何処で生まれ、何処へ行くのか?「魔法少女」の歴史とこれからを考える

2018年1月12日更新

アニメの1ジャンルとして、長い歴史を持つ「魔法少女」。これまでに沢山の名作を生み出してきたジャンルですが、その内容や流行は時代によって大きく様変りしてきました。この記事では、そんな魔法少女の歴史と未来について考証していきます。

少女の夢から大人たちのアイドルへ、常に変身し続ける「魔法少女」

アニメの中に登場する魔法少女はかつて、小さい女の子たちの憧れであり、自分もそうなりたいと願う夢や目標といった存在でした。しかし、時代の変遷と共に魔法少女も多様化の道を進み、いつしか女の子だけでなく成人男性をも熱狂させる存在へと変貌を遂げました。 魔法少女は何処で生まれ、何処へ行くのか。今回は、時代に合わせて常に変身し続ける彼女たちの歴史とこれからについて、真剣に考察していきます。

あなたが知っている「魔法少女」は誰ですか?

アニメが好きな人で「魔法少女」という言葉を聞いた事がない、という人は少ないのではないでしょうか。それくらいアニメの世界では定着したジャンルであり、各時代において社会現象を巻き起こした名作がいくつも存在しています。 その一方で「魔法少女の定義」については、著者の知る限りでは明確な答えは存在していません。 「魔法を使う少女」とシンプルに考えている人もいれば、「変身する女の子」という人もいるでしょうし、「使い魔的なマスコット風キャラによって魔法が使える存在となった女の子」という人もいるかもしれません。 何故なら「魔法少女」がジャンル化・カテゴライズされて以降、いわゆる「魔法少女モノ」の内容は時代によって多様に変化しているからです。 魔法少女と聞いて『魔法使いサリー』を思い浮かべる人と『魔法少女まどか☆マギカ』を想起する人とでは、思い描く魔法少女像は全く異なるのではないでしょうか。

1960~1970年代、彼女たちの歴史は『魔法使いサリー』から始まった

魔法少女の起源は『魔法使いサリー』だと言われています。1966年に放送されたこのアニメは、魔法の国の王女・サリーが人間界を訪れ人々と交流を深めて行くという「魔法を使える世界からやって来た少女の日常譚」が描かれています。 1969年には『ひみつのアッコちゃん』が登場。こちらの主人公・アッコは変身できる鏡を貰った人間の少女で、元々魔法を使える少女のサリーとは異なる「外的要因で魔法が使えるようになった少女」というタイプの魔法少女が誕生しました。 「サリー」と「アッコ」は大ヒット作となり、『魔女っ子メグちゃん』『花の子ルンルン』など数多くの後発作品を輩出。これらのアニメを観た多くの女の子が「魔法を使えるようになりたい!」と憧れを口にしたそうです。

「魔法少女のアイドル化」は1980年代のアイドルブームに起因?

1980年代に入ると、日本には空前のアイドルブームが到来し、女の子の憧れの的となっていました。そういった時代背景を反映し、人気を博したのが『魔法のプリンセスミンキーモモ』と『魔法の天使クリィミーマミ』です。 この2作品は当時の女の子たちが憧れていた「働く女性」「アイドル」「芸能界」といった要素を取り入れ、70年代までの魔法少女を好んでいたアニメファンとは異なるファン層を獲得しました。 特に「クリィミーマミ」は、ファンタジーの住人だった魔法少女を芸能界という現実世界に飛び込ませた事で、これまでになかったアイドル性を確立。子供だけでなく成人男性からの支持も獲得するなど、ターゲットの拡大に成功しました。 制作を行ったスタジオぴえろが後続の作品と合わせて「魔法少女シリーズ」と銘打った事で、「魔法少女」という言葉がアニメ界に浸透する事になります。

