【ANAISによる“恐竜と映画とわたし”】③B級恐竜映画のススメ!チープに見える訳と魅力
恐竜映画と言えば避けて通れない、B級作品を紐解いていく
こんにちは、恐竜をこよなく愛するナードな映画ライターANAIS(アナイス)です。「恐竜」と「映画」この二点を軸に進めて行く連載「ANAISによる“恐竜と映画とわたし”」も、三回目となりました。先週の記事で最近Funko pop!の「ジュラシック・パーク」シリーズを集めると言っていましたが、早速新入りのヴェロキラプトルちゃんが我が家にやってきました。
一緒に映っているのは、現在佳境を迎えている海外ドラマ『ウォーキング・デッド』のニーガンです。最近リックとニーガンの正義と悪のバランス感が逆転してきていて、余計にニーガンには死んでほしくないです。 さて、本日お送りする第三回目はそんな『ウォーキング・デッド』の題材でもある「ゾンビ」と私の愛する「恐竜」が融合する問題作から、案外良くできた作品まで紹介しながら、恐竜が登場するB級作品の魅力を紐解いていきたいと思います。
第二回目はこちら
映画界において、恐竜は主に2種類に分けられる
そもそも、A級B級に関わらず、映画の中の恐竜はざっくり2種類に分けられます。それは肉食・草食ではなく、“CG”か“ロボット”か、です。中には全編CGで構成されているものもあれば、ロボットを混ぜているものもあります。 B級映画といえば低予算で製作されるもの。この予算が、その映画に登場する恐竜の命運、つまりクオリティに関わってくるのです。
B級恐竜映画の、表裏一体とも言える欠点と魅力
言うまでもありませんが、B級映画の恐竜の多くは安っぽいCGで笑ってしまうようなビジュアルをしています。しかし、「ではロボットならクオリティが高いのか」というと、それも微妙。むしろ中には「案外お金かけているんじゃない!?」とCG技術が高めなB級恐竜映画もあるので、ジャケットがどんなにチープでも、ストーリーがチープでも手に取ってトライしていただきたい。 そしてこれはB級恐竜映画に関わらず、多くのB級映画に通ずるのですが、低予算で作る(スポンサーがいない)からこそとんでもない設定で展開されるぶっ飛んだストーリーが面白くて魅力的だったりするのです。更に、名作『ジュラシック・パーク』のパロディやオマージュシーンも数多く登場するのが見所! それを踏まえて、ぶっ飛んだ設定、チープすぎる演出が逆に燃える?本気の駄作から名作まで、B級恐竜映画を特徴別にいくつか紹介したいと思います。
「ゾンビ×恐竜」発想だけは神レベルな『ゾンビレックス』
誰だよ、恐竜ゾンビを作ろうって考えた奴は(褒め言葉)。 マッドサイエンティストが、死んだ生物を蘇生できる薬を作り上げ、それを注入して「ゾンビレックス」を生み出します(噛まれた人間は、ゾンビになるのだとか)。政治的テロリストでもあった彼は政府機関からクビになった後、教鞭を執っていたのですがクレイジーな授業をしたのでクビに。 その後舞台は砂漠へ。大学生4人(筋肉バカ、金髪バカ、オタク、オタク)の乗っていた車が故障し、彼らは仕方なく歩く事にすると遠くに施設をみつけます。時を同じくして、とある軍人5人もまたこの施設にたどり着きます。そこは実は例のマッドサイエンティストの秘密施設で、彼らはゾンビレックスに遭遇し襲われるという物語なのですが……。
冒頭の五分で早速ゾンビレックスが誕生し、少し期待させるもその後は死ぬ程寝落ちしてしまうストーリー。しかし、寝落ちも何も、このゾンビレックスというのが「ゾンビ」要素も皆無であれば「恐竜」要素も全然ない!終いにはマッチョな軍人とレックスが素手でやり合うというぶっ飛び展開に。 しかし、途中で『ジュラシック・パーク』のグラント博士が子供をビビらせた“電圧ネタ”や、オタク2人が「メタルギアソリッドじゃん!」とか「コールオブデューティじゃね?」みたいなオタクトークをするので、憎みきれない駄作です。いずれにしても発想だけは神なので、個人的には是非リメイクを作っていただきたいものです。 ちなみに今作のレックスはロボットというよりかは着ぐるみで、足元に人が忍び込んで動いているタイプのものになります。
これぞ予算が足りなかった系CG恐竜!『ジュラシック・シティ』
陸軍が地下の秘密施設で製造していた恐竜が、ロスの街に飛び出す!主人公の女子大学生はパーティーを通報されて留置場に友達と、やらしいお姉さん達や殺人鬼と共に(軽犯罪と重犯罪なんで同じところに)収容されています。彼らはズバリ餌枠として、そこにやってきた恐竜に次々に喰われて行きます。 今作は『ゾンビ・レックス』と違い全編CGで恐竜が描かれているのですが、補食シーンから何からがとにかく雑!チープな血しぶきは、B級映画を楽しむうえで欠かせないものですが、それにしても酷いです(笑) 尚、今作でも『ロスト・ワールド』のオマージュとして、プールで水飲みをする恐竜が描かれます。
鉱山を掘ったら恐竜がわんさか出てくる『ジュラシック・ハンター』
特別な鉱山を掘っていたら、岩盤が落ち、そこからラプトルやらティラノサウルスやら恐竜がわんさか出て来てきます。採掘業者の社長がこの事件を隠蔽しようとするも、既に街に出たラプトルは人を襲いはじめ小さな街はパニック状態!そこにかつて恋人とこの街を捨てたカウボーイこと主人公が戻って来て、騒動に巻き込まれます。 この映画、そもそもなんで鉱山から恐竜が出て来たのとか、恐竜を封印しようとかそういう話にはなりません。しかし、それでも面白いのです!
