2018年5月4日更新

最強の布陣で人種差別描く、『サバービコン 仮面を被った街』をネタバレ解説

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サバービコン 仮面を被った街
Photo Credit: Hilary Browyn Gayle (C)2017 Paramount Pictures. All rights reserved.

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最強の布陣で贈るコーエン兄弟の最新作映画『サバービコン 仮面を被った街』

アカデミー賞やカンヌ国際映画祭など数々の映画祭で受賞歴があり、常に挑戦的な作品を作り続けているコーエン兄弟の脚本最新作映画『サバービコン 仮面を被った街』。 1950年代のアメリカで実際に起こった人種差別暴動とそのすぐ隣家で人生を転がり落ちていく典型的なアメリカ人一家の物語をシニカルに描き切った作品です。監督を務めるのは、コーエン兄弟とは4度目のタッグとなるジョージ・クルーニー。 主演にマット・デイモンほか豪華俳優陣を迎え、最強の布陣で贈る映画『サバービコン 仮面を被った街』のネタバレ・感想評価などをご紹介します。

ハリウッド屈指の才能が集結!スタッフ紹介

監督:ジョージ・クルーニー

本作の監督を務めるのは俳優だけでなく、プロデューサー、監督としても活躍するジョージ・クルーニー。 元々は、コーエン兄弟が本作のクーパー役をクルーニーにオファーしており、その時点で、本作のベースとなった人種差別暴動事件の脚本をグラント・ヘスロヴと共同執筆していたクルーニーが「それならば。」という形でメガホンを取ることとなりました。

脚本:ジョエル&イーサン・コーエン兄弟

本作の脚本を務めるのは、映画『バートン・フィンク』といったカルト的人気作から、映画『レディ・キラーズ』『ノーカントリー』といった大ヒット作まで、幅広く成功を収めている映画監督であり脚本家のジョエル&イーサン・コーエン兄弟です。 本作では、兄弟と4度目のタッグとなるクルーニーに監督を任せ、脚本を担当。その脚本をクルーニーの盟友でもあるヘスロヴがリライトする形で、本作が完成しました。

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実力俳優陣が豪華競演!キャスト紹介【ネタバレあり】

ガードナー・ロッジ/マット・デイモン

サバービコンに暮らす理想の白人一家ロッジ家の大黒柱ガードナー・ロッジ。しかし、真面目で善き父親の本当の顔は、裏社会との繋がりを持ち借金まみれになった挙句、妻ローズを殺し、その保険金でローズの双子の姉マーガレットと不倫逃亡を図ろうとするダメ過ぎる親父でした。 ガードナー・ロッジを演じているのは、マット・デイモン。 デイモンは自身の代表作でもある映画『ジェイソン・ボーン』シリーズでアクション俳優としての地位を確立する傍ら、映画『オデッセイ』のような大作、そして本作のような練り込まれた脚本の単館系作品にバランス良く出演しています。 本作では、50年代の典型的なアメリカ人男性を演じるために体重を数ポンド増量。ベルトの上にお腹が乗った中肉中背男性へと変貌を遂げています。

ローズ&マーガレット・ロッジ/ジュリアン・ムーア

本作の冒頭、二人のジュリアン・ムーアで一発目の笑いを取りに来るのが、妹ローズ、姉マーガレットの双子の姉妹です。妹ローズはガードナーの妻であり、ガードナーが過去に起こした事故により半身不随となり車椅子生活を送っています。 そのことからガードナーに対し、不満を抱いていますが、強盗によって殺されてしまいます。姉マーガレットは常にロッジ家に入り浸っており、ニッキーにとっては良い叔母を装いますが、ガードナーに対し秘めた感情を抱いており、そのことからローズに嫉妬心を抱くようになります。 ローズ&マーガレット姉妹を演じるのは、ジュリアン・ムーア。映画『エデンより彼方へ』など多くの代表作を持ち、アカデミー賞にも4回ノミネートされていましたが、いずれも受賞を逃し“無冠の女王”と呼ばれていました。 しかし、2014年に主演した映画『アリスのままで』で悲願のアカデミー賞主演女優賞を獲得。 それ以降は、映画『ハンガー・ゲーム』シリーズや映画『キングスマン:ゴールデン・サークル』などトリッキーな女性を演じることが多く、本作でも普通の女性が転がり落ちていく怖さを遺憾なく発揮しています。

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ニッキー・ロッジ/ノア・ジュプ

ロッジ家の一人息子のニッキー。突如、押し入った強盗に母親を殺された挙句、間の悪いことにすべての見てはいけない場面に遭遇し、裏社会のギャングだけでなく、父親と叔母からも命を狙われることに。 隣家に越してきた黒人のマイヤーズ一家の一人息子と仲良くなり、二人で大人たちの裏の顔を見つめています。 ニッキーを演じているのは、2005年生まれのノア・ジュプ。監督のクルーニーはノアを「アメリカ訛りを完璧にこなし、こちらが求めるものを1、2テイクでこなしてくれる。」と絶賛しています。 2018年に公開する映画『ワンダー 君は太陽』にも出演している注目の子役です。

バド・クーパー/オスカー・アイザック

保険調査員のバド・クーパー。ガードナーの保険金詐欺を疑い、マーガレットを巧みに誘導し、詐欺を突き止めます。 本作で唯一の正義の存在かと思いきや、ガードナーを脅し、保険金を奪おうと恐喝。動揺したマーガレットに洗剤を盛られた挙句、ガードナーにゴルフドライバーで殴り殺されてしまいます。 バド・クーパーを演じているのは、オスカー・アイザック。コーエン兄弟の監督映画『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』でゴールデングローブ賞ほか多くの映画賞を総なめにした実力派俳優です。 2015年の映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』からポー・ダメロン役でシリーズに参戦しているので、これからどんどん知名度が上がっていくことでしょう。

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理想的なニュータウンの裏の顔は?映画『サバービコン 仮面を被った街』あらすじ

サバービコン 仮面を被った街
Photo Credit: Hilary Browyn Gayle (C)2017 Paramount Pictures. All rights reserved.