『カードキャプターさくら』が完成させた「高年齢向け魔法少女」

魔法少女の多様化が進む流れは1990年代に入り更に加速します。 魔法少女と戦隊モノの流れを汲む『美少女戦士セーラームーン』や『魔法騎士レイアース』といった作品のヒットにより、魔法少女のニーズは「女の子の日常」から「バトルヒロイン」に移行。より男性向けにシフトしていきます。 この流れを決定付けたのが、1998年より放送を開始した『カードキャプターさくら』です。この「CCさくら」は従来の魔法少女・バトルヒロインとしてのニーズに応えつつ、より少年マンガ的な設定で男性からも支持される作品となりました。 そして何よりも大きかったのは、主人公・木之本桜の存在です。 当時アニメ界は『新世紀エヴァンゲリオン』の大ヒットに端を発し、美少女キャラに心を揺り動かされる「萌え」ブームの真っ直中。その中でも桜は特に成人男性からの絶大な支持を獲得し、高年齢向け魔法少女の確固たる地位を確立しました。

可愛くて血生臭い、21世紀の魔法少女たちが登場

21世紀に突入し、魔法少女はいよいよ美少女×バトルの様相を濃くしていきます。 「CCさくら」の流れを汲みつつ、より近代的な兵器による派手なバトルが繰り広げられる『魔法少女リリカルなのは』、女児向けアニメでありながら常に敵と戦う「プリキュア」シリーズなどが人気を博し、バトルと魔法少女は切っても切れない関係になっていきました。 そして2011年、魔法少女の歴史を揺るがすあの作品が彗星のように現れます。『魔法少女まどか☆マギカ』の登場です。 『ひだまりスケッチ』の蒼樹うめさんがデザインした愛らしいキャラクターたちが、メルヘンチックな世界観で戦いを繰り広げ、友情を育みながら世界を守る……そんなアニメを想像していた多くの視聴者が、第3話の巴マミ絶命シーン(通称「マミる」)に衝撃を受けた事でしょう。 「まどマギ」の衝撃は日本のみならず世界中のアニメファンを驚愕させ、同時に魔法少女の枠組みを更に拡大する事になります。

海外の魔法少女は一味違う?

では、海外において「魔法少女」とはどういう存在なのでしょうか。 実は魔法少女の起源とされている『魔法使いサリー』は、アメリカの人気ドラマ『奥さまは魔女』がきっかけで制作されたと言われています。「魔法を使う女性」を題材とした人気作品の輩出という意味では、日本よりアメリカが先だったようです。 ただ、海外では「魔法少女」というジャンルが日本ほど明確に確立している訳ではなく、日本の「セーラームーン」、「CCさくら」、「まどマギ」などが海外でも支持されている事もあって、「魔法少女は日本産のアニメ」と認識しているアニメファンが多いように見受けられます。 その一方で、日本の魔法少女に影響を受けたと思われる海外のアニメもあります。 『悪魔バスター★スター・バタフライ(原題:Star vs. the Forces of Evil)』は日本アニメのファンであるダロン・ネフシー氏が生み出した魔法少女アニメで、カートゥーン調のポップでカジュアルなデザインが日本産の魔法少女とは違った魅力を生み出しています。

「魔法少女」の未来は明るい?それとも暗い?

「まどマギ」の登場以降、陰惨なイメージさえも取り込んでしまった魔法少女。行き着くところまで行ってしまった感もありますが、果たして今後、魔法少女はどこへ向かうのでしょうか? この難しい問いに答えるヒントは、これまで紹介してきた歴史にあります。 魔法少女は常に視聴者の希望であり、夢であり、欲望であり、カタルシスでした。少女の変身願望を叶え、男性の萌えを満たし、刺激を求める視聴者にサプライズを提供する……そういう「飢えを満たす存在」こそが魔法少女なのではないでしょうか。 例えば、殺伐とした社会情勢を憂い「けもフレ」のような優しい世界や、「リゼロ」のレムのような献身的なヒロインが求められる時代には、癒やしと慈愛を備えた魔法少女が現れるかもしれませんね。 魔法少女の歴史を振り返れば、いつでも当時の世相や時代背景、アニメ界の流行を知る事ができます。あなたも一度、彼女たちの歴史を辿ってみてはいかがでしょうか?