壮絶ないじめを描き、問題作となった映画&ドラマ15選【考えるきっかけに】
タップできる目次
- 映画・ドラマを通して「いじめ」を考える
- いじめを題材にした映画10選
- 『キャリー』(1976年)
- 『家族ゲーム』(1983年)
- 『エレファント』(2003年)
- 『さよなら、僕らの夏』(2004年)
- 『ぼくのエリ 200歳の少女』(2008年)
- 『先生を流産させる会』(2011年)
- 『アンフレンデッド』(2014年)
- 『ヒメアノ〜ル』(2016年)
- 『聲の形』(2016年)
- 『ミスミソウ』(2018年)
- いじめを題材にしたドラマ5選
- 『女王の教室』(2005年)
- 『ライフ〜壮絶なイジメと闘う少女の物語〜』(2007年)
- 『泣かないと決めた日』(2010年)
- 『35歳の高校生』(2013年)
- 『13の理由』(2017年)
- あってはならない「いじめ」とどう向き合うか
映画・ドラマを通して「いじめ」を考える
「いじめ」 それは学校という空間のみならず、形を変えながら私たちの生活の中に常に潜んでおり、「集団」が「個」を排除するという民主主義にあるまじき卑劣な行為です。 「パワハラ」「セクハラ」「セカンドレイプ」など最近よく耳にする言葉の数々も、根底にあのはこの「いじめ」の精神だと思います。 今回はそんな無くなることのない社会の闇に対して、「映画」という方法を使って対抗するクリエイターたちの名作の数々をご紹介していきたいと思います。
いじめを題材にした映画10選
社会に問題提起をする役割をもつエンターテインメントでは、もちろん「いじめ」もしばしばその題材になっています。 壮絶ないじめと、それを乗り越える主人公、あるいはその復讐など、その描き方は多岐に渡っています。今回はそのなかから、考えさせられるおすすめの映画を紹介しましょう。
『キャリー』(1976年)
いじめられっ子が超能力に目覚めたら
『アンタチャブル』(1987年)で知られる映画界の至宝、ブライアン・デ・パルマの初期作にして代表作である『キャリー』。その衝撃的な展開と巧みなスリラー表現で、以後の映画業界に多大なる影響を与えた作品です。 その冴えない容姿を理由に同級生から激しいいじめを受けていたキャリー(シシー・スペセイク)は、体育の授業後のシャワーを浴びていた際、公衆の面前で初潮を迎えてしまいます。 彼女は、狂信的なクリスチャンである母親から「月経」について教わっていなかったため、自分から溢れ出た血液を見てパニックを起こします。それをきっかけに、いじめはさらにエスカレート。彼女は事態にどう向き合っていくのでしょうか。 親の教育や圧迫された学校での出来事に加えて、自分自身に捲き起こる異常な事態に困惑しながらも、絶望することなく前を向き、楽しく生きようと努力るキャリー。その姿に心を打たれ、最後の悲しすぎる結末に涙する珠玉の名作となっています。
『家族ゲーム』(1983年)
謎の家庭教師がいじめと家族の問題に切り込む
森田芳光の代表作である本作は、誰もが知る名優・松田優作を主演に迎え、「横並びの食卓」という異常な画面構成で多くの話題を呼びました。 「いじめ」が原因で引きこもりがちになり、成績が伸び悩んでいる少年の元に、傍若無人な家庭教師が現れて拳の握り方を教わります。立ち向かうことを覚えた少年は、見事一流の高校に合格したものの、その頃には家庭の崩壊が訪れていました。 衝撃とともに訪れる家族の真実と、いじめに立ち向かう勇気を取り戻す少年の物語。一見破天荒ながらもストレートなメッセージ性を持っており、見るものの心を掴む傑作です。
『エレファント』(2003年)
コロンバイン高校銃乱射事件をモチーフとした作品
スポーツのスター選手たちを「ジョック」、いわゆるオタクと言われる人たちを「ナード」と呼び、日本よりも明確にスクールカーストが組分けられているアメリカ。 そんなカーストの中で、実際に起こった「コロンバイン高校銃乱射事件」を主軸に、その事件にまつわる周りの人間たちの動向を、巧みな演出で描き出した本作。 「いじめ」の果てに銃を手にして、手当たり次第に打ちまくる。その最後には自分自身に銃口を向けたこの事件の闇を、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997年)のガス・ヴァン・サントの手腕によって独自の視点で映画化し、話題を呼びました。
『さよなら、僕らの夏』(2004年)
いじめの対象はつねに逆転していく
