2018年5月21日更新

ラノベの始祖?夢枕獏の「キマイラ・吼」シリーズを押井守が映画化!

キマイラ〈1〉幻獣少年・朧変

夢枕獏の学園伝奇小説「キマイラ・吼」シリーズのアニメ映画化が決定しました。監督は『攻殻機動隊』で知られる押井守です。今回はライトノベルの始祖とも言われる「キマイラ・吼」シリーズと押井守についてまとめました。

夢枕獏の「キマイラ・吼」シリーズがアニメ映画に!

夢枕獏執筆の小説「キマイラ・吼」シリーズがアニメ映画化されます。2018年3月7日に発売された同シリーズの一作『キマイラ13 堕天使変』巻末の"お知らせ"内にて情報が公開されました。 監督は『攻殻機動隊』で知られる押井守です。夢枕獏は最新刊にて押井に全て任せると語っており、押井監督の個性が発揮されたアニメファン垂涎の一作になることが予想されます。 「キマイラ・吼」シリーズは伝説的な人気と影響力を持っていながら、今まで映像化の機会に恵まれていませんでした。果たして名匠・押井守の手によって、本シリーズはどのように描かれるのでしょうか? 今回は本作の情報をまとめました。

学園伝奇の決定版「キマイラ・吼」シリーズとは?

「キマイラ・吼」シリーズは夢枕獏が1982年に執筆を開始した長編連作シリーズです。当初は描き下ろし小説として発売され、シリーズ途中の『キマイラ如来変』以降は雑誌連載後に加筆修正の後単独書籍化されています。 本シリーズは、現代を舞台とした幻想的でバイオレンスやエロチシズムが入り乱れる作品「現代伝奇」の代表作です。その出来は、名だたる名作を多数生み出してきた本作の著者・夢枕獏本人をして「間違いなく面白い」と言わしめるほど。 本シリーズはそれまで歴史ものが多かった伝奇物の作風を現代ものに取り入れた最初期の作品で、舞台を学園とし、刺激的な描写も交えたことが読者の共感を得ました。その手法は若者を対象とした作品に強い影響を与え、多くのフォロワーを生むことになります。 特に影響が大きいのが中学・高校生を対象読者としたライトノベル。同ジャンルは本シリーズが打ち立てた「学園と伝奇」の組み合わせとの相性がすこぶる良く、本作の影響が色濃い作品が多く執筆され、「キマイラ」はライトノベルの始祖とも言われています。

シリーズ序盤のあらすじを、ざっくり紹介

大鳳吼(おおとりこう)は西城学園の1年生。彼は空手部の不良に因縁を付けられたことを切っ掛けに、学園を支配する久鬼麗一と出会います。久鬼に同族嫌悪のような反感を覚えた吼は、真壁雲斎に弟子入りし、久鬼に対抗するために武術「円空拳」を学び始めました。 吼は徐々に自分の暴力性を抑えられなくなっていきます。そんな自分に恐怖した吼は、自分を好いている少女、織部深雪に対して冷たく接するようになります。 久鬼も己の変化を自覚し、「それ」に肉を食わせるようになります。二人に接触した亜室由魅の影響で、二人の身に起きた変化の原因が明らかになりました。 それは異形のもの「キマイラ」。超常的なものに目覚めた二人は、様々な謎と多くの関係者が織りなすねじれた運命に巻き込まれて行くのです。

空前絶後の壮大な物語が見るものを魅了する

序盤のあらすじの時点で魅力満点の本シリーズですが、その真骨頂は遠大な構成にあります。幕開けとして刊行された第1巻『幻獣少年キマイラ』を皮切りに、シリーズを重ねるたびに数々の謎と伏線を生み、より広い世界観へと物語を広げながら30年以上に渡って執筆され続けているのです。 もちろん、ただ風呂敷を広げているだけではありません。夢枕獏渾身の構想のもとに物語は複雑でうねるような展開を繰り返し、読者をどんどん引き込んでいくのです。 大長編らしい広大な世界観と、それを支える夢枕獏の構成と筆致。人気作・話題作がひしめく現代伝奇の中で未だに愛され異彩を放ち続ける本作は、伝説と称されるにふさわしい作品と言えるでしょう。

監督は『攻殻機動隊』で知られる鬼才・押井守

今回のアニメ映画化を手がけるのは押井守。『攻殻機動隊』や「機動警察パトレイバー」シリーズで知られる名匠にして鬼才という言葉がぴったりなアニメ監督です。 押井の名声を押し上げた作品として、外せないのがアニメ『うる星やつら』。チーフディレクター(他作品で言う監督)に抜擢された押井は自身の個性を大胆に発揮し、劇場版第2作『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』にて内外からの激賞を受けると同時に原作者・高橋留美子からは自分の作品と違うと不評を買い、降板のきっかけともなってしまいました。 押井を鬼才たらしめるのがこの個性の強さ、特に「押井臭」と呼ばれる哲学的なストーリーを重視するスタイルにあります。この個性は製作サイドとの軋轢を度々生んでおり、例えば『ルパン三世』新作のオファーがあった際には退廃的過ぎるプランを提示したため破談となりました。 特に目を引くのが、"あの"宮崎駿が押井を監督として起用するために脚本を上梓したにも関わらず、押井が製作担当予定だったスタジオジブリを相手にコンセプトを貫き通そうとした結果企画が頓挫した事件でしょう。押井の頑なさがわかる出来事です。

押井守と現代伝奇をつなぐ作品『BLOOD THE LAST VAMPIRE』とは

押井の手がけた作品の中で今回特に注目すべきは『BLOOD THE LAST VAMPIRE』でしょう。本作は、押井と彼の私塾「押井塾」メンバーが制作した作品で、「キマイラ」のような現代伝奇物となっています。 本作は1966年、ベトナム戦争最中の米軍基地が舞台です。基地内のアメリカンスクールに現れた少女・小夜が異形の怪物を倒すという内容の中編となっています。 本作はカルト的な評価を得て、世界観の異なる後継作『BLOOD+』『BLOOD-C』が制作されました。後継作品に押井は参加していませんが、やはり現代伝奇色の強い作品となっています。

押井色はどこまで出るのか?最高の伝奇作家と最強のアニメ監督のタッグに刮目せよ!

押井守監督ということで気になるのが、彼の作家性と本シリーズとの相性です。人の認識の虚実を問う押井の哲学が、にわかには信じがたい(作中でも疑念を持つ者が現れる)怪奇現象が起こる現代伝奇とどのように融合するのかに注目が集まります。 本作が絶対に面白い作品なのは間違いありません。30年の歴史を積んだ最高の原作と、鬼才と称される監督のタッグなのですから。 そして、特に現代のサブカルチャー業界を牽引しているライトノベルファンにとっては、同ジャンルの源流である本作に見るべき点が多数ある作品ともなるでしょう。好きな作品のルーツが知りたいあなたも、ぜひ劇場へ足を運んでみてください。 各キャラクターを演じるキャストなど、まだまだ未知の部分も多いですが、伝説的学園伝奇作品のアニメ化に、否が応でも期待が高まります。