2018年5月17日更新

W杯ロシア大会キックオフ直前企画!日本代表の対戦国の名作映画を大特集

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エイドリアン・ブロディ

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日本がW杯で対戦する国を映画でチェック!

世界最大のスポーツイベントとも称されるサッカーの国際大会、2018FIFAワールドカップロシア大会が、6月14日からいよいよ開幕! 2017年12月にロシア・モスクワで行われたグループステージ組み合わせ抽選会の結果により、我らが日本代表は、コロンビア、セネガル、ポーランドと対戦することが決定しています。 そして日本がセカンドステージへと駒を進めた場合、そこで待ち受けるのは2018年5月現在FIFAランキング3位と好調のベルギー、あるいはW杯優勝経験を持つ強豪イングランドのいずれかである可能性が高いと予想されます。 地球規模で盛り上がるサッカーの祭典の開幕はもうすぐそこ。スポーツバーでパブリックビューイングに興じたり、出場国の料理や音楽を味わうなどその楽しみ方は様々ですが、映画を通じて各国の文化や風景に親しむのも一興です。 そこでこの記事では、日本代表がグループステージで対戦するコロンビア、セネガル、ポーランドを筆頭に、セカンドステージで対戦の可能性があるベルギーとイングランドを加えた計5カ国の名作映画を大特集。ねたばれを除外した基本情報をお届けいたします。

まずは日本の初戦!6月19日・第1節の対戦国、コロンビア共和国

『彷徨える河』(2016年公開)

南アメリカ大陸の北西部に位置するコロンビア共和国は、アンデス山脈やアマゾンの熱帯雨林といったダイナミックな自然を有し、コーヒーやエメラルド、バラの輸出国として高い知名度を誇ります。 コロンビア出身のシーロ・ゲーラ監督による『彷徨える河』は、滅びゆくアマゾンの部族の生き残りのシャーマン、カラマカテの視点から欧米人との邂逅や先住民文化を描いた作品です。 世界保護基金WWFの報告書によると、2030年までに最大で60%が破壊される恐れがあるというアマゾンの熱帯雨林。森林の奥深くで孤独に暮らすカラマカテは記憶や感情を失い、その心は壊れつつありました。 先住民が独自の時間概念を保有していることに着目したゲーラ監督は、カヌーでアマゾン川を遡上するカラマカテが見る世界を全編モノクロの神秘的な映像でフィルムに収め、コロンビア史上初のアカデミー賞外国語映画賞ノミネートを果たしています。

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『そして、ひと粒のひかり』(2005年公開)

若干17歳にしてバラ農園で働き、家族を養うマリア。些細なトラブルや予想外の妊娠をきっかけに職を失った彼女は、生活のために麻薬の運び屋になることを決意。麻薬が入った袋を胃の中へ流し込み、ニューヨーク行きの飛行機に搭乗します。 コロンビアは1964年から半世紀以上の長きに渡って続いた内戦の和平協定が2016年に承認されたばかりで、治安維持に深刻な課題を抱えています。その厳しい政治情勢は『そして、ひと粒のひかり』の制作過程にも影響を及ぼし、撮影は隣国のエクアドルで行われました。 コロンビアが直面する社会問題をありのままに切り取った本作品は、ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞するなど高評価を獲得。主演のカタリーナ・サンディノ・モレノは、映画初出演にしてコロンビア初のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされるという快挙を達成しています。

6月24日・第2節の対戦国、セネガル共和国

『ユッスー・ンドゥール 魂の帰郷』(2009年公開)

