2019年1月25日更新

【ネタバレ】『サスペリア』の2019年リメイクをオリジナルと徹底比較考察 演出やラストは何が違う?

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『君の名前で僕を呼んで』の監督として日本でも知られるルカ・グァダニーノがホラー映画の傑作『サスペリア』のリメイクに挑戦しています。この記事では本作の最新情報を紹介しています。

『サスペリア』リメイク版はカルト映画化決定の傑作?【ネタバレ注意】

ホラー映画の傑作として現在でもファンが多い人気作『サスペリア』。オリジナル版が芸術的にも、音楽的にも優れた人気作なだけあって、リメイク版は注目度も期待値も自ずと高くなっています。 そんなリメイク版『サスペリア』の監督は、日本でも話題になり、アカデミー賞脚色賞を獲得した『君の名前で僕を読んで』の監督でもあるルカ・グァダニーノ。キャストもダコタ・ジョンソンやクロエ・グレース・モレッツなど、今旬の女優たちでかためています。 この記事では、演出、キャラクター、音楽、ラストシーンなど重要なポイントをピックアップし、オリジナル版と徹底比較してみました。 *なお本記事の後半には『サスペリア』の重大なネタバレがあるのでご注意ください。

【あらすじ】この劇団には、“何か”が潜んでいる

サスペリア
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舞台は1977年のベルリン。ダンサーのパトリシアが心理療法士を訪ね、自分の舞踏団<マルコス・ダンス・カンパニー>が悪の巣窟であることを訴えるものの、まともに受け取ってもらえず失踪してしまいます。 その後、彼女の所属していた舞踏団に入団することを夢見てオハイオからやってきたスージーは、オーディションでその才能を発揮し、憧れの存在だった振付師マダム・ブランに気に入られます。しかしその頃、舞踏団ではダンサーが次々と謎の失踪と遂げていました。センターだったオルガも、パトリシアの後を追うようにいなくなってしまい――。 そんな中、主役(センター)に抜擢されたスージーの周辺では不可解なことが起き始め、徐々に舞踏団の背後に潜む恐ろしい秘密が明らかになっていくのです。

オリジナルの『サスペリア』を知っていますか?

さて、リメイク版の前に、オリジナルとなる映画『サスペリア』を簡単に紹介したいと思います。ダリオ・アルジェントが監督とした同作は「決して、ひとりでは見ないでください」という有名なキャッチコピーが使用されており、大ヒットを記録しました。 劇中では、バレリーナ志望のスージーが巻き込まれる恐怖体験が描かれます。 また、本作はアルジェント監督の「魔女3部作」の一つに数えられており、『インフェルノ』『サスペリア・テルザ 最後の魔女』が三部作のそのほかの作品になります。 なお、アルジェント監督作の『サスペリアPART2』という映画もありますが、これは『サスペリア』とは直接の関連性はないので要注意です!

リメイク版のキャラクターとキャストたち

スージー/ダコタ・ジョンソン

サスペリア
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リメイク版には豪華女優陣が出演します。その中で主演を飾るのが「フィフティ・シェイズ」シリーズや、『ブラック・スキャンダル』で知られるダコタ・ジョンソンです。 ファッションモデルとしても活躍していたキャリアを持つ彼女は、女優としての演技力はもちろん、その美貌も大きな魅力。 彼女は主人公であり、世界的に有名な舞踏団<マルコス・ダンス・カンパニー>に入団しようと、アメリカからベルリンにやってきます。類稀なるダンスの才能をマダム・ブランに認められ、チームの中心的存在になっていくのですが……。

マダム・ブラン/ティルダ・スウィントン

ティルダ・スウィントン
WENN.com

続いての豪華キャストは、ティルダ・スウィントン。『ドクター・ストレンジ』のエンシェント・ワン役や、ウェス・アンダーソン監督『犬ヶ島』での声優出演などが近年の著名な仕事でしょうか。個性的なベテラン女優です。 映画『フィクサー』の演技ではアカデミー助演女優賞に輝くなど、その確かな演技力を高く評価されている彼女。 そしてなんと本作では、マダム・ブランの他にも複数の役を演じています(詳しくは後述)。 彼女がメインで演じるマダム・ブランは<マルコス・ダンス・カンパニー>のカリスマ振付師。スージーの憧れの存在であり、彼女のことを直々に“個人レッスン”していきます。

サラ/ミア・ゴス

ミア・ゴス
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『ニンフォマニアック2』でセンセーショナルなスクリーンデビューを果たした、ミア・ゴス。他のメインの出演者と比べ、作品歴は少ないもののかなりの存在感を放つ期待の新星です。 彼女の演じるサラは、スージーと仲良くなる劇団のダンサー。心細い彼女の親友になるのですが、彼女はある時劇団の秘密を知ってしまう……。

パトリシア/クロエ・グレース・モレッツ

クロエ・グレース・モレッツ
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最後に紹介するメインキャストは、クロエ・グレース・モレッツ。 映画『(500)日のサマー』『キック・アス』『モールス』など、ティーンエイジャーの頃から話題作に続々と出演し、注目されていた彼女ですが、20代を迎えてもその勢いは止まるところを知らず。 美少女から美しい女性へと華麗に成長した彼女は、本作の鍵を握るパトリシアを演じます。映画の冒頭シーンで、パトリシアはかかりつけの心理療法士ジョセフ・クレンペラーの元に駆け込むのです。そこで、劇団が邪悪な存在であると訴えるも、彼からは精神を病んで幻想を抱いていると診断されてしまいます。そしてその後、行方不明になって……。

監督はルカ・グァダニーノ!

