世界中で絶賛されたドキュメンタリー映画
2012年に公開された1970年に活動したアメリカ人歌手ロドリゲスに迫った『シュガーマン 奇跡に愛された男』。 アカデミー賞、英国アカデミー賞を始め、様々な映画賞のドキュメンタリー賞にノミネートそして受賞、またサンダンス映画祭やモスクワ国際映画祭など各国映画祭に招待されるなど世界中で話題となった作品です。日本では2013年に公開され、ロドリゲスの奇跡の人生に話題が集まりました。
1970年代に活動した歌手ロドリゲスを探すドキュメンタリー
1970年代に活動していたアメリカ人歌手ロドリゲス、と聞いてもピンとこない人の方が多いでしょう。 しかしロドリゲスは南アフリカで知らない人はいないほどの有名人なのです。というのも彼のアルバムの『Cold Fact』が南アフリカでダビングされ、そしてそれが50万枚を超える大ヒットとなったのです。もちろん彼自身もその事実を知りませんでした。 さらには、そのアルバムの一曲『Sugar Man』が南アフリカで行われていた人種隔離政策アパルトヘイトに反対する運動を象徴するソングとして大変な支持を得ることになったのです。 ところが南アフリカ誰もがロドリゲスの歌を知っていても実際のロドリゲスを見たことがなく、ステージ上で自殺したなどと噂されるほど。そしてそんな中彼のファンたちがインターネットでロドリゲス探しを始めます。 『シュガーマン奇跡に愛された男』はそんなロドリゲス探しの様子を記録したドキュメンタリーです。
アメリカでたった2枚のアルバムを発表して姿を消したロドリゲス
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本作の主人公はアメリカ出身の歌手ロドリゲス。 1942年生まれのロドリゲスは大物プロデューサーに発掘されました。そしてその才能に期待がかかり、満を持してデビューするも、1970年代前半に発売したアルバムはアメリカでたった6枚しか売れず、アメリカンドリームをつかむことはできませんでした。 そしてその後は実質上引退し、本作で注目を集めるまで、家族を養うため地元アメリカのデトロイトで肉体労働者として働いていました。 そして『シュガーマン 奇跡に愛された男』で再び脚光を浴びたロドリゲスは南アフリカを始め各地でコンサートを開催するなど歌手としての活動を再開しています。
スウェーデン出身の監督マリク・ベンジェルール
『シュガーマン 奇跡に愛された男』の監督は1977年生まれのスウェーデン出身の映画監督、マリク・ベンジェルール。 ミュージッシャンとしての活動経験も持つマリク・ベンジェルール、ヘビーメタルの歴史に関するドキュメンタリーやマドンナ、スティング、プリンスなどの音楽に関するドキュメンタリーや人気歌手のドキュメンタリー映画も手がけたことのある若手実力派監督として知られていました。 しかし長年うつ病に苦しんでおり、『シュガーマン 奇跡に愛された男』公開から2年後の2014年に36歳の若さで亡くなりました。死因は自殺と報道され、若き実力派監督の死に世界中が驚き、そして悲しみに暮れました。
ロドリゲスの登場はたった8分間
『シュガーマン 奇跡に愛された男』はロドリゲスに迫ったドキュメンタリーであるものの、本作に本人が登場するのはたった8分間、インタビューに答えるシーンのみです。 それでも彼がインタビューで語るシーンは人生の浮き沈みを経験した人にしか語ることのできない言葉の数々で、観る人の心に染み渡ります。
自殺の真相を解明するのが始まりだった!
『シュガーマン 奇跡に愛された男』は南アフリカで始まるロドリゲス探しがメインのテーマです。 実は南アフリカではロドリゲスは自殺したと信じられていました。そして彼の曲をこよなく愛する人々が、彼自身を探すのではなく、なぜ彼が自殺したのか、どのように自殺したのかという自殺の真相に解明しようとしたことがことの始まりでした。
鍵を握るロドリゲスの娘
自殺の真相を解明するため、南アフリカではインターネット上にサイトを立ち上げてその情報を集めることになりました。 そしてアメリカでそのサイトを目にする女性が現れます。実はその女性はロドリゲスの実の娘でした。そして彼女の仲介によりついにロドリゲス本人から連絡が入ります。 実質引退後は実に質素な暮らしをしていたロドリゲス。娘からの連絡がなければ、ロドリゲスは自殺したということで、人探しも終わっていたかもしれません。 なおロドリゲス本人が『シュガーマン 奇跡に愛された男』のベストシーンは自身の娘が登場するシーンで、何度もそのシーンを見直したと語っています。主人公であるロドリゲス自身が太鼓判を押すシーン、必見です!
夢を与えてくれる『シュガーマン 奇跡に愛された男』
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再び脚光を浴びることになったロドリゲス。アルバムが爆発的なヒットとなった南アフリカでコンサートを実現させます。 どのコンサートもチケットが完売し、宿泊も高級ホテルを手配されるなど、世界的スターの扱いを受けるもその扱いに少し戸惑い、謙虚な態度をとります。 ロドリゲスの人生の大半はどちらかというと奇跡に見放された人生でした。しかし30年以上の時を経てスポットライトを浴びるロドリゲスの姿は、観る人に奇跡はいつどこで起こるかわからないという夢と希望を与えてくれます。 また再び人気者となっても謙虚な姿勢を変えることはない、その真摯なロドリゲスの生き方は人々に感動を与えてくれることは間違いありません。