『ユッスー・ンドゥール 魂の帰郷』は、1998年W杯フランス大会の公式アンセムも手がけたセネガル出身の音楽家ユッスー・ンドゥールが、アフリカ系アメリカ人の音楽のルーツを辿り、米国各地や母国セネガルのゴレ島を歴訪する模様を収めたドキュメンタリーです。 かつてポルトガル、オランダ、フランス、イギリスといった国々がその領有権をめぐって争いを繰り広げたゴレ島。16世紀から19世紀までは、奴隷貿易の拠点として利用されてきました。アフリカ各地から集められた人々は、この島の「奴隷の家」に収容されたのち「帰らずの扉」を通され、南北アメリカ大陸へ送られたといいます。 アフリカの伝統音楽は如何にして海を越え、世界に広まったのか。その答えを欧米列強による奴隷貿易の歴史に求めるンドゥールは、ゴレ島の負の遺産と向き合います。

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『バオバブの記憶』(2008年公開)

『バオバブの記憶』は写真家で映画監督の本橋成一が、セネガルの首都ダカール近郊の村、トゥーバ・トゥールを舞台に、バオバブの大樹と共に暮らす人々の日常を綴ったドキュメンタリーです。 信仰の対象として、時には食料や日用品として村の生活の中心に君臨するバオバブの樹。セネガルでは国章のデザインに組み込まれるほど尊ばれてきました。 映画『バオバブの記憶』では、数百年の時をかけてゆっくりと命を燃やす聖樹と、その傍らに生きる12歳の少年が夢見る将来の対比に、現代のセネガルが臨む急速な変化の波を垣間見ることができます。

6月28日・第3節の対戦国、ポーランド共和国

『戦場のピアニスト』(2003年公開)

『戦場のピアニスト』は実在のユダヤ系ポーランド人ピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンを主人公に、ナチス・ドイツ占領下のポーランドの首都ワルシャワを描いた作品です。 原作は1946年にシュピルマンが発表した回想録『ある都市の死』。ポーランドでは長らく絶版処分が下されていたこの書籍を、自身もナチスによるホロコーストを経験したロマン・ポランスキー監督が映画化し、アカデミー賞監督賞およびカンヌ国際映画祭パルム・ドールに輝きました。 第二次世界大戦中に、人口の約15%に相当する520万もの民間人が犠牲になったというポーランド。作中ではユダヤ人によるワルシャワ・ゲットー蜂起、そしてポーランド人によるワルシャワ蜂起といった市民の決死の抵抗もむなしく、壊滅状態に陥るワルシャワの街が映し出されます。 もはや命の気配を失った「死の都市」をひとり彷徨うシュピルマンの姿をドイツ軍将校が捉え、物語はクライマックスへ。シュピルマンを演じたエイドリアン・ブロディは、本作品でアカデミー賞主演男優賞を獲得しました。

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『僕がいない場所』(2007年公開)

国立孤児院を脱走した少年クンデルは、愛を求めて生家を訪れるものの、未熟な母親は見知らぬ男に愛を注ぐばかり。クンデルには見向きもしません。 孤児院にも家庭にも居場所がなく、打ち棄てられた廃船のなかで孤絶を生きるクンデルは、やがて裕福な家庭に育ちながらも孤独感や劣等感を募らせる少女クレツズカと出会います。 繊細な美しさを湛えるポーランドの風景をバックに、社会からその存在を黙殺された子供の姿を淡々と描く『僕がいない場所』。実際のネグレクト事件がテーマの日本映画、是枝裕和監督の『誰も知らない』(2004年)と併せての視聴もおすすめです。

7月2日・セカンドステージで対戦の可能性あり?ベルギー王国

『ある子供』(2005年公開)

主人公は生活保護と窃盗で得た資金で生活する20歳のブリュノと、18歳のソニアのカップル。ソニアは子供の誕生を機にブリュノを定職に就かせようと試みますが、父親としての自覚を持たない彼は、我が子を売り飛ばしてしまいます。 「おとなになる」ということを知らないハタチの父親は、痛みを知り、愛を知り、果たして父性を羽化させることができるのか……。 ベルギーの失業率はユーロ圏の平均をこそ下回りますが、若年層や移民、高齢者の貧困は国内で社会問題化しています。一見ドキュメンタリーと見紛うほどのリアリティをもってベルギーの若き貧困層の日常を投影した本作品は、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞しました。 メガホンを取ったのはベルギーを代表する映画監督、ジャン=ピエール・ダルデンヌとリュック・ダルデンヌ兄弟です。