ルカ・グァダニーノ
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本作のメガホンを取るのは、2018年4月27日公開の映画『君の名前で僕を呼んで』が話題になったルカ・グァダニーノ。オリジナルの『サスペリア』を幼少期に鑑賞した時から、すでに再構築を考えていたそうです。 リメイク版『サスペリア』は、まさにルカ・グァダニーノ監督によるオリジナル版への敬意の塊といっても過言ではないでしょう。

クロエは絶賛!タランティーノは涙!?

クエンティン・タランティーノ
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アメリカで行われた映画イベント「シネマコン」では、『サスペリア』のフッテージ(未編集の撮影済み素材)が公開されましたが、そこでも話題になった様子。 スタッフやキャストは期待できそうですが、肝心の映画の出来栄えはどうなのでしょうか?今回、米映画メディアslashfilmにて発表された出演者のクロエと人気映画監督、タランティーノの声を聞くと、映画への期待も高まります! クロエは、6月に行われたProvincetown Film Festivalにおいて『サスペリア』への激しい賞賛をあらわにしました。彼女は、「大げさかもしれないけど、(リメイク版サスペリアは)私が見てきた中でもっともスタンリー・キューブリックの作品に近いものだわ」と述べています。 また、監督ルカ・グァダニーノは友人であるタランティーノに映画をいち早くみせたことを告白。 「僕はその時とてもナーバスだったんだけど、タランティーノのアドバイスがどうしても欲しくて観てもらったんだ。彼の反応は、僕を温かい気持ちにさせたよ。彼は最後の方では泣いていて、僕にハグしてくれた。」と述べ、タランティーノが非常に良い反応を示してくれたことを明らかにしました。

オリジナル版との比較①演出・描写:よりグロく、はっきりと

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さて、オリジナル版とリメイク版の大きな違いをあげるとしたら、まずはグロテスクな描写について言及したいです。 オリジナル版のグロシーンといえば、最もアイコニックなのがダンサーのパット殺害シーンです。パットはダンサーが住むアパートの屋上で何者かに滅多刺しにされ(胸を開かれ、むき出しの心臓まで刺されます)、その後紐をくくりつけられ、ステンドグラスの上から落とされて吊るされるのです。血まみれな惨殺死体はそれだけではありません。 パットが狂乱しているのに心配して、広間に出てきた同じダンサーのソニアが、割れたステンドグラスの餌食に。顔面を真っ二つにされて死亡した姿が映されます。なかなか言葉にすると酷いシーンですが、色彩やガラスの反射具合の芸術性がかなり高く、グロさというより美しさを感じさせるようなものでした。 しかし、リメイク版ではより人体破壊描写が鮮明に、そして多くなっています。容赦ないです。あまり多くは語れませんが、一つだけ予告編にも登場するシーンをご紹介しておくと、スージーのダンスに合わせて他のダンサーの骨がどんどん変形し折れていく殺人描写があります。かなり(見ていて)痛いです。 それだけでなく、オリジナル版より血もかなり出る(!)ので、苦手な方はご注意ください。

オリジナル版との比較②音楽:トム・ヨークが監督に全面的に協力

ダリオ・アルジェント版『サスペリア』といえば、音楽を手がけたプログレッシブ・ロック・バンド、ゴブリンをまず想起するという人も少なくないはず。このゴブリンの手がけた『サスペリア』のテーマソングは、オルゴール調からシンセサイザーが加わっていき、全体の音が壮大になるにつれて人の心を騒つかせるような音楽でした。

それに対してルカ・グァダニーノ監督は、これまで手がけた映画では、オリジナルのスコアを作らずに既存の曲を使う傾向にあったこと、そしてゴブリンと比較されることがわかっていたことで、オリジナルの楽曲を作曲家と制作することに消極的でした。 しかし、現代性を求めて人気バンドであるレディオ・ヘッドのヴォーカル、トム・ヨークに声をかけました。今まで映画音楽をフルで手がけたことのなかった彼は最初躊躇していましたが、グァダニーノ監督は見事口説き落としたそうです。結果トム・ヨークの手がけた楽曲に対して、監督は次のようにコメントしています。 「トムの音楽は深い洞察力と共感性に満ちている。彼が常に探求を怠らないから彼の声は我々の世代に響くんだ」

オリジナル版との比較③主人公スージーなど、キャラクターの描かれ方

本作では、マダム・ブランや主人公のスージーの描かれ方がオリジナル版と少し違っています。オリジナル版では、スージーに一番親しかったのは主任教師のミス・ターナーでした。ダンス中に具合が悪くなったスージーを"心配"し、赤ワインを飲ませたり看病していたのは彼女です。 しかし、リメイク版ではその役割をマダム・ブランが担っているのです。ブランはターナー先生以上にスージーと近い距離感の中で、個人レッスンを施したり、深い信頼関係を築いていきます。 そして何より、スージー自身の描かれ方がオリジナルと異なります。オリジナルでは、得体のしれない何かに恐怖し、いつも怯えた表情が印象的なか弱き少女。しかし、リメイク版のスージーは最初からただならぬ雰囲気や魅力を纏い、物怖じしない自信家な性格です。さらに、周りで明らかに何かが起こっていると気づき始めても、口角をあげながらブラン先生と精神で会話をするのが印象的! なぜ物怖じしなかったのか??その理由は本編をご覧ください。(記事後半でも解説していますが。) リメイク版ではオリジナル版で描き切れなかったスージーのアイデンティティなどの部分に、より焦点が当てられているように思います。

④ティルダ・スウィントンが一人三役!?“男”を排除【ネタバレ】

サスペリア
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また、オリジナル版との決定的な違いは"男性"の存在を排除した点です。オリジナル版では、バレーアカデミーの中に盲目のピアニストのダニエル、ルーマニア人の召使いパブロ、マダム・ブランの甥であるダニエルなどの男性がいました。さらに、失踪事件について調査にやってきた刑事たちや精神科医のフランク、ミリウス教授など、割と多くの男性キャラが登場するのです。 しかし、リメイク版ではこれが一切排除。唯一の男性役として登場するキャラクター、精神科医のジョセフ・クレンペラーでさえ何と女優ティルダ・スウィントンが演じているのですから、その徹底ぶりは凄まじいです。 本作の舞台が1977年の西ヨーロッパ(ベルリン)という、まさに当時ウーマンリブ運動が盛んに行われていた場所であることが、この男性を排除した背景に繋がるのではないかと考えられます。 ちなみに、ティルダはこのクレンペラー博士とマダム・ブランの他にもう一人ストーリーの核心に触れる重要人物を演じているので探してみてください。

オリジナル版との比較⑤決定的なラストシーンの違い【ネタバレ】

オリジナル版のラスト

最後に紹介する違いは、オリジナル版とリメイク版のクライマックス及びラストシーンの違いです。オリジナルでは、秘密の部屋に潜入したスージーが魔女たち(アカデミーの先生)の真相を知ってしまいます。そして、逃げ込んだ部屋にいたヘレナ・マルコス(アカデミーの創設者であり「黒い魔女」という異名を持つ、古来の魔女)と遭遇。彼女の息の根を止めて、崩壊するアカデミーを脱出したスージーが、最後笑みをこぼす、というラストシーンでした。 しかしリメイク版はより血生臭いものになっています。加えて、ゴア描写と芸術性の高いクライマックスシーンが怒涛の展開で訪れるのです。

リメイク版のラスト

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リメイク版の終盤のストーリーを詳しく解説しましょう。 アカデミーの近くに幻想を見せられて呼び寄せられたクレンペラー博士。そこで劇団の魔女に捕まり、彼は地下室で裸体の状態で目を覚まします。 そこでは、途中で中断された魔女の儀式こと「ヴォルグ」が行われていました。それを見守る教師たちと、“自称”サスペリオルムのマザー・マルコス。サスペリオルムとは、三大魔女の一人であり“ため息の母”とも呼ばれる「メーター・サスペリオルム」のこと。マザー・マルコスは自分こそがその存在だと自称することで教師たちの人心を得ていました。 そこに、帰宅したスージーが迷い込んでしまいます。マルコスは彼女を自分の器(生贄)にしようとしますが、何かに気づいたブランが抵抗。ブランの首を掻き切ったマルコスにスージーが近づくと、自分が真のサスペリオルムであることを告げる衝撃の展開に……。そして、黒い使い魔のようなものを召喚しマルコス側についていた魔女を惨殺。さらに生贄として、生きた死体となったサラやパトリシアを浄化させます。 マルコス側の魔女たちを根絶させたスージー。その後、家で目を覚ましたクレンペラー博士の元に行き、彼に第2次大戦終戦中に生き別れた彼の妻アンケが、本当は強制収容所で凍死していたという真実を告げます。 それから時は現代に移り、かつてアンケとクレンペラーが住んでいた家に家族が移り住んでいるというラストショットで映画は終わります。

2019年リメイク版『サスペリア』の考察でした

映画『サスペリア』は2019年1月25日公開されました。賛否両論を巻き起こした問題作は、日本の映画ファンにどのように受け取られるでしょうか?