「ホーム・アローン」シリーズのマコーレー・カルキンの実弟、ロリー・カルキンが主演を務めるこの作品は、その悲劇的な結末と胸に残る罪悪感で、観客を騒然とさせた問題作です。 ジョージという少年から理由もなく「いじめ」を受けていたサムは、兄・ロッキーに仕返しを相談します。サムの誕生日会に彼をおびき出し、その道中で湖に突き落すという作戦を立てた二人は、実行に移すことに。しかし、当日現れたジョージはサムにプレゼントを用意し、これまでと違う態度をとるのでした。 この映画は、立場が変わればいじめていた人間もいじめられるという「集団」と「個」の関係性の脆さを如実に描き出した意欲作となっています。
『ぼくのエリ 200歳の少女』(2008年)
いじめられっ子の少年は不思議な少女との出逢いで変わっていく
この『ぼくのエリ 200歳の少女』は、公開当時その美しい画面と儚げなストーリーで絶賛の嵐を巻き起こし、2010年にはクロエ・グレース・モレッツ主演でハリウッドリメイクもされました。 「いじめ」に苦しむ少年が出会った少女の秘密にフォーカスされがちなこの作品ですが、本質は別のところに潜んでいます。圧倒的なマイノリティである少女を、同じくマイノリティとしていじめを受けていた少年が暖かく包み込むという構図は、実に優しい世界を構築することに成功しており、いじめに対する新しい対抗策を提案してくれています。 受け入れられないものを受け入れて、それでも前を向いて生きていく糧になる映画です。
『先生を流産させる会』(2011年)
思春期の鬱屈した感情がいじめによって発散される
タイトルを聞くだけでもおぞましいこの映画は、2009年に愛知県で起こった男子生徒が妊娠中の女性教師を流産させる目的で、給食に異物を混入した事件をモチーフとしています。 流産させるというだけでは殺人罪には問われず、だからこそより悪意に満ちた印象を与えるこのタイトルは、公開当時多くの映画ファンを震撼させました。鬱屈とした思春期の底知れぬ闇が引き起こす、興味本位と理由なき怒りによって貶められていく女性教師の姿は、とても平常心では見ていられません。 「いじめ」の根幹にあるものが「退屈」であることを、1時間という短い時間で圧倒的な衝撃とともに描き出す狂気のいじめ映画となっています。
『アンフレンデッド』(2014年)
ネットいじめを思わせるホラー映画
「ネットいじめ」をテーマとしたホラー作品となってはいるものの、その根底にあるものはやはりいじめ根絶の精神であると言って過言ではないでしょう。 友達同士でチャットを楽しむ若者グループの中に、いつの間にか知らないメンバーが参加しているという異変から物語が始まる本作。その知らないメンバーを即刻排除しようとする姿勢から、いじめ問題を想起させる巧みな構成で、ホラーというジャンルに止まらない深みがあります。 全編パソコンの画面内で語られるというアイデア勝負な一面もありますが、それゆえにリアルなネットいじめを表現することに成功しました。
『ヒメアノ〜ル』(2016年)
いじめを受けた少年は、成長して殺人鬼になった
『ヒミズ』などで知られる古谷実の同名漫画を、『さんかく』(2010年)の吉田恵輔が実写映画化した作品。V6の森田剛が猟奇殺人鬼を演じるということで大きな話題を呼んだ本作の魅力は、その話題性だけではありません。 「いじめ」られた結果、倫理観や価値観を大きく曲げられてしまった男が、歪みきった動機で殺人を繰り返す姿は、恐ろしいと同時にどこか儚げで虚しく映ります。 「いじめ」によって受ける被害は決して肉体的なものだけではなく、精神に異常をきたすほど壊れてしまう人間がいることを教えてくれる作品です。
『聲の形』(2016年)
無自覚な「いじめ」とそれに対する「気づき」
「このマンガがすごい!オトコ編2015」で第1位を獲得した大今良時原作の同名漫画を、アニメーション映画化した作品。耳の聞こえない少女とかつて無自覚ないじめっこであった少年の交流を描く感動作です。 ここまで紹介した作品と違うのは、一方的にいじめっこを悪とした展開ではなく、「気づき」があって反省・更生していくことを主軸に物語が進行するという点です。 幼い心が生み出した「いじめ」という闇に、成長してから向き合うことの難しさや、ただ罰を受けるだけでなく心の底からの後悔と反省が本当の解決に繋がるではないかという、新しい提案をしてくれる作品となっています。
『ミスミソウ』(2018年)
「いじめ」で家族を殺された少女の復讐
漫画『ハイスコアガール』の押切蓮介が描く、同名漫画を原作とした作品。先ほど紹介した『先生を流産させる会』で、日本映画界に鮮烈な衝撃を与えた内藤瑛亮が監督を務めています。 「日本版キャリー」とも称されるこの作品には超能力のようなものは一切登場せず、普通の人間が持つ狂気を極限まで描き、「いじめ」が巻き起こす恐怖の展開に息を呑むトラウマ映画です。 『先生を流産させる会』と同じく、退屈の捌け口にされた主人公が、復讐のためにその手を血で染めるという悲劇的な物語の裏にある人間の本質は、思わず目を背けたくなるほどのものがあります。
いじめを題材にしたドラマ5選