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『サンドラの週末』(2015年公開)

うつ病で工場の仕事を休職中のサンドラは、突然の解雇を通告されてしまいます。同僚の取り計いにより、彼女の解雇の是非を問う職場投票が行われることになりますが、全16人の従業員のうち過半数がボーナスの受給を諦めれば、サンドラの解雇が撤回されるというシビアな条件が提示されます。 工場で働く誰もがギリギリの生活を強いられているという状況下で、ボーナスの放棄が如何に酷なことであるかはサンドラ自身も身にしみて理解するところ。それでも彼女は、なんとか仕事を続けられるよう同僚たちに懇願して回ります。 舞台となったのはベルギーの工業地帯、リエージュ州セラン。サンドラを演じたマリオン・コティヤールは、本作品でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。監督は前述の『ある子供』に同じく、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟です。

セカンドステージ・仮想対戦国その2!イングランド

『THIS IS ENGLAND』(2009年公開)

舞台は1980年代のイングランド、マーガレット・サッチャー政権下の地方都市。82年にアルゼンチンとの間で勃発したフォークランド紛争により父親を失った少年を主人公に、スキンヘッズと呼ばれる労働者階級の若者たちが次第に右翼的な思想に傾倒してゆく模様を描きます。 ボタンダウンシャツと細身のジーンズに、サスペンダーとワークブーツをあわせるスタイルがトレードマークのスキンヘッズ。70年代以降は、フーリガンや極右政党のイギリス国民戦線との関連を指摘されたことも。 サッカーファンにとって80年代のイングランドといえば、フォークランド紛争終結後の1986年W杯メキシコ大会の準々決勝でアルゼンチンと対戦し、ディエゴ・マラドーナの「神の手」や「5人抜き」といった伝説的ゴールにより歴史的敗戦を喫したことで有名。 『THIS IS ENGLAND』は、そんな歴史的敗戦の裏に存在していたイングランドの世情とサブカルチャーを余すことなく捉えた作品です。紛争に移民問題、そして「英国病」と称された社会と経済の低迷に窮していた頃のイングランドの素顔が知りたいという方に特におすすめいたします。

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『博士と彼女のセオリー』(2015年公開)

生きている限り、希望はあるーー。『博士と彼女のセオリー』は21歳で筋萎縮性側索硬化症、通称ALSを発症した理論物理学者スティーブン・ホーキンス博士の半生を、その妻ジェーンの回想録をもとに綴る真実の物語です。 名門ケンブリッジ大学で出会ったスティーブンとジェーンは、余命2年の宣告を乗り越え、結婚を決意。様々な葛藤を共有したふたりは、やがて夫婦という括りを超越した絆を構築します。 中世より栄えるイングランドの伝統的な大学都市、ケンブリッジを舞台に、一組のカップルが共に過ごした時間を特段飾り立てることもなく真直に描いた本作品は国際的な好評を呼び、ホーキンス博士を演じたエディ・レッドメインがアカデミー賞主演男優賞を受賞しました。

サッカー×映画で異文化に親しむ!

さて、W杯ロシア大会開幕を記念して企画されたこの度の記事。32カ国にのぼる出場国のなかから、日本代表の対戦相手として私たちが目にするであろう国々に焦点を絞り、特集してまいりました。 コロンビア、セネガル、ポーランド、ベルギー、そしてイングランドの名作という今までにない組み合わせで、合計10作品選出いたしましたが、あなたのお眼鏡に適う映画があれば幸いです。 W杯常連国のイタリアや強豪オランダが出場を逃すなど、早くも番狂わせが起きているロシア大会。日本代表の健闘を祈りつつ、いまこそサッカーと映画を通して遠い異国の文化に浸りましょう。