963年公開)でした。 原作はラヴクラフトの数少ない長編『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』となっており、監督はB級映画の帝王、ロジャー・コーマン。AIP制作のザ・B級ホラーです。 原作を元に大きく脚色されており、その相違点が気になるファンも多い作品となっています。対して同じくクトゥルフ神話の一作である『インスマスの影』に登場した「深きものども」が登場するなどのファンサービスも見られました。

邪神VS正義の超人『ウルトラマンティガ』

日本におけるクトゥルフ神話は伝奇ものやホラー、エロチシズムに軸を置いたサブカルチャー業界でその勢力を伸ばしていました。それがメインカルチャーとの出会いを果たしたのが、1996年に放送開始された『ウルトラマンティガ』でした。 ウルトラシリーズ30周年作品として16年ぶりの新作テレビドラマとして制作された本作では、最後の敵・ガタノゾーアのモチーフにクトゥルフ神話を採用したのです。名前は旧支配者・カタノトソーアからとられ、姿はクトゥルフが元となっています。 圧倒的な力に相対する正義の超人・ウルトラマンティガと人類の戦いは、子どもたちに大きなインパクトを与えました。

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巨大ロボットで邪神を払う『機神咆吼デモンベイン』

2003年、日本のサブカルチャー文化を象徴するようなクトゥルフ作品が世に登場します。タイトルは『斬魔大聖デモンベイン』。玄人受けする作風を得意とするゲームブランド「ニトロプラス」が発売したR-18ゲームです。 本作の特徴は、クトゥルフ神話と日本サブカル文化のかけ合わせです。クトゥルフ神話作品群で恐れられた狂気の魔導書「ネクロノミコン」は少女の姿をした妖精として擬人化されて登場し、主人公・九朗は日本が生んだ文化・巨大ロボット「デモンベイン」に乗り込み邪神との戦いに挑みます。 同作品は『機神咆吼デモンベイン』に改題の上で一般向けに販売され、2006年にはアニメ化も果たしています。1クール12本という話数の少なさ故原作から削られた要素も多いものの、本作の持つサブカル文化とクトゥルフ神話のかけ合わせは十二分に感じられる作品です。

冒涜的なクトゥルフ神話の極北『這いよれ! ニャル子さん』

『這いよれ!ニャル子さん』はれっきとしたクトゥルフ神話作品ながら非常に挑戦的な1作です。ライトノベルとして発表され、アニメも制作されました。 主人公・八坂真尋はクトゥルフ神話のクトゥルフの眷属・ニャルラトホテプを名乗る少女・ニャル子と出会います。ニャル子からクトゥルフ神話の邪神たちは宇宙人だと知らされた真尋は、クトゥルフ神話の神々(=宇宙人)たちの非常識なふるまいに振り回される日常を送るようになるのです。 邪神はただの宇宙人だという、信者からすると少々冒涜的な設定が目につく本作ですが、「邪神に振り回される人間」という構図はクトゥルフ神話の王道そのもの。邪神をはじめとするクトゥルフ神話の設定を作者が好きに変えるのも、クトゥルフ神話における基本的作法です。 本作はクトゥルフ神話らしい造りがコアなファンに肯定的に受け入れられました。また、数多の作品をいじり倒すパロディ描写に惹かれたオタクユーザーにクトゥルフ神話を布教する作品ともなっています。

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全てのホラーはクトゥルフ神話に通ず?『キャビン』

『キャビン』は2012年のアメリカ映画です。本作ではホラー映画の存在理由をクトゥルフ神話と邪神たちに求めることで、極めて特異な世界観を構築しました。 ホラー映画は、邪神たちを満足させて復活させないために作られているというのです。邪神を満足させるためという建前で狂気に支配された登場人物たちが「ホラー映画あるある」とでもいうべきホラー映画のお約束を再現していく様は他のホラー映画とは異質の恐ろしさを醸し出しています。 本作によると、『リング』のようなJホラーは日本に巣食う邪神には気に入られたものの、アメリカの邪神に好まれないためアメリカではあまり制作されていないとのこと。各国の作風の違いも世界観に組み込まれた本作は、クトゥルフ神話を知らずともメタフィクション的に楽しめる作品です。

クトゥルフ神話普及の立役者『クトゥルフ神話TRPG』

最後に、クトゥルフ神話の認知度を一躍高めた『クトゥルフ神話TRPG』を紹介します。TRPGとは数人のプレイヤーと一人の審判役(本作での名称はキーパー)で遊ぶゲームです。 プレイヤーはキャラクターになり切って遊ぶため「大人のごっこ遊び」ともたとえられます。融通の利かないコンピューター相手のRPGとは違い、審判が認めればルールにないものも含めどんな行動でも提案・実行できる自由度が特徴です。 本作はゲームとしてクトゥルフ神話の世界を緻密に再現していました。TRPG全盛期の80年代に輸入されたため、本作の存在からクトゥルフ神話を知ったファンもいます。 また、様々な情報が収められていた本作は、クトゥルフ神話の第一級品の資料でもありました。中にはクトゥルフ神話作品を作るために本作を購入したという作家もいます。 以上、クトゥルフ神話の学習のために必要な基本と、クトゥルフ神話の世界に触れるために重要な作品群を紹介しました。きちんと勉強するうえで外せない作品ばかりですので、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか?