辻一弘、日本人初のメイクアップ&ヘアスタイリングのオスカー受賞者に迫る8つのこと

2018年4月15日更新

第90回アカデミー賞において、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した辻一弘。日本人として初めて本賞を受賞した辻一弘について徹底的に紹介していきます。

日本人初の快挙

映画製作に携わる人にとっての最高峰アカデミー賞。その第90回アカデミー賞でメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した辻一弘。日本人のアカデミー賞の個人としての受賞は、1993年に石岡瑛子の衣装デザイン賞受賞以来の受賞となりました。またメイクアップ&ヘアスタイリング賞での受賞は日本人初という快挙を成し遂げ、日本のみならず世界中から注目を集めました。

ディック・スミスに憧れた学生時代

1969年京都に生まれた辻一弘は高校生時代に雑誌で特殊メイク界の巨匠、ディック・スミスの特殊メイクを見たことで、メイクを志すようになったと言われています。直接ディックに手紙を送るほど、彼の技術に憧れを抱くようになりました。 そしてディック・スミスの「独学が一番」という教えに従い、独学で特殊メイクを学び始めます。日本でいくつかの映画の特殊メイクを担当した後、渡米し、実際にディック・スミスに師事するようになりました。 その後、様々な映画の特殊メイクに携わり、アカデミー賞にノミネートされるも受賞には至らず、映画界からは退き、現代美術の分野で活躍を始めます。 しかし、その後ゲイリー・オールドマンからの直接の依頼で映画界に復帰し、今回のアカデミー賞受賞に至りました。

英国アカデミー賞受賞『グリンチ』

メイク担当は監督や脚本などに比べてあまり注目されるポストではありません。そのため今までに辻一弘がどのような映画に携わったかを知らない人のためにいくつか彼が携わった映画を紹介していきましょう。 2000年公開のアメリカ映画『グリンチ』。児童向けの絵本『いじわるグリンチのクリスマス』が原作の映画で、辻一弘は、ディック・スミスの愛弟子であるリック・ベイカーとともに本作のメイクを担当しています。 そして本作で英国アカデミー賞のメイクアップ&ヘアー賞を受賞しました。

アカデミー賞にノミネート『もしも昨日が選べたら』

2006年に公開されたアメリカのファンタジー・コメディー映画『もしも昨日が選べたら』。 アメリカでは公開されるやいなや大ヒットし、公開直後の週末興行収益1位を獲得しました。 本作で辻一弘はビル・コルソとともにメイクを担当し、アカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされました。しかし残念ながら受賞には至りませんでした。

再びアカデミー賞にノミネート『マッド・ファット・ワイフ』

2007年公開のアメリカを代表するコメディー俳優エディ・マーフィ主演の『マッド・ファット・ワイフ』。 エディ・マーフィが主人公、その妻、そして年老いた父親の三役をこなし話題となった映画です。しかしその年のゴールデンラズベリー賞でエディ・マーフィが最低主演男優賞、最低助演男優賞、最低主演女優賞を受賞するなど、批評家たちからの評判はあまりよいものではありませんでした。 しかし本作のメイクアップは高く評価され、辻一弘はリック・ベイカーとともに再びアカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされました。しかしながら今回も受賞には至らぬ結果となってしまいます。

一度はハリウッドから引退

ハリウッド 洋画 フリー画像

アカデミー賞に2年続けてノミネートされるも受賞に至らず、またハリウッドで仕事を続けていくことに疑問を感じ始めていた辻一弘は2012年にハリウッドから引退し、現代美術家として人生を再スタートさせることを決意します。 現代美術家として活動中はサルバドール・ダリやアンディ・ウォーホル、また師匠であるディック・スミスの頭像を制作し、美術展に出展するなど精力的に活動を続けていました。 しかしそんなとき、ゲイリー・オールドマンから直接声がかかり、ハリウッドに復帰を果たします。

夢があったら他人の意見を聞かないように。自分の人生は自分で決めないと後悔する

アメリカ(フリー画像)

単身アメリカに乗り込み、ある意味自分の生きる世界の最高峰であるアカデミー賞を受賞した辻一弘。 しかしそこに至るまで様々な苦労に直面してきたであろうことは容易に想像できます。 インタビューにおいて辻一弘は『夢があったら他人の意見を聞かないように。自分の人生は自分で決めないと後悔する』と語っています。妥協せずに自分の夢に向かって突き進むこと、また与えられた機会や仕事は最大限の努力をして臨むこと、で今の栄誉を勝ち取ったことは間違いないでしょう。

『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』で映画界に復帰

辻一弘がアカデミー賞を受賞したゲイリー・オールドマン主演の『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』。 ウィンストン・チャーチルとは似ても似つかないゲイリー・オールドマンがこの役を演じるには特殊メイクは必須でした。そんなゲイリー・オールドマンから直接オファーを受けた辻一弘。ゲイリー・オールドマンは辻がオファーを受けなかったら本役を受けなかったと言われるほど、熱烈なオファーを辻に送ります。 それでも、当時ハリウッドから退き現代美術家として活動していた辻一弘は、すぐにそのオファーを受けず、一週間熟考したと言われています。 そして今まで縁のなかった実在の人物を再現するという引き受けることを一生に一度の仕事と決意し引き受け、そして彼の見事な仕事ぶりは誰もが感嘆するものとなりました。 今後は現代美術家としての活動に重きをおいていくということですが、すでにハリウッドの大物俳優陣からオファーを受けているという辻一弘の今後の活躍に注目していきましょう。