思春期の壮絶ないじめを描き、問題作となった映画10選【やりすぎだろ……】 

2018年5月10日更新

「いじめ」というのはいつの時代無くなりません。それと同時にそれを扱う映画も決して無くなることなく、常に時代に対して問題提起し続けています。今回はそんな「いじめ」をテーマにした作品群をご紹介します。

映画を通して「いじめ」を考える

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「いじめ」 それは学校という空間のみならず、形を変えながら私たちの生活の中に常に潜んでおり、「集団」が「個」を排除するという民主主義にあるまじき卑劣な行為です。 「パワハラ」「セクハラ」「セカンドレイプ」など最近よく耳にする言葉の数々も、根底にあのはこの「いじめ」の精神だと思います。 今回はそんな無くなることのない社会の闇に対して、「映画」という方法を使って対抗するクリエイターたちの名作の数々をご紹介していきたいと思います。

1:『キャリー』(1976)

『キャリー』
© 1976 - United Artists

『アンタチャブル』(1987)で知られる映画界の至宝、ブライアン・デ・パルマの初期作にして代表作である『キャリー』。その衝撃的な展開と巧みなスリラー表現で、以後の映画業界に多大なる影響を与えた作品です。 その冴えない容姿を理由に同級生から激しいいじめを受けていたキャリー(シシー・スペセイク)は、体育の授業後のシャワーを浴びている際、公衆の面前で初潮を迎えてしまう。 異常なまでのクリスチャンである母親からは「月経」について教わっていなかったがために、自分が溢れ出た血液にパニックを起こしてしまいます。そのことをきっかけにさらにエスカレートしていくいじめに彼女はどう向き合っていくのでしょうか。 親の教育や圧迫された学校での出来事に加えて、自分自身に捲き起こる異常な事態に困惑しながらも、絶望することなく前を向き、楽しく生きようと努力します。その姿に心を打たれ、最後の悲しすぎる結末に涙する珠玉の名作となっています。

2:『家族ゲーム』(1983)

森田芳光の代表作である本作は誰しもが知る名優・松田優作を主演に迎え、「横並びの食卓」という異常な画面構成で多くの話題を呼びました。 「いじめ」が原因で引きこもりがちになってしまったがために成績が伸び悩んでしまった少年の元に、傍若無人の家庭教師が現れて拳の握り方を教わります。立ち向かうことを覚えた少年は、見事一流の高校に合格したものの、その頃には家庭の崩壊が訪れていました。 衝撃とともに訪れる家族の真実といじめに立ち向かう勇気を取り戻す少年の物語は、一見破天荒ながらもストレートなメッセージ性を持って見るものの心を掴む傑作です。

3:『エレファント』(2003)

スポーツのスター選手たちを「ジョック」いわゆるオタクと言われる人たちを「ナード」と呼び、日本よりも明確にスクールカーストが組分けられているアメリカ。 そんなカーストの中で迫害を受け続けた人間たちの復讐心によって実際に引き起こされた「コロンバイン高校銃乱射事件」を主軸に、その事件にまつわる周りに人間たちの動向を巧みな演出で描き出した本作。 「いじめ」の果てに銃を手にして、手当たり次第に打ちまくる。その最後には自分自身に銃口を向けたこの事件の闇を、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997)のガス・ヴァン・サントの手腕によって独自の視点で映画化し話題を呼びました。

4:『さよなら、僕らの夏』(2004)

「ホーム・アローン」シリーズのマコーレー・カルキンを実兄に持つロリー・カルキンが主演を務めるこの作品は、その悲劇的な結末と胸に残る罪悪感が多くの観客を騒然とさせた問題作です。 ジョージという少年から理由もなく殴られて続ける「いじめ」を受けていたサムは、兄・ロッキーに仕返しを相談します。サムの誕生日会におびき出し、その道中で湖に突落し裸で帰らせるという作戦を立てた二人は、実行に移します。しかし、当日現れてジョージはサムにプレゼントを用意し、これまでと違う態度をとります。 この映画の肝は一方的ないじめではなく、立場が変わればいじめていた人間もいじめられるという「集団」と「個」の関係性の脆さを如実に描き出した意欲作となっています。

5:『ぼくのエリ 200歳の少女』(2008)

この『ぼくのエリ 200歳の少女』は、公開当時その美しい画面と儚げなストーリーで絶賛の嵐を巻き起こし、2010年にはクロエ・グレース・モレッツ主演でハリウッドリメイクもされました。 「いじめ」に苦しむ少年が出会った少女の秘密にフォーカスされがちなこの作品ですが、本質は別のところに潜んでいます。「ヴァンパア」という圧倒的なマイノリティである少女を、同じくマイノリティとしていじめを受けていた少年が暖かく包み込むという構図は、実に優しい世界を構築することに成功しており、いじめに対する新しい対抗策を提案してくれています。 受け入れられないものを受け入れて、それでも前を向いて生きていく糧になる映画です。