物語の舞台は1950年代のアメリカのニュータウン「サバービコン」。自然豊かで静かな郊外でありながら、学校、消防などの公共施設が揃い都会の利便性も兼ね備えたサバービコンは、アメリカン・ドリームの象徴ともいえる街でした。 しかし、そのサバービコンにマイヤーズ黒人一家が引っ越してきたことで事態は一変。あれよあれよという間に住民たちの間に不満が噴出し、マイヤーズ一家への人種差別暴動へと発展していきます。 そんな対岸の火事に負けず劣らず、欲望渦巻く殺し合いを繰り広げるのが、一見、理想的な白人一家でマイヤーズ一家の向かいに住むロッジ家。ある夜、ロッジ家に強盗が押し入ったことをきっかけに、一家の幼い一人息子ニッキーの運命は予想もつかない方向へ・・・・・・。 街の人々と家族の正体に気付いてしまったニッキーの運命やいかに!?サバービコンの行く末は? 1950年代にペンシルベニア州レヴィットタウンで実際に起こったマイヤーズ一家への差別暴動事件を基に、理想のニュータウンの裏側をブラックに描いたクライム・サスペンスです。

すべてを目撃してしまったニッキーの運命はどうなる!?【結末ネタバレ注意!】

ニッキー万事休す!!

母親の殺害を依頼したのが実は父と叔母で、殺人の実行犯からも命を狙われることとなってしまったニッキー。実行犯が家に押し入り追いかけまわされているところに叔父のミッチ(ゲイリー・バサラバ)が助けに入り、何とか助かりますが、叔父は刺され死亡してしまいます。 そこへクーパーを殺し、血まみれの父ガードナーが登場。ニッキーに「すべての不正と殺人を隠匿し一緒に逃亡するか、ここで殺されるか選べ。」と迫ります。 恐怖で固まってしまうニッキーでしたが、ガードナーはマーガレットがニッキーを殺すために作った毒入り牛乳とサンドウィッチを食べ始め、勝手に絶命してしまいます。 すべての脅威が去ったニッキーは、マイヤーズ家の同級生アンディ(トニー・エスピノサ)と野球をするために庭へ飛び出していくのでした。

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そして、マイヤーズ一家は・・・・・・。

サバービコンに引っ越した翌日から住民から家の前での大音量の楽器演奏、自宅周りの壁建設、立ち退き署名運動など、ありとあらゆる嫌がらせを受け続けていたマイヤーズ一家。 とても知的生物とは思えない住民たちの振る舞いに、凛と前を向き、ひたすら耐え凌ぐマイヤーズ家でしたが、暴動はヒートアップし続けます。ついには、自家用車や家の窓などが破壊され、火が投げ入れられ、アメリカン・ドリームを求めて買った新居は見るも無残な姿に。 騒ぎを聞きつけてやってきたマスコミや住民たちをよそに、マイヤーズ一家は黙々と壊れた家の片付けに取りかかります。 そして、本当の脅威は、すぐ向かいのロッジ家にあるにも関わらず、ロッジ家の不幸さえもマイヤーズ家が引っ越してきたために起こったと住民たちは信じ続けるのでした。

映画『サバービコン 仮面を被った街』の評価・感想は?

全米では2017年に公開した映画『サバービコン 仮面を被った街』ですが、批評家からの評価は芳しくありません。映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では支持率26%、平均点は10点満点中4.9点と残念な結果に。 批評家の感想をまとめると「ジョージ・クルーニーにとって残念な失敗作。本作は社会風刺、人種差別、殺人ミステリーの3要素を上手く捌こうとしているが、出来上がったのは3つのごった煮だった」と言われています。 その原因はロッジ家とマイヤーズ家のエピソードが一切交わらずに、マイヤーズ家に至っては息子以外の名前すら明らかにされず、ただのモブ、背景装置となってしまっていることだと思われます。 日本での評価は賛否両論あり、俳優陣の演技を讃える声や、「ダークな社会風刺やブラックな内容が良かった。」という感想も上がっています。 しかし、ハリウッド同様、ブラックコメディーで爆笑できるはずのコーエン兄弟の脚本を、クルーニーがシリアスに書き換えてしまったことで、どっちつかずの空中分解が起こっているとの声も多く、総じて、日米、同じような結果だと言えるでしょう。

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2018年の今だからこそ観るべき映画『サバービコン 仮面を被った街』は5月4日公開

本作と同じくアカデミー賞にノミネートされ、2017年に劇場公開した映画『ゲット・アウト』、2018年に公開した映画『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』。これらの作品の制作陣は口を揃えて、「2018年の今だからこそ公開する意味がある」と言います。 映画『サバービコン 仮面を被った街』も同じく、今の世界情勢だからこそ、観て考えるべき作品に仕上がっています。 映画『サバービコン 仮面を被った街』は2018年5月4日公開です。ぜひ、劇場へ足を運んでみてください。