いじめを題材にしたドラマも多数制作されてきました。 ここでは、大ヒットを記録した社会派学園ドラマから、今や再放送・ネット配信が不可能とされている過激ないじめを描いた作品、そして世界中で議論を巻き起こした海外ドラマまで、様々な作品を紹介します。
『女王の教室』(2005年)
国内外で高視聴率を叩き出した社会派学園ドラマ
2005年に放送されたドラマ『女王の教室』は、天海祐希演じる冷徹な鬼教師・阿久津真矢が、独自の教育方法で半崎小学校6年3組の児童を成長させていく物語です。当時子役だった志田未来や伊藤沙莉、福田真由子も児童役として出演しています。 放送前から注目を浴び、放送を重ねるごとに賛否両論を巻き起こしました。最終話では視聴率25.3%を記録。台湾や香港をはじめとするアジア各国で放送され、2013年には韓国でリメイクされています。 教師の熱血ぶりや生徒への愛を前面に出した従来の学園ドラマとは一線を画しているこのドラマ。いじめだけでなく日本社会全体の問題をも児童たちに突きつける阿久津の名言は、多くの視聴者の心に残っています。
『ライフ〜壮絶なイジメと闘う少女の物語〜』(2007年)
壮絶ないじめを包み隠さず描いた漫画をテレビドラマ化
2002年から2009年まで別冊フレンドにて連載されていた、すえのぶけいこの漫画『ライフ』が原作。深夜ドラマにも関わらず平均視聴率は12.5%を記録しました。 北乃きい演じる椎葉歩が受けるいじめや、複数のキャラクターが自殺を図る描写が過激だったため、放送直後から批判の声が殺到した本作。しかし、現役の学生や若い世代からは肯定的な意見が多く上がっています。 受験や恋愛といった学生らしい悩みだけでなく、生徒と教師の恋愛や特殊な性癖も描き、時に原作よりも過激に表現している挑戦的な作品です。福田沙紀や真矢ミキ、ブレイク前の中村倫也など豪華キャストも出演しています。
『泣かないと決めた日』(2010年)
パワハラに立ち向かう主人公に勇気をもらえる
そこそこの大学から運良く新卒で大手商社に就職することになった角田美樹。憧れの会社での社会人生活を夢見て初日を迎えたものの、ひょんなことから同僚にいじめられることになってしまいます。 主人公の角田を演じたのは榮倉奈々。前クールの放送が変則的だったことから全8話と放送回数が少なかったものの反響が大きかったため、完結編としてスペシャルドラマが放送されました。 舞台は業界最大手の商社の食品部門ですが、メインキャラクターは女性社員が多く、女性同士や男女間のトラブルが丁寧に描かれています。女性陣は杏、片瀬那奈、木村文乃、男性陣は藤木直人、要潤と安定感のある役者がそろっているのも見どころですね。
『35歳の高校生』(2013年)
スクールカーストに切り込む編入生は35歳!?
米倉涼子が演じる主人公の馬場亜矢子は、いじめなどの理由で高校を中退してから職を転々としていました。35歳になった彼女は、亡くなった母の願いだった理想的な高校生活を送るために国木田高校の3年A組に編入します。 しかし、3年A組ではスクールカーストによって生徒に順位がつけられ、教師ですら上位の生徒の顔色をうかがっている状態。そんなクラスに自分を貫き通す馬場が加わったことで、徐々に生徒の関係性が変わっていきます。 3年A組の生徒役には菅田将暉や山崎賢人、広瀬アリスといった、のちに主演を務めるようになる俳優たちが名を連ねています。一話完結型で、各話でスポットがあたる生徒が変わるので、注目している若手俳優の演技がじっくり楽しめる作品です。
『13の理由』(2017年)
カセットテープが語る真実とは
アメリカで製作された『13の理由』は、ジェイ・アッシャーの小説が原作のドラマです。2017年からNetflixで配信されており、2020年6月時点でシーズン4まで配信されています。 もともとはセレーナ・ゴメス主演で映画化する予定だったところ、Netflixが映像化することになり、セレーナは製作総指揮として作品に関わることになりました。実際に主演を務めたキャサリン・ラングフォードはその演技が評価され、ゴールデングローブ賞などの主演女優賞にノミネートされています。 シーズン1の物語のキーになるのは、自殺したハンナが自分の死の理由を録音した7本のカセットテープ。次々と明かされる真実が生々しく表現されています。
あってはならない「いじめ」とどう向き合うか
壮絶ないじめに立ち向かう様や、どうしようもない怒りで壊れてしまう様、反省と後悔を胸に贖罪に生きる様。それぞれの作品がそれぞれの考え方を持っていじめに向き合い、表現しています。かつての自分が「いじめっこ」「いじめられっこ」どちらの立場であったにせよ、こうした映画を見ることで改めて考えるきっかけになるのではないでしょうか。 また傍観者だったあなたも、映画を通して改めて「いじめ」に対して考えてみると、世界はきっと暖かな優しい方向へ向かうはずです。