何を隠そう、今作も全編CG恐竜が登場するのですが、『ジュラシック・シティ』に比べて圧倒的に精度が高い。動きひとつにしても、史実に近いようなものであったり、無駄に内蔵が飛び出る補食シーン等の血しぶき・ゴア描写もチープながらにしっかりと撮られています。その時点でかなり“本気”を感じる作品なのですが、収拾はつかないにしても、ストーリーも実はそこまで悪くなかったりする。
更に、登場キャラクターが魅力的です。保安官を殴った事でカウボーイは留置場に入れられるのですが、その中にいた汚い男が実は良い奴で(死亡フラグ)後に彼と結託し、互いの命を守りながらラプトルと戦う。例の鉱山の現場監督をしていた男は何故か武器を大量に持っていて、彼と遭遇する金髪美女もまた、何故か戦闘スキルが高い。
事の発端である悪どい社長は車に乗って一人逃げ切ろうとしますが、後ろの座席に隠れていたラプトルに毒を吹きかけられ(!?)、死亡。これまた『ジュラシック・パーク』のネドリーが、ディロフォサウルスの餌食になるシーンのオマージュのように感じます。
何より、クライマックスシーンでカウボーイが馬を乗り捨て、何故か一頭だけ鉱山から現れた草食恐竜・トリケラトプスの背中にまたがり、ラスボスであるティラノサウルスに向かうシーンは胸熱!ラストシーンの衝撃も、半端ないです。
恐竜って言っていいのか分からないけど…本気の名作『シャークトパスvsプテラクーダ』
今作に関しては「恐竜映画」というよりかは「サメ映画」の部類に入るものだと思いますが……良いんです、プテラクーダが最高にかっこいいから紹介させてください。このシリーズ作品をご存知でない方に簡単に説明すると、シャークトパスとは「サメ」と「蛸」が融合した新種クリーチャー。毎度毎度、同じように生物が融合したようなクリーチャーと闘いを繰り広げています
今作『シャークトパスVSプテラクーダ』は、シリーズの2作目にあたり、1作目で爆死したシャークトパスの子供が大きくなって、水族館で飼育されます。これを見世物にしてがっぽり稼ぎたい支配人と飼育員の女性は意見を対立させるのですが、そんな彼らの前に現れたのが謎の男ハマー。彼はとある博士の元で働いていて、その博士が生物兵器として生み出したプテラノドンとバラクーダの融合体プテラクーダを捕獲するためにシャークトパスを利用しようとします。 プテラクーダは元々思い通りに操作できていたのですが、とある男にハッキングされてから制御不能となってしまったのです。ハマーが今度はシャークトパスに制御装置を埋め込み、プテラクーダを捕らえるようにセッティングし、海に離す。かくしてこの二匹のクリーチャーの壮絶な闘いが始まり、人間はそれに巻き込まれて一定数死んで行くのですが……。
まず、プテラクーダのビジュアルがえげつないくらいカッコイイ。バラクーダのDNAを持つ翼竜が水中でも活躍するという、これまたえげつない発想に脱帽です。そして、全編を通してCGのクオリティも高く、ストーリーもテンポよく展開されて観ていて気持ちが良い。何より今作の見所は、シャークトパスとプテラクーダの度重なる戦闘シーンです。ここのCGがやたらと気合い入っているのか、しっかり戦っているんですよ!(笑)もうそれだけでも是非、一見していただきたいものです。
B級映画の恐竜と、『ジュラシック・パーク』の恐竜の決定的な違い
Lights. Camera. Animatronics. #StevenSpielberg #FlashbackFriday pic.twitter.com/J7ecXpAkan
— Jurassic World (@JurassicWorld) May 5, 2017
さて、ここまで4作のB級作品と、それに登場する恐竜を紹介してきましたが、やはりこういった作品を観て思うのは『ジュラシック・パーク』の凄さです。勿論、スピルバーグという巨匠が監督をしたからといえばそれでおしまいなのですが、やはり大きな差異は「恐竜」にあります。 スピルバーグは『ジュラシック・パーク』において、とにかく恐竜をリアルに映すことにこだわっていました。それ故に彼は、今作の大部分で“アニマトロニクス”というロボットを使った特殊撮影を行っていました。大雨の中、遂に姿を現すあのティラノサウルスも、実はロボットなのです。
これをする事によって、CGで描くよりも“そこに在るもの”としてリアルに映るだけでなく、着ぐるみを着て人間が表現する動き(『ゾンビ・レックス』)を遥かに上回ることができるのです。 「ジュラシック・パーク」シリーズが、他の恐竜映画と比べて圧倒的に優れている訳は、全作においてアーティストが手塩にかけて造形した、その恐竜の美しさにあるといっても過言ではありません。
Do you know which dinosaur these claws belong to? #FlashbackFriday pic.twitter.com/VjbMngyYRY
— Jurassic World (@JurassicWorld) November 10, 2017
尚『ジュラシック・ワールド』はほとんどをCGで撮影したのに対し、新作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』では再びアニマトロニクスを用いた撮影が増えるとのこと。この2作を照らし合わすことで、映画における恐竜の生々しさの違いに気づけるかもしれませんね。 とはいえ、全編CGで無名監督が撮ったB級恐竜映画も名作がある事は確か。それはそれで、是非楽しんでいただきたいものです。