6:『先生を流産させる会』(2011)

タイトルを聞くだけでもおぞましいこの映画は、2009年に愛知県で起こった男子生徒が妊娠中の女性教師を流産させる目的で給食に異物を混入した事件をモチーフとしています。 流産させるというだけでは殺人罪には問われず、だからこそより悪意に満ちた印象を与えるこのタイトルは公開当時多くの映画ファンたちを震撼させました。鬱屈とした思春期の底知れぬ闇が引き起こす、興味本位と理由なき怒りによって貶められていく女性教師の姿は、とても平常心では見ていられません。 「いじめ」というものの根幹にあるものが、「退屈」であることを1時間という短い時間で圧倒的な衝撃とともに描き出す狂気のいじめ映画となっています。

7:『アンフレンデッド』(2014)

「ネットいじめ」をテーマとしたホラー作品となってはいるものの、その根底にあるものはやはりいじめ根絶の精神であると言って過言ではないでしょう。 友達同士でチャットを楽しむ若者グループの中に知らないメンバーがいつの間にか参加しているという異変から物語が始まる本作ですが、その知らないメンバーを即刻排除しようとする姿勢から「いじめ」という問題を想起させる巧みな構成がホラーだけに止まらない深みを実現しています。 全編パソコンの画面内で語られるというアイデア勝負な一面もありますが、それゆえにリアルなネットいじめを表現することに成功しております。

8:『ヒメアノ〜ル』(2016)

『ヒミズ』などで知られる古谷実の同名漫画を原作に『さんかく』(2010)の吉田恵輔がメガホンを取り実写映画化した作品。V6の森田剛が猟奇殺人鬼を演じるということで大きな話題を呼んだ本作の魅力は、その話題性だけではありません。 「いじめ」られた結果、倫理観や価値観を大きく曲げられてしまった男が、歪み切った動機で殺人を繰り返す姿は、恐ろしいと同時にどこか儚げで虚しく映ります。 「いじめ」によって受ける被害は決して肉体的なものだけではなく、精神に異常をきたすほど壊れてしまう人間がいることを教えてくれる作品です。

9:『聲の形』(2016)

「このマンガがすごい!オトコ編2015」で第1位を獲得した大今良時原作の同名漫画をアニメーション映画化した作品。耳の聞こえない少女とかつて無自覚ないじめっこであった少年の交流を描く感動作です。 ここまで紹介した作品と違うのは、一方的にいじめっこを悪とした展開ではなく、「気づき」があって反省・更生していくことを主軸に物語が進行するという点です。 幼い心が生み出した「いじめ」という闇に、成長してから向き合うことの難しさや、ただ罰を受けるだけでなく心の底からの後悔と反省が本当の解決に繋がるではないかという新しい提案をしてくれる作品となっています。

10:『ミスミソウ』(2018)

漫画『ハイスコアガール』の押切蓮介が描く精神崩壊ホラーである同名漫画を原作とした作品。先ほど紹介した『先生を流産させる会』(2011)で日本映画界に鮮烈な衝撃を与えた内藤瑛亮監督の最新作であり最高傑作との呼び声も高いのがこの『ミスミソウ』です。 「日本版キャリー」とも称されるこの作品には超能力や妖怪のようなものは一切登場せず、普通の人間が持つ狂気を極限まで描ききっており、「いじめ」が巻き起こす恐怖の展開に息を飲むトラウマ映画です。 『先生を流産させる会』と同じく、退屈の捌け口にされた主人公が復讐のためにその手を血で染めるという悲劇的な物語の裏にある人間の本質は、思わず目を背けたくなるほどのものがあります。

あってはならない「いじめ」とどう向き合うか

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ここまで数々の「いじめ」をテーマにした映画をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。 壮絶ないじめに立ち向かう様や、どうしようもない怒りで壊れてしまう様、反省と後悔を胸に贖罪に生きる様。それぞれの作品がそれぞれの考え方を持っていじめに向き合い、表現しています。かつての自分が「いじめっこ」「いじめられっこ」どちらの立場であったにせよ、こうした映画を見ることである種の昇華はできるのではないでしょうか。 また傍観者であったあなたも映画を通して改めて「いじめ」に対して考えてみると、世界はきっと暖かな優しい方向へ向かうはずです。